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4人の魔法使いの冒険  作者: 藤見倫
第2章:スターリー神殿の謎
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第38話:いざ北へ

 中野君と別れて部屋に戻ると、既に葵がいた。私が帰って来るのを待ってたみたい。律儀ね。大村君は絶対もう寝てるから。


「ただいま。先に帰ってきてたのね」


「うん、お帰り。・・・どうだった?」


あら、あたしが聞こうとしたことを。


「疲れたわ。あの2人、両極端だから大変ね。葵こそどうだったの? 大村君途中で寝たりしなかった?」


 葵は慌てるように両手を胸の前で振りながら首も横に振った。


「ううん、大丈夫だよ。最後までちゃんとしてくれたよ。でも、”動きたくないし外にも出たくない”、だって。面白いよね」


「はあ・・・まったくあの子は。葵もちゃんと厳しく言わなきゃダメよ? 甘やかすとどんどんダメになっていくんだから」


 本人に確信犯的なトコがあるからもう手遅れかもしれないけど。でも1人っ子の私からすれば、なんだか弟ができたみたいでちょっと楽しかったりもする。どう教育しようかしら、なんてことを考えてる私の様子を見て葵はクスクス笑っている。


「大村君には、”僕のぐうたらが移らないように気を付けて”って言われたよ」


 思わず頭を抱えてしまった。


「はあ・・・もう手遅れね」


「1億円手に入れて、一生ぐうたらして過ごすんだって」


「そう・・・あの子なら普通に働いても活躍してお金稼ぐこともできるだろうに、もったいないわね」


 葵はまだクスクス笑い続けている。まっすぐな葵にとっては、大村君のひねくれが滑稽に見えるのかも。結局大村君の話だけになっちゃったけど、いいや。葵も疲れてるだろうし、お開きにしよう。


「お風呂、いい?」


「うん、私はもう入ったから」


「そっか。先に寝ちゃってていいよ。おやすみ」


「うん、ありがとう。おやすみ」


 ----------------


 翌朝。アラームより先に目が覚める。今日の集合は7時、今は6時半。少しゆったりするか。ベッドから手の届く位置に置いているペットボトルのお茶で喉を潤し、トイレを済ませてベッドの上であぐらをかく。中野が起きるまでここにいるか。


 6時50分、中野のアラームが鳴る。


「う、っと・・・朝か。お、大村。おめぇ先に寝やがったな」


 開口一番それですか。


「お前はどうだったんだ? 昨日」


 どうやらそれが聞きたかったらしい。


「歩き過ぎて疲れたよ」


「なんじゃそりゃ。そんなことじゃなくてだなぁ」


 頼むから女性陣の品定めとかやめてくれよ。と願っても無駄か。


「千尋ちゃんはもう文句なしだね。ありゃ完璧だ。もっかい、いや何回でもデートてぇ。ゲームクリアしたら付き合ってくれたりしねぇかなあ? 埼玉だったらそんな遠くねぇし」


 となると昨日は、高松さんが頑張って中野に合わせてたことになるな。いや高松さんぐらいにもなれば、ああいう奴を日頃から相手してるから半日ぐらい余裕か。付き合ってくれたりはしないと思うぞ?


「でも葵ちゃんも中々にキテるんだよなぁ。ノリは悪ぃけど、顔は可愛いし俺がしゃべってる時こっち見てちゃんと聞いてくれるし素直なんだよなぁ」


 映画の感想ぐらいしか話すこと無かったんじゃないのか? でも中野のコメントを聞く限りは、昨日はそんなに悪い雰囲気じゃなかったのだろう。安心した。


「てか大村、お前たまに変なこと言って千尋ちゃんに叱られんじゃん。あれどうやるんだよ」


「はあ?」


 お前、叱られたいのか?


「俺もああいう会話してみたいんだよなぁ」


 ・・・いやまあ、傍から見たら面白いのかもしれないが、お前のキャラじゃ無理だと思うぞ?


