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4人の魔法使いの冒険  作者: 藤見倫
第2章:スターリー神殿の謎
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第66話:予期せぬ助っ人

「よっしゃああぁ! 生き返ったぞおおおおおおぉぉぉぉぉ!!」


 サン・ライトが現れたと思ったら中野まで現れ、花巻さんのレイズデッドにより復活。

 そうか、檻に入ってるというだけで、杖があれば魔法が使えるんだ。花巻さんが魔法を使えるのであれば、復活するのに宿屋に帰る必要はない。もちろん、花巻さんが杖を持っていたのはラッキーだったとしか言いようがないが。


「ヒール、ヒール、メンタルヒール、メン…」


「そこまでだ」


「きゃあっ!」


 花巻さんは立て続けに回復を出したが、Dr. スターリーが何かのスイッチを押すと檻が一瞬電気を帯びた。檻の隙間から出して使っていた杖が、花巻さんの手を離れて檻の外側に落ちた。すぐさまDr.スターリーが手に取り、離れた位置に放り投げた。


「テメェ葵ちゃんに何しやがる!」


「お主らこそ、ちょこざいな真似を」


「申し訳ありません、Dr. スターリー。戦闘不能だったからと油断しました」


「構わぬ。だが、増えた分の敵は頼んだぞ?」


「無論です」


 中野はサン・ライトの方を振り向き直した。


「コイツは俺がやっていいか? 大村はDr. スターリーを頼む」


「それはいいけど、なんで黙ってたのさ」


「サプライズしようと思ってよ。Dr. スターリーだと思ってたのがサン・ライトだったのは悪ぃ」


 人違いは大した問題にはならない。サプライズの方も、事前に言われてても変に警戒とかぬか喜びさせられてただけだし、構わないか。このタイミングで戦力が増えて助かったのは事実だ。怒るほどじゃない。


 俺はサン・ライトに背を向け、Dr. スターリーの方を向いた。


「いいよ別に。味方が増えて助かるのは事実だから。よくここまで来れたね」


「ああ、それがよぉ・・・」


 --------------------------------


 ムーン・ライトの野郎をぶちのめして千尋ちゃんとハイタッチ、と思ったら空振った。


「うっ、とっとっと。・・・そういや俺死んだんだったな。くそおおおぅ。」


「んふふ。でもありがと、中野君のおかげだよ」


「おうよ!」と言おうとした瞬間、


 プシューーーーーー、


 と白いガスが出てきた。一瞬で目の前が真っ白になる。


「うおっ、何だ!? またさっきのガスか?」


 そういやガスに飲まれちまったけど、何ともねぇ。んだよ、ただの目くらましかよ。睡眠ガスってのはハッタリか。


「ただ周りが見えなくなるだけで何ともねぇじゃんな!」


 ・・・・・・。あれ? 千尋ちゃんの返事がねぇぞ?


「千尋ちゃん・・・?」


 ・・・・・・。ダメだ。まさかこのガスで声も届かなくなんのか?


 と思ったら、


 ブオオオオォォォ、


 と強風が吹いた。


「ぬおっ! そっか風で追い払えばいいんだな! 頼むわ!」


 ガスが飛び散って見えるようになった。が、


「千尋ちゃん!!」


 千尋ちゃんが地面に倒れていた。


「おい、しっかりしろ!」


 駆け寄って肩を揺さぶろうとしたがすり抜けた。


「くそっ!」


 地面を殴った。1回ドン、さらに3回ドンドンドン。こっちは普通に触れんのに。


「効かないということは、戦闘不能か」


「誰だ!」


 振り向いたらガスマスクをした男がいた。右脇に両手でゴツい装置みたいなのを持ってて、足元にムーン・ライトが倒れている。ってことはコイツは奥の部屋にいたDr. スターリーか? と思ってたらいきなり走って来て剣で攻撃してきた。でも空振りだ、俺はもう死んでるから効かねぇ。


