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4人の魔法使いの冒険  作者: 藤見倫
第2章:スターリー神殿の謎
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第72話:記者会見とインタビュー

 翌朝。

 この世界に来て、初めてテレビを付けた。今朝のニュースは星空一色。


【昨夜突如として、スターリー神殿から上空に向かう光が現れ・・・】


 テレビのアナウンサーがそんなことを言っている。朝食まで30分あるし、しばらく見てるか。


「いや~~凄ぇことしたんだな俺ら」


「ま、そうだね」


【この奇跡の星空はホワイライトのみならずエコノミアやユニオンも含めて世界中で観測され・・・】


 え? いま何て言った?


 テレビの画面には、明らかにホワイライトでない街の空に、昨日のあの星空が広がっているのが映し出されていた。しかも【30年前はホワイライトでしか見られなかっただけに大きな騒ぎとなっています】とか言ってるし。


「凄い・・・本当にに・・・」


 花巻さんがそう漏らした。


「大村君が願ったからじゃない? 世界中の人が見れるようにって」


「そう、かもね・・・」


 これは、驚いたな・・・。


「やったじゃん」


 そのまましばらくテレビを見ていると、


【この星空との因果関係は不明ですが、世界各地の病院で、意識不明の状態にある患者が目を覚ます、失明患者の目が見えるようになるなどの、まさしく奇跡とも呼べる現象が起こっています】


 ・・・は?


【日が昇るとまた再発したそうですが、明らかに”奇跡”の前よりは状態が良く、命の危機に晒されていた人も回復傾向にあるそうです。これに対し世界中の医師が「医学では説明できない」と述べており、「現在の症状に合わせて治療を行うのみ」としています】


 えっと・・・どゆこと?

 4人そろって、テレビの前で固まっていた。テレビから出てくる声だけが部屋に響く。


「・・・もしかして、」


 花巻さんが口を開いた。見ると、左目から涙が流れていた。


「大村君が、”世界中の人に”って願ったから」


「え・・・」


「まさかっ!」


 大きな声を出したのは高松さん。


「全ての人が星空を見られるように、・・・意識が戻ったり目が見えるようになったって言うの・・・?」


「は・・・? いや、そんなことが」


【昨日は大雨だったんですけど、急に止んだと思ったらすっごい星空で・・・】


 テレビは、街角インタビューの場面に切り替わっていた。雨が降る場所もあるんだなというのは、一瞬で意識の外に出た。昨日の夜は、病気も天気も無視して、何が何でも世界中の人が星空を見れるようになったらしい。


「大村君っ、凄い!」


 ガッ、と高松さんが後ろから俺の両肩をつかんできた。中野もいるからやめて欲しいんだが、うまく頭が働かない。


「正直、事態が呑み込めてないんだけど・・・」


「何言ってるのよ、たくさんの人の命が助かったんだよ? 大村君の一言で」


 両手で肩を揺さぶられ、右から高松さんが肩を覗かせてくる。涙を隠そうともしない。


「分かった、分かったから離れて」


 ほどなくして離れてくれた。


「ホントに、奇跡じゃないの・・・こんなの」


「こんなことが、あるんだね・・・」


 女性陣2人が、指で涙を拭いながらテレビを見ている。


「これから会見だよ? それまでに持ち直しといてね」


 正確には、Dr. スターリーの謝罪会見の後、ルイナさんと俺たちにインタビューが入る。昨日エリオ王子と話してた姿が何度もテレビで流れてるし、出ないって手は無いだろう。


「なんでそんな平気でいられるのよ・・・」


 そんなこと言われてもな。命を助けたといっても間接的だし、いまいち実感が湧かない。


「そうだぞもっと喜べよ大村!」


 中野を見ると、両手で激しくガッツポーズしていた。いやそんな、体育祭優勝ぐらいのノリで喜ぶ神経も中々だと思うんだが。


 朝食の時間を迎える頃には3人とも落ち着き、無事に食べに行くことができた。もちろん女将さんとも似たような会話を繰り広げることになったが。


 --------------------------------


 会見の会場、ホワイライト市庁舎に到着。大きな部屋が無く、天気も良いということで、市庁舎建屋前の広場にセットが組まれていた。聞けば、雨はどの街でも降るらしいが、土地や時期によって降りやすいとか降りにくいとかあるとのこと。


