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4人の魔法使いの冒険  作者: 藤見倫
第2章:スターリー神殿の謎
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第55話:地下3階、水牢の層

 水牢の層と呼ばれる地下3階に着いた。2階とは違って端っこスタートじゃないから、四方に道がある。階段を下り終わった時の向きを正面として、さっき中野が落ちたのは右後ろの方だ。


「みんなで行きたい方向を指差そう~。いくよ~~、せ~のっ」


「え、ちょっ」

「おい待てって」


 ピッ、と俺が右を指差すと同時に、他の3人も思い思いの方向を指差した。何だかんだで反応してくれた。それぞれが指差した方向は、花巻さんと俺が右、高松さんが正面、中野が後ろ。


「んじゃ右だな」


「多数決じゃないよ? ここからジャンケンだ。もちろん多数派の方が勝率高いけど」


「へえ、面白いわね。それじゃあ、、最っっ初は、グー、、じゃん、けん、ぽん!」


 あいこだった。


「あい、こで、しょ!」


 中野が勝った。


「よっしゃ! じゃあ後ろの方だな」


「ここで運を使い果たして良かったの?」


「ん・・・し、しまったあぁー!」


 中野が頭を抱える仕草をした。


「なに真に受けてんのよ・・・」


 冷静なツッコミが入る。


「じゃあ行こっか。勝った中野くんが先頭だ」


「よっしゃみんなついて来い!」


 中野、花巻さん、高松さん、俺の順で細い足場を進む。上の一本橋よりは細いが、すぐそばが奈落の底か水かの差は大きいな。でも深いから気を付けないと。


「落ちたら大村君が火の魔法で乾かしてくれるんだよね」


「そんなことにMPは使えないよ」


「風邪引けって言うの?」


「そうだね」


「なっ・・・っ・・・」


 高松さんが拳を作る。俺に見える位置なのはわざとかな? と思ったら引っ込めた。


「風邪引いたりしてもHP減るのかしらね」


「さあ。でも同じ攻撃でも余計に痛みを感じてHP減りやすくなったりするかもね」


「あ、それはあるかも」


「だからさっきのグーで殴り落としたりしないでね」


「それは大村君次第よ」


「ええー」


 そうこうしているうちに分岐点に来た。正面か右かに行ける。


「どうすんだ?」


「じゃあ真っ直ぐで。せっかくだし、さっき中野くんが落ちた辺りに行こうか。マップを繋げよう」


 ここで指差しからのジャンケンをすると、この先の分岐も全部そうなりそうだ。適当に理由を付けてでもそれは避けよう。


「そうだな。嫌な思い出が蘇るぜ・・・」


「ワニって水から出てきたの?」


「ああ。それがよぉ、凄ぇスピードで泳いで来て、こんな風にな。・・・え!?」


 ザパーン!


 という音と共に、右の道の上に灰色のワニが出て来た。ウォーターランド西のは緑だったから上位版だ。分岐点のド真ん中にいる高松さんが一番近い。


「ちょっ、嘘!?」


 高松さんがサッと俺の後ろに回り込む。


「ちょっと人を盾にしないでよ。 花巻さん、中野くん、離れて!」


「葵ちゃんこっちだ!」


「うん!」


 ワニの狙いは俺になったようだ。のっそりとこちらに近づいて来る。ウォーターランド西のイカは雷が弱点だったが、ワニの尻尾が水に浸かっている。ここで雷は避けた方がいいか・・・? 


「アイスソード」


 額に刺したが、痛がって体を反らした時に折れた。でも血は出たみたいだし、刺さるようだ。一度倒せば弱点が分かる。一気に仕留めよう。ワニの背中に沿って氷を塊を並べてつららのように尖らせ、柱から頂いた石で長い板を作り、


「アイシクル・スパイク!」


 思いっきり振り下ろした。ワニは血しぶきを飛ばし、


「グォォォ」


 と小さめの声で鳴きながらバタバタしている。水に逃げられると面倒だ。さっき攻撃に使った石の板が割れたので、一部の欠片を集めて尖らせてから額に当て、他の欠片で塊を作ってクギを打つように刺した。


