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4人の魔法使いの冒険  作者: 藤見倫
第1章:グリンタウンを救え
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第25話:魔法の刀・カグラ

 例の騒ぎで昼食が遅くなったが、栄養を取って愚痴を吐き出したところで再びウォーターランド側の門から街を出た。花巻さんがMP回復―――と言うよりは分与―――を使えるようになったから午前中より動きやすい。経験値の増加が鈍ってきたが、テツヤもいるし奥にはあまり進まないようにしよう。花巻さんの経験値はMP回復でも稼げる。


 途中、中野と高松さんがゴッドヘルプという標準魔法を覚えた。地面の魔法陣から光が出るもので、敵に使っても効いてなさそうだったので俺で試したら回復だった。花巻さんはメンタルヒールと同時に普通のヒールも覚えたらしく、せっかくなのでキュアも含めてMPコスパを確認したところ、

  至近距離で愛魔法>ヒール>キュア=ゴッドヘルプ

といった感じだった。キュアとゴッドヘルプはヒールの2割増しぐらいでMP食う。ちなみにキュアは、地面の魔法陣から霧吹きミストみたいなのが出てくる。


 4時を過ぎた辺りでMPが枯渇してきたので街に戻った。今のレベルは俺17、高松さん16、中野16、花巻さん10。花巻さんの遅れが目立ってきた。さすがに一度MP使い切るまで回復させたぐらいでは大した経験値にならない。まだ夕食には早いので、宿屋で回復して街のすぐ外で魔法ぶっ放して花巻さんで回復、もう1回魔法ぶっ放して今度は宿屋で回復、を繰り返した。花巻さんのレベルが13になったところで疲れてやめた。でも何も考えずに魔法を思いっきりぶっ放すのは爽快だった。テツヤは最後までついてきてくれた。


 テツヤを家に送り返すと、両親が出迎えてくれた。


「旅人、いや、プレイヤーと言うべきかな。みなさん、今日はありがとうございました」


 テツヤをレベル上げに連れて行ったことに対してか、チンピラ共の捕獲に一役買ったことに対してかは分からない。


「いえ、大したことじゃありませんよ」


「いやいや、あなたたちのおかげであのガラの悪い連中を捕まえることができて街の治安も良くなった。それに、テツヤの面倒も見て頂いた」


 どうやらチンピラの件がメインだったようだ。小隊長殿の耳にも届いていたか。今度はテツヤの母親が口を開いた。


「ところで、今晩のお食事はどうされますか? 良かったら、おもてなしさせて頂きたいのですが」


「お兄ちゃんたちも一緒にご飯食べようよ!」


 タダ飯か。あまりこの手のホームパーティ的なのは好きじゃないのだが、今回はいいだろう。


「う~ん」


「いいよね?」という表情で3人の顔色を伺ったら、みんな首を縦に振った。テツヤの母親の方を向き直し、


「それじゃあ、お言葉に甘えちゃいます」


「やったー!」


 テツヤが喜んだ。


「よーし、腕によりをかけなきゃね。7人分も食材あったかしら?」


 テツヤ母がわざとらしく首をかしげる。


「そうだ、そう言えばまだ名乗ってなかったね。私はギンジ、こちらは妻のスズ、そしてご存じの通り、息子のテツヤだ」


 俺たち4人もそれぞれ名乗り、家の中に入れてもらった。スズさんが料理をしている間はギンジさん&テツヤと話して過ごした。ユレヒト(アニキの本名らしい)たち4人はしばらく勾留処分、釈放されたらウォーターランドに戻るだろうとのこと。ロージは行方不明だがおそらく既にウォーターランド。


「ウォーターランドはああいうのが多いんですか?」


「ああ、そうだね。王宮のある中心街に近づくにつれて治安は良くなるけど、端の方ではガラの悪いのが多い。でも昼間に堂々と悪態ついてるってことはないかな。夜、裏路地に入るのは危険だけど、普通に過ごしてる分にはトラブルはないよ。むしろ、行ってみれば分かるけど、街全体が水のテーマパークみたいで楽しい所だ」


