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4人の魔法使いの冒険  作者: 藤見倫
第1章:グリンタウンを救え
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第23話:チンピラ追い出し大作戦

 つい先ほどの騒ぎの顛末を、助けた少年テツヤの父親に説明した。


「息子を助けていただきありがとうございました。ほら、お前もお礼を言うんだ」


「お兄ちゃんたち、ありがとう」


「どういたしまして」


「い、いいですよそんな。私たちは大したことしてないですし」


「いえ、テツヤがケガをせずに済んだのはあなた方のおかげです」


「あ、あはは・・・」


 テツヤの父親のお礼に高松さんが苦笑いで答える。淡々と「どういたしまして」と答えた俺は既に蚊帳の外だ。外交大臣の高松さん、よろしく。


「もうこんなことを起こすんじゃないぞ」


「うん・・・。でも、お兄ちゃんたち、本当にあいつら追い出してくれないの? 街の人たち、みんな喜ぶよ。僕も一緒に頑張るから、お願い」


 そんなことを言われてもなあ。2~3秒ほど考えて、口を開いた。


「少なくとも、こっちから勝負を挑むことはできないよ。昨日みたいに子どもが襲われてるとかじゃないと。昨日も先に殴ったのは君だから、悪いのはこっちになっちゃうんだよ」


「でも・・・」


「こらテツヤ、よさないか。お兄ちゃんたちは旅の途中なんだから、あんな奴らの相手をしてる暇はないんだよ」


 いやそこまで言ってないけど。


「しかし、我々としても奴らには手を焼いておりましてな。街の人たちが困っているのは承知なのだが、特にトラブルを起こさないものだから取り締まりようがない」


 まあ、難しい問題だな。ああいう奴らは注意すると逆ギレするし。マナーの悪い奴の一番の対処法は無視することだ。泣き寝入りしかない。コンビニの前でたむろってる奴らがいたとして、魔法が使えても、柔道二段でも、追い払うことはできない。ケガをさせようものならこっちが警察のお世話になる。


 とは言え、ああいう奴らがのうのうと生きている中で、こちらばかりがストレスを溜め込む一方なのは腹立たしい限りだ。だけど、この世界なら魔法が使える。未だにああいう奴らは相手にしたくないのだが、乗りかかった船だしちょっと協力してみるか。さっきのロージって奴はバカ丸出しだったが、アニキはそうでもなさそうだった。他の3人はどうなんだろうな。


「まあ、ちょっと考えてみますよ。僕もああいうのは嫌いなので、何とかして追い出せないかと。それと、テツヤくんを強くしてあげることもできますよ」


「「え?」」


 親子がハモった。


「先ほどお父さまが仰いましたように、僕たちは旅をしています。ウォーターランドに行くにはもう少しレベル上げが必要だと思っているので、テツヤくんに同行してもらうことはできます。1つ注意点としては、できる限りの努力はしますが、命の保証はできません」


「ちょっと」


「おい大村!」


 さすがに2人が口を挟んできた。でも責任は取れないから、これは承諾してもらわないと困る。父親も俺の仲間たちも戸惑い気味の中、テツヤ本人だけは目を輝かせていた。


「ホントにいいの?」


「え? ああ、うん。君のお父さんがいいって言ったらね」


「いや、しかし・・・」


「お父さん、僕、行きたい。お父さんの稽古は週に1回だけだし、お兄ちゃんたちがいる間だけでも毎日修行して、お父さんみたいにこの街を守れるようになりたいんだ」


 おお、なんと殊勝な少年なんだ。感動した。今どき小学生でもこんなこと言うのはそうそういないんじゃないのか? 男でも涙が出ちゃう。どうやら父親が稽古つけてるみたいだし、全然ダメってことはないだろう。


