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4人の魔法使いの冒険  作者: 藤見倫
第2章:スターリー神殿の謎
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第41話:3人の旅路

 大村君が植物の化け物に連れ去られた。

 残された私たちは激流のそばで立ち尽くしている。


 下って来た坂を振り返ってもイカやワニの姿はない。でも、戻るのは無理だ。空を飛ぶ練習をしてなかったのは失敗だった。街から街への移動しか考えてなかったけど、敵を飛び越えるだけなら出来ていたはずなんだ。


「なぁ、どうする?」


 激流の轟音が響く中、中野君が尋ねてくる。


「・・・進むしか、ないでしょう」


「大村はほっといていいのか?」


 基本的にノリが軽いけど、結構仲間想いなのよね、中野君。


「その大村君が進めって言ったのよ。彼は、仲間が助けに来て喜ぶようなタイプじゃないわ。彼にとっては、次の街に進めないと意味がないのよ」


「でもよぉ・・・」


「お願い、中野君も来て。その方が全滅しにくくなるのは分かるでしょ? でもどうしても大村君を助けに行くって言うなら、あたしだけでもホワイライトを目指して進む」


「・・・私も、ホワイライトに行くよ」


葵も、表情を強張らせながらもそう言ってくれた。


「・・・分かった、俺も行く。こんな所を女子だけで行かせるなんて男が廃るぜ!」


「ありがとね」


 もっと強情かと思ってたけど、中野君は意外とあっさり引き下がった。葵の表情も穏やかになる。大村君には悪いけど、先に進もう。


「大村には、あとでメシ奢らねぇとな」


「ええ、そうね」


 でも、もし、連れ去られたのが私たちの誰かだったら、大村君はどうしただろう。やっぱり残った3人で先に進んじゃうのかな。目の前には激流と、足場となる岩。


「あたしが一番後ろから行くわ。何かあったら風魔法で助けるから」


「おう、頼むぜ。でもこりゃあ、葵ちゃん負ぶって行くのは無理だな」


 “負ぶって”って・・・。優しいのはいいんだけど、中野君の場合ちょっと下心を感じるのが気になる。


「ううん、いいよ。自分で頑張るから」


「んじゃまず俺から行くぜ。よっと」


 中野君が最初の岩に飛び移る。


「意外と行けるじゃねぇか。ほら、葵ちゃん」


 中野君がこっちに向かって手を伸ばす。それぐらいならいいかもね。


「ありがとう」


 葵が中野君の手をつかみ、飛び移る。


「んじゃ千尋ちゃんも」


 私は別にいいんだけど、断るのも悪いしお言葉に甘えようかな。中野君の手をつかんで、飛び移る。


「ありがとね」


「おうよ、大村がいねぇ時ぐらい役に立たねぇとな」


 あなたも気にしてたのね。いつも大村君が活躍しちゃうから。張り切るのはいいけど、空回りして転んだりしないでね。

 そんな調子で岩から岩へ飛び移り、向こう岸まで渡った。大ジャンプまでは必要なかったのが救いだった。


「ふい~~~っ。何とかこっち側に来れたな」


「お疲れ。でもここからが本番だよ? モンスター出るんだから」


「うげ。てか千尋ちゃん大村のネガティブ思考移った?」


「え・・・? いや、ただ油断は禁物って言いたかっただけよ」


 何だか言い訳がましくなってしまった。確かに大村君もよくこういうこと言うわね。あれも油断するなって意味かしら。


 坂を登りきり、目の前の森を見据える。木の密度が高いせいか、ほんのり薄暗い。今は4時半前。明るいうちにホワイライトに辿り着きたい。大村君がいないけど、私たちだけでホワイライトまで行かなきゃ。彼に頼らなくて済むようになることが、私の目標でもある。


「行こう」


「うん」

「おう」


 3人で固まって進み出す。中野君が先頭、その後ろに葵と私が横並び。森の入口に到達。土が表に出ている部分が道になって先に続いてるけど、かなり曲がりくねっている。森だから仕方ないか。