「へえ~、そうなんですね」


 だとすると、端の方でも治安はいい方だな。ただ、アニキたちはおそらく居場所が無くなってグリンタウンに来ただろうから、数も戦闘能力もそれなりにあるとみた方がいい。触らぬ神に祟りなし。


「そういえばギンジさん、小隊長なんですね」


「そうそう。風を起こせる剣、見てみてぇなあ~!」


 話題をギンジさん自身の方に変えると、中野が乗っかってくれた。俺もそれが気になっていたところだ。


「あははは・・・。テツヤから聞いたのかな?」


「えへへ・・・」


 テツヤはバツが悪そうに自分の頭を掻いた。


「確かに私は小隊長だが、まあ、武器のおかげと言っていい。腕は大したものじゃないよ」


「でもあの剣を見つけたのはお父さんだし、街の周りのモンスターもたくさん退治してるんでしょ? すごいよ!」


 どうやら”武器のおかげ”というのは本人もそう思ってるらしい。あと、街の兵士、周辺のモンスター狩りも仕事なのね。


「見つけた剣、国に取られたりしないんですね」


「ああ、実際、取られることが多いのだが、ここのような小さな街でもしっかり戦える兵士がいた方がいいという判断でね。見つけた私に与えられて同時に小隊長昇格という訳だ。せっかくだ、その剣、と言うよりは刀だな、お見せしようか」


「おっ、ついに風起こしの剣のお出ましだな」


 ギンジさんが席を外し、30秒ほどで戻ってきた。その手には、細くて反りのある、鞘に入っているが、まさしく刀がある。


「おお~~っ! マジで刀みてえだな!」


「へえ~。こっちの世界にもこういうのがあるのね」


「鞘から出してみていいっすか!?」


「ああ。装備ランクが足りていなければどんなに念じても風は起こらないだろう」


「よっしゃ! ・・・うおおおぉぉ~~! すげぇ!」


 中野が恐る恐るという感じで刀を鞘から出した。見た目は”ザ・刀”だ。


「刀なんて初めて持ったぜ。こう見えて、風が起こせる魔法の刀なんだな」


「この世界にはそういうのがいくつかあってね、まあ、君たちからすればゲームの仕様かな」


「千尋ちゃんも持ってみる?」


「い、いや、あたしはいいかな・・・」


「僕はちょっと見てみたいな」


「お、いいぜ大村。さすがにお前も男だね~!」


 刀に興味がないわけじゃないが、このゲームを知る上での興味の方が強いと主張したい。もし俺が女でも、この刀を手に取っただろう。


「ふ~~~ん」


 確かに見た感じは何の変哲もなさそうだ。魔法が込められた刀、ということにしておこう。一応花巻さんにも聞いてみたが、遠慮されたので中野から鞘を受け取り、収めた上でギンジさんに返した。花巻さん、会話そのものには入ってこないが、しっかりと話し手の方を見て真剣に聞いている。質問した本人よりもよく聞いてるんじゃないだろうか。


「ところで、小隊長ってどれくらいの役職なんですか?」


「ん? ああ。この街の軍隊は隊長が1人、副隊長が2人、その下に10~15人ぐらいの小隊が3つあって、私のそのうち1つの小隊長だ。ウォーターランドほどの大きな街になると、4~5個の小隊をまとめる中隊長なんてのもあったりする」


 なるほど、ここでは組織そのものが小さめとは言え、父が小隊長をやっていれば子どもからすれば自慢だな。今度は高松さんが口を開いた。壁際に置かれている鎧を指さしている。


