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4人の魔法使いの冒険  作者: 藤見倫
第2章:スターリー神殿の謎
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第76話:新作スイーツ

 翌朝、6時過ぎに目が覚めた。早く寝た分は早く目が覚める訳で、結局は1日の半分以上起きてることになるのだが、みんなが起きるまでは1人でいられる。朝活、最高。特に何か活動する訳じゃないが。


 枕元に置いたペットボトルのお茶を一口飲み、トイレへ。戻って来て、ソファーに座ってひと休み。


「ふぇ~~~~っ」


 小さめの声で溜め息。本当に参ったな、高松さんには。ほぼ四六時中一緒にいるとは言え、ものの2週間でここまで見透かされるのは、脅威だ。母や姉も諦めた俺の矯正を、マジでやるつもりか。

 俺のクズ(りょく)と高松さんのオカン(りょく)、どっちが勝つか見ものだな。


 今日はまずシタンさんの新作スイーツを試食させてもらって、そのままホワイライトを経由してエコノミアにGOだ。


 新作スイーツ、どんなのがくるんだろうな。シタンさんの腕にもよるが。まあもしハズレでも、その辺のパティシエが話題の魔法使いをモチーフにして何か作った、ぐらいになるだけだからいいや。

 問題は、俺たちの知名度。スターリー神殿の件は話題性が大きいのか、おとといエリオ王子と話しているところや昨日のインタビュー映像がテレビやネットで出回っているようだ。名が売れるのは良いことなんだが、妙に有名になると面倒事に巻き込まれそうなんだよな。幸いにして、4人とも顔自体はそんなに特徴的じゃない。魔法使い4人組の印象の方が強いのだろう。時と共に忘れてくれることを祈る。


 ソファーに座ったまま考え事をしていると、そのまま眠ってしまったようだ。


 --------------------------------


 ピピピピッ、ピピピピッ。


 アラームの音で目が覚めた。


「あ、起きた」


 反対側のソファーに座っていた女性陣の目がこちらを向いている。


「んお~~~~~っ」


 アラームの主、中野の声だ。8時、朝食の時間だ。


 各自で運んできた朝食を食べきり、テーブルでくつろぐ。ビュッフェだかバイキングだか知らないこの形式は、苦手食材が多い人にやさしい。元気な若者にもやさしく、中野は朝っぱらから豪快だ。残さないんだから偉い。


 さて、ここいらで話しておかなければならないことがある。


「ねぇみんな」


「ん? どうしたの? そんな改まって」


 一同の視線が俺に集まる。


「薄々気付いてると思うけど、これ、夏休み中には終わらないよ。普通に10月とか11月に食い込むことになるだろうけど、大丈夫?」


「「ああ~~」」


 3人がニヤニヤしながらお互いを見合っている。


「ふふっ」


 さらに花巻さんが手を口に当てて笑う。なんだ?


「それ、昨日も話したよ。大村君が寝た後だけど」


「な、なるほど・・・」


「どこの誰なのかしらね~、仲間とのコミュニケーションよりも睡眠を優先したのは」


 くっ、この人・・・。でも負けない!


「へぇ~、そんな不届き者がいるんだ。一体どこの誰なんだろうね。全く、信じられないよ」


「・・・・・・」


「・・・・・・」


 何この沈黙。次に言葉を発したら負けみたいな空気になったが・・・仕方ない、降参しよう。


「で、実際どうなの? 大丈夫なの?」


「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」


 3人でこっち見ないで!


