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4人の魔法使いの冒険  作者: 藤見倫
第1章:グリンタウンを救え
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第4話:"始まりの街"への道のり

「そういえば、愛属性魔法でMP回復できないの?」


 中野がスライム3匹にMPをほぼ使い切った。謎多き愛属性の確認も兼ねて救済できないか聞いてみた。


「やってみます」


 花巻さんは返事をして、杖を中野に向ける。


「頼む、回復してくれ・・・!」


 中野は両手を顔の前で合わせて祈りを込める。花巻さんの杖から青白い光が出て中野に当たって消えた。ステータスを確認すると、


「あー、変わってないね」


「やっぱダメかぁ」


「ごめんなさい・・・」


 中野のMPは3のままだった。本人は肩を落とし、結果が出なかったためか花巻さんが頭を下げる。いや花巻さんは悪くないよ、悪いのはMP使い切ったこいつだ。


「ということは今のはHP回復かな。多分しばらくはそれしかできないと思う」


 俺はそうコメントを残して歩き出した。3人もついてくる。いつの間にか俺が先頭じゃん。高松さんはしっかりしてそうだけど盾にしたら怒られそうだから仕方ない。せっかくだし歩きながら全員分のステータス確認してみるか。


 HP:大村100/100、高松100/100、中野100/100、花巻100/100

 MP:大村100/100、高松100/100、中野3/100、花巻97/100

 魔攻:大村60、高松90、中野90、花巻100

 装備ランク(近接):全員F

 装備ランク(射撃):全員F

 装備ランク(魔法):全員D


 ステータスについても戦闘タイプを選ぶ際に説明があった。物理攻撃力・防御力と魔防は設定されていない。あくまで生身の体で戦い、身体的ダメージがHP減少につながる。魔攻だけは設定されており、消費MPが同じでも魔攻が高ければ威力が上がる。

 装備ランクについては、全ての武器・防具は、近接戦士・射撃手・魔法使い専用でランクが設定されており、自身の装備ランクがそれを満たしていないと装備することができない。魔法使いを選んだので近接や射撃の装備ランクが低いという訳だ。良い剣や弓があっても装備できないし、防具も頑丈なのは近接や射撃の高ランクとなるだろう。HP、MP、魔攻の伸びも戦闘タイプによって異なり、魔法使いはMPと魔攻が伸びる。


 さて次の敵が近くなってきた。またスライム3匹だ。横一列に並んでいる。さっきの花巻さんの消費MPは3だった。普通にやれば中野のようにはならないと思う。問題はどれくらいの消費で敵を倒せるかだ。


「とりあえず1匹だけ、僕がやってみる」


「うん、お願い」


 高松さんの返事を確認し、俺は真ん中のスライムに杖を向ける。まずは火属性でいいかな。念じると杖の先に火の玉ができた。また念じると火の玉は前に向かって飛んで行った。スライムに命中する。煙が消えてもスライムは残っており、こちらに向かって歩き続けている。

 MPを確認、残り96。今ので4減った。もう一発火の玉をぶつける。まだスライムは死なない。MP残り92。さらにもう一発。ようやくスライムの姿が消えた。MP残り88、一匹倒すのに12使うのか。プライマリまでもたない気がしてきた。あと経験値が上がってる。さっきは見てなかったけど中野も俺の3倍の経験値を得ている。レベルアップまではまだ結構あるな。上がったところでMP回復するかも分からん。


「普通にやればそこそこいけそうだね。右のは高松さんに頼んでいい?」


「うん、任せて」


 高松さんは杖を前に向け、光の玉を飛ばした。確かにMP節約しなければならない状態ではダメージになるか分からない風属性は使いにくい。スライムが生きているのが見えたあたりで高松さんはもう一発追加した。砂埃が消えると、スライムの姿はなかった。倒せたようだ。高松さんの残りMPは92。


「あれ? 2発でやっつけちゃった」


「魔攻の差だと思うよ。1.5倍違うからね」


「あ、そっか」


 魔攻の差がデカいから属性差は自分で確かめるしかないな。でもMP節約しなきゃいけないし、水とか風はちょっと試しづらい。気になるけどやめておこう。


「左のはまた、僕がいくよ」


 土や雷を使う前に試したいことがある。のっそり進んでくるスライムに対し、俺も少しずつ歩いて近づいていく。


「大村君?」


「ごめん、ちょっと試したいことがあって」


 高松さんの声に振り返らずに返事して前に進む。スライムだし大丈夫だろう。残り2mぐらいに接近した辺りで俺は杖の先に火を発生させ、一気に前に踏み込んで火を帯びた杖でスライムを殴った。そしてすぐさま下がって距離をとる。


「おっ」


 残りMPは86。つまり消費は2だ。何発で倒せるかな? もう一発殴り、まだ生きていたのでもう一発。スライムが消えた。やっぱり3発か。残りMPは82。よし、今度は6の消費で倒せたぞ。俺はこっちの方を見ている3人の元に戻った。


