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4人の魔法使いの冒険  作者: 藤見倫
第2章:スターリー神殿の謎
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第45話:ギャランクス

「ふいぃぃ~~っ。ウマかった~~」


 焼肉定食を食べ終えた中野が、背もたれに身を預けて背伸びした。確かに美味かった。畜産が盛んなだけあって、美味くて安くてボリュームもある。俺が頼んだのは親子丼。味噌汁サラダ漬物付きで650円。腹がきつい。まさかラーメン盛るような丼ぶりで出てくるとは思わなかった。女性陣に至っては完食できずに中野に分けていた。この街でのレストランは気を付けよう。


「で、昼はどうすんだ? 今度はみんなで行こうぜ?」


「そうね。どこに行くのかも、もちろん決まってるわよね? 大村君」


 まあ、あれだけ時間があれば気付くか。北門の存在に。


「うん。北の方にスターリー神殿っていうのがあるらしいから、そこに行ってみよっか」


「お? 何だそれ?」


「ずっと外でレベル上げしてたら分からなかっただろうけど、北にも門があるんだよ、この街。そこから神殿に行ける。敵もちょっと強いらしいからレベル上げにもいいかもね」


「マジで!? 神殿!? いいねいいねえ、行こうぜ神殿。森の奴らにも飽きてきたんだよな。てかレべル大村抜いて28だぜ? ざまあみろ」


「何が”ざまあみろ”なのかは知らないけど・・・僕は魔攻も低いし、一番火力がある中野君に期待しよっかな」


「おう任せろ!」


 その後もしばらくレストランでゆったりしていると、


 カンカンカンカン、カンカンカンカン、


 と、鐘のような音が聞こえてきた。


「何だ?」


「え、なになに? 何なの?」


 4人してキョロキョロしていると、


「ギャランクスだーー!! ギャランクスが来たぞぉーーー!!」


 ギャランクス? 何だそれ。店員さんに聞いてみた。


「おそらく、植物魔獣ギャランクスのことだと思います。たまに迷い込んでくるんですよね」


 植物魔獣ギャランクス・・・心当たりが有り過ぎるのだが。


「ねえ大村君、それって・・・」


「多分その予想は正しいと思うよ。みんな、行こう」


 会計を済ませて外に出た。住民は西に、兵士は東に向かっている。ならば俺たちが向かうのは、東だ。逃げ惑う住民に逆行して東門に向かった。

 兵士と、行商人の護衛らしき人物たちが門のすぐ外側で待ち構える先に、昨日のあの巨大植物がいた。こちらに向かって進んでいる。兵士が放つ矢を蔓で叩き落としている。あと、意外と野次馬の住民たちがこの付近にも残っている。巻き込まれても知らないぞ。


 俺たちの他にゲームプレイヤーはいないようだ。ある程度近づいてきたら出番だな。昨日お世話になったお礼をちゃんとしないとね。


「やっぱ昨日のだよね、あれ」


「みたいだね。追いかけてきたのかな」


「まあこれだけ戦力がありゃ大丈夫だろ」


「どうだろうね。いつ蔓を伸ばしてくるか分からないから気を付けて」


「おう」

「「うん」」


 ギャランクスの動きに注意しながら待っていると、空から何か降ってきた。


「あらあら、せっかく旅行気分で来てたのに敵襲なんて、ツイてないわね」


 人だった。肩ぐらいまでの長さの銀髪にブルーの瞳。一番目立つのは何かボワッとした感じのドレス。全体的に紺色で、水色のフリル付き。俗にいうゴスロリだ。あと、手先から肘ぐらいまでの長さのステッキを手にしている。


「マリーナ様・・・マリーナ様だ! こんな時に居てくれてるなんて、ツイてるぜ!」


 住民たちから歓声が沸く。「ツイてない」と言う本人に対して「ツイてる」と言う住民たち。頼りにされているようだ。


「あの・・・よろしいので・・・?」


 兵士までもがマリーナと呼ばれる人物に頼っている。


「わたくしは構わないけど・・・」


 マリーナがこちらを見た。


「構いませんよ。こちらとしても、実力者がどれほどのものか見てみたいですし。でも経験値欲しいので僕らも手出しはしますが」


「あ~ら、わたくしを試そうってこと? 面白いボウヤね。でも、手を出すことができるかしら?」


「え?」


 マリーナがステッキを前に向けた。ギャランクスの足元に水色の大きな魔法陣が現れる。


「ハイドロキャノン」


 ザッパーン! という大きな音と共に大量の水が出てきてギャランクスが打ち上げられた。


「フリーズサークル」


 今度は手首だけでステッキを回しながらそう唱えた。魔法陣は出なかったが、水色の輪っかが出てきて、ギャランクスが重力に引っ張られてその輪を通過すると、通過した部分から凍り付いていった。


「終わりね」


 マリーナはそう言ってステッキを内ポケットにしまった。つまり、ギャランクスはここまま地面に激突して砕ける。


 ブオォン!


 俺は追い風を作って自分自身の体を前に向かって飛ばした。ギャランクスの真下辺りで風を止めたが勢い余って転ぶ。


「大村君!?」


「オイどうするつもりだ!?」


 俺は落ちてくるギャランクスに杖を向けた。MPを150消費して、


「ザ・ボックス」


 土の箱を飛ばした。


 バゴオォン!


