表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4人の魔法使いの冒険  作者: 藤見倫
第2章:スターリー神殿の謎
52/349

第52話:空飛ぶ魔法使い

「風魔法? どうすんだよ?」


 中野が隠しスイッチを押したことで足場が出てきた。一番奥にある四角いトンネルを目指して進んでいたが、最後、明らかに飛び移らなければならない距離で小さな足場が並び、MP消耗を覚悟で風魔法での移動を提案した。高松さんは初の風魔法での浮遊になるが、突破して欲しいところ。


「こうするの」


 俺は杖を真下に向けた。


「高松さん、見える?」


「うん。何とか」


「んじゃ、いくよ」


 杖を握る手に力を入れて真上に向かって風を起こした。体が浮く。


「おぉ・・・すげぇ・・・マジで空飛べるんだな」


「で、追い風を作る」


 浮いた体が後ろから風に押され、前に進む。しばらくして四角いトンネルのある足場に到着。この先も道が続いているようだ。今のでMP50食った。痛い。


「高松さん、そこからでいいから来れる?」


「やってみる。・・・・・・わっ」


 高松さんも俺と同じ要領で宙に浮いた。


「そこから、追い風」


 高松さんが強張った表情で下を向いたまま、前進。魔攻が俺より高い分は消耗が少ないはずだが、慣れてないせいかMPの減りが早い。158、156、154、・・・。


「前を見て」


 高松さんがこちらを向いた。やはり険しい表情だ。俺は足場の端に立ち、両手を前に伸ばした。高松さんのMPが、132、130、128、・・・。


 あと、足場2個分。高松さんのMPが、116、114、112、110、メニュー画面を閉じた。


「もう少し」


「うぅ・・・っ!」


「届いた!」


「きゃっ!」


 高松さんの両肩をつかんで引き寄せた。と言うよりは抱き寄せる格好になってしまったが、すぐに高松さんを後ろ側に回して手を離した。高松さんは腰が抜けたようにその場に尻餅をついた。


「はぁ、・・・・・・、はぁ、・・・・・・、はぁ・・・」


「お疲れさま」


「はぁ、・・・・・・、うん。・・・ありがとね、大村君」


 高松さんは息を切らしながらも満面の笑みで答えた。ここでその笑顔は反則だ。俺の心臓に堪えるんだが。

 だけどまだ終わってない。あと2人、風魔法を使えない中野と花巻さんを連れて来ないといけない。


「さて」


 まず、ピョン、ピョン、と中野の1個手前の足場まで戻った。途中で


「なっ・・・!」

「おい!」


 と言う声が聞こえたが、知らん。


「お前、すげぇな」


「いざという時は風魔法があるからね。それより、中野くんもできるよね?」


「う・・・。ったりめぇだあ! 俺をナメてもらっちゃ困るぜ」


「それじゃあ」


 大股で一歩踏み出して、中野がいる足場に乗った。狭い。


「よっと」


 すぐさま中野が移動。さあ、あと4歩、頑張りたまえ。


「よっ。・・・っとと」


1個目クリア。


「ほっ、・・・と、っと、っとと」


2個目クリア。


「・・・はっ、よっ! ・・・ちゅえあー!」


最後は2回一気に行って着地と同時に「ちゅえあー!」。


「っっっしゅああぁ! 見たかぁ!」


 やるじゃないか。MP節約できて良かったよ。さて、あとは。


「う・・・」


 さすがに花巻さんにあれを求めるのは無茶だ。抱え上げて風魔法で運ぶ以外にない。もう1歩前に進んでからにしたいところだが、ここからにしよう。

 でもどうする。普通に考えると、おんぶか抱っこなのだが、限りなく嫌だ。まして、高松さんや中野もいる前で。だがそうも言ってられない。全ては、先に進むため。目の前にいるのが女の人だからと言って臆してはならない。


