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4人の魔法使いの冒険  作者: 藤見倫
第2章:スターリー神殿の謎
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第50話:調査開始

「で? どうだったの? Dr. スターリーは」


 部屋に戻ると俺と花巻さんの食事が用意されていて、既に食べ終わったという高松さんから質問が飛んできた。中野は風呂に入ったらしい。


「ふぇ? ふぉっふぁーふふぁー…」


「飲み込んでから喋って!」


 ご注文に従い、モグモグのスピードを上げて最後にお茶で流し込んだ。


「そんなに急がなくても・・・」


「Dr. スターリー? ちょっと変わったとこはあるけど、そんなヤバい感じじゃなかったよ。なんか、最近は部下に働かせて自分は手足を動かさない奴が増えてるって嘆いてた。研究を金儲けとかビジネスに使われるのは嫌いなんだって」


「ふ~~ん。研究所とか行ったことないから分かんないけど、そういう人もいるんだね」


「ま、いるでしょそれぐらい。あと、スターリー神殿調べる前は、発明? にハマってたらしくて、今でも便利グッズ作ってるみたいだよ。なんか、机が動いたり地面に穴開いて別の机が出てきたりしたよ」


「はぁ・・・すんごい人もいるのね」


「座ってた椅子がいきなり動き出しちゃって、私もびっくりしちゃった」


「僕は第一印象の方が驚いたかな。現れるなり両手広げて”科学こそ、全て”だからね。あの時はマジでヤバい人だと思ったけど、話してみたらそこまででもなかったよ」


「匠について分かったことあれば教えてくれるって」


「あ、そうなんだ。良かったじゃない」


「うん」


「マリーナさんの時と言い、大村君の、変な人に好かれるところが結構役に立ってるわね」


「フッ。・・・んっふふ」


 花巻さんが噴き出して笑った。高松さんが珍しいものを見るような目で見ている。


「さっき、花巻さんにも似たようなことを言われたんだよ。お役に立てて光栄だね」


「ぷっ、あっはは。葵ナイス。やっぱ大村君、変な人を惹きつけやすいんだよ」


「確かに、いま僕の目の前にいる2人も楽しそうにしてるよね」


「それはどういう意味ぃ?」


「2人も十分に変な人って意味だよ」


「ぐ・・・! 怒っても、いいのかしら・・・!」


「まあまあ、千尋ちゃん」


 花巻さんが高松さんをなだめていると、ふすまが開いた。


「おっ、帰って来てたのか。どうだったんだ? Dr. スターリーは」


 また報告が要るのね・・・。その後は中野も交えてしばらく話し、風呂に入って寝た。女性陣は朝風呂にするらしい。早めに起きて朝焼けを見るんだとか。


 --------------------------------


 翌朝の朝食後、女将さんに少し時間をもらった。


「ええ、それはもう、今とは比べ物にならなかったわ。生きてるうちにもう一度見たいわねえ。あなたたち、魔法使いなのでしょう?」


「ええ、まあ、そうなんですが」


 さすがに無茶だ。いやもちろん、魔法使いたる者できなければならないのだが、今の俺たちにそんな力はない。


「でも探検すんだろ? あの神殿。何か見つかるかもしんねえじゃねぇか」


「でも60年調べてる人でも見つけられてないんでしょ? そんなに上手くいくのかな」


「ま、匠くんのこともあるし、ひと通り探してみようよ。地下5階まであるらしいよ」


「そうね」


 いつの間にか女将さんそっちのけになってしまった。と思ったら女将さんも入ってきた。


「匠君っていうのは、あなたたちのお友達?」


「はい。2年前からこっちの世界に来ていて・・・」


 ああそうか、知らない名前出しちまったな。これにすかさず反応したのは花巻さんだ。女将さんに弟のことを説明し始めた。チームの目標になったことに責任を感じているのか、弟がらみのことには積極的だな。