「グォォォォォ」


 さっきよりも弱々しく鳴き、やがて動かなくなって消えた。俺は肩の力を抜いた。MPは45も食った。


「ふぅ。何とかなったね」


「さすが大村君」


 高松さんがさっきとは違う意味でグーを作った。


「高松さんひどいよ~。人を盾にするなんて」


「あはは・・・。あ、でも、ほら、大村君を信じてたから」


「じゃあ僕は高松さんを信じてるから、」


 俺は高松さんの後ろに回り込み、


「今度はお願いね。グレーのワニ、光が弱点みたいだから。魔攻も高い2人がやるべきだよ」


「え? あ、ホントだ。うう~~。でも女子を盾にするなんてサイテー。恥ずかしくないの?」


「男はやめるって前に言ったよね? そんなのより効率の方が大事だから」


「ホントサイテー!」


「あっはははっ! でも光が効くんだったら俺たちで頑張ろうぜ、千尋ちゃん」


「それもそうね。大村君ほっといて頑張りましょ」


「働かないで済むならバン万歳だよ」


「んもう。葵なんとかして~」


「え・・・? 無理、かも・・・」


「「あはははははっ!!」」


 中野と2人で大笑いした。


「大村君は笑うトコじゃなんだけど・・・!」


 ヒートアップしたのが覚めるまでその場にいて、気を取り直して分岐を左に進み出した。



 それから5分ほどで、午前中に中野がうろついた辺りに着いてマップの線が繋がった。


「まあ、マップの線が繋がったところで何が起こる訳でもないんだけどね」


「とりあえず適当に進みましょ。もう6時過ぎちゃったし階段の近くだけにする?」


「そうだね。でも中野くん、落ちた時ほかの人に助けられたんだよね?」


「ああそうだぜ。このプールから引っ張り上げてもらったんだ。凄い音だったって言ってたぜ」


「あ、そっか。上まで音が届いたからね。何でこの辺に人がいたんだろって思ったんだけど、音を聞いてから駆けつけて来たんだね」


「この辺に人がいたら変なのか?」


「大抵の人は地下5階までの道を知ってるだろうからね。下り階段への通り道にしかいないでしょ」


「ああ~~、なるほどな」


 俺はマップを開いて話を続けた。


「地下1階、2階ともスタートとゴールの位置は結構離れてる。ここもそうなってると思った方がいいよ。今からそれを目指すと引き返すのが面倒だから、高松さんの言うように階段の近くだけにするけど」


 あれ・・・?

 俺は改めて地下1階と2階のマップを見比べた。1階は、入ったことのある部屋は全部、四角い枠と薄い塗りつぶしで表示されている。2階も通った部分だけが線になっているが、壁の近くを通った箇所は壁が太い線で表示されている。だから地下2階は、スタート地点から見て奥側の左右―――北西と南西の角―――が丸まっているのが分かった。


「大村君どうしたの?」


「え? ・・・あ、ごめん。ちょっと考えごと。もう少し考えさせて」


「大事なことなのね。いいわよ」


「お? なんだ大村? もしかして神殿の謎ってヤツが分かったのか?」


「どうだろう。とにかく考えさせて」


 マップの地下2階と3階を切り替えた時に中野が落ちた地点が一致していたから、おそらく各階のマップの縮尺と位置関係は合っている。地下1階は、北西・北東・南東の角がマップ化できているが丸まっていない。もし地下2階と同じように丸まっていれば、角部屋は半分ぐらいは欠けることになる。


 さらに言えば、北西の角は昨日ライトブラザーズに招かれた部屋だ。そしてその奥には、Dr. スターリーの私室がある。マップ化できていないが、扉の奥に空間があってDr. スターリーが出て来たのをこの目で見た。

 つまり地下1階は、Dr. スターリーの私室の分だけ出っ張っている。


 偶然か・・・? Dr. スターリーが壁に穴を開けて拡張したか、元からそういう構造になってた可能性もあるが、覚えておいても良さそうだ。他の学者たちも地図ぐらい作っているだろうが、地下5階までのルートをDr. スターリーの調査報告に頼るような奴らが測量までするとは思えない。そこまでして完璧な見取り図を作るのは、ルイナさんぐらいだろう。もちろんDr. スターリーは既にそれを完成させているはずだ。