「MPさっきの半分で済んだよ。近距離で使った方が節約できるみたいだね。さすがに殴れとまでは言わないけど、ある程度は近づいた方がいいかも」


「へぇ~、そうなんだ。凄いね、ありがとう」


 高松さんは一旦手元の杖を見て、最後の”ありがとう”だけ俺の方を見て言った。この人も殴りにいくとこまでやりそうだけど、どこまで近づいて魔法を使うか、お手並み拝見させていただきます。


「よし、次に行こう」


「ちぇっ、俺もMP残しときゃよかったぜ」


「自業自得じゃん」


 俺の言葉を合図に4人そろって歩き出した。中野は未だに嘆いており高松さんから厳しいコメントが入る。またスライム3匹だ。今度は高松さんに2匹やってもらおうかと考えていると、


「スライムなら魔法抜きでもいけんだろ、真ん中のは俺がいくぜ!」


 中野が真ん中のスライム目がけて走り出した。まあいいや。魔法抜きでどれほど戦えるかも知っておきたい。両端のスライムが中野に集まる様子もないので傍観することにした。


「どりゃああ!」


 中野は杖でスライムを殴った。MPが3あれば一発は魔法が出せるが、温存するつもりだろうか。


「このノロマ、まだまだいくぜ!」


 と中野が杖を真上に振りかぶると、スライムが体当たりしてきた。


「ぐほっ!」


 中野は少し後ろにのけぞる。HPは5減って95になっていた。まあこんなものか。あいつタフそうだし俺らがくらったら7~8ぐらい減るかも。まあ油断しなければもうくらわないだろう。とりあえず真ん中のは中野に任せよう。


「じゃあ僕は左のをやっつけようかな。花巻さん、中野の回復はちょっと待っててもらえる?」


「うん、分かった」


 中野を回復させるのは魔法抜きでも戦力になることが分かってからだ。回復用のMPを戦力外に使うわけにはいかない。俺は歩いて左のスライムに近づいていく。今度は雷属性を使ってみよう。念じたら杖の先端が電気を帯びた。それでスライムを殴る。やっぱ一発じゃだめか。もう一発。まだ生きてるのでもう一発。よし、倒せた。残りMPは76、スライム相手だと火と雷はほとんど変わらない。

 右を確認すると、中野はまだ戦闘中、高松さんは右のスライムを倒したようだ。見てなかったけど、位置的に3mぐらいまで近づいたのかな? 残りMPは86。消耗は6だからさっきよりは節約できている。


 その後、しばらく中野の戦いを見続けていたが、一向にスライムは消えない。武器が杖だからなぁ・・・スライムに打撃って相性悪そうだ。

 2~3分ほど経っただろうか、さすがにこれ以上待つのはめんどい。


「中野くん、ごめん、もう待てない」


「ちょっと待ってろ! もう魔法使うから」


 中野の杖の先に黒い光が現れ、その杖で中野は思いっきりスライムを殴った。が、スライムは生きていた。仕方ないので俺が近づいてまた雷を付けて殴った。ようやく真ん中のスライムが消えた。

 中野のMPは0だ。中野も俺と同じように殴っていたが、気合を込めた分MPを消耗したのだろう。その分威力はあったはずだし、闇属性も火や光ぐらいは効くだろうから、物理攻撃でほとんどダメージを与えられていなかったことになる。中野のHPは残り75。結構くらってんじゃん。花巻さんも近くまで来ていたが、


「中野くん、悪いけど」


「ああ分かってる、回復はいらねえ。もう俺は役に立ちそうにないからな。マジであの街まで連れてってくれよ? 俺これで終わるのやだぜ?」


「何とかするよ」


 俺としても突破率97%のここで終わるような屈辱は避けたい。


「じゃあ進もうか」


 俺たち4人は歩き出す。結構プライマリが近づいてきた。あと1~2戦といったところだろう。しばらく進むとようやく敵の影が見えてきた。ちょっと間が空いたな。少しずつその影がはっきりとしてくる。


「ん・・・?」


 違和感を感じて声が出た。


「ねえ、あれって」


 高松さんも声を出す。うん、やっぱりだ。真ん中のはスライムじゃない。狼だ。全体的に淡い水色の毛で一部が白く、中型犬ぐらいのサイズだ。その両サイドにはこれまでと同じスライム。プライマリはもう近い。これで最後だろう。ボス戦といったところか。


「中野くんの出番があるみたいだね。まず僕と高松さんでスライム潰すから狼の足止めしといて。体がもつ限り。今度は打撃もそこそこ効くんじゃないかな」


「オッケー、任せろ。やれるところまでやってやるぜ」


「高松さんも準備はいい?」


「うん、あたしは右のスライムやるね」


 さあ、いよいよボス戦だ。ここを突破すれば街に入って落ち着ける。気合入れていこう。


次回:初のボス戦、4人の魔法使い 対 ブルーウルフ

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