 会見は1時間後の10時スタート、主役と来賓には建屋内に控室があるそうなのでそこで休ませてもらうことにした。控室の窓からは外の様子も見れた。


 報道陣は既に集まっていた。昨日エリオ王子が数を制限すると言っていた通り、ウジャウジャになったりはしていない。50人いるかどうかだ。報道陣用の場所とは別に、ホワイライト町民専用の客席も用意されている。これも50人分ぐらいか。


「Dr. スターリー、正直に全部話すのよね」


「そう、言ってたね」


「どう思うのかな、ずっと調査をしてた学者の人たち」


「さあ、分からないや」


 真実を隠され、解明されているはずの神殿の調査を何年も続けていた。神殿の調査をすること自体が個人の意志だから、別に犯罪をしていた訳じゃない。研究成果を表に出すタイミングも戦略の1つだと、ルイナさんも言っていた。全ての人がそう割り切れるとは思えないが、ちゃんと自分で調べていれば気付けたものだから、ここでふて腐れて学問から離れるようなら、そんな奴ら必要ないとDr. スターリーは言うだろう。


 ガチャリ。


 ドアが開く音がした。現れたのは、


「ルイナさん」


 とその後ろにリリーさん。同じ控室に案内されたようだ。さすがにDr. スターリーたちは別の部屋だが。


「おはようございます、みなさん」


 昨日と特に変わらない様子で挨拶をしてきた。4人それぞれ挨拶を返すと歩き出し、空いている椅子に座った。


「見届けましょうか、Dr. スターリーを」


「ええ、そうね」


 その後は、今朝のニュースのことなどについて話して過ごした。途中、市庁舎の職員から会見後のインタビューについての説明があった。Dr. スターリーの話とそれに対する質疑がひと段落したら、ルイナさん、俺たちの順で1分ずつぐらいのインタビューが入る。

 このインタビューは、俺たちの旅の目的、花巻匠を探すことに対して大きな意味を持つ。花巻さんは最初、苦手なのか遠慮すると言ったのだが、花巻匠が顔を知っている人物が出る必要があると言ったら目の色を変えた。

 プレイヤーの能力については隠すことにした。俺の理想、全ての人が真っ直ぐに、には反するのだが、メッセージやマップ機能について知られると勝率が下がる。今回も、仲間が行けば他のメンバーも分かる、というのがあったから地下6階の存在が分かった。だからここで能力を伏せるのは戦略。理想の実現よりも、この旅の成功が優先だ。その両立ができないのは、俺たちの力不足だ。


 9時45分、職員に呼ばれて外へ。

 前の方の左側、来賓席に案内された。セットされたステージの上にいるDr. スターリーたちがよく見える。パイプ椅子に長机。左から、ムーン、スター、スターリー、サンの順だ。マイクはDr. スターリーの所だけに置かれている。


 しばらくはガヤガヤしていたが、職員のアナウンスで静まり返った。いよいよ、始まる。



「昨日、30年ぶりに”奇跡の光”が蘇った。だがこれは、4人の魔法使いによる業績だ。むしろワシは、みなに謝らなければならないことがある」


 ここで軽くどよめきが起こる。


「まず、30年前、”奇跡の光”を出現させたのはワシで、その翌日に封印したのもこのワシだ」


 ここで大きなどよめき。もはや話を続けられない状態になったが、職員が慌てて「お、お静かにお願いします!」と何度かアナウンスすると、それから15秒ほどで収まった。


「その理由だが、この封印を解くほどの人物が現れるのを期待していたからだ。今、多くの人間が学問に携わっている。だが、既知の情報を信じ込み、未知の部分だけに専念する者が多いことが気になっていた。だからワシは、地下5階までの情報しか調査報告に書かず、さらには地下6階の階段も塞いで簡単には辿り着けないようにした」


 それもそうか。いくら地下5階が回転する地面で厄介だとは言え、しらみ潰しで歩けば階段は見つかる。


「あの神殿は、地下1階から6階までの全てのフロアがほぼ同じ形と面積だ。ただし、完全な長方形をしている地下1階と地下6階に対して、その間のフロアは四隅の角が丸みを帯びている形で欠けている。その欠けている部分の奥には、地下6階から真上に向かって光が放たれているのだ」