 地下1階の四隅の部屋は調べる価値がありそうだな。さらには、Dr. スターリーを疑う目で見れば、あの部屋には何かある。


「ごめんみんな、壁際をぐるっと回っていい?」


「いいわよ、何か考えがあるんでしょ。後で聞かせてね」


「ちぇっ、また大村がいいとこ持ってくのか?」


「まだ分からないよ」


 部屋全体の広さが地下2階と同じなら、南にちょっと進めば壁がある。



 進んでみたら、あった。さらに西に移動。マップに壁が表示されるのを確認しつつ、壁に一番近い足場を歩いていく。2回ワニが出てきたが、2人の光魔法で苦戦することもなく倒せた。

 その後も壁沿いに進み、やがて階段から真北の位置に到着、そのまま階段の場所まで戻った。これで階段の後ろ側、つまり階段より西側の輪郭が完成した。やはり、北西と南西の角は丸まっている。この分だけ地下1階より狭くなっているのだが、この奥には何かあるのか・・・?


「まだ7時なってないけど、帰るの?」


 高松さんの声で、一同の視線が俺に集まる。今は6時45分。


「ちょっと寄り道しながら、でいいかな」


「いいわよ別に」


 長い螺旋階段を上り切って地下2階へ、まずは南東の角を目指した。だが、一本橋が壁から遠く、マップ上に壁が表示されない。仕方ない、角だけでも風魔法で飛んでマップ化しよう。丸足場エリアでの壁の延長にあるはずだ。


 南東の角に一番近そうな場所で、


「ちょっと待ってて」


「え? ちょっと」


 ロクに返事も待たずに杖を股に挟んで飛び、明かりのない南東の角を目指した。マップで確認しながら壁に近づき、あとは一気に壁沿いを飛んでカーブが終わったところで戻った。やはり丸まっていたか。


「何かあったのか?」


「壁を見て来ただけだよ」


「さっきから壁ばっか見てるけど何かあんのか?」


「後で話すよ」


 Dr. スターリーの私室に何かあるかもっていうのを、ここでは言いたくない。


「きっと何か分かったのよ。今は黙って見てましょうよ」


「ちぇっ、もったいぶってねぇで教えてくれよな」


 最後に北東。なんかやたら道がうねってて(途中、下り坂 → 一本橋の側壁(穴が開いてた) → 上り坂、の立体交差もあった)時間が掛かったが、北東の角も丸まっているのが確認できた。


 階段を上がり、地下1階へ。

 北西の角はライトブラザーズの部屋とその先にDr. スターリーの私室だから、行けない。北東と南東は角なのは分かっているが、改めて行ってみた。まずは北東から。


「あれ? ここ丸まってないのね」


「しーーーっ」


 俺は人差し指を口に当てて高松さんに見せた。高松さんは目を見開いた後、


「・・・なるほどね」


「何だよ2人だけで」


 花巻さんも気付いてると思うぞ? 見た目は他の部屋と変わらない。あちこち杖で突いたが、特に変わったことも起こらない。

 南東も同様だった。あとは南西、せっかくなので通ったことのない部屋を通ってマップを更新しながら向かった。その途中、


「お? アンタらは」


 通りすがりの人が話し掛けてきた。ライトブラザーズの誰かだ。誰だっけ・・・?


「あ、ムーン・ライトさん」


 花巻さんが覚えていたようだ。


「ムーンライト?」


 中野が怪訝の表情でムーン・ライトさんを見る。


「そういや昨日は2人しか来なかったな。スター・ライト、サン・ライト、ムーン・ライトの3人でDr. スターリーの助手をしていてな、ライトブラザーズを名乗ってるんだ。俺はムーン・ライト。覚えててくれ」


「へえ、変なの」


「ははは、研究者なんて変なのの集まりだからな。んじゃこれで」


 ムーン・ライトは立ち去って行った。ここは神殿の入口からDr. スターリーの私室へ行く通り道でもおかしくない。トートバッグ持ってたし、買い出しの帰りだろう。


 南西の角に到着。ここも普通の角で、何ともなかった。うーん、地下1階だけは四隅全部が角ばってるのか。北西は、単にDr. スターリーが穴掘って拡張しただけか・・・?


 分からん。とにかく宿屋に戻ってみんなで話してみよう。


次回:スターリー神殿の構造

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