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4人の魔法使いの冒険  作者: 藤見倫
第3章:巻き起こせ、労働革命
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第78話:エコノミア最初の街、医療都市メディカ

「わああぁっ、何か凄い近代的な街ね」


「車も走ってんじゃん! 俺らも使えんのか!?」


「さあ、そこまではどうだろ」


 それ以前にプレイヤーが運転OKでも技術的に無理だろ。


 メディカの街の印象は、高松さんのコメントの通りだ。ウォーターランドも都会だったが、何と言うか、こっちの方が近代的と言うか、先進国感がある。経済大国の名も伊達ではないようだ。さっそく宿屋に行こう。まずは兵士さん、よろしくね♪


「すみません」


「どうした」


「ここから一番近い宿屋ってどこにありますか?」


 兵士は右前方を指差し、


「あそこに地図がある。それを見るといい」


 とだけ言って顔を逸らして警備に戻った。ナチュレの兵士と比べると素っ気ない・・・そういうお国柄か。ある程度門から離れた辺りで中野が「なんか冷たくねぇか?」と高松さんに言っていた。返事は、「だね」。


 で、地図に到着。街の輪郭はほぼ円形で、やはり結構デカい。縮尺の線と見比べてみると直径5キロぐらいありそうだ。半径の異なる大きな環状道路が3つと、中心を通る東西・南北の直線道路、これが交通の要だろう。すぐそばにある一番大きな環状道路―――Ring road No.1―――に目を向けると、バスの姿もあった。プレイヤーも乗れるといいが。


「宿屋は、っと」


 地図に向き直し、東門付近の拡大図に目を移した。


「あったよ」


 花巻さんが指差した位置に、メディカ第一ホテルというものがあった。500メートルぐらいの距離。


「じゃあそこにしよっか」


「でもどうやって道覚えんだ?」


 3つの環状道路以外にも細かい道路はあり、確かに結構入り組んでいる。だが恐らく、このメニュー画面様はカメラ機能付きにあらせられる。


「覚える必要なんてないよ。メニュー画面で写真ぐらい撮れるでしょ」


 確認する前にこう言ったのだが、本当にあった。


「ホントにあるのね・・・」


「メニュー画面様に不可能なんてないからね」


 それぞれでメニュー画面を呼び出し、パシャリと写真を撮った。メニュー画面を閉じ、なおも地図を眺め続ける。


「やっぱり、医療都市って感じだね。ド真ん中に総合メディカルセンターっていうのがあるのと、至る所に病院があるよ」


「へぇ~、やっぱりそうなのね」


「なぁなぁ、そのメディカルセンターってやつ明日行ってみようぜ?」


「ん? そうだね」


 アミューズメント施設のマークも付いてるし、ふらっと寄れそうだ。


「う~ん、それもいいんだけど、」


 高松さんが2~3歩ほど前に出て振り返った。


「明日また、デートしましょうよ。前みたいに、前半と後半に分かれてさ」


 くっ、きたか。”たまにする”って言ってたもんね・・・。しかもストレートに”デート”って単語使ってきたし。


「おっ? マジで? いいじゃん、やろうぜ」


 もう変えられないだろうが、抵抗してみよう。


「でもメディカルセンター行くのはどうするの?」


「それぞれで行けばいいでしょ。2人でも4人でも一緒よ」

(もしかしてデートを後回しにしようとしてる? そうはいかないわよ)


「一番大きそうな施設だし、4人の方がよさそうな気もするけど」


 今の発言は失敗だったかも。デートではメディカルセンターに行かずに後で4人で行くとかになりそうだ。俺としたことが、使えそうなデート先候補を潰してしまうとは。


「大きい施設だからこそデートで行くのよ」

(メディカルセンターでデートが嫌なのかしら? 大村君からすれば行き先考える手間が省けるはずなんだけど・・・決めた。むしろ制限しちゃえ)


 高松さんはポン、と胸の前で手を合わせた。助かった、デートで行くように指示する気だ。前半後半どっちかな?