 ここまで話した段階で、Dr. スターリーはフーーッ、と息を吐いた。


「調査報告には神殿の見取り図も載せなかった。だから、それを鵜呑みにして地下5階だけを調べるだけでは、神殿の構造に気付くことができなかったはずだ。だが、自らの足で神殿を調べ、見取り図を描こうとする者が現れた」


 Dr. スターリーがルイナさんに顔を向け、正面を向きなおした。


「ルイナ・カーミーンだ。今は勘当されているようだが、すまぬ、慣れた呼び方で呼ばせてくれ。ルイナ・カーミーンは、ワシの調査報告を鵜呑みにすることに異議を唱え、一からこの神殿の調査を始めた。だからワシは、いつの日かルイナ・カーミーンが”奇跡の光”を蘇らせることを期待した。だが、」


 今度は俺たちに一瞬だけ顔を向けた。


「4人の魔法使いのグループに先を越された。”奇跡の光”復活の快挙を、プレイヤー、それも魔法使いに成されるなど我慢ならず、その者たちを捕えようとしたが、ルイナ・カーミーンの護衛までもが敵に回り、ワシらは敗北した。その護衛は、味方に付くべき人物の見極めは正しかったと述べ、ルイナ・カーミーンも魔法使いたちに感謝をした。恐れ入る。・・・ワシらの、完敗だ」


 そしてDr. スターリーたちは立ち上がった。


「ワシの前に立ちはだかった魔法使いが言った。掌の上で人を踊らせ続けるのは看過できないと。言われてみれば、それが客観的事実だ。30年もの間、真実を隠していたこと、申し訳なかった」


 そう言って4人揃って頭を下げた。カメラのシャッター音とフラッシュが入り乱れる。それが30秒ほど続き、


「・・・えと・・・では、質疑に移りたいと思います。できるだけ短く、簡潔にお願いします」


 アナウンスが入った。が、職員の頼みも届かず、テレビで見るような謝罪会見と同じく責め立てるような意見が相次いだ。Dr. スターリーたちは言い訳もせず、全て受け止めていた。


 学術界を支えるのはメディアじゃない、学者たちだ。彼らがこの会見をどう受け止め、今後どう活動するかで、学術界のあり方は大きく変わる。

 だが、世間一般の人たちには、メディアの伝え方1つで受ける印象が変わるだろう。そういう意味では、メディアが社会に与える影響は大きいと思う。自作の爆薬で石造を壊して逮捕のニュースに対して、”作り方はネットに載ってるし簡単”と伝えるか、”素人には難しいし一歩間違えば大惨事”と伝えるか。ハロウィンでのバカ騒ぎに対して、テーマパークでの取材のように楽しそうに伝えるか、社会問題の1つとして取り上げるか。もちろん、模倣犯が現れないように、そもそも取り上げないというのも1つの手段だ。

 当然、報道を受け取る世間一般の人の思想も重要になってくる。メディアがどんな伝え方をしても、”爆薬作ってみたい”とか”自分もあそこ行ってバカ騒ぎしたい” とか考える人間が現れる。逆に、”そんな危ないもの作らない”とか”あんなバカ騒ぎみっともない”と考える人もいて、そうなるように教育しなければならないのだが、もう既に教育する側に回る年代の人たちも・・・。


 いろんな人がいるこの世の中で、全ての人が周りに不満を与えないようにしつつ自分のやりたいことをやる、というのは難しい。少しだけでも理想に近づいていくことを祈りながら、ひたすら謝罪を続けるDr. スターリーたちを見届けた。


 --------------------------------


 状況が落ち着いてインタビューの場面を迎えた。まずはルイナさん。勘当された名家の長女ということもあり、注目度が高い。すぐそばに鋭い目つきのリリーさんがいるから、トラブルにはならないだろう。


「今後はどうされるのですか? カーミーン家に戻るなんてことも・・・」


「それはありません。私は勘当された身、このままルイナとしてスターリー神殿の調査を続けます。まずは見取り図の完成、それから数々の超常現象の調査ですね。後半については私1人では限界がありますから、魔法学の研究者とも協力させていただければと思っています」