「確かに戦闘不能のようだな」


 そうか、俺は死んでたからガスも効かなかったんだ。


「テメェDr. スターリーだな。よくも千尋ちゃんを!」


 ぶん殴りてぇが、死んだままじゃ無理だ。


<ヤベぇ大村! ムーン・ライトに勝ったけど千尋ちゃんがガスで眠らされちまった! ガスマスクしてっけど多分Dr. スターリーだ。俺は死んでっからガス効かなかったっぽい>


 大村にどうすればいいか聞いてから、拳を握りしめてDr. スターリーを睨んでいると、何かのボタンを押して、ガーーーーッと音がした。


「なにっ!」


 隣の部屋に移るドアが閉まっていくのが見えた。反対に、コイツらの部屋に行く方のドアが開いた。


<まだDr. スターリーはそこにいる?>


 大村からの返事だ。くそっ、もう自由にゃ動けねぇ。


<いるぜ。でも俺も一緒に密室の中だ。ムーン・ライトとは奴らの部屋から出てから戦ってたんだが、そこもドア付いててまた閉じ込められちまった>


 ・・・。お、来たか。

 ちょっとの時間差で次の返事が来た。もっと早くレスしろよ。


<分かった。じゃあそこでDr. スターリー見張っててもらえる?>


<ああ良いぜ。剣で攻撃されたりもしたけど俺はもう死んでっから効かねぇみてぇだ。不死身になるってのも便利だな>


<もしドアが開いたら追いかけずに街に戻って回復して来て。もちろん高松さんも一緒に>


<おう任せろ!>


 そうか! ここにいりゃDr. スターリーも動けねぇじゃん! 捕まえたも同然だな! てか俺活躍してね?


「いいのか? テメェも仲間の所に行けねぇぞ?」


「・・・・・・」

(やはりこの男、私をDr. スターリーと勘違いしているようだ。どこまで錯乱の効果があるかは知らぬが、いいだろう。それよりも、もしスターがしくじって大村という男がDr. スターリーの下に辿り着いたら厄介だ)


 シカトかよ。えっと、ここにDr. スターリーとムーン・ライトがいるから、あとはサン・ライトとスター・ライトの2人か。さっきトランシーバーで一緒にいるって言ってたけど大丈夫か!? コイツも俺と千尋ちゃんの2人掛かりでやっとだったってのに。でも大村のヤツなら1対2でも勝っちまいそうだな。くそ、アイツばっかり。


 Dr. スターリーが奴らの部屋に向かって歩き出した。


「テメェどこ行くつもりだ!」


 ついて行くべきか? でも千尋ちゃんが・・・!


「ちっくしょお!」


 俺はDr. スターリーを追いかけた。千尋ちゃんをほっとくのは嫌だが、起こすことも守ることもできねぇ。俺が役に立てるのはDr. スターリーの見張りだ!


「・・・・・・」

(この男まで連れて行くことになるが、戦闘不能のプレイヤーでは何もできん、問題は無いだろう)


 Dr. スターリーは俺が近くにいるのを気にする様子もなく歩き続ける。くっそ、ムカつくな。


 奴らの部屋に入って、左奥に向かって歩いていく。何のつもりだ?


 左奥の角まで来て、Dr. スターリーが押入れを開けるとスッカラカンだった。何だこれ? と思ったら中に入って行った。押入れが閉まる。 ヤベぇ! 俺も入るぞ!


「・・・・・・」

(やはり入って来たか、まあいい)


 押入れの中で電気が点いてドアが閉まった。あ、まさか閉じ込められたか!? でもDr. スターリーも一緒だし大丈夫だろ。と思ったら今度は縦にガクンと揺れた。


「おわっ、何だ!?」


 なんか、エレベーターで下に行ってる時の感じがする。Dr. スターリーは黙ったまま突っ立ってる。もしかしてこれマジでエレベーターか? マップを開くと俺の現在地が地下2階になってた。マジか! これでこのまま地下6階に行けんじゃね?


