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4人の魔法使いの冒険  作者: 藤見倫
第2章:スターリー神殿の謎
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第39話:遠くに響く鐘

 北門に戻って来た。


「む、お前たちか。随分と早かったな」


 この兵士にも大体の予想は付いてるだろう。ごまかしても印象が悪くなるだけだ。4人の魔法使いは目立つし変に覚えられたくない。

 俺はこめかみの辺りを掻きながら、


「あはは・・・敵が強すぎたので諦めました」


 と答えた。


「そうか。ならば次は西にあるホワイライト、さらにその先の国境を越えてエコノミアを目指すといい。南にあるサウスポートに行くにもモンスターの強さはここと同程度だからな」


「そうですか。ありがとうございます、そうします」


 兵士と別れて橋を渡り、水上バスを目指した。


「で、どうするんだ?」


「ん? ホワイライト行くしかないんじゃない? サウスポートまでの敵も激強なんだし」


「いやそりゃそうなんだけど、すぐに行くのか?」


「ああ、いや。とりあえず休憩してから装備屋にでも行こっか。中野くん戦闘不能のままだよ?」


「あ、やっべ。そうだったわ。んじゃ回復してから装備屋だな。どんなのがあるんだろうな~」


「行ってみてのお楽しみだね」



 ホテルに到着。回復後、ロビーへ。ガラガラなので6人掛けぐらいのソファー席にした。


「はあ~、疲れた~~。なんなのあれ強すぎでしょ」


 高松さんが脱力するようにソファーに腰を下ろす。


「いや~参ったね、あんなに強いとは。初心者が行けないようにするためかもね」


「だね。じっくりホワイライトを目指しましょ」


 もうすぐ10時。中野はパスタ、他3人はデザート食べて装備屋に行くことにした。俺がチョコパフェを頼んだことにみんな目を丸くしたが、まあいいや。甘党男子、だめ?


 宿屋のスタッフによるとウォーターランドの装備屋は”クロスポイント”停留所付近にあるらしい。この大きな街に1つしか無いが、それがかなり大きいとのこと。



 水上バスを降り、宿屋でもらった地図を見ながら装備屋を目指す。5分ほどで着いた。5階建てで、確かにデカい。ちょっとしたデパートみたいな感じだ。フロアガイドを確認すると、装備ランクごとにフロアが分かれていた。下から、D、C、B、A、S。さすがにEとFは売ってない。


「僕らは2階だね」


「どんなのがあるんだろうな」


 エスカレーターで2階に上がる。制服を着た店員が深い礼で出迎える。上に上がるほど接客対応も変わるのだろうか。

 エスカレーターを降りて左右で武器・防具と別れていた。まずは武器。品揃えはグリンタウンよりも良い。が、”ファイアボールが使える”などの小ネタ的な機能が多い。自分の持ち属性以外の魔法が使えるのはいいのだが、1属性だけ、下級魔法でしか使えないのはなぁ・・・。


 うーーーん。普通に考えれば今持ってる全属性魔攻5%UPのままでいいのだが、空を飛ぶMPコストを考えると風属性魔攻10%UPも捨てがたい。2本の杖を片手ずつに持って悩んでいると、店員が話しかけてきた。


「そのどちらかでお悩みでしょうか。ご予算に余裕があれば両方持っておくのも手ですよ」


「両方? 2本以上持てるんですか?」


「ええ、同時に装備できるのは1つのみですが、所有は複数でも可能です。プレイヤーの方は念じることで交換できますから、複数所有される方が多いですよ」


「あ、そうなんですね」


 所持金は25万弱、結構金が増えた。基本的な活動がレベル上げだったし、今の装備はタダで手に入れたからな。Cランクの杖は一本3万円、余裕はある。装備の切替は3秒かかるらしいが、切羽詰ってる状況でなければ問題ないだろう。

 基本は全属性魔攻5%UPのままで、空飛ぶ用に風属性魔攻10%UPと、杖での打撃に音属性追加するやつを買おう。


 会計を済ませて他の3人を待つ。2~3分ほどで全員揃った。女性陣2人は何も買わず、それぞれ風と愛の魔攻UPのまま。中野は”レイソニック”が使える杖を買った。お、あんたも音属性か。でもそれ下級魔法だろ? 止めないけど。


「大村君杖2つ買ったの?」


「うん。メインはこれで、空中移動用にこれと、音属性用にこれ」


 俺はその場で、パッ、パッ、と杖を変えながら見せた。


「あ、うそ、そんなことできんの!? ちょっと待って、光の魔攻UP買ってくるから」


「やっべオレ持ってたの売っちまったわ! ナシにしてもらえないか聞いてみる!」


「私も、もう1本持っておこうかな」


 3人がバタバタ移動し始めて、5分ほどで戻って来た。だが、花巻さんの表情が冴えない。なんでも、愛属性しか使えない人は他の属性は一切使えないらしい。まじか。回復に専念しろということだろうか。


