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4人の魔法使いの冒険  作者: 藤見倫
第2章:スターリー神殿の謎
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第75話:お約束展開

 スノーウィーン行きのリベンジと、サウスポート行きのモンスター確認の帰り、人が水路で溺れかけている場面に遭遇した。何このお約束展開。


「大村君!」


「あ、うん」


 あっけに取られている間に高松さんに先を行かれた。走りながら杖をグリーンスタッフに替えてそれに乗り、風を起こして助けを求める人のもとへ。


 高松さんが水面でバシャバシャもがく人に手を差し延べる。お互いに何度か掴もうとして空振りした後、その手がつながれた。すぐに俺も到着し、2人体制で引き上げた。濡れているからか、重い。上昇気流を強めにして、そのまま横移動。そして陸地に到着。


「大丈夫ですか?」


 水を飲んだのかゲホゲホ言って苦しそうにする人に高松さんが心配している様子で声を掛ける。助けたのは、30半ばぐらいのポッチャリ系お兄さん。お世辞にもイケメンとは言えないが、さすが高松さんは優しい。


「あ、はい、大丈夫です。ありがとうございます。・・・ぶぇっくし!」


 全身が濡れて寒いのか。仕方ない、俺も紳士の片鱗をお見せしよう。

 魔法で火をおこし、暖を取れるようにした。


「あ、ありがとうございます・・・」


 お兄さんは遠慮することなく、炎に手をかざしたり濡れた服を近づけたりした。そうそう、下手な遠慮は要らないよ。


「大丈夫か?」


 中野と花巻さんも駆けつけて来た。辺りには、素通りしていく人が半分と、立ち止まって様子を見ている人半分、


「ねえあれ、テレビに映ってた人たちじゃない?」

「あーそうかも。スターリー神殿のアレ復活させた人たち」

「あ、マジだマジだ! ホラこれ今朝のニュース、絶対そうよ!」


 水路に落ちた人の救出劇を見ていると言うよりは、昨日の出来事で脚光を浴びた人物の登場に足を止めているようだ。


「なんか目立つんで、場所を変えましょうか」


「あ、はい。ボクん家でいいですか? 割と近いんで」


「いいですよ」


 また空を飛び、野次馬たちの頭上を越えて移動。助けたお兄さんの案内で、2~3分ほどで目的地に到着。さしてボロくないアパートの一室だ。



 お兄さんがシャワーを浴びている間、部屋で待つことに。助けてもらったとは言え、不用心すぎないか?


「こういうイベントはもっと序盤であるものだと思ってたよ」


 とりあえず思い付いたことを言ってみた。


「まあでも、街の人たちは普通に生きてるんだから、川に落ちたりもするわよ。あたしはこれぐらいでいいかな~。グリンタウンじゃいきなりヤクザと戦うことになったし」


「だな」


 そこからは高松さんと中野の会話になった。フェードアウトさせてもらおう。確かに、グリンタウンの件はしんどかったな。1人とか4人相手ならまだしも、あの大群だったからな。最初の街ぐらいもっと平和に過ごしたかった。


「すみません、お待たせしました」


 お兄さんがシャワーから上がってきた。Tシャツ姿だとちょっと出てるお腹が目立つ。本人は気にしてなさそうだけど。どんな言葉を掛けようか考えていると、


「さっきは災難でしたね」


 高松さんが言葉を発した。


「あっはは・・・ホントに参ったよ」


 お兄さんは少し恥ずかしそうに、こめかみ辺りを掻いた。さて次は俺の番だ。素朴な疑問をストレートに。


「どうして落ちちゃったんですか?」


「やっぱり気になるよね。ホントいい年して・・・。ボクはパティシエをやってるんだけど、どうも上手くいかなくてね、あれこれ悩みながら歩いてたら踏み外しちゃって」


 駅のホームから転落、的なやつか。東京でも酔っ払いならよくある話だが、考え事してて落ちるって・・・よっぽど悩んでるんだろう。この人、なんか、苦労しそうな性格っぽいし。てかそのナリでパティシエっすか。あ、いや、パティシエだからこその体格か。