<まだDr. スターリーと一緒?>


 大村からメッセージが来た。


<ああ>


<僕は今南西の角から地下6階に向かってる。さっきスター・ライトに襲われそうになったけどリリーさんが助けてくれた。多分捕まえてくれる>


<マジで!? リリーさんいんなら最強じゃん!>


 しかももうすぐ地下6階かよ! あとはサン・ライトだけだな! ・・・ん? これでDr. スターリーも行けんじゃん! ヤベぇ! 


<スター・ライトの方は任せていいと思う。中野君はDr. スターリーをお願い>


 でも俺もいる! いや死んでっから何もできねぇ! ん・・・? でも葵ちゃんいるんなら回復してもらえば良くね? そうじゃん、それだ! それで俺も戦えるぞ! でもせっかくだし大村には黙っとこ。いつもアイツばっか良いトコ持ってくし、今度は俺の番だぜ!


<おう! 大村も葵ちゃん頼んだぞ!>


<うん>


 --------------------------------


 中野がムーン・ライト撃破後の顛末を語った。

 本人の説明が分かり辛いのだが、いきなり睡眠ガス吹き付けられて高松さんが眠らされて、ガスマスク男がいて、奴らの部屋にあったエレベーターで地下6階まで下りて来た、と。


「そっか。何にしても来てくれたんなら助かるよ。ついでだからもうちょっと頑張って。1対1じゃキツいかも知れないけど」


「それが、1対1じゃねぇかも知れねえんだな」


「はあ?」


「行くぞ! 出てこい! サモンデビル!」


 中野がそう叫けぶと地面に紫に光る魔法陣が出てきた。ということは標準魔法か? でもレベル30で増えてなかったよな・・・? 

 魔法陣から、全身が闇属性魔法のように紫に光る、身長150センチぐらいの二足歩行の生物が出てきた。漁に使われるモリのような武器を持っている。モリの方も紫の光だから物理攻撃にはならなさそうだが。


「うおおおおおぉぉぉ、マジでデビル出てくるんじゃん! 凄ぇ!」


 この反応から察するに使うのは今のが初めてのようだ。


「それって標準魔法?」


「おうよ。さっき生き返った瞬間にレベル上がってコイツも使えるようになったんだ。レベル35で覚えるらしいぜ? マジでデビル呼び出せるなんて凄ぇよな!」


 中野のレベルを確認すると、37になっていた。ムーン・ライトを倒した分が増えたんだ。戦闘不能になっても、その前にダメージを与えていた分は増えるということか。

 出てきた悪魔が武器を構えた。中野が操ってるのか?


「まさかコイツ自分で動くのか?」


 そのようだ。俺としては自分の思い通りに操れる方がいいが、中野にとっては勝手に動いてもらった方がいいかもな。何にしても、助っ人が増えて助かった。


「それじゃあ、そっちは頼むよ。眠らされた高松さんの分まで頑張って」


「おうよ!」


 中野と悪魔がサン・ライトの方に歩き出した。


「待たせたな」


「私は、ムーンのようにはいかないぞ」


「いくぞぉ!!」


 中野が走り出したようだ。横目で後ろを確認すると、悪魔の方を前に行かせて中野は後ろから援護射撃のようだ。それがベストな戦い方だと思う。サン・ライトの武器は剣だが、電気ストーブのようにオレンジに光っている。


<あの剣熱いかも知れないから気を付けて>


<オッケサンキュー!>


 中野が押しているようには見えるが、サン・ライトには余裕がありそうだ。おそらく、俺たちから離れるために後ろに下がりながら応戦している。


 --------------------------------


 サモンデビルのおかげで2対1だ。敵に近づいて持ってる槍を突いたり振り回したりぐらいだが十分だぜ。ヤツはデビルと俺の両方の攻撃を避けなきゃなんねぇ。隙を突いて俺が攻撃を当てていく、さっきのムーン・ライトの時と同じような戦法だな。