「んん~~~、そういう設定じゃ仕方ないね。防具、見に行こっか」


「うん」


「あ、そうだ大村君、こんなことできるなら早く教えてよね」


 高松さんはその場で杖を交換して見せた。


「僕もさっき店員さんに教えてもらったんだけど」


「その後すぐに教えてくれればいいじゃない。一番に買い物終わって待ってたんでしょ?」


 そうきますよねー。


「いや、だって、聞かれなかったから」


「聞かれなくても教えるの!」


「・・・努力はするよ」


「結果は出るのよね」


最後の「ね」をやたら強調された。俺は無言で防具のコーナーに歩き出した。


「あ、こら・・・もう」


 防具はバッファローブCを追加した。さっきのような事もあるから念のため衝撃吸収力が高いのを持っておきたい。あとタイネツローブCも追加。・・・ネーミングにはもう突っ込まなくていいよね・・・?

 で、基本はHPダメージ5%減のエイドローブCにしよう。高松さんと中野も俺と同じで、花巻さんはバッファローブCをメインにしたようだ。さっきの透明リスのタックル、よほど痛かったのだろう。


 防具も3万円のものが多かったが、バッファローブとエイドローブは4万円と割高だった。Dランクでもバッファローブは他より高かったから需要があるのだろう。俺たちもこうして買ってるし。

 仲間同士の装備の貸し借りはできないようだ。できたところで、一緒に行動していれば必要な装備は同じだし人数分あった方がいい。



 装備を整えたところで”クロスポイント”周辺で昼飯にした。


「ねぇ、今日どっかで洋服とか買いたいんだけど、いい?」


「別にいいけど、今日のうちに1回、ホワイライトまでの道の敵も確認しておきたいかな。でもお店は何時まで開いてるか分からないし、先に買い物でもいいよ」


「やった、ありがとね。葵も行こっか」


「うん」


「なあ俺も行っていいか? せっかくの都会だし、どんなもんか見てみてぇ」


「いいわよ、一緒に行きましょ。大村君はどうする?」


「僕はいいや、その辺で涼んどくよ」


「そ。じゃあ大村君に合いそうなのがあったら買ってあげるね」


「え? それは構わないけど・・・」


 ついに俺も、同級生女子に服を買ってもらうところまで堕ちたか。万歳。



 昼食後、早速別行動となった。


「じゃあ大村君、また後でね」


「うん、買い物済んだらメッセージお願い」


「オッケー」


 さて、1人になった。適当にぶらぶらして、疲れたらどこかの喫茶店に入ろう。街の散策は割と好きだ。特に、良いデザインの建物があるとテンションが上がる。建物フェチと言ってもいい。いや~この街は素晴らしいですな~。グリンタウンの素朴な感じも良かったが、やはりこの西欧風の建物が花形だ。空中水路や噴水などのオブジェもいい味を出している。昨日は女性陣の方に気力を消耗して景色をじっくり見る余裕がなかったから、ぶらり1人街歩きといこう。


 1時間ほどで”クロスポイント”の周辺は歩き尽くした。あまり離れる訳にもいかないし、ちょっと疲れたから切り上げよう。停留所構内に喫茶店があったのでそこに入る。落ち着いて休憩するなら喫茶店に入るしかないのだが、コーヒーも紅茶もあんまり好きじゃないんだよね・・・。とはいえ1人で来てオレンジジュースとかは頼みにくいからカフェオレにした。ついでにベーグル1個。


 席についてカフェオレやベーグルを口に入れつつぼんやりしていると、


<大村君いまドコ?>


 高松さんからメッセージが来た。買い物は終わりか?


