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4人の魔法使いの冒険  作者: 藤見倫
第2章:スターリー神殿の謎
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第44話:散策

 西門を発見。道の確認ついでに俺もちょっとレベル上げするか。街中の散策は、もう少し人々が動き出してからでもいい。坂を上りきって西門に到達。振り返ると、宿屋から見たのと似たような絶景が見えた。ここで一旦深呼吸。

 再び西門の先を見る。森だ。歩き出そうとした瞬間、何かの気配を感じて左を見た。高松さんがベンチに座ってウトウトしていた。絵になる。その膝の上で、軽く手を添える形でリュックを抱えている。そういえばそんなの買ってたな。結局戦闘の邪魔になるのか使ってないことが多いけど。細身の高松さんの体にもスッポリ収まる小さなリュックも、主人の膝の上で休憩しているように見える。


 寝ている人、眠たそうな人には話しかけない主義なのだが、昨日驚かした埋め合わせをしなければならない。高松さんなら、睡眠を邪魔されても、話しかけてきたことの方を評価するだろう。むしろ見かけたのに素通りした方がマイナスだ。


「こんなところで、お昼寝?」


「ん・・・? あ、大村君。やだ、あたしったら寝るつもりなんてなかったのに」


 高松さんは目をこすりながらそう答えた。


「やっぱりまだ、疲れてる?」


「うん、そうかも。大村君のせいだからね」


「う・・・あれは、ごめん。ちょっと驚かせようと思っただけだったんだけど」


「うふふふっ。別にいいわよ。あれくらいでビビってるようじゃダメだったんだから。それより、今日はやけに素直ね」


 ご所望とあらば軽口を叩きますが、という言葉を呑み込んだ。


「いいじゃんたまには」


「ずっと素直でいてくれたらもっといいんだけど」


「う・・・」


 しまった。そう捉えられたか。やはりちょっと、ここ最近はおふざけが過ぎたようだ。


「せっかく素直だと言ってもらったついでにもう1つ。・・・いい眺めだね」


「うん。ここからだと、街並みもセットになるから尚のことね」


「西側はこの通りだし、南と北もなんかよく見えないから、やっぱり東が一番いい景色なのかもね」


「じゃあ部屋が東向きだったのはラッキーだったんだ」


「だと思うよ。頑張ってここまで来たご褒美だね」


「うっふふふふふっ♪ 今日の大村君、ホント変」


 高松さんは手を口に当てて笑い出し、そう言った。素直になったら変だと言われるこの始末。さて、これくらいにしよう。女子との会話は、ちょっと足りないぐらいがちょうどいい。


「それじゃあ、僕はちょっと街の外見てくるから、また後で」


「うん、気を付けてね」


 高松さんと別れ、目の前の森に入った。埋め合わせは、及第点と言っていいだろう。何をした訳でもなく、ただ話しただけだが、それがいい。クズ男アピールその他、呆れさせるような発言は少しずつ復活させていこう。


 森の中はこれまで出て来た敵しかいなかった。東側の森にいた、コウモリ、ゴブリン、ゴーレム、そしてウォーターランド付近にいたグリーンウルフ、コットンクリッス。あまりウジャウジャは出てこないが、さすがに1人だと消耗する。中野もレベル上げするとか言ってたが見当たらないな。HPとMPは減っているようだから道から外れて行ったか、東側に行ったかだな。まあいいや。


 10時を過ぎたので西門に戻った。高松さんの姿はもう無い。レベルは2上がって27。中野は25だ。俺はもう街中の散策に移るから、頑張ってくれ。ひとまず、この先ですぐに敵が強くなるということはなさそうだった。気になったのは下り坂が無かったこと。この標高のままエコノミアとの国境かもしれない。