 意を決して、右手に持つ杖を見る。


「あ、そうだ」


 ふと思いついた。おんぶでも抱っこでもない方法が。


「花巻さん、MP50ぐらい回復させて」


「う、うん!」


 ちょっと表情が固い。抱えられることを想定してるか、頼もうとしているかだな。さすがに頼ませるのは酷だ。俺のメンタルももたないし、さっさと済ませよう。


「ありがとう」


 MPの回復を確認して、持っていた杖を股に挟んだ。ホウキにまたがる魔女のように。


「乗って」


「え・・・?」


「花巻さんを、向こうまで連れて行くよ」


 真顔で目を合わせ続けたが、冗談ではないことは伝わるだろうか。


「・・・うん、お願い」


 伝わったようだ。


「おいおい、魔女じゃあるめぇし」


「魔法使いだよ、僕らは。ホウキがなくて残念」


「マジかよ・・・」


 花巻さんがスーーーッ、ハーーーー、と深呼吸をしたので待った。


「行くよ」


「うん」


 花巻さんが一歩大きく踏み出して来て、こっちの足場に移るなり俺の両肩をつかみ、左手だけ離して杖をつかんだ後、体を左に向けたまま杖に腰を掛けた。


「じゃあ行くよ。つかまってて」


「うん」


 花巻さんは横を向いた体勢のまま左手だけを俺の肩に戻した。控えめなのは構わないが、動いてる途中で力入れたりしないでね。


 風を起こし、体を浮かせる。花巻さんが俺の肩をつかむ手に力を入れた。進む前にそうしてくれた方が助かる。そのまま追い風を起こして前進。残りMP160。


 進み出して3秒ぐらいで、花巻さんが額を俺の首の後ろに当ててきた。心臓に悪い・・・。だが花巻さんも、底の見えない穴の上で宙に浮いているという状況に耐えている。その身を預かっている俺が、その程度のことで耐えられなくてどうする。


 半分ぐらい進んだ。一瞬だけMP確認。残り125、いける。


「そこ空けといて」


 余裕のある所まで進んでから着地しよう。もう少し、もう少し、・・・よし、足場の上には来た。


「2人は花巻さんお願い」


「うん」

「よし来い!」


 1mほど進んでから、ゆっくりと着地した。俺はその場に倒れ込む。花巻さんは、2人が受け止めてくれた。


 何とか、辿り着けたようだ。


「はあぁ~~~っ、疲れたぁ~~~~~」


 右手を額に当て、天を仰ぐ。高さ3mほどしかない石の天井だが。


「ん?」


 陰が動いたのが見えたので顔だけ動かすと、花巻さんがしゃがんで俺の顔を覗き込んできていた。


「大村君、ありがとう」


 少し頬を紅潮させつつも、さわやかな笑顔だった。今のが一番効いた。やはり女の人の笑顔は心臓に悪い。肩をつかまれるとか、額を首の後ろに当てられるとか、ザコだった。


「どういたしまして」


 そうとだけ答えて、体を回して一度うつ伏せになってから立ち上がった。さらに進路の方に杖を向ける。


「まだゴールじゃないよ、先に進もう」


「おう」

「「うん」」


 ちょっと進んだ先に右への曲がり角がある。4人してあちこち杖でつつきながら進み、特に何もないまま曲がり角へ到達。曲がった先には・・・、



 宝箱があった。絵に描いたような宝箱だ。


「おいマジかよ! 宝箱じゃん!」


 中野が走り出した。


「ねえちょっと! ・・・もう」


 3人で歩いて後を追う。


「ん? ・・・げっ!」


 ん、何だ? 蛇でもいたか?


