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4人の魔法使いの冒険  作者: 藤見倫
第2章:スターリー神殿の謎
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第47話:スターリー神殿に挑戦

 マリーナと別れ、スターリー神殿を目指す。


「でも良かったわね、匠君の話に協力してくれて」


「うん。・・・大村君、ありがとね」


「別に」


「“どういたしまして”ぐらい言いなさいよ」


「じゃあ、どういたしまして」


「“じゃあ”は要らないっ」


「まあまあ千尋ちゃん・・・大村君のおかげでマリーナさんと知り合えたんだし」


「葵がそう言うなら、いいけど」


「でも協力と言っても大捜索をしてくれる訳じゃないからね。せいぜい会ったことがあれば教えるぐらいのもんでしょ」


「でも世界の半分だぜ? 会ったことある奴ぐらいいるだろ」


「その辺は本人や仲間の社交性にもよるかな。僕らだって、ここまで来て名前を教えたのはギンジさん一家ぐらいだし、さすがにすれ違うだけじゃ名前なんて聞かないからね。あと、逆にスクエア教の信者とトラブルを起こしてたら、知ってるけど教えない、なんてこともあり得るよ」


「またそんなこと言う・・・」


「で、花巻さん。匠くんはアクティブに人と話す方なの?」


 内気な花巻さんには悪いが、聞いておく必要がある。


「え? うーん・・・。私はこんなだけど、匠は結構人と話す方かも」


「じゃ、エコノミアやユニオンに行ってれば、本当に誰かしら名前ぐらいは知ってるかもね。だからそうじゃない場合に備えてスターリー神殿も探してみよう。今日はちょっと覗くぐらいにしとくけど」


「「うん」」

「うっしゃ!」


 北門に着いた。門番に挨拶を交わして外に出る。確かマリーナの話だと、


「おっ、駅だぜ!」


 中野が左側を指さし、その方向を見ると駅っぽいのがあった。レンガ造りで、どう表現すればいいのか分からないが、どことない重みと高級感がひしひしと伝わってくる。さすが運賃1200万円。


 WHITELIGHT EXPRESS


 駅舎にはそう書いてあった。


「ホワイライト、エクスプレス。・・・これだね。ホワイライトの綴りってホワイトとライトなんだ」


「それあたしも思った」


「なぁちょっと行ってみようぜ」


「そうだね」


 案の定、入口で止められた。


「ここから先は乗客以外の方の立入りはご遠慮頂いております」


「えー? ちょっと中入るぐらいいいじゃねえかよ」


「いいえ、できません。国家やスクエア教の要人、貴族も利用する列車です。無関係な方を不必要に立ち入らせる訳にはいきません」


「んだよー、ケチ」


「行こう、さすがに無理だよ。こんな立派な建物を近くで見れただけで十分だよ」


「申し訳ございません」


 駅員が深々と頭を下げる。大丈夫、駅員さんは悪くない。冷やかしなんかで来てごめんね。


「お金を貯めたら、また来ますので」


「その際は是非ご利用ください。歓迎いたします」


 再びスターリー神殿に向かって歩き出した。道は基本的に北の方角に続いているが、所々に木があって先の方があまり見えない。


「ちぇっ、せめて120万ならなー」


「それだと、それなりの稼ぎがある一般人がバンバン乗っちゃうじゃん。日本でだって、何十万もかかる海外旅行にかなりの人が行ってるんだからさ」


 そういう人たちに限って、自分たちは貧乏だからエコノミーぐらいしか乗れないとか言う。上には上がいるのだろうが、海外旅行なんて夢にも思ったことない人が山ほどいることを知らないのか、同じ人種だと思ってないのか。


「でも乗ってみたいわね、夢の豪華特急」


「そだね~。1200万なんて紙屑みたいに扱って、フワッフワのベッドで寝ている間に大移動、憧れるね」


「あたしはそういう意味で言ったんじゃないんだけど・・・」


 しばらく歩いていると、道から離れた位置にテントや小屋があるのが見えた。学者たちはここで寝泊りしてる訳か。テントはともかく小屋って・・・マジで長いこと籠ってるようだな。木が多くて視界が悪いが、見える限りだと20軒ないぐらいか。見張りがいる様子はないが、そういえばモンスター出ないな。でも学者の拠点があるということは、目的地は近いはずだ。


 さらに進むと、木々の隙間にそれっぽいものが見えた。広い石の台座のような物の上に、石造りの建物があるようだ。遠目に見ても分かる、古びた建物。ていうか穴ボコだらけじゃんか・・・。


「あれが神殿か?」


「みたいだね。なんかボロそうだけど、今度はきっと中にも入れると思うよ」


「どんな感じなんだろうね」


 近くまで来た。神殿というよりは、遺跡っぽい感じだ。やはり本体はボロボロのスカスカ。崩れ残った感じの外壁に、所々にコケ。元は西洋の古城風の建物だったような感じだが、もはや廃墟に近い。