「じゃあ中野君もテキトーなこと言ってみれば? きっと叱ってもらえるだろうから」


「おいおい人を変態みたいに言うなよ。大村はなんか子供っぽいとこがあるからソレか? ああいう時の千尋ちゃんも結構いいからさ、これからもよろしく頼むな」


 お前のために叱られてる訳じゃないんだけどね。ま、今後も何度もお目にかかることになるだろうから期待しておいてくれ。


「・・・よく分かんないけど、もうすぐ7時だよ。下におりようよ」


「そうだな」



 ロビーにおりてビュッフェ形式になっている朝食を取り、既に女性陣が座っているテーブルに向かう。


「おはよ」

<昨日はちゃんとできたみたいね。感心感心♪>


 高松さんからだ。挨拶と同時にメッセージを送ってきた。


「うん」

<1年分のエネルギーを使ったよ>


 挨拶を返しつつ、返信。ああいうのは年に一度で充分だという意図も込めたが、


<たまにやるからね>


 勘弁してくれ。高松さんを見ると、明らかに作ったかのようなニコリとした笑顔。朝っぱらから表情筋が豊かなことだ。

 テーブルのそばまで来たところで、お盆を置いて椅子に座った。早速だが本題に入ろう。


「今日はとりあえず敵の確認してから装備屋に行きたいと思ってるけど」


「そうね、それでいいんじゃない?」


「北の方に行こうぜ。雪山にあるんだろ? 魔人滅殺剣」


「んじゃ北行こっか。ただ、昨日花巻さんと北の門まで行ったんだけど、モンスターが強いから気を付けろって言われたから心して掛かろう」


「よっしゃ上等だぜ」


 朝食を済ませ、早速外に出た。


「あれ大村君、外に出るの大丈夫なの?」


 高松さんがいたずらっぽい口調で聞いてきた。その後ろで花巻さんが申し訳なさそうに両手を合わせている。まあ、ガールズトークぐらいするだろう。<大丈夫。むしろ話す手間が省けて助かったよ>とメッセージを送っておいた。花巻さんの安堵の表情に、呆れの色も垣間見えた。


「目的さえあれば外には出るよ。最終的には外に出る理由を無くすのが目標だから」


「はあ・・・相変わらずね。ていうか悪化してない?」


 悪化はしていない、表に出すようになっただけだ。


「気のせいだよ」


「そお? ならいいけど」


 高松さんは気のせいじゃない感を丸出しにして言った。もうバレてるね。その隣で中野が「ひっひっひ」と笑っている。ご満足いただけただろうか。




 北門に着いた。


「スノーウィーンは、この先にあるんですか?」


「そうだ。スノーウィーンに行くのか、お前たち」


「いえ、まずは敵の確認をと思って。後で行こうとは思ってますが」


「そうか。だがこの先のモンスターは強い。気を付けるように」


「はい」


 門の先には道が続いていて、正面には森、両サイドには川がいくつも流れている。森の先は見えないが、昨日観覧車から見た感じだと森はすぐに抜けて銀世界が待っている。



 森の中に入ったが、敵は一向に出てこない。やがて、出口が近づいてその先の景色が見えてきた。


「うっひょ~~!! すっげぇな!」


 これまでとは一転しての銀世界、驚きの白さだ。昨日観覧車で見たから分かっていたのだが、目の前にあると臨場感が違うな。あと、いま通って来た緑の森も、こっちから見ると雪化粧になっている。ゲームって凄いね。


「なんか、冒険してるって感じがするわね」


「とりあえずこの先、進んでみよっか」


 進んでいると、地面からポーンと何かが出てきた。リス、か・・・? ガラスのように透明なボディをしている。少なくともコットンリッスじゃなさそうだ。シルクか? スノウか? クリスタルか? とにかく着地の前に攻撃だ。


「ぐおっ!」


 杖を前に向ける間もなく腹に衝撃を受けた。"バッファローブD"と同等の衝撃吸収性能があるCランクローブだが、1mほど後ろに飛ばされて仰向けに倒れた。こいつ、空中で空気を蹴るようにタックルしてきやがった。


「うっ!」



「きゃっ」



「きゃあ!」



 仲間たちもそれぞれ地面に倒れた。全員、あの1匹から攻撃を受けたようだ。自由落下に身を任せるリスを見ていると、またこっちに飛んできた。


「がああぁぁぁ!!」


 思わず右腕を盾にしてしまった。左手で杖をつかみ、目の前のリスに火属性で攻撃した。何発で死ぬか確かめてる余裕はない。火の玉を5発ぶつけた。経験値増えないのでさらに3発。3発目が空振って経験値が増えたので攻撃をやめた。


「はぁ、はぁ・・・」


 他の3人はまだ地面に腰を落としている。俺は立ち上がり、


「どうする、進む・・・?」


 と聞いたが、3人は顔を見合わせた。「う~~ん」と唸るだけではっきりした答えは返ってこない。「いったん戻ろうか」と言おうとしたところで、ポーンとまたリスが出てきた。


「花巻さん、回復いい? かなり痛い」


「うん」


 花巻さんの回復を待ちつつリスに火の玉を7発ぶつけた。


「うわ狼だ! こっち来んな!」


 後ろを見ると中野が右を向いていて、その視線の先に白い狼が見えた。のっそりと歩いて近づいて来る。


「もう無理だ、逃げながら倒そう!」


 みんなで慌てて移動を始め、森まで戻った。これで新しく敵は出ないはず。既に寄って来てた白い狼は残念ながら退散してくれない。倒すしかないようだ。


「花巻さん、MPもいい?」


「うん」


 MPも回復してもらった。4人で森を背にして狼と対峙する。モンスターが強いと忠告を受けたのに出て行って、連れて帰って来るなどあってはならない。逃げ帰ることに関しては、もう仕方ない。兵士しか見てないし大した恥じゃない。