「なんか気味悪ぃな」


「ホント、早く抜け出したいわね」


 進んでいると、上り坂が出て来た。それも、結構続くみたい。


「うえ~~っ」


「・・・進むしかないわね」


 その後またしばらくして、


「ケケッ!」


「うおっ、何だ!?」


 なんか、鳴き声みたいなのが聞こえた。


「敵? まあ出るんでしょうけど。いるんなら早く出てきなさいよー?」


「ケケッ!」


 ともう一度鳴き声が聞こえたと同時に右の方からガサッと音がして、コウモリとゴブリン(?)のような生き物が1体ずつ出て来た。コウモリはヴェルデュール森林にいたのと同じ。あの時は味方になってもらったけど、


「敵ね」


「よっしゃ掛かって来い!」


 私は杖を光属性の魔攻UPの方に変えた。中野君は装備をどうしてるかは知らないけど(メニューで確認できるけどいいや)、先陣切って走って行った。


「まずはテメェだぁ! おりゃあ!」


 中野君がゴブリンを攻撃。初めて見る敵だけど、どうだろう。でも私はコウモリと戦わなきゃ。コウモリも、見たことがあるってだけで戦ったことはないから強さが分からない。ちょっと距離はあるけど、コウモリの注意を引きつけるために光の玉で攻撃した。目論見通りコウモリが向かって来た。


「ケケッ!」


 鳴き声はコウモリのものだったのね。可愛い声してるとこ悪いけど、光の玉をもう一発ぶつけた。コウモリはその場に落ちて、すぐに消えた。


「よっしゃ倒したぜ! ざまぁみろ」


「こっちもOKよ。2発だったわ」


「コイツは3発だったな、弱そうなクセして」


「ま、コウモリよりは体力ありそうだし」


 その後すぐにまたコウモリ&ゴブリン1体ずつ出て来たのを倒して進んでいると、今度は土でできた大きな人形のようなものが反対側から歩いてきた。


「コイツは・・・あれだ、ゴーレムか!」


「そうみたいね。でも今度は敵よ」


「わぁってるよ」


 グリンタウンではゴーレムにも助けられた。全く別の個体だと分かっていても、攻撃するのは少し心苦しい。


「うおおおおぉっ、食らいやがれ! ブラックインパクトォ!!」


 中野君が先端に闇属性を付けて杖を振り下ろし、ゴーレムに攻撃した。さすがに一撃では倒せない。ゴーレムが中野君を攻撃しようと腕を振り上げる。


「させないわ! スパイラルショット!」


 螺旋状に飛ぶ3つの空気砲がゴーレムに直撃、ゴーレムはバランスを崩して仰向けに倒れた。


「きゃあっ!」


 葵の声に反応して後ろを見ると、ゴブリンが迫って来ていた。


「中野君ゴーレムお願い!」


「おう!」


「こら、葵に近づくんじゃない!」


 光の玉を一発飛ばした。ゴブリンが倒れたところでダッシュで近づいて、至近距離でもう2発。ゴブリンが消えたのを確認してゴーレムの方を見ると、中野君は苦戦気味だった。HPはあんまり減ってないみたいだけど、中々倒せないでいる。アレ、弱点とかあるのかな。ていうかモンスター図鑑とかないの?


 ・・・あった。メニュー画面を出して、念じてみたら当然のように出てきた。ブルースライム、HP100、MP0、弱点なし、耐性なし。他にもグリーンスライムやブルーウルフも出てきた。ブルーウルフの弱点は雷、グリーンウルフの弱点は火。やった、弱点まで分かるじゃん。まさか大村君もこれ知ってて・・・? いや、彼はこういう隠し事はしない。後で教えてあげよう。


