第34話:戦いを終えて
お礼は昼食の時に改めて、とのことだったのでしばらく時間ができた。来客用の茶菓子をいただいて寝ることにした。朝4時に起きてあの戦いだ。みんな疲れている。女性陣も細かいことを気にする余裕はなく、会議室で一緒に雑魚寝するらしい。入ると、スズさんがいた。
「「「あ」」」
俺、中野、高松さんの3人が同時に声を出した。続いて、
「お母さん・・・」
と言ったテツヤは母親に駆け寄ることもなくその場に立ち尽くしている。スズさんが歩いてこちらに来た。両手をテツヤの肩の下辺りに当て、
「大丈夫? お兄ちゃんたちに迷惑かけてない?」
俺たちがいるからか、我が子の身よりも人様への迷惑を気にした。
「大丈夫ですよ。迷惑どころか、大活躍でした」
「そう・・・良かった・・・」
「お、お母さん・・・」
スズさんは両手をテツヤの背中まで回して抱き寄せ、目を閉じる。テツヤは俺たちに見られて恥ずかしいのか、居心地が悪そうだ。
「テツヤ、頑張ったもんな」
「見てたわよ、敵のボスを倒したとこ」
「えへへ・・・でも、佑人お兄ちゃんのおかげだよ。僕1人じゃ、カグラを折られたとこでダメになってた」
「いいんだよ、人の手を借りても。もし気になるなら、早く1人で街を守れるようにならないとね」
「うん!」
テツヤは満面の笑みを浮かべた。スズさんはテツヤから離れて立ち上り、
「テツヤのこと、どうもありがとうございました」
深々と頭を下げた。こういうのは苦手だ。眠いし、さっさと寝よう。
「いえ、別に。えっと、僕らはお昼までちょっと休憩しますね」
「あ、そうですよね、お疲れですよね。では私は失礼しますので、ごゆっくり」
スズさんが会議室を後にした。テツヤも俺たちと一緒に寝るらしい。端の方に畳んである布団を床に敷き、その後は特に会話もせずに横になった。意識は一瞬で落ちた。
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「大村君、大村君、起きて」
体を揺さぶられる感覚がした。
「う~~~~ん」
「おーい、大村ー、起きろー」
なるほど、昼飯か。でもまだ動きたくない。
「なんで~~~」
と言いながら寝返りを打った。
「お昼だよー、いらないのー?」
「う~~~~ん。あと5分~~」
「ダーメ」
タオルケットを奪われた。観念して体を起こし、頭をポリポリ掻きながらもう1度「う~~~ん」と言った。
「あはは、佑人お兄ちゃん、寝ぼすけさんだ」
「いつもこんな感じなの?」
「いや? いつもは俺より起きるの早ぇし普通だけど」
そりゃそうだ。中野相手に寝ぼけても何の意味もないからな。俺は背伸びをしながら立ち上がった。
「んじゃ、お昼食べに行こっか」
「大村君を待ってたんだけど」
「気のせいだよ」
「気のせいじゃないわよ」
「バレちゃったか」
「”バレたか”じゃないっ!」
などと不毛な会話をしながら食堂に向かった。10mほどの長机に豪華な料理が並べられていた。戦いが終わってからの時間でよく作れたものだ。スズさんの姿が見えたのでその近くに座ることにした。
「ところでギンジさんは」
「あちらに。一応、小隊長ですからね」
前方の角の辺りに隊長や副隊長と一緒に並んでいた。松葉杖に左足はグルグル巻きの包帯、重症のようだ。テツヤを鼓舞するためとはいえ悪く言って申し訳ありませんでした、と心の中で呟いた。
市長っぽいおじさんが出てきた。
「えー、プレイヤーのみなさん、この度は暴力団掃討へのご協力ありがとうございました。おかげさまでこのグリンタウンから暴力団どもを追い出すことができました。えー、それではですね、料理も並んでいますので、みなさんどうぞ召し上がってください」
おじさんはそう言うなり食堂から出て行った。あんたはこれ食べないのね。あと名乗ってくれ。
みんな、もう食べていいのか? みたいな雰囲気だ。こういう時に必要なのは、エアーブレイカー。
「いただきまーす」
俺は手を合わせて大きめの声でそう言って料理を手元の皿に移して食べ始めた。他の人たちも、お互いの様子を伺いながら少しずつ食べ始めた。美味い。美味いけど、この居心地の悪さよ。せめてみんな鎧脱いで?