 ギャランクスは砕けた。土の箱も割れたが、欠片の1つ1つはまだ大きい。残りのMPを使って粉々にした。氷と土の破片が降ってくる。地味に痛いが、まあいい。


<レベルが30になりました>

<火属性魔法(中級):キューボイドフレアが使用可能になりました>

<水属性魔法(中級):フローズンフォールが使用可能になりました>

<風属性魔法(中級):ゲイルタイガーが使用可能になりました>

<土属性魔法(中級):プレスディスクが使用可能になりました>

<装備ランク(近接)がDになりました>

<装備ランク(射撃)がDになりました>


 お、一気に30になった。やったぜ。魔法が増えたのと、無駄に近接と射撃の装備ランクが上がった。

 歩いて門の方に戻ると、やはりみんな不思議そうな顔をしていた。


「あらあら、可愛いわね。あんなことしなくても退治できたのに」


「でもおかげさまで経験値を稼ぐことができました。ありがとうございました。 中野君、悪いね、レベル30一番乗りは僕だよ」


「はあ? ・・・うっわマジだ! 大村テメェずりぃぞ!」


「知らないよそんなの、動かなかった中野君が悪いんじゃん」


「くっそぉ~」


 中野が拳を握りしめ、ぐぬぬという表情を見せる。


「ぷっ。あっはははははははは! ホント面白いわね貴方。まさかこのわたくしを利用するなんて、初めてだわよこんなの。責任は取ってくれるのかしら?」


「取りませんよそんなの」


「うふふ♪ ツレないところもいいわねえ~。ねえ貴方、スクエア教に入らない?」


 右手で俺の顎を撫でてきた。やめてくれないかな。


「あの、どちら様で・・・?」


「あ~らごめんなさい、わたくしったら。プレイヤーなら知らなくても無理ないわね。わたくしはマリーナ、スクエア教という宗教の大司教よ。覚えててね♪」


 性格はどうあれ、かなりの実力者だ。自分より強い存在を忘れるつもりはない。


「ここで一気にレベルを3も上げてくれた恩人を、忘れるつもりはありませんよ」


「うっふふ。益々面白いわねえ。そうだわ、このあと教会にいらっしゃい。ホワイライトの中の南側にあるわ。小さな町だから迷わないと思うけど」


「は、はあ・・・」


「それじゃあ、また後でね」


 そう言ってマリーナは立ち去った。住民たちは、突如現れて魔獣を倒したヒロインに歓声を送り続けている。


「で、どうするよ? 行くのか? 教会」


「行くしかないよね。怒らせると怖そうだし。あの人が本気出したら僕らなんて即全滅だよ? 正直あんまり関わりたくないけど、仕方ないよ」


「んじゃ決まりね」


「ごめんね、余計なことしたばっかりに」


「いいわよ別に。もしかしたらこの先でも味方してくれるかも知れないし」


「じゃあ行こっか。一旦宿屋で回復させてもらうけど」


 まだ微妙に騒がしい東門を後にする。その直後、


「よ~う。久しぶりだなぁ、グリンタウンの救世主さんよぉ。ホワイライトでも目立ってくれてんじゃねえの」


 振り向くと、そこにいたのは、


「ロージ・・・! 何の用だ」


 こんな所まで来てたのか。後ろに2人、仲間らしき人を連れている。


「”何の用だ”とはご挨拶だなぁ、え? ま、でもテメェにゃ感謝してるんだぜ? おかげでこうして新しい仲間とトレジャーハンターやれてんだかんよぉ」


「トレジャーハンター?」


 確か、モンスター退治とかで金を稼ぐ奴ら。


「そうさ。ま、宝なんてそうそうねぇから、モンスター退治とか鉱石採取とかで金稼いでんだけどな」


 ご苦労なこった。


「チンピラはやめたのか?」


「テメェが壊滅させたんだろうが。ウォーターランドも随分ショボくなっちまったよ。ガキしか居やがらねぇ。付き合ってらんねぇよ」


 俺はお前に付き合ってられないんだが。


「用がないなら、じゃあね。こっちは用事があるんだよ」


「知ってるぜ? テメェやるじゃんかよ、スクエア教の魔女・マリーナに気に入られるなんてよぉ?」


 羨ましいなら変わってくれ。


「魔女?」


「そうそう。魔法使いとしての実力も高くて、あの美貌に美声ときた。虜になる男たちが多いってもんで”魔女”って呼ばれてんのよ。マリーナ目当てに入信する奴もいるって話だ」


 くだらん。


「そっか。情報ありがと」


「あ! くっそテメェ、チッ。まあテメェからすりゃあ俺がベラベラしゃべっただけか。・・・そうだテメェ、オームラって言うんだよな? 俺ぁ知っての通りロージだ、こっちは仲間のグレンにリカルテ。覚えてろよな」


「あなたが僕より強くなることがあれば、覚えるよ」


「ちえっ。相変わらずナメたこと言ってくれんなぁオイ。ま、でも2回もやられた身だ。ここでケンカ売るなんてバカな真似はしねぇ。んじゃ俺らはスターリー神殿でひと稼ぎしてくるから、またな」


 ほう。少しは学習しているようだ。今度会ったらスターリー神殿のことでも聞いてみるか。


「大村って、変なのにばっか好かれるんだな」


「変わってよ」


「勘弁しろよ。ロージは論外だし、あの魔女もなんか怖ぇし」


「とにかく行こっか、その魔女の元に」


「へ~い」


 宿屋に戻って回復だけ済ませ、魔女の待つ教会へと向かった。



次回:魔女の待つ教会へ

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