「そう・・・心配ね。こっちでも宿泊記録を調べておくわね。2年前の7月22日より後なのよね」


「は、はい。ありがとうございます」


 花巻さんが深々と頭を下げる。狙って匠くんの名前を出した訳ではないのだが、良かった。ギンジさんとか、ウォーターランドでも誰か協力者になってもらうべきだったか。


「どういたしまして。それじゃあここで失礼するわね。このお礼は”30年前の奇跡”の復活でいいかしら、若い魔法使いのみなさん♪」


 これはこれは、随分と難易度の高いお礼を要求されてしまったな。


 --------------------------------


 スターリー神殿に入った。女将さんにお弁当(700円)を作ってもらったから夕方までは居られる。


「とりあえず地下5階を目指してみようか。細かい部分を探すのはそれからだね。花巻さん、ヤバい時にはコウモリは自分で倒してね」


「うん」


 倒してもいい、と言うと遠慮されるかもしれないから「倒して」と言った。多少なりとも敵を倒すという形でチームに貢献したいという思いがあるようだし。


 メニュー画面でマップが見れるので、それを更新しつつ下へ行く階段を探す。モンスターの出る頻度は大したことはない。基本的にはレベルアップが遅れている高松さんに倒してもらっている。本当は花巻さんのレベルも上げたいが、回復用のMPは無駄にはできない。高松さんのMP回復に留まっている。


「なぁこれDr. スターリーかライトブラザーズに聞いた方が早くねぇか?」


「いいじゃん自分たちで探したほうが楽しいし」


「それあたしも意外に思った。大村君が効率重視しないなんて」


「確かに教えてもらえば地下5階でサクッと行けるけど、自分たちで調べれば新しく何か見つかるかもしれないじゃん。四方が埋まってない部屋にはまだ隠しスイッチの可能性かあるから、適当に壁叩いたりしてみてよ」


それに、昨日の今日で彼らに頼ると印象が悪くなる。


「そりゃそうだけど、そんな上手くいくもんでもないでしょ」


「でも面白そうじゃねえか、冒険してるって感じもするし。あらよっと・・・やっぱダメか」


 中野が天井に向かって光魔法を放った。調べるのはいいんだが、あんまりMP無駄使いしないでくれよ?


「この神殿が頭使う感じのじゃなくて良かったね。最初は、何か古い言い伝えとかを紐解いていく的なものかと思ったけど、単純に階段を探して下りて行くってだけだからね」


「俺はせっかくなら謎解きもしたかったけどなぁ」


「それは僕も否定できないけど、隠し部屋とか階段を探すこと自体が匠くん探しと同じことなるから、こっちの方が楽かな。宝探しだと思って進もう」


「お宝が見つかるといいわね」


 そんな感じで地下1階を歩き回っていると、人に遭遇した。男2人組、学者っぽい。


「珍しいな、こんなところで人に会うなんて」


「ああ」


 この辺を通る人が少ないということは・・・。


「ん? 神殿調べてる学者は多いんじゃねぇのか?」


「多分、ほとんどの人は下に行く階段がどこにあるか知ってて、この辺は入口から階段までのルートから外れてるんだよ」


「そういうこと。その恰好、プレイヤーだよね? 魔法使い4人って初めて見たなあ。階段の場所知らないなら教えてあげようか」


恰好だけでプレイヤーだって分かるのか。確かに、ロージもマリーナも鎧やローブは装備してなかったな。プレイヤーでなくても装備品は身に着けられるらしいが。


「いえ、自分たちで探したいので大丈夫です。その代わり、学者のみなさんがDr. スターリーのことをどう思ってるか、教えてくれませんか?」


「ん? いいよ。 Dr. スターリーのことは知ってるんだね。彼は、この神殿を調査する学者からは一目置かれている存在さ。さらにそれを鼻に掛けない人柄と、聞けば下に進む道を教えてくれる気前の良さもあって慕っている人は多いよ」


 へえ、そうなんだ。


「それと、大きな街とホワイライトの図書館にはDr. スターリーの調査報告が置いてあって、年に1回更新されてる。ほとんどの人は調査報告を手に入れた上で未知の部分を切り開こうとしているから、下層に行けば人に会うことも珍しくなくなるよ。僕らは、新しい部屋探し。見つけた人がそこを自由に使えるっていう暗黙のルールがあるから」


 じゃあ下に行けばもっと情報を集めやすくなるってことか。あと、”新しい部屋探し”って・・・。Dr. スターリーの取りこぼしはあるかも知れないが、この人たちも神殿に住むつもりか?


