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4人の魔法使いの冒険  作者: 藤見倫
第3章:巻き起こせ、労働革命
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第94話:暴れるロボットを止めろ

 外に出ると、サイレンの音が一層大きくなった。遠くから悲鳴のようなものも聞こえてくる。ここから目に見える範囲では何も起こってないから、少し離れた位置のようだ。元から屋外にいた人たちは騒ぎの原因を嗅ぎつけようとウロウロしたりスマホを操作したりしている。


「とにかく走り回ってみるしかないね」


 とりあえず正面に進もうとすると、


「おいアレ!」


 右の方から叫び声が聞こえた。見ると、その人は交差点の辺りにいて、左に曲がった先を指差している。俺たち4人は頷き合い、その人の方に走り出した。


「何だ・・・? 何かから逃げてるみたいだ」

「こっちに来てるぞ。俺らも逃げ方がいいんじゃないのか?」

「でも何が起きてるの?」


 交差点にいる人たちは、不安な様子を表に出しながらも好奇心が残っているようだ。


「ロボットが暴走してるみたいたぞ! みんな逃げろぉ!!」


 俺が言おうとしたことを、スマホを操作していた人が叫んだ。


「え、うそ? ロボットって、あの?」

「それ以外に何がある!」

「あの逃げ惑い方、普通じゃないぞ」


 ようやく、交差点にいた人たちがその場を離れ出した。それに逆行する形で俺たちは交差点に向かい、到着。左を見ると、大勢の人がこちらに向かって走って来ていた。既に近くまで来ている人もいる。


「ロボット、どこで暴れてますか?」


「もう、あちこちでだ。君たちも逃げた方が・・・その恰好、もしかして本物の魔法使いか・・・? なら何とかしてくれ!」


 魔法使いにお任せあれ。走り去ったその人を見送るのも程々に前を見ると、逃げる群衆に逆行する兵士の姿が見えた。


「兵士だ。追いかけてみよう」


「「うん」」

「おう!」


 兵士に追いつくよりも先に、ロボットの姿が見えた。自暴自棄になって当たり散らしている人のように、壁を殴ったり物を投げたりしている。作業用ロボットなのが幸いし、火やビームを出したりはできないようだ。

 前を走る兵士がそのロボットの元に到着。手にしている剣でロボットの腕に攻撃するも、弾かれる。ロボットは振り返りパンチで兵士に反撃、これを兵士は盾で防いだ。その後もお互い攻撃してはダメージが与えられない状況が続く。攻撃の手は兵士の方が多く、戦況的には押しているように見えるが、相手の防御力が高いのか打ち倒すことができないようだ。


 その近くまで来ると、周囲には暴れるロボットの姿がいくつもあった。ここから見えるだけでも、20はある。うち何体かは兵士が応戦中で、破壊行為自体は止めることができている。


「お前たち、魔法が使えるのか・・・!」


 後ろからも兵士が来た。


「あ、はい。ゲームプレイヤーです」


「助かる。1人1体でもいい、足止めをお願いしたい」


「それは構いませんが、壊すことは・・・? 火や水も出せますけど」


「無駄だ。人が立ち入れない過酷な環境での作業もできるようにと、耐火、耐熱300℃、防水もある」


 くそ、耐久性が仇になってるな。水の通る隙間もない金属ボディだと雷魔法も無意味だ。使えるのは、風と土。光や闇でも足止めぐらいはできるだろう。


「ちなみに、あのロボット、バッテリーはどれくらいもつんですか?」


「10時間だ」


「じゅ・・・」


 マジかよ・・・。


「だが、昼間から動いているものがほとんどだ。長くもつ物でもあと5時間程だろう」


 5時間でも十分に長い。事実上、バッテリーが切れるまでの耐久戦。どこまで被害を抑えることができるか。


「先ほどビジナに応援要請を出したらしい。ただのビジナ兵ではなく国家直属の隊が向かって来るそうだ。こちらの戦力もじき増える」


 それは朗報だ。


「分りました。極力被害を減らせるように頑張ります」


「恩に切る」


 兵士は一番近くのロボットに向かって走って行った。


「4人であんまり離れないようにしつつ、それぞれロボットを止めよう。一応壊すことも目標に入れて」


「分ったわ」

「ったりめぇだぁ!!」


 パッと左右を見て、自由に暴れているロボットが多そうな左に向かった。


「うおおおぉぉぉぉっ!」


 中野が猛ダッシュで前に出てロボットに向かって行った。全力投球のつもりか。様子見にはちょうどいい。


「食らいやがれぇ! ブラックインパクトォ!!」


 ボゴォン!