「あの鎧、他の兵士の人たちと同じように見えるんですけど、小隊長の目印とかはないんですか?」


 それも気になっていたところだ。昨日、テツヤを助けた後で話しかけられた時も、それっぽいものはなかった。


「本来バッジがあるのだが、着けているとそれだけで小隊長だと分かるから、普段は着けずに普通の兵士として過ごすようにしてるんだよ。たまに必要な時にも着けてなくて怒られるんだけどね。武器も、このカグラは街の外に出る時だけで、普段は他の兵士と同じものだ。しばらくはテツヤに貸すことにしたから、隊のをもう1本借りることにしたよ」


「そうだったんですね。普通の兵士として過ごしたくなる気持ち、あたしも何となく分かる気がします」


 小隊長がいない時に部下がだれてないか覆面パトロール的なものか、武器だけで小隊長になっていることに対する遠慮か、他に理由があるのか、どうだろう。

 おや? 香ばしい香りがしてきたぞ?


「は~~い。お待ちどうさま♪」


 スズさんがミトンで大きな陶器の皿を持ってきた。グラタンだ。すごく美味しそうだ。


「うっひょ~~~! ウマそうだな!」


「スズさん特製シーフードドリアよ。召し上がれ♪」


 ドリアだった。スズさん、客を前にやたらハイテンションだが顔立ちがいいからあんまり無理がない。よくあることなのか、ギンジさんもテツヤも気にしてない。うちの母が同じことしたら・・・死ねる。まじ勘弁してください、母上。


「冷めないうちに食べちゃって♪ スープとサラダもすぐに持ってきますね」


 では遠慮なく。手を合わせて、


「いただきます」


 と言ってドリアに手をつけた。みんなもそれに続く。かなり美味い。レストランより美味いぞ。中野なんて大声で「ウマい、ウマい」言いながら食ってる。女性陣も「美味しいわね」と言ったりしている。うん、これはマジで美味い。


 スズさんがスープとサラダを持ってきた。もちろんどっちも絶品だった。サラダは生野菜なのだが、(木ばかりが目立って気付かなかったが)畑を持ってる住民もいて新鮮で良質なのが手に入るらしい。生野菜でもこんなに違うとは、驚きだ。手作りと思われるドレッシングもヤバい。いや~~~これかタダでいただけるとは、人助けも悪くない。魔法の刀や軍隊のことも聞けたし、今日の成果は上々だ。


「あなたたち、ゲームプレイヤーよね? いつもただ見てるだけだったから、いつかこうしてお話ししてみたいな~って思ってたの」


 今度は俺たちが質問攻めに合う番のようだ。動機とか、ゲームのシステムとか、元の世界のこととか、本当に色々聞いてくる。スズさん、見かけによらずかなり押しが強い。「本当に人間なのね~」とか言ってるが、それはお互い様だ。「一応プログラムだってことは分かってるんだけどね~」と言う姿は、本人のキャラ作りなのか、ゲーム上のキャラ設定なのか、よく分からなくなった。



 9時頃にオイトマさせていただいて、宿屋に戻った。明日も朝8時にテツヤと待ち合わせてレベルアップに向かう。ウォーターランドを目指すのは全員レベル20になってからにしようと決めた。

 俺は普通のゲームではレベルアップ作業が嫌いでほとんどしないのだが、自分自身が旅をするとなるとやはり余裕が欲しくなる。このゲームも、自然にレベルが上がる分だけで進んでいけるのかも知れないが、いかんせん全員が魔法使いだ。俺が接近戦をするとは言え、剣と違ってMP消費がある。やはり余裕が欲しい。


「じゃあおやすみ~」


「はーい」

「おう、おやすみ~」


 高松さんの挨拶にそれぞれの言葉で同時に返事をして部屋に戻った。中野とも「飯ウマかったな」ぐらいの会話で済み、歯を磨いて寝た。ここはいい街だけど、いつまでもはいられない。目指せレベル20、ウォーターランド、そしてもっとその先へ。



次回:一歩ずつ、確かに

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