「じゃあこうしましょ。メディカルセンターには後半のペアで行くこと。こうすれば誰かが2回行くなんてコトにはならないよね」

(大村君と後半になったら、そうね・・・どうしよっかなー♪)


 誰かが2回メディカルセンターに行くリスクを潰しつつも、よからぬことを考えてそうな顔だ。


「交替はまた2時か?」


「そうね、そうしましょ。 それじゃあペア決め、グーパーそろったペアが前半ね。グっ、とー、パ!」


 一発で決まった。俺と花巻さんがグー、ほか2人がパー。


「んじゃまずはあたしが中野君とだ。よろしくね」


「おう!」


「えっと・・・」


 花巻さんの方を見ると、花巻さんもこちらを見ていた。なんという穏やかな微笑み。


「大村君も、よろしくね」


「あ、うん。よろしく」


 さて、話がひと段落ついたな。と思ったら、


「大村君、あたしには?」

(メディカルセンターはあたしとだよ?)


 高松さんが自身の顔を指差しながら聞いてきた。心の中で”メディカルセンターはあたしとだよ?”とか思ってそうな言い方だ。


「え、その時に言うんじゃダメなの」


「ダメー」

(そう言うと思ったわよっ)


「じゃあよろしく」


「よろしくね」

(”じゃあ”なんて付けるし・・・)


「そういやメディカルセンターは葵ちゃんとだな、よろしくな」


「うん。よろしくね、中野君」


 今度こそ話がついたな。


「じゃあとりあえず宿屋行こっか」


「そうね。どんな部屋なのかな~。期待しちゃう」


 俺も期待しているところだ。なんてったってこの街並み。これまでの宿屋クオリティを考えると、期待せざるを得ない。その代わりお値段も張りそうだけど。



 で、宿屋に向かって歩き出した訳だが、


「よぉ。久しぶりだなぁ? オームラぁ」


 ロージと愉快な仲間たちだ。


「えっと、どちらさまで・・・?」


「オイオイ忘れるなんてヒデェじゃねぇか。俺とオームラの仲だろ?」


「地面に縛り付けて、その数日後に狼に首くわえてもらって脅した仲だね。仲良くなるとか無理でしょ。じゃ」


「オイオイ待てって、相変わらず冷てぇなぁ」


 軽く手を向けて立ち去ろうとしたら手をつかんできた。いや、お前、俺に対して良い思い出ないだろ?


「何」


「テレビ見たぜぇ? Dr. スターリーが隠してたってのもまさかだったが、テメェらがあの奇跡を復活させてたとはなぁ? 大活躍じゃねぇか。ライバルとして鼻が高いぜ」


 いつからお前はライバルになったんだよ。


「ライバルなんていないけど」


「またまたぁ~。んなツレねぇこと言うなって」


 今度は肩を組んできた。鬱陶しい限りだ。


「はいはい。それじゃ、トレジャーハンター頑張って」


 体をひねってロージの腕をかいくぐり、自由の身になった。


「んじゃまたな。次どっちが大ニュース作るか勝負だかんな」


 知らねーよ。1人でやってろよ。

 ロージたちはそのままどっか行った。


「勝負だって、勝たなきゃね」


 高松さんがイタズラっぽい表情で言ってきた。この人、楽しんでやがる。


「いやあんなのとの勝負とかどうでもいいでしょ」


「でも負けたらもっとウザくなるんじゃねぇのか?」


「既に鬱陶しいでしょ。相手してらんないよ」


「ええ~~? あんなのに負けていいの? 大村君く~ん?」


「張り合ったらそれこそ負けだよ。早く宿屋行こ」


「ホントにツレないわね・・・んじゃ行こっか」


「あはは・・・」


 花巻さんは終始苦笑いだった。同情するなら変わって欲しいなー。ぜひ一度わけ分からん奴に付きまとわれる気分を味わって欲しい。が、さすがに花巻さんには酷か。



 宿屋に到着。高松さんが4人部屋が空いてるか聞いたのだが、


「申し訳ありませんが、4人部屋がございません。分かれていただくことになりますが、よろしいでしょうか」


 とのことだった。


「そっかぁ・・・。みんな、いい?」


「うん、いいよ」


「別に」


「まじか~。ま、しゃあねえな」


「じゃあ、2人部屋2つでお願いします」


「かしこまりました。お値段はお1人さま税込みで一泊6,000円になります」


 う、やっぱ結構するな。って消費税あんのかよ!