「杖を前に出して。高松さんは光、中野くんは闇でいこうか」


「うん」

「おう」


「まず僕が火を出すから、もし当たったら畳み掛けよう。避けられたら適当に頑張って」


「”適当”って・・・」


あまり細かいことを言うと行動を制限してしまう。できる限り自身の判断で動いてもらおう。


「じゃあいくよ」


 杖の先端に火をつけた。狼に動じる様子はない。まず避けられると考えていいだろう。2人が杖を握る手に力を入れたのを確認して、


「せーのっ」


 ブォンという音と共に火の玉が前方に飛んでいく。狼は瞬時に右に移動しこっちに向かってダッシュして来た。


「うそっ、来ないで!」

「うおっ、まじかよ!」


 2人が何度も魔法を放つも、ことごとく避けられる。何だあれ、すばしっこ過ぎる。MPがもったいないが範囲攻撃をしよう。狼の狙いは俺の右にいる2人のどちらか。俺は左側に少し移動して、


「フレイムウォール」


 縦横3mほどの火の壁を斜め方向に飛ばした。正面から攻撃するよりマシだとは思うが・・・?

 よし、当たった。が、狼は一瞬減速しただけでまたダッシュ状態になった。


「プリズムネット!」


「俺もだぁ! ダークトライアングル!」


 距離が近くなっていたこともあってか、範囲が広いプリズムネットのみならずダークトライアングルも当たった。狼は一旦立ち止まるが、また走り出す。これまでの傾向からすると白い狼の弱点は闇だが、それ以前に基礎能力が高すぎる。2人とも足を動かす余裕がないまま、


「うおっ! がああああぁぁぁぁぁ!」


 狼が中野に飛びかかり、首元に噛みついた。そのまま押し倒され、


<中野勘太郎さんが戦闘不能になりました>


 頭を地面に打ったところで戦闘不能になった。


「すまねぇ・・・」


 中野が力なく天を仰ぐ。俺は雪の下の土で檻を作って狼を閉じ込めた。狼のサイズに合わせたのでタックルするスペースはない。檻の目は細かくしたから噛みつくのも無理だろう。


「しょうがないよ。とりあえず狼から離れて」


「ああ」


 中野は立ち上がり狼から離れた。


「これ、どうするの?」


「こうするの」


 水の塊を作って檻ごと水没させた。重力に逆らって水の形状を維持するのもMPを食うので、檻の側面を完全に壁にして水は放置にした。


「狼消えるまで待とうか」


「「うん」」

「ああ」


「・・・さすがにこれは、スノーウィーンに行くのは無理だね。せめて、あの透明なリスとこの白い狼をサクッと倒せるぐらいにはならないと」


「そうね」


「くっそぉ~。待ってろよ、魔人滅殺剣」


 中野が一番高い山に向けて杖を突き出す。狼の姿が消え、経験値の増加も確認したところで檻を崩した。中に入っていた水が周囲に広がる。


「戻ろっか」


「そうね」


 4人で頷き合ってウォーターランドに向かって歩き出した。空気はそこまで重くないが、みんな気落ちしてるように見える。



「くっそぉまた死んじまったじゃねぇかよ~」


 数分ほど沈黙があったが、中野が口を開いた。こういう雰囲気の時は結構助かるな。


「さっきのは運が悪かったね。中野くんか高松さんの2択だったのに」


「まあ千尋ちゃんがやられるぐらいなら俺でいいけどよ~」


「んふふ、ありがとね」


「おうよ!」


「もう立派な盾役になってるね、中野くん」


「好きでなってる訳じゃねぇよ! ぜってぇいつか大村を盾にしてやるからな」


「盾が攻撃してくるかもしれないから気を付けてね」


「おい何するつもりだ!?」


「冗談だよ冗談」


「勘弁してくれよ、大村が言うと冗談に聞こえねえんだよ」


 大事な時に嘘が通るように、普段は正直にするようにしてるからね。何にせよ、ちょっと雰囲気が和やかなになって良かった。中野に感謝だな。



 森を抜けるとウォーターランドが見えた。グリンタウン・ウォーターランド間を難なく突破したことで自信が付いていたが、やはりまだ強い敵には勝てない。また少しずつ、レベルアップが必要だな。



次回:遠くに響く鐘

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