「それにしても・・・」


 お兄さんは俺たち4人を感心した様子で見渡した。


「本当に、魔法使いの4人組なんだね。ボクもニュースで見たよ、まさか昨日奇跡を起こした人に助けられるなんてね」


「あはは・・・」


 高松さんが苦笑い。


「そのうち、”魔法使い4人とか最強じゃん!”って言われるようになりますから」


 俺は自信を持ってそう言った。


「あっはは。さすが、奇跡を起こした人は違うね」


 奇跡を起こす前から言ってたけどね。


「そうだ!」


 お兄さんは、ポンッ、と左の手の平に右手の拳を乗せる形で手を叩いた。


「新作スイーツは4人の魔法使いをモチーフにしたものにしよう! 」


 悩みは、新作が中々できないことだったのだろうか。


「あはは、結構面白そうですね」


 売れれば魔法使い4人組のプレゼンス向上にもなるしな。


「へえ。大村君、そういうの嫌いそうだけど」


「別に。僕らの顔をした砂糖菓子が乗るとかじゃないでしょ」


「え、ダメだった?」


 そのつもりだったんかーい。


「せめて帽子とか杖にしてください」


「さすがにあたしも、自分の顔のスイーツはちょっと・・・」


「俺は別にいいけどな~~。なんか有名人になった気分だし」


「私も、無理、かも」


 花巻さんの口から”無理”とはっきり拒絶が出ましたよ。


「じゃあ3対1で反対多数だね」


「ちぇえっ」


 多数決、便利。自分が多数側に回るとこんなにも素晴らしいものなんだな。


「そっかぁ、分かったよ。じゃあその魔法使いの杖とか帽子をチョコで4つずつ作って・・・よし、いける!」


 お兄さんの中で新作スイーツのデザインが固まったようだ。


「いやぁ、ホントにありがとうございます。助けてもらったばかりでなく、新作のアイデアまで頂けるなんて」


 いや新作アイデアは提供したのではなくお兄さんが勝手に思い付いたのだが。


「あ、ボクはシタンって言います。早速明日新作を作ってみるので、ぜひ味見に来てください! 場所は・・・」


 地図を描いて渡してくれた。


「午後にはホワイライトに向かうので、できれば正午までにお願いします」


 できれば10時には出発したかったのだが、さすがに酷だと思ったので12時にした。


「はい喜んで!」


 なぜ急かしたのに喜ぶのか。


「よーし、そうと決まれば早速試作だ。いっくぞ~~」


 明日やるんじゃないのか。今からやるんなら10時で指定すれば良かった。


「では僕らはこれで」


「はい、明日、絶対来てくださいね」



 パティシエのポッチャリお兄さんと別れ、外に出た。そのすぐあと、お兄さんも走ってどっか―――たぶん店―――に行った。そんなに急いで、また水路に落ちないでくれよ。


 さて、もう7時半だ。


「明日の朝はのんびりできるね。新作スイーツも待たなきゃいけないし」


「あら、ちゃんと行ってあげるんだ」


「人を何だと思ってるの・・・」


「自分の言動を振り返ってみなさいよ」


「やだよ。そこまでしなくても分かるから」


「余計にタチ悪いじゃないの・・・」


 今度こそ、宿屋に向かった。”アクアリウム”停留所のすぐ近くにあった。

 女性陣も4人部屋に慣れたのか、広めの4人部屋を取ることになった。お値段は4人分で15,000円。まあ同じ部屋の方が行動しやすいし、毎日選べるから女性陣の判断でその場で決めてもらえばいいや。ウォーターランド最安値(1人1泊3,000円)の宿屋でも風呂とトイレが2個ずつあったんだ、ここも当然のようにそうだった。

 ただ、たまには1人で寝たい・・・。でも中野と2人よりはマシか。


「新作スイーツ、楽しみね」


「どんなのになるんだろうな」


 中野の話し相手が俺以外にもいる、最高。


「甘党な大村君としてはどうなの?」


 俺に話しかける人物も増えた、無念。ていうか俺は甘党ではない。甘いのを食べることもあるだけだ。


「果物がなければ問題ないよ」


「そういえばそんなのあったわね・・・」


 ”そんなの”とは失礼な。果物の有無はデザートにおける最重要事項だ。


「おっふろ~」


 そう言いながら俺は立ち上がり、風呂へ向かった。1人になれる場所が、まだある。あんまり長居できないけど。



 風呂から上がると、3人はテレビを見ていた。クイズ番組のようだ。


「うっし俺も風呂入ろ」


 大して面白くないのか、中野が俺と交替で風呂に向かった。俺はまず洗面台に向かい、歯を磨きながらリビングへ向かった。


「感心感心♪」


「ふぁんほはぁみあいふぇうお」


「歯ぁ磨きながらしゃべらないで!」


 じゃあ歯ぁ磨いてる人に話しかけないでくれよ・・・。

 5分ほどで磨き終わり、ベッドに向かった。


「じゃあおやすみ」


「は?」

「え?」


 ん? どうしかたか?