「そうですか。カーミーン家の方々に何か言うことは・・・」


「特にありません」


「何でもいいので一言だけ・・・ひっ!」


 そこでリリーさんが剣に手を掛けて前に出た。インタビュアーが怯えたところでルイナさんがリリーさんを制止し、一歩前に出た。


「では、テレビの前の皆さんに一言だけ」


「は、はい、ぜひ!」


 インタビュアーがマイクを向ける。


「あなたがそれを追い求めれば、奇跡は奇跡じゃなくなります。・・・っと言っても、私は今回なにもしてないのだけれど」


 そう言ってルイナさんは踵を返した。


「あ、ありがとうございました!」


 そしてインタビュアーはそのままパタパタと走って俺たちの方に来た。エリオ王子の計らいで、メディアではなく市庁舎の職員が1人だけということになったが、この人も十分にグイグイくるようだ。


「では早速、昨夜の奇跡を蘇らせた感想をお聞かせください!」


 事前に、花巻さんを前に出すと決めていた。


「あ、えっと、とにかく良かったです。多くの人に喜んでもらえて、病気の人まで助けることができて、自分たちがこれを、あ、私はあんまり役に立てなかったんですけど、チームのみんなで頑張って、ここまでのことができたのは、嬉しいです」


 花巻さんは、しどろもどろになりながらも自分の言葉で話した。花巻さん個人ではなくチームの代表として話すことになるから、あまり謙虚になりすぎないようにと伝えておいた。実際、頑張って話してくれたと思う。


「本当に昨日は世界中に奇跡が舞い降りましたからね~。ところで、Dr. スターリーのしていたことについては、どう思われますか?」


 まあ、聞いてくるか。


「え、っと・・・。確かに、褒められたことでは、ないと思います。だけど、神殿の中でも色々話したんですけど、自分の力で調べること、純粋な好奇心だけで学問の扉を叩くこと、それを大事にしていたのは、良いことだと思います。こんなことになってしまったんですけど、少しでも、Dr. スターリーの理想通りになればいいなって、思います」


「おお~~、凄いですね。敵に塩を送るといいますか、何といいますか。・・・それでは、お仲間の皆さんにも話を聞いてみましょう。ではまずはそちらの方、何か一言お願いします!」


 俺の方に来た。


「昨日はずっとホワイライトにいたので、今朝のニュースを見て驚きました。まさか、あの星空が世界中に広がっていて、雲が晴れたり意識のなかった人が回復したりするとは、思いませんでしたから」


「そうですよね~! 本当に昨日は大騒ぎでした! 命が救われた方もいるという話です。それについてはどう思ってますか?」


 俺は杖を軽く掲げて、


「魔法使いですから、これくらいは当然です」


 と言うと、インタビュアーは目を思いっきり見開いた。奇跡を起こすのは、魔法使いの専売特許さ。


「さすがは魔法使いですね! これからもバンバン奇跡起こしてください! では次の方にいってみましょう~」


「お、俺か!?」


「はい! 何か一言お願いします!」


「いやもう、昨日の夜から、今でも、俺らがこれやったんだな~って思うと、マジ嬉しいです!」


「はい! ありがとうございました! では最後の方、よろしくお願いします!」


 マイクが高松さんの方を向いた。中野が「え、終わり?」と言ったが、インタビュアーは気にも留めない様子。


「今回のことは、本当に嬉しく思っています。実は昨日、あの星空になった直後、あの子が」


 俺を指差した。せっかく自分では黙ってたのに。


「”この星空を、世界中の人に”って唱えたんですよ。世界中で起きた奇跡は、きっと、そのおかげなんじゃないかって思ってます」


「わあぁっ、そうだったんですね!! そんなことがあるなんて凄いです! まさしく奇跡ですね! それをさっき黙ってたお仲間さんも憎いですね~~。隅に置けません!」


「ええ。ジャンジャン引っ張り出してくださいね」


 全世界ネットでそんな話をしないでくれ。それとカメラをこっちに向けるんじゃない! 仕方なく、苦笑いで右の手のひらを開いて応えた。


「以上、Dr. スターリーが隠していた真実を暴き、奇跡を蘇らせた魔法使いの皆さんでした~!」



 こうして、インタビューは終了した。すんごい疲れた。


次回:再びウォーターランドへ

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