 の音と共にロボットは数メートル飛んでうつ伏せに倒れた。ダメージの程は、どうだろう。そばまで走って近づいて見ると、背中が少しへこんでいた。兵士の剣よりは効くようだ。そもそもロボットに対して剣というのが相性が悪い。この街にも魔導士は居るはずだから、来れば楽になる。


「おっ? 背中へこんでね? もういっちょいくかぁ!」


 ロボットが手をついて立ち上がろうとしたところで、背中を蹴ってロボットを再びうつ伏せに倒した。


「中野くん足狙って!」


「任せろ! 行くぜえぇ、ブラック、インパクトォ!!」


 紫の光を帯びて中野の背中の後ろに回された杖が、振り下ろされてロボットの膝裏に直撃。砂埃が晴れると、両膝の辺りがへこんだ上に一部欠けており、部品のようなものが見えた。


「うっしゃあ! 壊せんじゃねぇかぁ。これでトドメだぁ!」


「ちょっと待って」


 俺は手を突き出して中野を制止した。


「オイまた立ち上がるぞ」


「ちょっと見てよう」


 膝をガクガクさせながらロボットは立ち上がったが、すぐにまた倒れ込んだ。


「お、マジか」


 その後も、何度か立ち上がるのを試みては倒れ込むのを繰り返した。膝のダメージが大きく、体を支えきれないようだ。そして、


 ドタドタドタドタ、


 と、ダダをこねる子どものように手足をバタバタさせた。人工知能があるがために、体が思うように動かないもどかしさを感じているのだろう。そのうち、ダダをこねても意味がないことに気付いてバッテリー切れまで横たわることになる。見ていて、空しい気分になる。


「可哀想だけど、このままにしよう。MPは節約しないと」


「・・・だな」


「でもちょっと、見てるのも辛いわね・・・」


「うん・・・」


 MPに余裕があれば、ひと思いに壊して楽にしてあげることができるのだが。


「やり方は任せるけど、この調子で1体ずつ止めて行こう。MPなくなっても宿屋で回復できるから」


 ロボの足止めとMP回復を繰り返す、それはそれで厳しい耐久戦になる。


「うげっ! オレ今ので100使ってんじゃん」


 確かに小さくない消費だが、荒れ狂うロボを止めることができるなら、安いものだ。だが考えて使わないと、宿屋との往復の頻度が増える。


 俺はその場を離れ、兵士が応戦中のロボットの所に行った。


「少し隙を作ってもらっていいですか」


「承知した・・・ぬうん!」


 キィン! と音がして、ロボットが大きくのけ反った。よし、今だ。


「フィジカルケージ」


 ロボットを囲うように地面から垂直に8本の棒を出し、上面も折り曲げて囲って檻を作った。MP節約と、ロボットの可動域を奪うのを兼ねて、ロボットを囲えるぐらいのサイズにした。ロボットが前に進もうとしても檻にぶつかる、手を動かそうとしても檻にぶつかる。ダダをこねるスペースさえないが、ガシャンガシャンと何度も檻に体をぶつけている。消費MPは、30。もし壊されるようなら上げるしかないが、今のところは大丈夫なようだ。


「おお・・・!」


 兵士も感心しているようだ。


「魔導士はまだですか? 魔法の方が効きそうですが」


「トラブル防止のため、魔導士は街の中で魔法を使えない規則になっている」


 は?


「今は、既に起きているトラブルを解決するために必要そうですが」


「それでも駄目だ。規則は破れん」


「チッ」


 思わず舌打ちが出てしまった。聞こえてはなさそうだが。


「おい」


「何です?」


 棘のある言い方になってしまった。


「見ろ」


 兵士が剣で指示した先で、閉じ込めていたロボが檻を両手でこじ開けていた。もう少しでロボが出られる程度の幅には開きそうだ。そのパワーもさることながら、人工知能の方も厄介だな。


「頼んだぞ」


 そう言うや否や、兵士は別のロボットの方に向かって行った。


「くそ」


 檻を崩して手の形に変え、ロボットをつかんだ。そしてそのまま、上空に放り投げた。街灯よりは高い位置まで上がった。強度は鉄並みでも、軽い素材を使っているようだ。ロボットが落ちて来て、


 ドシャァン!


 地面に激突してバラバラになった。新たに消費したMPも、30。確実に壊せるなら、こっちの方がいい。


「やあっ!」


「うおりゃっ!」


 高松さんと中野も応戦中。2人とも既に1体ずつ壊しているようだ。さすがに動きを奪うだけは可哀想だと思ったのだろう。膝だけを壊した最初のロボットば、もう諦めたのか動く気配がない。

 相手がロボットとは言え、あのダダをこねる姿を見せられると気の毒に思ってしまう。その感情にとらわれてMPを無駄遣いしてなければいいが。俺は、檻で閉じ込めるのも上に放り投げるのも同じMP消費だと言い聞かせ、今後も放り投げて壊すことにした。あと、経験値も入る。言い訳としては十分だ。


「MPなくなっちまった! 宿屋行って来るわ!」


「早く戻って来てね」


「おう!」


 中野が一時的に離脱。残りMPが50を切っている。一方で花巻さんはMP満タンのまま。おそらくHP回復に専念するつもりだろうが、本人に任せよう。


 中野と交代で俺、俺と交代で高松さんも一旦宿屋に戻った。


 そしてまた、各自1往復ずつ。MPが尽きるまでロボットと戦う時間と、宿屋と往復する時間が大して変わらず、あまりの非効率さに花巻さんがメンタルヒールを使い始めた。HPダメージがあまりないことも踏まえての行動だろう。