「なあ、これが学者たちが30年も調べてるっていう神殿か?」


「とにかく階段を上がってみよう。地下への入口とかがあるかもしれないよ」


 あった。階段を上がったら、目の前に。


「本当にあるのね・・・」


「昨日の森よりも敵が強いらしいから、心して掛かろう」


「おう」

「「うん」」


 神殿の中は、床も壁も天井も石造りだった。学者たちが出入りしてるからか、照明が整備されていて明るい。階段を下りて最初にあるこの空間は、面積は教室を3×3でくっつけたぐらい、天井も教室の3倍ぐらいの高さだ。正面の壁にはドアぐらいのサイズの穴が開いていて、奥に進めるようだ。その前に、黄色いスライムがいた。イエロースライムかな?


「アイスソード」


 まずは距離を取って攻撃して、さらに近づいて氷の剣で3回切りつけた。生きてるので2回追加したらスライムは消えた。ランクアップしたとは言え所詮はスライム、耐久が上がっただけだ。


「えーっと、弱点は、っと、・・・・・・ないかぁ。雷の耐性はあるみたいね」


「弱点まで分かるなんて便利だよね」


 メニュー画面さん、まじパないです。


「マジ便利だよなぁこれ。・・・ん? このワニの奴だけHPも弱点も書いてないぞ?」


「あ、ホントだ。なんでだろ」


「まだ倒したことないからじゃない? 昨日はイカは何匹も倒したけど、ワニは大量のイカと同時に出てきて、僕がギャランクスに捕まったから倒さなかったよね」


「そっか。・・・あれ? でもクレイゴーレムは倒す前から風が弱点だって分かったわよ、昨日」


「あーそうそう。俺の魔法じゃ全然死んでくれなくてなあ。千尋ちゃんが風使ってから楽になったんだぜ。2匹目からもあっさりよ」


 と言うことは、多分。


「・・・クレイゴーレムとは、グリンタウンでも会ってるからね」


 濁して言ってみたが、通じるだろうか。


「でもあたしたち倒してなくない? 味方だったし、暴力団にやられちゃったんでしょ?」


 やはり通じなかったか。


「僕らからすればそうなんだけど、ゲームシステムがどう判断するかは別だよ。形はどうあれ、一度遭遇したモンスターを戦闘不能にした。だから弱点とかが分かるようになったんだと思う」


「でもそれって・・・」


「言いたいことは分かるけど、それしか思い付かない。味方してくれたゴーレムが敵に殺されて、ゲームシステム的には倒したことになってるのは悲しいけど、僕たちは、ちゃんと覚えておこう。ゴーレムも、狼もリスもコウモリも、彼らが戦ってくれたおかげでグリンタウンを守ることができた」


「うん・・・そうね」


「ちきしょう・・・俺たちがもっと強ければな」


 その悔しさを忘れないでいてくれ。人の、―――あの場合は“モンスターの”だが―――力を借りるのは、悔しいことだ。どんなことも自分で解決できる力を、俺は求めている。

 だけど世の中、人が力を貸してくれるのは当然だとか言う人がいるし、断ったらもちろん、真面目にやっても失敗すれば文句を言う。ここにいるメンバーが、そうじゃなくて良かった。俺はみんなのこと、ライバルだとも思ってるよ。切磋琢磨しながら強くなっていこうじゃないか。


「ワールドマップも便利だけど、ダンジョンのマップとかもできないのかな?」


 そう言ったのは高松さんだ。思い立ったら念じてみよう。メニュー画面様に不可能はない。


「・・・できるみたいだね。スターリー神殿のことも念じてみたら、もっと細かいのも出たよ。地図を書く手間が省けるね」


 階段からの最初の部屋。スターリー神殿の内部図まで表示された。


「おっマジだ。これなら迷わずに帰って来れるな」


「ホント凄いわねこれ・・・」


 ホントそう思います。無駄話、と言うほど無駄ではないが、話すのもほどほどに奥の部屋に進んだ。


「うわぁ・・・」


 高松さんがウンザリした感じでそう漏らす。今度は、入って正面の壁む含めて四方の壁に穴が開いていた。そんな気はしてましたよ。正面は3部屋先ぐらいまで見えてるね。


「とりあえず適当にうろついて、MPが減ってきたら帰ろっか」


「そうね」


 コウモリが出て来た。これまでのは緑がかっていたが、こいつはグレーがかっている。モンスター図鑑チェック。グレーバット、やはりHPや弱点は書かれていない。


「レベル30で魔法増えたから、試してみるね」


「あっズリぃぞ大村」


 杖を両手で持ち前に向けて、念じるとコウモリの真下の地面に魔法陣が現れた。フレイムアローのよりちょっと大きい。模様も微妙に違うように見えるが、地面に石のつなぎ目とかヒビがあって分かりにくい。