「くっ」


 よし、いい感じだ。この調子でいくぞ。ちょっとずつ前に進んでるし、それだけ俺らが押してる証拠だ。


「ふんっ」


「ぬおっ!」


 だがコイツ、俺ばっか狙ってきやがる。デビルの攻撃を避けた後に俺の方に突っ込んでくるようになった。デビルも後から追っては来るが間に合ってねぇ。こうなったら、


 デビルの攻撃を避けた方向に今まで通り闇魔法、それを避けられたところにさらに、


「せいっ!」


 杖を前に突き出して闇魔法を出したが、今度は避けずに剣を盾にして止められた。


「マジ・・・!」


 さらにサン・ライトが突っ込んで来た。


「やべっ・・・ぐあああああぁぁぁぁぁぁ!!」


 慌てて逃げようとしたが背中を斬られた。


「あっつ・・・!」


 しかも熱い。


「中野君!」


 遠くからだが、葵ちゃんの声だ。くそ、早く助けねぇと。

 デビルが作った隙を突いて攻撃も通じねぇしサン・ライトはピンピンしてやがる。こうなったら俺も前だ!


「くっそ・・・がぁ!」


 俺は立ち上がり、デビルと2人掛かりで接近戦を挑んだ。ちょくちょく攻撃は当たるがダメージはあんま無さそうだ。やっぱデカいの一発かまさねえと。でもチャンスがねえ。


 そんな時、サン・ライトの突きがデビルに直撃。その直後、デビルの動きが固まって、弾けて消えた。


「なっ、、おい!! ・・・マジかよ・・・」


「なんだ、思いのほか軟弱だったな」


 それまでも何度かデビルにも攻撃が当たってたが、今のがトドメになったみてぇだ。HPでもあんのか!? 


「まだだ!」


 MPがある限り何回でも出せる・・・ってヤベ、これMP35食うのに残り37しかねぇじゃん! もっかいやったらもう魔法は使えねぇ。いやでもどのみち1対1じゃ絶対勝てねぇ。どうせあと37じゃアイツぶっ倒せねぇし素手で戦うぞ。次コイツがやられるまでに決めてやる!


「サモンデビル!」


 地面の魔法陣ができて、さっきと同じようにデビルが出てきた。


「うっし」


 俺は杖を放り投げた。カラン、と音が鳴る。


「ん・・・? MP切れか、哀れな」


「うっせえ。こっからが第2ラウンドだぁ!!」


 --------------------------------


 中野がサン・ライトの方へ向かった後、再びDr.スターリーと対峙。たまに後ろからに中野の声が聞こえてくる。花巻さんは立ち上がってはいるが、杖は檻の外だ。援護は望めない。


「もはや、話し合いではどうにもならぬな」


 Dr. スターリーがそう口を開いた。話が通じる相手ではあるのだが、だからこそ、分かり合うことができない。


「まさか、あなたと戦うことになるとは思わなかった」


「ワシは初めから、お主と戦うことになると思っておったぞ」


「期待に応えられて何より」


「お主が魔法使いなのが惜しい。だがせっかくだ。いい加減、科学と魔法のどちらが優れているか、決着を付けるべきだな」


 Dr. スターリーがポケットからスイッチのような物を取り出し、押した。ガチャン、ガチャン、と音を立てながら何かのパーツのような丸みを帯びた金属の板が出てきた。


「ワシは、ワシのやり方で学術界を立て直す!」


 ガチャン、ガチャン、と、金属のパーツがDr. スターリーの周囲に組み上がっていく。


「邪魔をすると言うのなら、力尽くでも排除させてもらうぞ!」


 そして、高さ3mほどのロボットの、胸辺りのガラスの奥の操縦席にDr. スターリーがいる恰好になった。



「このワシの、科学の力でぇ!!」



 目の前に、ロボットが立ちはだかる。科学者が相手なのだから、これくらいは当然か。


「仲間を攫ったのは許さないし、このまま多くの人を縛り続けるのを見過ごす訳にもいかない。ここであなたたちを止めて、仲間と、学者たちと、30年間閉ざされた”奇跡の光”を解放する」


 俺は右手を伸ばしたまま前に出し、杖を横向きで水平に持って正面に構えた。



「この、魔法の力で」


次回:1人の魔法使い 対 1人の科学者

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