「プレイヤーの皆様はチェックアウトされない限りは自動的に連泊となり、料金も自動引き落としとなりますのでご注意ください」


 ほう、随分とシステマチックじゃないか。それに予約なしでも自動連泊って、部屋数の余裕も随分だな。

 設備説明とかの細かい話になったので高松さんに任せて歩き回り、ちょうど戻って来たタイミングで


「ありがとうございました~」


 手続きを終えた高松さんがこちらを向き直した。


「はい、こっち男子の分」


「どうも」


 物理的に近い位置にいた俺に渡してきた。カードキーだ。


「ドアで電子マネーみたいにピッてやれば入れるそうよ。忘れて外出ると入れなくなっちゃうから気を付けてね」


「うん」


 それは構わないのだが、2人で1枚なんだ・・・。こんなところでコスト削減しないでくれ。


「置く荷物もないし、ご飯いく? 部屋、8階だって」


 部屋の内装も気になるが、面倒だし後でいいや。


「そうだね。ちょっとお腹空いちゃった」


「俺も腹減って死にそうだぜ~」


「私も」


「花巻さんも空腹で死にそうになったりするんだ」


「え? あ、いや、そうじゃなくて、お腹空いたっていうのだけ、”私も”」


「あ、なるほど」


 分かってたけど、ついイジりにいってしまった。花巻さん相手には、マジでほどほどにしよう。


<減点1>


 高松さんからメッセージが来た。ついでに鋭い視線を向けられている。何の減点なんですか・・・。



 カードキーを四次元収納にしまい、外へ。


「何食べる?」


「なんでもいい」

「なんでもいいはナシね」


「「・・・」」


「プッ、ククク・・・」


 中野、笑うな。


「・・・貝料理専門店とかあるのかしら」


「焼肉にしよう!」


 高松さん、恐るべし。苦手食材とか教えるんじゃなかった。弱点教えたようなもんじゃんか・・・。


「だはは! 大村ウケる! でもいいな焼肉! こっち来てから一回も行ってなくね?」


「はあ、全く・・・あたしはいいけど、葵、大丈夫? 焼肉」


「うん、大丈夫だよ。家族でもよく行ってたし」


「そっか。・・・匠君、連れて帰らなきゃね」


「うん」


 適当に歩いてたらすぐに見つかった。俺は4人テーブルの通路側、隣が高松さんで向かいが花巻さん、対角が中野だ。俺は黙ってるだけで女性陣が取り分けてくれることに期待だ。男女平等主義者らしからぬ考えだが、動きたくないという本能には負ける。一応、性別ではなく性格的に、中野よりもこの2人の方が取り分けてくれる可能性が高いと言い訳しておこう。


 注文はタッチパネル。俺は来た物を食べる派、花巻さんも特に好みは無いそうなので中野と高松さんに任せることにした。


「”当店は税込み価格表示です”、だって。宿屋でも思ったんだけどさ、消費税あんの?」


「あるんじゃないの? 書いてあるんだから」


「マジかよ~。何でゲームの世界にまで来て消費税払わなきゃいけねぇんだよぉ~」


 同感だ。それに、俺ら、この世界の住民じゃないのに。

 ナチュレでは消費税なんて聞かなかったが、どうなんだろうな。シレッと全てが税込み価格か、そんなものは無いかのどちらかだ。後者であったと信じたい。


 気分転換に壁に貼ってあるチラシを見ると、”食べるのも飲むのもほどほどに! ほどよい食事と運動で、みんなでレッツ健康づくり!”と書いてあった。いいと思います、はい。


「葵、大村君、白ごはん要る?」


「あった方がいいかな。お肉だけって何かキツくて」


「私も」


「オッケー」


 それから肉やら野菜やらが運ばれ、中野と高松さんがトングを持って焼き始めた。焼いてくれるだけでもありがたい。俺は焼けてきたのを取って食べるだけでいい。実際そうしていたのだが、


「千尋ちゃん、中野君、私もやるよ?」


 さすが花巻さん、人に奉仕してもらうのに負い目を感じているようだ。俺も負い目は感じるよ? 行動に反映させないだけで。


「あ、いいのいいの、あたしこういうの結構好きだから」


「俺も大丈夫だぜ。ありがとな、葵ちゃん」


「そう? なら、いいけど」


 確かに2人とも割と楽しんでそうだ。それを感じ取ったのか、花巻さんもあっさり引き下がった。


「あー焦げちゃう焦げちゃう」


「やっべやっべ、さっさ食わねぇとな」


 真ん中らへんのが黒くなってきた。救出してあげよう。と思ったら、


「はい、大村君も食べて」


 高松さんが俺の皿にドッサリ乗せてきた。ついに念願の取り分けてもらうところまで来たぜ。


「わーい」


 遠慮なく、皿に盛られた分を食べ始めた。でも結構多い・・・。


 その後も網から直接肉を取る機会はなく、定期的に高松さんが皿に乗せてくる分を食べ続けた。ほどよく野菜を入れてくる辺りが高松さんらしい。肉ばっかり食ってた中野にも「ほら、中野君も野菜」とか言いながら取り分けていた。それはもう兄弟の面倒を見る母親のようだった。