「っ、ふふっ♪ 大丈夫よ。葵はもちろんだし、あたしもちゃんと親には話してきたし、中野君は”まあ何とかなるだろ”って。だから後は大村君だけ、どうなの?」


 大丈夫だよね? というのを口調に込めて聞いてきた。


「もちろん僕も大丈夫だよ。1億円あれば学校に行く必要なんてなくなるんだから」


「そんなはっきり言わなくても・・・もしダメだったらどうすんのよ」


「いやダメになるなんて前提はおかしいから」


「おかしいのはどっちよ・・・いつも理詰めなクセに何でこんな時だけ頭おかしいこと言うのよ・・・」


 後半はボソボソと、なおかつ聞こえるぐらいの声量だった。


「そりゃ頭ぐらいおかしくもなるよ。おかしいことだらけの世の中で生きてるんだから。頭以外のどこをおかしくすればいいのか分からないね」


「どこもおかしくしないでよ!」


 それは無理な願いだ。早いとこ俺の矯正を諦めてくれ。


「話を戻すけど、うまくいけば1億円だよ? 失敗すればそれなりに人生に影響が出るのは当然だよ」


「せめてその影響を抑える努力はしなさいよ」


「じゃ、うっかり忘れちゃったってことで。そんなことより、みんなオッケーってことでこのまま冒険を続けよう~」


「うっし! まあ学校とか何とかなんだろ! みんなで頑張ろうぜ!」


「はあ・・・」


「そう、だね・・・」


 気が合うじゃないか中野。女性陣は呆れてるようだがお前は心の友だぜ!



 シタンさんの新作スイーツを待つ間、レベル上げをしに行った。せっかく街の南側で宿をとってたし、もう一度南の街道だ。


 街から離れないようにして、今度はMPが枯渇するまで戦った。これからエコノミアを目指すので疲れないように1回だけにしておいて、宿屋回復後に”クロスポイント”へ。まだ11時前だが、ウロついても仕方ないのでシタンさんがいる洋菓子屋さんで待たせてもらおう。百貨店の大きなビルの1階の一角に、それはあった。客入りは上々、結構な人気店のようだ。


「いらっしゃいま・・・あっ! てんちょーー! 魔法使いさん来ましたよーーー!!」


 百貨店的お出迎えかと思ったら、俺たちを見た途端に「てんちょーー!」と大声を出してマダムたちの視線を集めた。装備屋のプロ対応も良かったが、こういうのも嫌いじゃないです。てかシタンさん店長?


「あ、みなさん。ホントに来てくれたんですね、ありがとうございます。ささ、こちらへどうぞ」


 シタンさんに導かれ、裏方へ。他の客も見てる前で特別待遇されるのは嫌なんだが、正面から入ったのは俺たちだ、仕方ない。


 通された先で、テーブルの上の銀の皿にドーム型の蓋がかぶせてあった。サイズ的にホールケーキのようだ。


「では早速。こちらが、当店の新商品でございます」


 シタンさんがドーム型の蓋を外す。その中には、


「「「おおーーっ」」」

「スゲェ! 何だこれ!?」


 そのケーキの第一印象は、星空と城。ホールケーキ本体は白が基本、外周1/3周にかけて高さ20センチほどの濃いブラウンのチョコの壁があり、あの星空を彷彿とさせるように白いパウダーが散りばめられている。

 ケーキ中央にはチョコの壁よりも低めの、ウエハースを組み立てて作ってある西洋風の城。おそらくスターリー神殿をイメージしている。本物はもうボロボロなのだが、元々はこんな感じだったんじゃないかと思えるような、そんなデザイン。その城の前に、魔法使いの恰好をした雪だるまが4つ、城の頂上の三角帽に向かって杖を掲げている。