「もう寝るの?」


「え、でも、ご飯食べて、お風呂入って、歯も磨いたよ?」


「いや、そりゃそうなんだろうけど」


 いつも、どうしてたっけ。

 ホワイライトに着いた初日、みんなクタクタで寝た。

 次の日、Dr.スターリーの部屋に連れて行かれたことで疲れて寝た。

 その次の日、高松さんから地獄の歯磨きを受けて寝た。

 その次の日、奇跡の光を復活させて、やっぱりクタクタで即寝た。

 そして今日、記者会見とか水難事故とかはあったが、体力にはまだ余裕がある。


「そういえばホワイライトに行ってから、大して疲れてない状態で1日が終わるのは初めてかもね。僕は基本やることなければ寝るから。おやすみ」


「いつもそうなんだ・・・中野君、可哀想に」


 じゃあ高松さんが相手してあげるといいんじゃないかな。中野も喜ぶと思うよ?


「そんなの知らないよ」


「今日はあたしたちもいるんだけど」


「それも知らない」


 女子がいることも睡眠時間を削る理由にはならない。


「もう。せっかく疲れてないんだから、たまにはみんなでのんびりしましょうよ」


 まさかストレートにそう言ってくるとは。俺の攻略法がバレてきたか? だが、


「でももう8時過ぎたよ? 朝起きたのは8時だから1日の半分も起きてるんだよ? 半分は休まなきゃエネルギー減ってっちゃうよ」


「いや逆に半分も寝る気? もったいないじゃない」


「睡眠時間を削る方がもったいないよ」


「大村君は何のために生きてるの・・・」


「今日も気持ちよく眠ることができる幸せを噛みしめるためだね」


「はぁ・・・ホンット何のために生きてるの・・・」


 あれーおかしいなー。答えたはずなんだけどなー。


「こういう奴だからしょうがないね」


「しょうがなくない! ・・・あっ。寝ちゃったし」


 俺はベッドにヘッドスライディングしたあと布団に潜り込んだ。


「ま、まあ。大村君にも生活習慣があるんだよ、きっと」


 花巻さん優しい~~!

 人が気遣いのない行動をとっても”何か理由があるのかな”とか思うタイプだな。その期待に応えられないのが残念だ。人とテレビ見たり喋ったりして過ごすのが面倒なだけだ。


「優しいのはいいけど、あんまり甘やかしちゃダメよ」


 ぶーぶー。


「大村君いつも頑張ってるから、あんまり厳しくするのは可哀想だよ」


 そうだそうだ!


「でも、あの子いま絶対”花巻さん優しい~~!”とか思ってるわよ。さすがにまだ寝付いてないでしょうから」


 バレてるし。


「で、今、”バレてるし”って思ってるわ」


 やばいマジやばい。今日はこのまま乗り切れても今後どんな手を打ってくるか分かったもんじゃない。

 高松オカン、まじパないです。既に実の母を超えてるよ・・・。


「や、やめてあげようよ。こんな話してたら寝付けないよ」


 花巻さん、まじ、聖女。涙が出そうだ。


「まあ、今日はもういいけど。・・・あと葵、大村君は大丈夫だろうけど、その優しさ、ホントに気を付けないと付け込まれちゃうわよ」


 それには同感だ。鬼の高松さんと聖女の花巻さん、良い感じでバランスが取れているのだが、花巻さんの優しさは逆に心配になるレベルだ。


「う、うん・・・気を付ける」


「あたしもオフロ入ろっと。・・・大村君おやすみ♪」


 足音が近づいてきて「おやすみ」が飛んできたが、とても返事はできなかった。


<その無言、さっきのは図星って受け取るわ>


 う・・・。


<あたしが鬼で、葵が女神ってところかしら>


 残念、聖女でした。半分しか当たってないから50点だね。でも50点取られた時点でヤバいんだよなぁ・・・。


 パタン、とドアが閉まる音がしたのを確認し、布団から出た。


「あ、やっぱり起きてたんだ」


「うん、さすがにあの体勢では眠れないからね」


「さっきの、聞こえちゃってたよね。・・・ごめんね」


「いや別に」


 会話そのものは気にしてないのだが、高松さんに本性を見抜かれつつあることがヤバい。


「高松さんの言ってた通り、あんまり優しくし過ぎると付け込まれるから気を付けてね」


「・・・やっぱり、そうだよね」


 花巻さんは、はにかむように苦笑い。


「んじゃおやすみ」


「おやすみなさい」


 今度は横になって、しっかりと布団をかぶって就寝モードに入った。電気は消せないから、顔にタオルを重ねて夢の中へ・・・。


次回:新作スイーツ

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