 門番の兵士によると、国境を越えるのに入出国審査はあるがプレイヤーは身分証明とかは要らない。ただしその審査をせずに行くと不法入国でお尋ね者になる。道に沿って森を抜ければ審査のための関所があるそうだ。ついでに、聞かなかったのに教えてくれたのだが、国境を越えると少しずつ下り坂になっていくらしい。


 街中の散策に移り、15分ほど歩き回ったところで装備屋らしきものが見つかった。木製で”営業中”の看板。品揃えは案の定、ウォーターランドやグリンタウンに劣る。小さな町だし、こんなものだろう。でも光関係の装備は、ここにしかないものもあるらしい。通常の半分の消費MPで”ホーリーライン”が使える杖(Cランク)、光の矢を放つ弓(Aランク)、魔法陣さえ手に入れれば”魔人滅殺剣”が使える剣(Sランク)、闇属性魔法を軽減する鎧にローブ(Cランク以上)などなど・・・さすが光の街。


 1つ気になったのは、装備オリジナル魔法”フォールスター”が使える杖(Bランク)。杖の名前も”フォールスター”。どんな魔法なのか気になるが、お値段50万円なり。今の所持金が15万ちょいだから、ちょっと遠いな。でもCランク装備買い過ぎた割にはモンスター退治だけで結構回復したな。


「この”フォールスター”ってどんな魔法なんですか?」


 店員さんに聞いてみた。


「ああ、それですか。買う人はたまにいるけど、その魔法自体は見たことがないなあ。気になるならぜひ、自分の手で確かめてみて」


「Bランクの杖ってレベルいくつから使えるんですか?」


「君が魔法使いなら、40からだね」


 40か。この街にいる間には無理かもな。


「ありがとうございます。もう大丈夫なのでお仕事続けてください」


 装備屋もそんなに大きくないので10分ほどで物色を終えて出た。一旦回復しに宿屋に戻ろうると、女将さんが羊羹をくれた。部屋に戻って食べた。美味かった。

 システム上のHPとMPを念じることで回復させ、俺自身の体力と気力は15分ほどの休憩で回復を図った。11時前、再度出発。集合は12時、1時間あればホワイライトを歩き尽くすことは難しくない。


 11時を過ぎても人の動きはまばらだった。公園で遊ぶ親子、市場で買い物するお母さん、遠くを眺めて佇む老人。何のことはない時間が、この街を流れていく。民家が多いが、牛小屋、豚小屋、鶏小屋が目立つ。畜産がメインの産業のようだ。街中とは打って変わって、大抵の畜産小屋の中は作業をしている人が何人もいた。


 市場を覗くと、肉と卵がこれでもかというほど並んでいた。全てホワイライト産。他のものは外の街から仕入れるらしい。行商人のグループがいくつかあって、それなりの頻度で金稼ぎに訪れるそうだ。


「こんにちは」


 せっかくなので行商人に話し掛けてみた。商品は馬車に積んである。そばにいる屈強な3人は護衛だろうか。


「おっ、ゲームプレイヤーだね。こんにちは、何か用かい」


「この街で取れないものを持って来てるんですか?」


「ああ、そうだよ。グリンタウンで野菜を、ウォーターランドで洋服や雑貨を、サウスポートで魚を仕入れて来るんだ。逆に、ここで手に入る良質な肉や卵を売りにも行くよ」


「へえ。・・・この馬車であの大きな川を渡って来たんですか?」


「君はウォーターランドからここに来たのかな? サウスポートからだと、橋が架かってるから渡れるんだよ。だけどサウスポート付近はモンスターが強くてね、彼らに護衛してもらってるんだ」