「キューボイドフレア」


 ブオーーーッ、という音と共に2mサイズの立方体の形をした炎が現れ、3秒ほどで消えた。コウモリはまだ生きていた。消費MPは40。攻撃範囲が広いのは便利だな、コウモリ1匹にはもったいなかったが。


「んじゃ、あとお願い」


「よっしゃ!」


 中野が2発魔法を当てて倒した。さてモンスター図鑑だ。ブラウンバット、HP1200、MP50、弱点は、・・・愛? 耐性は土。


「そういや俺、レベル25なっても魔法増えなかったぞ?」


 愛が弱点なのに触れたかったが、先にこっちの話を済ませよう。


「光と闇に25で覚える魔法がなかったんじゃない? 僕も雷と水しか増えなかったよ」


「ちぇっ、つまんねーの」


「風もないなら、あたしも25じゃ増えないのね」


「頑張って30まで上げようぜ、千尋ちゃん」


「そうね。葵も頑張ろっ」


「うん」


「そんな花巻さんに朗報かも。さっきのコウモリ、弱点に愛属性ってある」


「え? ・・・あ、ホントだ」


 愛属性はモンスターも回復するって話だったが、コイツには効くのか? ちなみにグリーンバットの弱点は火だけだった。


「ちょっと試してみよっか」


「うん」


 右の部屋に行くと、またコウモリがいた。花巻さんがコウモリに杖を向けて、俺らに当たるとHPが回復する水色の光を放った。


「キキッ!」


 明らかにダメージを受けているような反応。


「効いてるみたいだね。もうちょっと当ててもらってもいい?」


「うん」


 1回、2回、3回、でもコウモリは死なない。貴重な花巻さんのMPをこれ以上は使えない。目の前の敵の残りHPが分かる方法とかないのか? 普通のRPGならそういうアイテムがあったりするんだが、このゲームにはアイテムという概念がないからなあ。


「これでさっきのキューボイドフレアで倒せたら、ダメージが入ってたことになるよね」


「そっか。お願い」


「キューボイドフレア」


 倒せた。花巻さんの愛の魔法でダメージが入っていたらしい。


「何でかは知らないけど、このグレーのコウモリには愛属性も効くみたいだね。でも大事な回復だから、無理には戦わなくてもいいよ」


 むしろ戦わないでくれ、とはさすがに言えなかった。でも花巻さんには気付かれてるかも知れない。


「うん。・・・やっぱり、ちょっと怖いから」


 本心なのか俺の真意を察しての発言なのかは分からない。


「でももしもの時は、お願いね」


 高松さんがそんなフォローを入れた。MPは10あれば俺らのMPを回復できるから、出番は愛属性しか効かない敵か、花巻さんが1人になってしまった時だけだ。


 その後も適当にレベル上げをして回った。昨日使いそびれたリキュペイトミストとパラライソードも含めて、新しく増えた標準魔法の確認をした。リキュペイトミストは回復だった。それも複数人回復可。ひんやりしたミストが出てきて、その中にいれば回復する。MPコスパはキュアよりも悪い。複数人回復できる代わりに1人当たりの回復量は小さいようだ。

 パラライソードは、3mぐらいの雷の剣が出て来て1回だけ振れて、当たった敵は麻痺で数秒間硬直する。フローズンフォールは、拳サイズの氷がたくさん降ってくる。ゲイルタイガーは、黄緑に光る虎が出て来て突進。プレスディスクは、2枚の大きな円盤が出てきて敵を挟む。


「よっしゃ俺も30なったぜ! スターストリームだってよ、強そうじゃね!?」


 で、使ってもらった。中野が杖を正面に構えると背中のすぐ後ろに直径3mぐらいの魔法陣が出てきた。


「いくぜ! スターストリーム!!」


 中野の背中にある大きな魔法陣から、敵に向かって収束していくように小さな光の粒がたくさん飛んで行った。確かに、強そうだ。技の差なのか魔攻の差なのか、グレーバットを一撃で撃破。


「うおうぇーーーい! マジ強ぇじゃんこれ!」


「あたしもそれ使えるようになるんだ。楽しみ」


「俺たちも結構強くなってきたんじゃね?」


「あんまり油断しねいようにね」


「へーい」


 高松さんのレベルは26止まりとなったが、MPが残り3割を切ったところで外に出た。帰りでもやはり神殿と街の間ではモンスターが出なかった。そういうプログラムなのかも。


 向かい側から人が歩いて来ている。見るからに学者って感じだが、剣も持っている。この世界では、古い神殿を調べるのに戦闘能力も必要なんだな。もう5時過ぎだが、これから中に入るのだろうか。学者ってのは大変だな。


「君たちもスターリー神殿を調べているのかい? プレイヤーも増えてきてるっていうのも、デタラメではないらしいね」


 話し掛けてきたよ、この人。


次回:登場、ライトブラザーズ

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