「・・・分かった。お前がそこまで言うなら、いいだろう。ただし、自分の身は自分で守れ。自分さえ守れない人間に街は守れないからな」


「うん!」


「んじゃ、よろしく。明日、8時に東側の噴水辺りに来て」


「よろしくね、お兄ちゃん、お姉ちゃん!」


「よろしくね、テツヤ君」


「頑張って父ちゃんよりも強くなろうぜ」


「うん!」



 話がまとまったし、帰るか。と思ったらテツヤ父が話を振ってきた。


「ところで、あいつらはどうやって追い出すつもりで?」


「ああ、う~ん。そうですねえ。こっちから仕掛けることはできませんが、向こうに仕掛けさせればいいんですよ。目には目を、バッドマナーにはバッドマナーを。あいつらがよくいる場所を陣取ればつっかかって来るんじゃないですかね。さっきは無駄な争いを避けられましたが、単にロージはどうでもいいと思ってただけかもしれませんし、仕掛けて来ないようならエスカレートさせますから、いずれ耐えられなくなりますよ。揉め事になったら兵士さまの出番ですね」


「ほ、ほお」


 テツヤ父は、納得したような、してないようなといった反応。欠点は行儀の悪い輩が増えることだね。


「で、それ、誰がするんだよ」


「さすがに大村君1人じゃ無理があるんじゃない?」


 俺は黙ったまま高松さんの方を向いて微笑んだ。これまで見せたことがないほどの満面の笑みを浮かべたと思う。高松さんは、これまで見たことがないほど顔が引きつった。女の子がそんな顔していいんですか、お嬢さん。


「よろしくね、みんな。別にタバコ吸えとかゴミをポイ捨てしろって言ってるわけじゃないから。あいつらの場所陣取るだけでいいんだよ」


「まあ・・・そうね」


「そ、その辺りは君たちに任せるとするよ」


 逃げたよこの兵士。制服さんの悪い癖だ。いや兵士だから鎧か。そんなこんなで話がまとまり(?)、俺たちは宿屋に帰ることにした。ロージ、どうなったんだろうか。


 --------------------------------


 翌朝、朝食を済ませて東の噴水に向かうと、テツヤが1本の剣を手にして立っていた。


「お? それがお前の剣か?」


「うん。お父さんが2本持ってて、稽古始める時に1本くれたんだ。この街の兵士とおんなじ剣だよ、すごいでしょ」


「へ~、兵士と同じなんて頼もしいわね。 でもいいの? 2本あるとは言え兵士の剣なんでしょ?」


 テツヤは、自慢げに鼻の下を指でこする仕草を見せた。


「へへへ~。兵士はね、普通はこのソルジャーソード1本しか持ってないんだけど、お父さんは遠征先で見つけて来たすごい剣を使ってるんだよ」


 敵から奪ったのか、落ちてたのを見つけたのか知らないが、国や軍隊には取られずに自分の物にできるのか。”すごい剣”ってのは何なんだろうな。特殊な機能でもついてるのか? 同じ疑問を中野も抱いたらしい。


「どんなすごい剣なんだよ?」


「それがねー、カグラって言って風を起こせる剣なんだ。ホントにすごいんだよ! ショボい奴なら風だけで飛んでっちゃうんだから」


 なるほど。それはかなり役に立ちそうだ。だけどテツヤパパ、見た感じはその辺にいる兵士と大差なかったな、そんな剣があればちょっとぐらい出世できそうだが。


「ほえ~、そんないいのがあるんだな」


「うん! それで軍隊でも活躍してて、小隊長になったんだよ」


 小隊長がどれほどの位なのかは知らないが、さすがにヒラじゃなかったか。バッジか何か見落としたか、ヒラも上司も変わらない装備なのか。


「あら、すごいじゃない。早くお父さんみたいにならなきゃね」


「うん! 自慢のお父さんなんだ。僕もいつか、この街を守る兵士になるんだ」


 軍隊の小隊長になることよりも、この発言の方がよっぽどすごい。その心をいつまでも忘れないでね、テツヤ。


 会話は高松さんと中野に任せつつ、俺たちはプライマリ側の門に向かった。テツヤの腕も分からないし、彼を守りながらあのリスと戦うのは辛い。狼なら何とかなるだろう。火に弱いって分かってるし。


 --------------------------------


「やあー!」


 兵士に稽古をつけてもらっているだけあって、テツヤは思いの外まともに戦えた。俺とテツヤの2人で前に出れば、狼1匹に無傷で勝てる。貴重な前衛を手に入れた気分だ。子ども用っぽく見える鎧も、リスの体当たりで大ダメージなんてことにはならなさそうだ。