 行商人は馬車のそばにいる3人を親指で差してそう言った。


「うち1人は国の兵士。行商人の届け出をちゃんとすれば派遣してもらえる。もちろん売上の一部が巻き上げられちゃうけどね。あと2人は個人的に雇ってる」


「そうなんですね。お役所としても流通は大事でしょうからね」


「ははは、おかげで稼がせてもらってるよ」


「これ、いいですか?」


「もちろん! 毎度あり」


 歯磨き粉を買ってその場を後にした。あとはレストランをいくつか見かけたが、基本的には民家と畜産小屋しかないようだ。畜産小屋が多い割には、あの独特の臭いがあまりしない。小屋によほど近づかない限りは大丈夫だ。あの宿屋の観光業もあるだろうから何かしら策を打ってるかもしれない。富裕層がどれだけ金を落としていくかにもよるが。

 宿代は破格の安さだから、豪華料理と、あの肉と卵の爆買いぐらいしかないし、移動中の護衛費用はさすがにこの街には落ちないだろう。


 南側は制覇したが、教会のような建物がある他は特にこれと言ったものはなかった。

 ところが、北側を半分ほど回ったところで、市庁舎の隣に、あるはずのないものを見た。門だ。ウォーターランドに向かう東門、エコノミアに向かう西門、この北門は、何だ?


「む、どうした。スターリー神殿に行くのか?」


 スターリー神殿? 兵士は確かにそう言った。


「この先に何かあるんですか?」


「む、知らなかったのか。ホワイライトの北に古くからある神殿だ。謎を追求する学者と、モンスター退治で金を稼ぐトレジャーハンターがよく訪れる」


 なるほど。それもある意味で観光業かな?


「へえ~。そんなのがあるんですね」


「興味があれば行ってみるといい。ただし、モンスターは周辺の森よりは強いから気を付けろ」


「スノーウィーンやサウスポート周辺並みの強さですか?」


「いや、そこまでではない。あの強さを体験したのであれば、すぐにはやられんだろう。とは言え魔法使い1人では無謀だ。仲間がいるのであれば連れて行くことを勧める」


 いるよ、仲間が。みんな魔法使いだけど。


「ありがとうございます。では、出直してきます」


 北門を離れ、ホワイライトの残りのエリアを制覇した。11時45分か、帰ろう。スターリー神殿の話もしないとな。



「お帰り」


「うん」


「お・か・え・り」


「ただいま」


 女性陣は既に戻って来ていた。このやりとり、身に覚えがあるんだけど。もしかして毎日続くの? 面倒だから次からはちゃんと挨拶しよう。


「くかーーーっ」


 中野がいびきを掻いていた。昼寝だとこうなのか?


「ゆうべもそうだったけど、大村君、いつもこれ聞いてるの?」


 は・・・? いつもなのか?


「いや初めて聞いたけど、中野くんのいびき」


「え、昨日のも聞こえなかったの・・・?」


 花巻さんは何も言わないが、驚いたような顔でこちらを見ている。


「どうやら、僕が熟睡し過ぎて聞こえてないだけみたいだね」


「まじ・・・? 羨ましいわ」


「いや~それほどでも」


「褒めてないんだけど」


「バレたか」


「”バレたか”じゃないでしょ」


「しょうがない」


「しょうがなくない!」


 ああ、いつものこの感じ。胸にしみる。高松さんはちょっと呆れ顔だが。


「ま、眠れないほどじゃないからいいけどね」


「僕は、いざ寝ようって時にこれだとキツいかな。ほら、繊細だから」


「どの口がそれを言うのよ・・・」


「この口」


 俺は自分の口を指差した。


「・・・今のは聞かなかったことにするわ」


しばらくは部屋でまったりして過ごした。今度はせんべいの差し入れがあったようだ。緑茶との相性がいい。


 12時半を過ぎたところで昼食を摂ることにした。


「ほら、中野君起きて。お昼食べに行くわよ」


「ん~? おぉ千尋ちゃん。そうか、もう昼か」


「宿屋には頼んでないから、外で食べるしかないね」


「うっし。どんなのが食えるんだろうな」


 女将さんには悪いと思いつつ、玄関でひとこと声を掛けて外に出た。ホワイライトランチ、楽しみだな。



次回:ギャランクス

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