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4人の魔法使いの冒険  作者: 藤見倫
第2章:スターリー神殿の謎
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第42話:星空の麓、光の街ホワイライト

「おお、・・・むら、・・・・・・くん・・・?」


 目の前に現れたのは、植物の化け物に連れ去られたはずの大村君だった。


「ただいま」


「お、おう・・・。お前、無事だったのか?」


「何とかね」


「マジかよ。まさかあの化け物ブッ潰して来たのか?」


「まさか。そんなの無理だよ。逃げて来ただけ」


「大村君、HP減ってるよ。回復する?」


「じゃあちょっとだけ、お願い。MPも20ぐらい」


「うん」


 葵が大村君を回復させた。私は相変わらず地面に尻餅をついたままだ。


「で、高松さんどうしたの? 大丈夫?」


 この人・・・分かってて言ってるんじゃないでしょうね・・・。おかげでちょっと気を持ち直してきたけど。


「ちょっと大村君、いきなり出てこないでよね。ビックリしちゃうじゃない」


 私は立ち上がりながら言い、大村君に詰め寄る。本当に、みっともない姿を見せてしまった。


「あ~~、いや~~。みんなに追いつこうとダッシュで来てたんだけど、みんなの姿が見えたしなんか余裕ありそうだったから、ちょっと驚かせようかなと思って」


「余裕なんてなかったわよ! 薄暗い森でどこまで進めばいいのか分かんない状態だったのに」


 全く、人の気も知らずに。知ってての行動だったらもっと許さないけど。


「あ~・・・、はは・・・ごめん」


 大村君は目を逸らし、こめかみを掻きながら答える。反省してるのかしらね。でも、大村君が戻って来てくれて少し気が楽になったのは事実だし、大目に見てあげよう。


「はっはは! こりゃメシ奢りはナシだな」


 あ、中野君いいこと言う。


「それもそうね。そうしましょ」


「え、何の話?」


「教えなーい」


「えー」


 大村君は軽く肩を落とし、抗議するように言う。ちょっとスッキリした。


「そういえば、どうやってあの植物の化け物から逃げてきたの? 蔓切るの無理だったんだよね?」


「ああ、当然本体の近くまで引っ張られたんだけど、本体に火の魔法をぶつけたらあっさり放してくれて・・・」


 --------------------------------


「フレイムアロー!」


 本体が至近距離に迫ったところで、植物に聞きそうな火属性の中級魔法を放った。


「グエエエェェェ!」


 植物は声を上げて怯み、俺の左足をつかんでいた蔓を放した。宙に投げ出されたが、風魔法でホワイライト側の岸に向かって飛んだ。よし、ようやく自由に動けるようになった。でもまだ目の前には巨大植物の化け物。さっきの蔓を引っ張る速度を考えると、走って坂を登っても逃げ切れない。となると・・・。


「キィッ!」


「うおっ!」


 植物が蔓で攻撃してきた。特に避けなかったが空振りだった。蔓は5~6本見えるが、同時に伸ばせるのは1本だけか? さっきも俺1人しか捕まえなかったみたいだし。

 とにかく残された逃げ道の確認だ。植物の動きに注意しつつ、走って後ろ側に回り込んだ。水深があるのか、この巨大植物がいても流速はさほど鈍っていない。いける。


「フレイムアロー」


「グエエエェェェ!」


 再度フレイムアローで怯ませて、すぐさま地面に手を着いて川に入った。体が流される。顔を水面に出すのを維持するのがやっとだ。たまに水を飲んで咳き込む。潜ってしまった方が完全に隠れられるのだが、溺れたら意味ないし、水飛沫が激しいから人間の顔1つなんて見えないだろう。

 あの植物野郎が目以外の感覚で敵を認知していればバレるが、それでも蔓を伸ばすスピードがこの激流に勝たないと俺を捕まえるのは無理だ。まさか、こんな形で激流が役に立つとは。走って逃げるよりも断然速い。