<停留所にある喫茶店。2階の西側にあるやつ>


<分かった、今から行くね。またパフェ?>


<カフェオレとベーグル>


<かわいいね>


 何が。

 まあ何でもいいけど。とにかくここで待っていよう。窓越しに通路が見える場所に座ったから向こうが気付いてくれるだろう。



 15分ほど経った辺りで、窓の外側にやたら手を振る人がいたのでパッと見ると高松さんたちがいた。左手を軽く上げて応えて立ち上がる。食器を返却して外へ。


「お待たせ」


「別に。むしろゆっくりできて良かったよ。昨日は疲れたからね」


「っ・・・それはどういう意味ぃ?」


「じゃあ西門に行こっか」


「あっ、こらぁ!」


 その後ろでは、中野が花巻さんに「面白れぇよな、あれ」とか言っている。少しは仲良くなっているようで何よりだ。

 高松さんが俺の前に回り込んで来て、


「はい、これ、大村君の分」


 紙袋を差し出してきた。本当に何か買ったようだ。Tシャツ1枚ってことは無さそうに見える。


「寝る時ジャージなんでしょ? 今日はこれ着てね」


今日だけでいいの? と聞くのはやめておいた。


「・・・ありがとう」


 高松さんが紙袋本体を両手でつかんでいるので、上のヒモに手をかけて受け取った。さらに頭で念じて四次元収納へ。



 水上バスで”ウェステストパーク”に到着。昨日見ておいた園内マップによると、西門はこの公園を抜けた先にある。東みたいに門の目の前に停留所をおいてくれよ。

 最短距離ということで、散歩がてら公園の中を突っ切って進む。西門が小さく見えた辺りで、



 ゴーーーーーーーン、ゴーーーーーーーン、



 と鐘の音が聞こえてきた。何だ? 今は昼の2時12分、鐘が鳴るには中途半端すぎる。鐘はまだ、ゴーーーーーーーン、ゴーーーーーーーン、と鳴り続けている。


「何だこれ?」


「さあ?」


 周りの一般市民も、キョロキョロしたり空を見上げたりしている。鐘が鳴り続ける中、1人の男が叫んだ。


「間違いない、覇者の鐘だ・・・! 覇者の鐘だぞおぉぉぉ!!」


 覇者の、鐘・・・? 周りの市民もこれに呼応するように声を上げる。


「覇者の鐘? 久しぶりね」

「2年ぶりぐらいじゃねぇかぁ?」

「いいねえ、いいねえ、この音♪」


 やがて、あちこちから歓声が上がるようになった。


「え、覇者の鐘? 何なの?」


 高松さんが当然の疑問を漏らす。


「さあ、聞いてみた方が早そうだね」


 適当に近くにいる人に声を掛けた。


「すみません、この音、何なんですか?」


「ああ、お前さんたちは初めて聞くのかい? 見たところプレイヤーみたいだな。これは覇者の鐘と言ってな、ゲームクリアしたプレイヤーが現れたら鳴る鐘さ。ここだけじゃない。世界中に響いてるぜ」


「へえ、そうなんですね」


 ゲームクリアしたパーティが出たら、鳴る鐘。


「さっきも誰か言ってたが、2年ぶりだ。明日、覇者以外のプレイヤーは入れない街でパレードがあって、覇者の4人はそこでこの世界を後にする。こうして世界中に知らせるのは、俺らこの世界の住人はその街に入れるから、パレードで祝福するのさ。もっとも、その街はユニオンの端の方にあるから、この辺の奴らはよほどの物好きしか行かないがね」


 覇者しか入れない街、パレード、この世界との別れ。いつの間にか、鐘は鳴りやんでいた。


「すっげぇな、そんなのがあるんだな」


「お前さんたちも頑張れよ。魔法使いばっか4人じゃ大変だろうがよ」


「頑張るなんて当たり前ですよ。あと、魔法使い4人は最強の組合せなので」


「がっはっは。だったらクリアして鳴らしてみな、あの鐘を」


「それも当たり前です。今のが2年ぶりだったみたいですが、今年はもう1回聞けますよ」


「がっははははは! 最高だぜお前さん! やってくれよお?」


「はい。では僕らはこれで。鐘のこと、教えてくれてありがとうございました」


「おうよ」


 別れを告げ、歩き出す。北にある山の向こうがユニオンだ。おそらくエコノミア経由で西からしか入れないから、その街は最東端にあるはずだ。


「すっげぇな大村。俺でもあそこまでの大口叩かねぇぞ」


「ああごめん、大口叩くのは得意だから」


「でも大村君なら、ホントにできちゃいそうな気がするよね」


「実績からすると、50%ぐらいだね」


「え゛」


「おいそこは”失敗したことは無い”ってカッコよく言ってくれよ!」


「しょうがないじゃん事実なんだから。できるかどうか分からないことをやるんだから、失敗に終わることもあるよ。でも、やろうよ。今朝も逃げてきたばかりだし、まだまだ遠い道のりだけど、辿り着こうよ。その、覇者しか入れない街に」


「お、おう! やってやろうぜ!」


「うん♪ 絶対クリアしようね」


「私も、頑張る」


 西門に着いた。目の前には、これまでの平原とは違って流れの速い川が北から南へいくつも流れており、基本的には岩場だった。


「先を急ぎたい気持ちはあるけど、焦りは禁物だよ。今日は敵の確認とレベル上げにとどめよう」


「「うん」」

「おう」



 なお、買い物の結果、それぞれの装備はサブも含めて以下のようになった。


 ■大村

 グレートスタッフ :全属性魔攻5%UP

 グリーンスタッフC:風属性魔攻10%UP

 サウンドスタッフ :杖での打撃に音属性付加

 エイドローブC :HPダメージ5%減、物理衝撃緩和 Lv.1

 バッファローブC:物理衝撃緩和 Lv.2

 タイネツローブC:耐熱 Lv.2、物理衝撃緩和 Lv.1

 プロテクトローブ:防弾、物理衝撃緩和 Lv.1


 ■高松

 グリーンスタッフC:風属性魔攻10%UP

 ホワイトスタッフC:光属性魔攻10%UP

 防具は大村と同じ


 ■中野

 サウンドボトム1:レイソニック使用可能

 フレイムボトム :ファイアボール使用可能

 サンダースタッフ:杖での打撃に雷属性付加

 防具は大村と同じ


 ■花巻

 ハートスタッフC:愛属性魔攻10%UP

 防具は大村と同じ(ただしメインはバッファローブC)



次回:激流の上で

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