「いや~~食った食った」


「あたしも、食べ過ぎちゃったかも」


「この世界って、食べ過ぎると太るとかあるのかな」


「・・・大村君、デリカシーって言葉知ってる?」

(知らないってことはないでしょうけど)


「知ってはいるよ」


「あくまで知ってるだけなのね・・・」

(やっぱそうくるか、う~ん)


「・・・でも、女の子に向かって太るとか言うのは、ちょっと・・・」


「う゛・・・」


 花巻さんに言われると、中々くるものがあるな。


「そうそう。葵、もっと言ってやって」

(葵ナイス! あたしが言うよりも効いてそうね。って、それも納得いかないんだけど)


「んじゃそろそろ宿屋に戻ろっか」


「あ、逃げた」


「はははっ、ウケる」



 で、宿屋に戻り、


「んじゃおやすみ~」


「また明日」

「おう」

「おやすみなさい」


 えっと、このカードをピッてやればいいんだな。ガチャッと音がして小さな緑のランプが点いたのでドアを開ける。


「うわ」


「ん?」

「あ~」

「・・・」


 高松さんの声も聞こえたから向こうもドアを開けたのだろう。


「げっ、なんか狭くね?」


「そんなこと言わないの。今度こそおやすみね、みんな」


 仕方がないので中に入った。ドアを開けた瞬間に分かった、この狭さ。部屋の面積の1/3は2つのベッド、1/6はトイレと風呂の小部屋、残りの半分は空きスペース。壁沿いに置いてある長机は、無い方がマシなレベルで奥行きが短い。


「やっぱ狭ぇ~」


 ナチュレ、それもウォーターランドと比べても土地が高いようだな。医療機関が充実してるからか、そもそもエコノミア自体が高いのか。


「東京もこんなもんでしょ? むしろこれまでの宿屋が凄かったんだよ。寝るだけだからいいけど」


「おめぇは良くそんな割り切れるな。てか俺ホテルとか使ったことねぇし」


「僕もそうなんだけど、なんとなく、相場はそんなもんでしょ。先お風呂いい? その間トイレ使えなくなるけど」


「マジ? んじゃ先トイレ使わしてくれ」


 そんなこんなで寝る準備は万全。歯磨きももちろんした。メッセージ機能で中野と高松さんが繋がってる可能性もあるから安心できない。明日は、まず、そうか、時間決めてねぇー。


<花巻さん、今、いい?>


<うん、大丈夫。明日、何時にするのがいいかな>


 う~~ん。そもそも行き先が決まってない。


<う~~ん。あんまり早くてもドコにも入れないからねぇ>


<そうだよね・・・>


 10時までは大抵の施設は開かない。でも朝食は9時まで。あとは適当にうろつくしかないか。ん、待てよ・・・。


<レベル上げ、やっちゃう? 7時ぐらいに起きて>


<え・・・いいの?>


 ここで”いいの”って聞いてくる辺り、やはりレベルが遅れてることを気にしていたか。花巻さん1人ではレベル上げは無理、みんなで行っても差は開く。ならば、これしかない。


<別に。むしろ大歓迎。休みだからって全部休憩に回す必要はないでしょ。やりたいことをやろうよ。何してたか聞かれるだろうから街もぶらつくけど>


<うん、そうだね。 ありがとね、大村君>


<どういたしまして。じゃあもう寝るから明日、よろしく>


<私の方こそ、よろしくね。おやすみ>


 よし話がついた、寝よう。俺と花巻さんの性格上、公園で散歩するぐらいならレベル上げに行った方がいい。それも立派な、親睦を深める活動だ。

 あ、HPとMP減るからレベル上げ行くの普通にバレるじゃん。でももう決まったししょうがないね。


<明日、しっかり葵を守ること>


 あ、もうバレてるわ。おそらく花巻さんが、高松さんは”デート”と言ったのにレベル上げに行くのが後ろめたくなったのだろう。でもこれで心おきなくレベル上げに行ける。頑張り屋さんの花巻さんのために、俺も頑張りますかね。


次回:レベル上げデート

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