 沈まないようにもがいていると、途中で川幅が広がり流れが緩やかになった。これぐらいなら何とかなりそうだ。もがき疲れたのだが、MP節約のためだ、泳ごう。流されつつも横方向に泳いで向かった。


 岸に上がった。上流側を見たが、植物が追いかけて来る様子はない。


「フーーーーッ」


 息をつき、しばらく横になって休んだ。残りHPは63、MPは27。頑張ってはみるが、ホワイライトに辿り着けるだろうか。

 みんなはどうだろう、メッセージは来てないようだが。少なくとも、戦闘不能にはなってないし、最悪は俺だけでもホワイライトに辿り着ければ問題ない。集中を切らすのも悪いからこっちからメッセージを送るのはやめておこう。


 15分ほど休んだだろうか。今は5時10分ぐらい、あまり遅くなってはいけない。川に沿って戻るとあの植物とご対面だから北西の森に入るしかないな。

 ワールドマップを開く。ウォーターランドから西に進む線が途中で分岐している。南に伸びている線が俺、もう片方がみんなが進んでる方の線だな。誰か1人でも行けば全員分のマップに反映されるらしい。ここからは北北西の方向だな。あとは3人の進路を辿るだけだ。マップに表示されている線がうねっているから道があるのだろうが、近道もできそうだ。


 川の水を飲んだ。おいしい。意を決して森に入った。


 --------------------------------


「・・・って感じかな」


 大村君がこれまでの変遷を話してくれた。ホントに逃げ切ったんだ。てか川に流されて逃げるって・・・。でも走っても逃げ切れないならそうするしかないか。でも私が連れ去られてたとして、その判断ができただろうか。

 あと、ワールドマップ? 念じてみたら出てきた。見事に、私たちが通った分と大村君が通った分の線がある。何で教えてくれなかったのか、あとで聞いてみよう。


「そっか。大変だったね。ありがと、あたしたちを逃がしてくれて」


「いいよ別に。捕まったのが3人のうちの誰かでも見捨ててたから」


 やっぱりそうなのね・・・。


「そういうこと言わないの」


「はーい」


 この大村君の「はーい」が、ちょっとかわいい。高校生なのに子どもっぽいところがあるのよね、この人。


「あの化け物から逃げたのは分かったけど、どうやってここまで来たの? MP27だったんでしょ?」


「ああ。それはさっき、みんなに追いつくためにダッシュで来たって言ったよね。ダッシュしたのにはもう1つ大きな意味があって」


「まさか」


「そのまさか。いや~~、ゴブリンもゴーレムも足が遅くて助かったよ。コウモリもしばらく走ってたら諦めちゃうし」


 ・・・呆れた。でもそうするしかないよね。これは、私でもそうしたと思う。


「まさかお前ダッシュで逃げて来たのか?」


「そうだよ。MP27で全部倒すとか無理だし、また何があるか分からないから一匹も倒さずに温存してきたよ。どうすれば戦わずに済むかなんて、考えるだけ無駄無駄。こういう時は力技が一番だよ。戦わなければ、戦わずに済むんだよ」


「マジかよ・・・」


「でもここからはちゃんと戦うよ? 4人でダッシュしたらまたハグレちゃうし」


「そうだな。てか上り坂なげぇよ、ホワイライトはまだなのか?」


「確かにちょっと長いけど、道は坂で良かったと思うよ」


「なんでだ? 疲れるじゃんかよ」


「こんな木に囲まれて遠くが見えない状態で戦ったりしたら、平地だと敵倒し終わって進もうとした時にどっちか分からなくなるよ。坂になってるから、戦おうが踊ろうが上を目指して進めばいいって分かる」