「っとと、この、死にやがゴホッ!」


 中野が杖を構えたと思ったら「ゴホッ!」と叫ぶなり2~3歩後ずさった。何かがいるらしい。中野で死角になって見えないので少し横にずれると、蛇ではなくてリスがいた。真っ白の。


「サンダーランス」


 直撃。リスが大きくのけ反る。


「悪ぃ大村。 ・・・このっ食らえ! ブラックインパクごふっ!」


 杖がカランと地面に落ち、中野が今度は仰向けに倒れた。ウォーターランド北の透明リッス(仮)と違って空中からの突進はなかったが、コットンリッスと比べると追撃が早い。


「中野君大丈夫?」


 高松さんが駆け寄って来た。リスはまだ宙に浮いている。モンスター図鑑でパッパッと、コットンリッスと透明リッスの弱点と耐性を調べた。


 ・コットンリッス、弱点:火、耐性なし

 ・クリスタリッス、弱点なし、耐性:土


 ということはコイツの耐性に土は無いな。壁からだけど、


「グランドブロウ」


 拳を作ってリスにぶつけた。もう一発、今度は拳を2つに分けて、


「ダブルブロウ」


 両サイドから拳で挟み撃ちにした。リスはその場に落ちて、消えた。さてこいつの弱点は・・・まず名前が、シルクリッス・・・。出たよ、本当に。弱点は水、耐性は風、HPは400でコットンの4倍。


「まったく、あのリスの上位版が出るなんて」


「ホントよ。中野君大丈夫?」


「ああ、大丈夫だ。・・・いってぇ~」


 バッファローブDと同程度の衝撃吸収性能のCランク装備だが、それでも中々の衝撃のようだ。中野が体勢を整え、立ち上がるのを確認し、前へ。


「さて、どんなお宝があるのかな?」


「早く開けてみようぜ!」


 中野が走って宝箱へ。お前さっき1人で先に行ってリスに突進されたばっかだろ。


「もうちょっと落ち着きなさいよ中野君」


 女性陣が近づいてくる。


「待って、せめて花巻さんは離れてて。爆発したら全滅だよ」


「ひっ」


 高松さんを脅かしてしまったようだ。結局、中野だけを残して10mほど離れた。


「おい俺が囮かよ!」


「大丈夫だよ、レイズデッドがあるから」


「くっそ・・・でも宝箱があれば開けるのが漢!」


 中野がしゃがみ、キィィーッという音がした。何ともないようだ。


「なんだ? これ」


 中野が取り出して見せた。近づいて見ると、銀色の細いブレスレットのような輪っかだった。


「さあ。ブレスレット、かな・・・?」


「あたしもそう見えるけど、何だろうね」


「ちぇっ。何だよ、つまんねーの。せっかく隠しスイッチ見つけたのによぉ」


「でも普通のPRGでもダンジョンの宝箱って装備だったりしない? それだって、実は光属性の魔攻50%アップとかあるかもしれないよ」


 武器と防具しか装備として設定されてないが、もしかしたら装飾品は”装備”の枠に入ってないだけで効果を持つ物があるかも知れない。


「おぉ、そうか。それもそうだな、じゃあ付けといてみるか」


 中野が銀の輪っかを左手の上腕部に付けた。


「呪いの腕輪かもしれないけど」


「オイ付けた後で言うなよ!」


「冗談冗談。あと、もしかしたら、神殿の謎を解くカギかもよ」


「確かにそうかもな! この腕輪を5個集めたら・・・とかな!」


「じゃあ中野君それ付けててくれる? あと大村君、今の冗談あたしに言ったら怒るからね」


「う・・・」


 気を付けます。



 謎の輪っかが手に入ったはいいが、MPが枯渇してきたな。大村72/250、高松106/250、中野141/250、花巻108/225。あ、花巻さん以外レベル並んでる。それはいいとして、今はMPが大事だ。またすぐそこで風魔法が要るし、一旦街に戻ろう。だけどその前に、


「お弁当食べよっか。なんかここ敵出ないみたいだし。それで一旦街に戻ろう」


結局MPが枯渇して帰ることになったが、せっかくの弁当だ。出先で食べよう。


「そうしましょ。あたしもお腹ペコペコ」


「よっしゃ飯だ!」


「中野くんさっき食べてたよね」


「ありゃ早弁よ、早弁」


 それを”食べてた”と言ったんだろうが。まあいいや。石の床・壁・天井に囲まれた無機質な空間で、女将さん特製のお弁当を美味しく食べた。


次回:帰り道

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