 で、本命のゴーレムは、っと。クレイゴーレム、HP1200、MP0、弱点:水・風、耐性:雷・土。風が弱点だ! 私の出番ね。


「中野君どいて! そいつ風が弱点みたい」


「え? そうなのか?」


「いいからどいてっ」


「お、おう。じゃあ頼むわ」


 ゴーレムの前に立ち、杖を前に向ける。動き鈍そうだし、これくらい近づいても平気だと思う。風魔法を1発、2発、3発。3発目が当たった瞬間、ゴーレムはその場で崩れて土の山になった。3秒ぐらいで消えた。


「へえ~~っ。こんなガタイして風なんかが効くんだな」


「まあゲームだしね。魔法の風だとHPが減るようになってるんじゃない?」


 話すのもそこそこに進み出した。進むにつれて少しずつ暗くなっていく。光が入りにくくなっているのか、日が傾いているのか、その両方か。

 時間を確認する。5時過ぎ。いつもこの時間、日はどれくらい傾いているのだろう? 延々と続く上り坂にも体力を奪われていく。それでも、もう進むしかない。


 その後も、コウモリ、ゴブリン、ゴーレムが何度か出て来た。さっきのイカや、ウォーターランドまでの道の狼と比べると頻度は少ないかも。MPがみんな70ぐらいまで減ってるから助かる。でも薄暗くて気味が悪いし、疲れてきたしで歩くペースが落ちている。もう5時半。かれこれ1時間はこの森の中にいる。

 本当にこの道がホワイライトに続いているのか、不安になってきた。


 大村君のステータスを確認してみた。HPは残り63。かなり減ってるけど、まだ無事みたい。だけどMPは残り27。頑張って、大村君。


「なぁコレいつになったら着くんだ?」


「さあ、わ、分からないわ」


 やばい。ちょっと声震えたかも。


「道に沿ってるから、大丈夫だとは思うけど・・・」


「そうだよなぁ・・・」


 早くゴールに着きたいけど、どうしても歩くスピードが上がらない。あんまりトロトロ行くと敵と戦う回数も増えるのに。せっかく光魔法があるのに、MP節約のために戦闘以外には使えない。救いなのは、道に分岐がないこと。さすがにまだ3つ目の街だからそんなのは出ないかな。川に崖、巨大植物の化け物に薄暗い森、もう十分過ぎるぐらいだ。


 でも、不安は募る一方。森が薄暗いから? ゴールが見えないから? 大村君がいないから? 進む決断を私がしてみんなを巻き込んだから? 考えても、分からない。全部かも。とにかく、不安だけが募っていく。


 みんなも話す気力がないのか、しばらく無言のまま歩き続けた。



 ガサッ。


「ひっ!」


「お~ビビった~~。いきなりデカい声出すなよ」


「ごめん。でも今」


 ガサガサッ。


「ひいっ!」


 思わず葵の腕にしがみついてしまった。私、こんな怖がりだったっけ?


「ご、ごめん」


「ううん、大丈夫だけど・・・」


「何だ今の? 俺にも聞こえたぞ?」


「またゴブリン? いるんならさっさと出てきなさいよね」


 ガサッ。


 左側から音がした。


「うっし、俺に任せろ」


 中野君が音のした方に少しずつ近づいていき、杖で軽く草むらをかき分ける。私と葵は道の真ん中でその様子を見守る。


「う~~ん、いねぇなあ。 先に進むか?」


 不意打ちされるリスクは減らしたいけど、このまま時間を浪費する訳にもいかない。でも、どうすれば・・・?

 中野君がこっちに戻って来る途中、



「わあっ!!」


「いやああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「うおっ!」

「きゃあっ!」


 突然聞こえた大きな声に、それ以上の大声を出して尻餅をついた上に手足をバタバタさせて後ずさってしまった。2人は、その場で立ち尽くしたままだ。その向こう側にいる、草むらから出て来たのは・・・、


「ああ~・・・ごめん。予想外に驚かせちゃったみたいだね」



「おお、・・・むら、・・・・・・くん・・・?」


次回:星空の麓、光の街ホワイライト

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