「へえ~~。言われてみりゃそうかもな。迷わずに済むのは坂道のおかげか、ありがてぇな」


「でも、ほんとホワイライト遠いね」


「だな」


 話がひと段落ついたところで、


「で、大村君、ワールドマップがあることはいつから知ってたの?」


「え、ワールドマップ? ・・・グリンタウンに着いた直後かな」


「お? そんなもんあんのか? ・・・マジだマジだ、凄ぇ!」


 葵もメニュー画面を出して凝視している。知らなかったみたいね、ワールドマップ。


「あたしたち誰も知らなかったんだけど、どうして教えてくれなかったの?」


「え・・・? えーっと、ほら、高松さん、グリンタウンで地図付きでメッセージ送ってくれたじゃん。だから既に知ってるかなーって」


 なるほど、ちょっと納得。


「あ~、確かにそんなことしたかも。あれ頭で念じたら地図できてメッセージに添付もできたんだよね。何でワールドマップのこと考えなかったんだろ、あたし」


「さあ、それは僕には分からないかな~」


 またそんな人を突き放すようなこと言う。


「じゃあ大村君、モンスター図鑑は知ってる? これも念じたら出るんだけど」


「え? ・・・あ、ホントだ。弱点まで載ってるね。手に入るの待ってたのに・・・何で気付かなかったんだろ」


 それ、あたしもさっき思った。


「さあ、それはアタシには分からないかな~」


「う・・・」


 これでおあいこね。人に冷たいこと言うのはダメだって、分かったかしら。

 さて、早くこんな森早く出ちゃいたいな。


「じゃ、4人そろったところで進みましょ」


「おう」

「「うん」」


 4人で進み出した。もうすぐ6時。さっきよりは暗くなっているはずだけど、さっきまでの不安が嘘のようにすっ飛んでいた。大村君1人戻って来ただけでこんなに違うなんて。でもそれは、それだけ私が大村君を頼りにしているということ。


 このままではいけない。私も、今の大村君のように、自分自身を最後の頼みの綱にできるようにならないと。このゲームを始める前はできていると思ってたけど、ダメだった。最初からずっと大村君のペースで、さっきだって、薄暗い森と中々見えないゴールで不安になってしまった。あの程度のことで腰を抜かしたんだから、相当だと思う。まだまだ足りない。


 それからもたまに敵は出て来たけど、精神的に楽になったからかサクサク進めた。そして・・・


「出口だ!!」


 ほぼ90度の大きなカーブを曲がり終えるぐらいの所で中野君が叫んだ。中野君が指さす先に、光が見えた。木々の隙間にしっかりと見えた。西の空の、夕焼けが。森の出口から差し込んでくる光が、その出口までの一直線の道を照らしていた。光に向かう緩やかな上り坂が輝いて見えた。


「ヨッシャやっと出れたーーー!」


 中野君が両手をYの字に伸ばして背伸びをする。本当に、やっと出られた。


「ついでに、入口もあったね」


「え?」


「うん。・・・あと、すごくきれい」


 開けた先に、門が見えた。街だ。きっとホワイライト。その奥には、赤と青が入り混じったような夕焼けが広がっていた。視界の半分は空。太陽の姿は見えないけど、まだ明るい。やっぱりあの森が暗かっただけみたい。マジなんなの?


「行こう」


「「うん」」

「よっしゃあ!」


 大村君の掛け声に返事をして歩き出す。待ちに待ったゴールだ。門まではまた上り坂。街を頂上に丘のような地形になってる。街自体も、段々畑のようになってて奥に行くほど高い。でももう何ともない。足が軽いのなんのって。でもこの丘は森に囲まれてる。森はしばらく勘弁かな。


 ついに門の所まで着いた。


「よく来たな。ここは王国最西端の街、ホワイライトだ。他の街と比べると小さくて施設も少ないが、ゆっくりして行くといい。宿屋は、あの煙突のある建物だ」


 兵士に軽くお礼を言って宿屋に向かった。早く休みたい。

 印象としては、小さくて、のどかな街。グリンタウンよりも小さい。プライマリぐらいかな? 門もそうだったけど、ほとんどの建物が木造で3階建て以上のものはなく、道も特に整備されてなくて民家がぽつぽつとある感じ。もう日没だからか、人もまばら。カラスの鳴き声が聞こえる。