「さっき、”ほとんどの人”って言ってましたけど、Dr. スターリーの調査報告に頼らずに自力でやってる人もいるんですか?」


 みんながみんな、Dr. スターリーに好感を持ってるとは思えない。30年前の奇跡を先に復活させてやるぜと意気込んでいる者もいるはずだ。


「あっはは。そこ突っ込んでくるか。嘘はつきたくなかったから”ほとんど”って言ったんだけど、いるんだよ、Dr. スターリーを嫌ってる人が」


 ほう。ライバルどころかアンチがいるようだ。


「ルイナっていう女研究者で、能力は確かなんだけど、”Dr. スターリーに心酔し過ぎ、プライドは無いのか”って感じのこと言うんだ。第一人者に対抗心燃やすのは構わないんだけど、あれは、なあ? せっかくの美人が台無しだ」


「そんな人もいるんですね。でも有名になったからには、一部の人に嫌われるのも宿命かも知れませんね」


「それもそうかもね。それじゃあ、また」


「あ、すみません」


 立ち去ろうとした学者を呼び止めた。


「ん? 何だい?」


「花巻匠、というプレイヤーを知ってますか?」


「うーん。ごめん、知らないかな」


「あ、大丈夫です。ありがとうございました」


「うん、それじゃ」


 学者2人組と別れて探索を再開。今後、信用できそうな人には花巻匠を知っているか聞くことにした。


「やっぱりいるのね、対抗勢力みたいなの」


「でもよぉ、”プライド無いのか”ってのは言い過ぎじゃね? 効率良く調べようとしただけだろ?」


「でもそれは・・・」


 花巻さんが俺の方を見る。続きはお願い、ということだろうか。


「そう。そのルイナっていう人が言ってることが、そのままDr. スターリーの懸念でもある。昨日僕が連れて行かれたのも、”自分の足で探すしかない”っていう発言がきっかけだった。

 確かに、既に誰かが調べた部分を調べ直すのは非効率だけど、何の疑問も持たずに人の調査報告を鵜呑みにして突き進むっていうのは、あんまり得策じゃない。そのルイナって人、Dr. スターリーのファンには嫌われてそうだけど、Dr. スターリー本人には嫌われてないと思うよ」


「う~~~ん。そう言われりゃあ、それもあるかもなぁ」


「中野君も、僕の言うこと鵜呑みにし過ぎると痛い目に遭うかもよ」


「おいマジやめてくれよ!? マジで」


「それは状況によりけり」


「信じてるからな、信じてるからな!?」


 その後もしばらく、無機質で同じ見た目の部屋を移動し続けた。さすがに飽きてくる。レベル上げを兼ねてるから、そこまで苦ではないが。


「はい、終わりっ」


 高松さんがコウモリを撃破。レベルは29、もうちょっとで30だ。MPが減ってきたので花巻さんが回復―――と言うより分与―――を実施。


「あ」


 花巻さんが声を上げた。


「どうしたの、葵?」


「レイズデッド、だって」


 よし、ついにきたか。


「それ、蘇生魔法だよ。これで戦闘不能になっても街に戻らずに復活できるね」


「あ、そうなんだ」


 花巻さんが笑みを浮かべる。


「レイズデッドきたぁぁぁ!」


 さらに中野がガッツポーズ。


「でも死なないように気を付けなきゃね」


「でも1回使ってみないと復活する時にHPどれくらい回復するか分かんないんだよね~」


「おい何でこっち見んだよ。死なねぇからな、俺」


「最初に死んじゃった人が実験台だね」


「絶対ヤだかんねあたし」


 さあ誰が実験台になるんでしょうかねえ。HP回復量は知っておきたいけど、さすがにワザと死ぬのはなあ・・・。どのみち回復は節約する必要があるし、いいか。30%とかそんなもんだろう。不慮の事故でもその場で復活できるから、冒険の幅が広がったのは間違いない。


 さらに20分ほど歩き回ったところで、


「あ、階段だ!」


 高松さんの明るい声がした。マップを確認すると、東から2番目の列の南北位置は中央。ご丁寧にも部屋のド真ん中に階段はあった。


「よっしゃあ! さっさと次行こうぜ」


「うん、この調子でドンドン行こう」


 ようやく、同じ部屋が並んでるだけの地下1階とはオサラバだ。確か次は、大穴の層。



 階段を下りると、景色よりも先に2つの人影に目がいった。女性2人組、1人は見るからに剣士だから護衛のようだ。2人がこちらに気付く。神殿調査をする女性は一定数いるはずで、”美人”という前情報しか無いのだが、なぜか、その佇まいだけで確信が持てた。



「あの・・・、もしかして、ルイナさんですか・・・?」


次回:スターリー神殿の謎

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