俺たちは仲間内でしゃべり出し、ある程度経つと全体的に賑やかになった。それでもこういう会食は苦手なので食べ終えるとすぐに食堂を後にした。ギンジさんへの挨拶は後でいいや。小隊長殿は忙しいだろう。
会議室でくつろいでいると、ギンジさんがやって来た。スズさんも一緒だ。
「今回は本当にありがとうございました。私は見ての通りで、情けない限りです」
ギンジさんは申し訳なさそうにそう言った。
「でも昨日は、最後まで立派に戦っていたじゃないですか。そのおかげで僕は逃げ切れたんです」
他のメンバーが不思議そうな顔をしている。
「あ、そういえば言ってなかったね、昨日は僕も捕まってたんだよ」
「「はあ!?」」
高松さんと中野がハモった。花巻さんも驚いたような表情をしている。
「そこにギンジさんたちが来て、ゴタゴタしてる間にロープを魔法で焼いてカグラだけ取って逃げちゃった」
「そ、そうだったのね・・・」
高松さんが顔を引きつらせながら答えた。
「そのカグラも、こんな有様になってしまったな」
ギンジさんは、悲しいと言うよりは感慨深そうに折れた刀を眺めている。
「ごめんなさいお父さん。・・・折られちゃって」
テツヤは俯いた。悔しさが蘇ったのか、目に涙が浮かんでいる。
「いいんだよ、テツヤ。これは、お前が立派に戦った証だ。我が家の宝物にしよう」
「・・・うん」
ギンジさんは視線を俺たちに戻した。
「私は、これを機に小隊長を降りて一般兵としてこの街を守りたいと思います」
「え・・・」
反応したのはテツヤだ。
「元々、カグラのおかげだったからな。それが壊れた以上役には立てないし、小隊長としてやっていける自信もない」
「お父さん・・・」
「ごめんな、テツヤ。強いお父さんでいられなくて」
「ううん。小隊長じゃなくなっても、お父さんは僕にとっては強いお父さんだよ」
親子で盛り上がってるところ悪いが、
「いつまでも、お父さんに憧れてるようじゃダメだよ? テツヤも、この街を守るんでしょ。普通の剣でも小隊長になるぐらいやんなきゃね。お父さんより偉くなっちゃえ」
テツヤが顔を上げた。もう涙はなく、満面の笑みだ。
「うん!」
中野が横腹を肘で小突いてきた。
「お前、結構いいトコあんじゃん」
「羨ましいなら変わって」
「次は俺の番だかんな」
「そうですか」
ひと段落着いたかな。そろそろ別れを告げよう、と思ったらギンジさんから切り出してきた。
「ところで、皆さんはこれからどうされるんですか」
答えは決まっている。
「明日には、ウォーターランドを目指します」
「そうか」
「えー? もうちょっと遊んでってよー」
そういう訳にもいかない。あと、仲間たちから反応がなかったのは意外だ。中野とか「もう1日休んでよくね?」とか言いそうなものだが。まあコイツも向上心はあるからな。逆に「今日にでも行こうぜ」と言う可能性もある。
とりあえず3人の顔を見渡してみた。特に反対する様子はなさそうだ。
「ま、大村君ならそうくるよね」
「悪ぃなテツヤ、俺たちの旅はまだ始まったばっかなんだ。ぜってぇまた来っからよ、そん時までに泣きベソ直しとけよ?」
「またね、テツヤ君。ギンジさんも、お元気で」
3人がそれぞれ別れの言葉を告げた。
「ああ。君たちには本当に世話になったね」
「次にお兄ちゃんたちが来る時も、平和なままのグリンタウンにするからね」
「お? そりゃ楽しみだな。頑張れよ、俺たちも負けねぇから」
「そうだね。次に来る時はあんな奴ら5秒で沈めるぐらいの魔法使いになってるから、兵士さんの出番なんてないよ」
「はっはっは、それは頼もしいな」
「佑人お兄ちゃんなら絶対なれるよ!」
「当たり前じゃん」
「大村君ってたまに強気発言出るよね、どこから出てくるの?」
「心の底から」
「・・・また考えなしに言ってるんじゃないでしょうね」
「発言するのに考える必要なんてあるの?」
「ちょっとは考えて! 巻き込まれる人の気持ちとか」
「えー」
「”えー”じゃない」
「やだ」
「"やだ”でもないっ!」
「あっはははははは! やっぱお兄ちゃんたち面白ーい」
「僕たちが面白いんじゃなくて、このお姉ちゃんがやかましいだけだよ?」
「こら!」
「うわっ、冗談、冗談だよ」
「んもう」
高松さんが落ち着いたところで改めて別れの挨拶をして、市庁舎を後にした。今日の残りはゆったりして過ごそう。夕食で一度集まった以外は自由時間として―――と言ってもみんな寝てたらしいが―――最終的に夜9時頃に俺は本格的な就寝を迎えた。中野は夕食直後からぐーすかぴーだ。風呂ぐらい入れよ・・・。
そんな訳で激動の2日間を終え、明日は王国首都のウォーターランドを目指す。今度は、何が待ち受けているのだろうか。そんなことを考えている間に深い眠りへと落ちて行った。
Lv:大村24、高松22、中野22、花巻21
HP:大村169、高松163、中野163、花巻160
MP:大村215、高松205、中野205、花巻200
魔攻:大村129、高松185、中野185、花巻200
装備ランク(近接):全員E
装備ランク(射撃):全員E
装備ランク(魔法):全員C
次回:王国首都、水の都ウォーターランド