 煙突のある建物についた。2階建てだけど、とにかく広くてお金持ちの屋敷みたい。お値段も低めならいいけど。


「いらっしゃい」


 着物を来た、おそらく女将さんが出迎えてくれた。失礼ながら年齢は結構ありそうだけど、顔も化粧も整ってて綺麗な人。


「こんな時間によく来たねえ。そこの森、暗かったでしょう?」


 それはもう。


「2人ずつに分かれるなら全部で4,000円、4人ひと部屋なら2,000円だけど、どうする?」


 あ、そういう聞き方する? てか、やっす。


「僕はどっちでもいいけど」


「どうする?」の言葉を視線に込めて、大村君が葵と私に目配せする。普通に考えれば別々の部屋に別れたいけど、


<葵、いい?>


<うん、大丈夫>


 さすが葵。「いい?」の一言だけで全てを理解してくれた。あと、メッセージって便利。洋服は四次元収納に仕舞えるし、着替えはお風呂の時だけ。まあ大丈夫でしょ。


「せっかくだし、みんな同じ部屋にしよっか」


「お、マジで!?」


 分かっていた事だけど、中野君のテンションが上がる。大村君は返事をせずに女将さんの方を向き直して、


「じゃあ4人ひと部屋でお願いします」


「はい。それじゃあ500円ずつね。お風呂はあっちに行った突き当たりの右が男湯、左が女湯。部屋はそこの階段を登ってすぐ右。今日はもう疲れたでしょう? 7時半にお食事をお持ちしますからね。ホントは1,000円なんだけどぉ、イケメン君とべっぴんさんに今日はサービスしちゃう」


 え、夕食付き? しかもタダ? やった。もう外に出る気力残ってない。今は6時半。全員でお礼を言って部屋に向かった。


「はあ~~~~~っ。疲れたあ~~~~」


 私は畳の上に座り込んだ。てか部屋広い。これで4人で2,000円って破格でしょ。


「はい」


 大村君が布団セットを私のそばに雑に投げてきた。


「ありがと」


 私は布団の上に倒れ込んだ。嬉しいけど、投げなくてよくない?

 みんな疲れたのか、布団を敷いて横になった。と言っても掛け布団と枕をまともに使っているのは葵だけ。他3人は畳んである状態の布団セットの上に身を投げている。意識はすぐに落ちた。


 --------------------------------


 ピピピピッ、ピピピピッ、ピピピピッ。


 アラーム音で目が覚める。あれ、あたし設定してたっけ?

 やっぱり、葵のものだった。7時20分。アラームなかったら絶対起きれなかったわね。辺りを見ると、大村君だけが既に布団から離れていて、窓際で外を見ていた。早く目が覚めたのかな。外はどんな景色なんだろう。


「わああぁっ」


 鳥肌が立った。目の前には、満天の星空が広がっていた。文字通り、星の数ほどの星が見えた。窓を開けたら吸い込まれそう。かなり遠くに、ウォーターランドっぽい人工的な光の集まりもある。今日一日で、ここまで来たんだ。


「どうしたんだ? 何かあんのか? ・・・うおおおおぉ、なんだよこれ・・・」


「す、ごい・・・」


 後から窓側に来た2人も息を飲んだのが分かった。上を見上げずとも、この景色。近くに広い平原があれば、そこはもう星の海の下ね。大村君はキョトンとした無表情で、無言で外を見続けている。何を考えてるんだろう。


 コンコン、とノックの音が聞こえた。


「はーい」


 返事すると、ガチャリ、とドアが開いた。女将さんと3人の従業員の人が食事を持って来てくれた。一目見ただけで分かる、豪華な和食だ。


「あらあら、みんなこの街は初めて? いい景色でしょう」


 いい景色なんてもんじゃない。絶景と呼んでいいレベル。

 女将さんたちはテーブルの上に食事を置いた後、入口の前で一旦止まってこっちを向いて、女将さんが先頭に1人、他の3人がその後ろに横に並んで正座した。そして、4人揃って深々と頭を下げた。


「ようこそおいでくださいました。光の街、ホワイライトへ」



次回:休息

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