「んっ! いつまでっ、続くのよっ!」


 相も変わらず、兵士は足止めがやっとでロボットの数を減らせないでいる。バッジを付けた人物―――おそらく小隊長以上、バッジのデザインがナチュレと違って役職が分からない―――は、指揮を執っているだけだ。もし指揮者がケガしたら統率が取れなくる、とでも言うのだろうか。ビジナから来るという援軍にも、あまり期待は寄せないでおこう。

 というか遅くないか? 俺たちでも30分そこらで着いた。高速鉄道を使えば10分もかからないはずだが。


「はあぁ、やべっ、バテてきた」


 相手はロボット、俺たちは人間。バッテリー切れはないがスタミナ切れはある。日々訓練している兵士がどうかは知らないが、俺たちには何時間もぶっ続けで戦うのは無理だ。


「もう、しんどぉっ」


 ついでに言うと、メンタルもある。花巻さんのMPも使い出したのはいいが、それよりも体力・気力の消耗が激しい。


「ぜぇ、はぁ、ぜぇ、はぁ」


 俺は先に体力が限界を迎えそうだ。気力で体を動かすにも、限度がある。終わりの見えない状況でそれは無謀だ。


「はぁ、っ・・・。はぁ、・・・まだ、っ・・・、やらなきゃ・・・」


 花巻さんに至っては、宿屋から戻って来る頃には俺たちがMPを消費しているせいで、休む間もなく宿屋との往復を繰り返している。元々体力もあまりなさそうだし、かなり辛そうだ。強いメンタルと責任感が、彼女を苦しめている。無理するなと言っても無駄なような気がして、何も言うことができずに任せている。


「いつになったら援軍来るんだ!?」


「聞いてみたら」


「そうだな」


 本当に聞きに行ったようだ。そんな暇があるなら応戦して欲しいが、それで気が紛れるならいいか。


「はあ!? 歩いて来てんのか!?」


 中野の声だけが聞こえてくる。どうやら、都市間高速鉄道は使わずに徒歩で向かっているらしい。


「いやいやバカだろ! この状況見ろよ!」


 電車を使わない理由は、つまらないもののようだ。


「何言ってんだ! テメェら1匹も壊せてねぇクセして」


「ちょっと中野君!」


 見かねたのか、高松さんが止めに入った。それから二言三言交わして、戻って来た。


「くっそマジ使えねぇ」


「何で歩きで来てんの?」


「こっちは駅員も全部ロボットで、」


 バカか。1人ぐらい人間の監督置けよ。


「でも誰か駅にいりゃいいだろっつったら、”その権限は鉄道会社が持っている”だってよ。しかも”邪魔する暇があったらもっとロボット壊せ”とか言ってくるし、マジムカつくぜ」


「しかも最後、”今回は協力してもらってるから大目に見るが、我々に対する暴言は拘束の対象なので気を付けるように”、だってさ。あたしたち、何のために頑張ってるんだろうね」


 随分な言われようだな。ただでさえ色々と限界を迎えつつあるというのに。


「一旦、休憩しよっか。このままじゃモチベーションが保てない」


「さんせ~い」


 宿屋まで戻り、回復を済ませた上でロビーで休憩。水のサーバーが置いてある。水分補給もさせてもらおう。


「はあ~。疲れた」


「ロボットよりも、兵士の相手の方が疲れるね」


「ホントよ、全く。・・・葵、大丈夫?」


「う、ん。・・・少し休めば、大丈夫」


 顔色が、少し悪いな。ここまで体を動かしたことがなかったのだろう。


「あの・・・」


 宿屋のスタッフが話しかけてきた。


「外がどういった状況か、お分かりでしょうか」


 もうネット上では”アカデミア大混乱”とか出回ってるだろうから、気になるのも無理はない。周囲の宿泊客の視線も集まる。


「ロボットが暴れているのは事実です。今、兵士の人たちと一緒に食い止めてて、ビジナからも援軍が来るそうなので多分ここまでは被害は来ないと思います。ですが、中々壊れにくくて、ロボットのバッテリー切れを待つことになりそうですね」


「そう、ですか。ありがとうございました」


 スタッフは深々と頭を下げて、持ち場に戻った。

 15分ほどロビーで過ごした後、再び外に出ることにした。水を何杯か飲んだのと、宿屋からサンドウィッチの差し入れもあり、体力の方も結構回復した。


 ロボットと戦っていた場所に戻ると、


「援軍が来たぞーーー!!」


 右側から声がして、しばらく見ていると、立派なバッジを付けた兵士と、それよりひと回り小さなバッジを付けた兵士が2人、その後ろに大軍の兵士たちいくつかのグループに分かれてこちらに進んで来た。ざっと100人はいて、装備はみなハンマー。鎧には、国家直属軍を示すものだろうか、エンジ色の縦ラインが2本入っている。

 思っていたよりは期待できりそうで、少なくとも剣しか使わないアカデミア兵よりは役に立ちそうだ。バッジ付きの兵士は見るからに上等そうな装備をしている。


 国家直属の軍隊の、腕前を見せてもらうとしよう。


次回:国家直属軍の腕前

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