「す、ごい・・・」


 花巻さんがそう言うと、


「えっへへへっ。おとといの奇跡の瞬間をイメージしてみました」


 シタンさんは鼻の下を指でこすりながら照れ臭そうに応えた。


「ささ、どうぞ食べてみてください」


 そうは言われても、なんか食べづらい。


「う・・・」


 高松さんのためらう声が出た。だがここで遠慮しないのが俺。


「それじゃあ、いただきま~す」


 雪だるまを1つ摘まんで、丸ごと口に放り込んだ。


「あ、それからいく?」


 砂糖菓子だ。杖と帽子とローブはチョコっぽい。当然のことながら、噛むとゴリゴリ音が鳴る。


「音鳴らすのやめてよ。なんか、ほら」


「いいじゃん4つのうち1つは自分なんだから。美味しいよ」


「そりゃそうなんだけど・・・」


「あっはははっ。ホントはこれに皆さんの似顔絵を書くつもりだったのですが、普通の雪だるまにしといて良かったかも知れませんね」


 全くもってその通りだ。自分の似顔絵のお菓子を不特定多数の人に食われるとかぞっとする。


「んじゃ俺も。・・・ん~~ウメぇ!」


 中野も雪だるまを摘まんで口に運んだ。


「あたしは、お城からにしようかな」


「私も」


「でもそれ、ただのウエハースだよ? せっかくシタンさんが作ってくれたのにぃ」


「あ、あとで食べるわよ」


「雪だるまさんたちが2人に食べて欲しそうにしてるよ?」


「やめて!」


「お、大村君だって、そのお菓子だけで、ケーキの方は食べてないじゃん・・・」


 珍しいな、花巻さんがそんな言い方をするとは。よほど、この雪だるまが食べづらいのだろう。


「それもそうだね。シタンさん、ナイフありますか?」


「ああ、すみません。切るのも私の方でやりますね」


 小皿に切り分けてくれた。ウエハースと、チョコの壁の欠片もいくつか添えて。女性陣には雪だるまもセットにした辺り、この人も隅に置けない。もちろん出されたものは食べるよね? 2人とも。


「フルーツはないかぁ」


「あ~、やっぱりあった方が良かったですよね・・・。ちょっと、上のパーツにコストを掛けすぎてしまって、できる限りリーズナブルに提供しようと思いまして」


 質の良いものを使っているのだろう、チョコもウエハースも砂糖菓子も、その辺のものでは無さそうな美味さだ。その煽りを受けて果物を入れなかったようだが、俺にとってはご褒美です。


「あ、いえ、そういう意味じゃなくて、この子がフルーツ苦手なので、あったら意地でも食べさせようと思ったのになあって」


「あっはははっ、そういうことでしたか。普段からイタズラばっかりなんですね。あなたも隅に置けませんねぇ」


 待て、”普段から”って、俺この場でイタズラとかしたか?

 でもせっかくだから乗るか。


「いや~それほどでも」


「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」


 だから揃ってこっち見ないで!

 視線が俺から離れない中、気を取り直してケーキ本体を食べることにした。


「んん~~~。おいひい」


 いや、何だこれ? 信じられないほど美味いんだが。こんなに美味ければフルーツ無しでも勝負できる訳だ。都会のド真ん中に店を出せて繁盛もしてるのも納得だな。


「んじゃアタシも。・・・んん~~~~っ! 葵、凄いわよ!」


 高松さんは目を見開き、空いてる方の手を上下に振りながら興奮気味のご様子。


「すごい、美味しい・・・」


「ヤベぇ! 何だこれ!? マジでケーキなのか!?」


 ケーキだと思うぞ? いや、これ、まじ、やばいな。俺の語彙力もヤバくなったわ。この人は何を思い悩んでて水路に落ちたんだ? ケーキの土台だけでも成り立つぞ、この店。土台なんて呼び方をするのも失礼に値する。


「良かったぁ、喜んでもらえて。実は、スポンジケーキとクリームにはちょっと自信があったんですよね」


 シタンさんが謙遜するように言う。これで自信ないとか言われたら世界中のパティシエが泣く。パティシエールも泣く。


 コーヒー(こっちは市販品)も飲みつつ、小皿にもらったケーキを完食。雪だるまを食べようとした時の女性陣の引きつった表情が印象的だった。


<覚えときなさいよ>


 絶対に忘れないよ。さっきの高松さんの顔。



 さて11時半、銀の大皿に残っている方はスタッフが美味しくいただくそうなので、オイトマさせてもらうことにした。


「今日は美味しいケーキをありがとうございました」


 高松さんがそう言ったのに合わせて、他3人もお礼を並べた。


「いえいえ、こちらこそ、おかげさまで良い新作ができました。今度ウォーターランドに来た時はぜひ買って行ってくださいね」


「はい♪」


 シタンさんのお店を後にし、歩き出す。


「お昼、ホワイライトで食べましょうか」


「んだな、ケーキ食ったばっかだし」


 水上バスに乗り、”ウェステストパーク”へ。そのまま西門から外に出た。さあ、いよいよエコノミアに向けて出発だ。どんなことが待ち受けているか、楽しみだ。



 Lv:大村45、高松44、中野44、花巻33

 HP:大村232、高松229、中野229、花巻196

 MP:大村320、高松315、中野315、花巻260

 魔攻:大村192、高松284、中野284、花巻260

 装備ランク(近接):全員D

 装備ランク(射撃):全員D

 装備ランク(魔法):大村B、高松B、中野B、花巻C


次回:突入、経済大国エコノミア

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