 狼とじゃれ合うのは1時間程度にして休憩を挟んだ後、ウォーターランド側の門から街を出た。テツヤには鎧の面を閉めさせた。あの突進を顔面にくらうとまずい。プログラムだと分かっていても、やはりこの世界の住人には気を使う。現実世界の人間たちよりも人間らしい面がある。むしろ、作り物の世界だからこそ、俺が気を使うほど人間がいるのかもしれない。


「ところでテツヤ、コットンリッスは知ってる?」


「うん知ってるよ。昨日もお父さんに聞かされたし、街の人もみんな知ってる。イッタいらしいね、突進」


 まあ知ってるか、首都に向かう道にいるんだからな。


「じゃ、説明はいらないね。気を付けて」


「うん」


 遠距離攻撃ができないテツヤは狼に集中して俺たち魔法使い陣がリスを潰していけばいいのだが、テツヤがリスとどう戦うか見たくて無策で臨んだ。一撃でも突進くらったらみんなで守ろうとメッセージを交した。歩いていると、ポーンと地面からリスが出てきた。


「ええと、突進される前に倒すのがいいから、着地したところを狙って・・・」


 だめだ間に合わない。


「うわっ!」


 カーンという音とともにテツヤはよろめいて尻餅をついた。リスが宙を舞っている間に俺は杖の先に火をつけ、着地の瞬間を狙って殴った。リスは消えた。


「考えてる暇はないよ。もっと早く動かないと」


「うん、次は頑張るね」


 次はうまく着地したところを攻撃してリスを倒せた。テツヤ、結構センスあるかも。

 その後もしばらくリスや狼と戦って回った。あまり先に進むと昨日みたいに手に負えなくなるから、余裕で勝てる範囲に留めた。あと、1回わざと突進を受けてバッファローブの実力を試した。1~2歩後ずさるぐらいの衝撃で済み、HP減少も3しかなかった。これはいい。


 途中、


<レベルが15になりました>

<水属性魔法(下級):キュアが使用可能になりました>

<装備ランク(近接)がEになりました>

<装備ランク(射撃)がEになりました>


 と出てきた。よし、名前からして回復魔法だ。いざという時に使えるな。どんなもんなのか確認しておきたかったが、この後もほとんどダメージを受けなかったのでまたの機会にした。「回復覚えたから試す」とか言ってわざとHP減らして試しておくべきだったか、タイミングを逃したな。装備ランクは別にいいや。近接と射撃用を使うつもりはないし、そもそもEランク使えなさそうだし。


 11時過ぎに俺たちのMPが減ってきたので戻ることにした。俺は無言だが「テツヤ君強いわね」とか聞こえてくるし全体的に明るい雰囲気だ。

 街に戻ると、メインストリートの中央を広がって歩く4人組がいた。後姿だけで分かる。アニキたちだ。街の人たちも迷惑そうな表情で遠巻きに見ている。


「あれね」


「うん」


 缶をポイ捨てした。ちょっと挨拶をしてやろうか。早歩きで距離を詰め、缶を手に取り、缶にデコピンして音を出すと4人とも振り返った。


「ゴミぐらいちゃんと捨てたら? せっかくの”緑の街”が台無しだよ」


 取り巻きのうちの1人がつっかかってきた。


「んだとテメぇ?」


 こいつはロージと同レベルかな。


「コーヒーを飲むにはね、お金を払うのと同時に、ゴミの後始末をする責任も発生するんだよ。いい歳して後始末もできないの?」


「口の利き方に気ぃ付けろや。ナメてんのか? おい」


 ナメてるよ、思いっきり。


「ジレット、相手にするな」


 アニキが口を挟んできた。


「でもよぉアニキ、先にイチャモンつけてきたんはコイツだぜ?」


「放っておけ、そいつにゴミを投げ返すことはできないだろうからな」


 あらまバレてる。ここはアニキさんを突ついてみますかね。


「”アニキ”ということはあなたがリーダーで? 部下のしつけはしっかりしてもらわないと困りますね。ゴミのポイ捨てを許すなんて、あなたの器もタカが知れる」


 アニキの眉がピクッと動いた。他の取り巻きが動いた。


「テメェ、アニキを侮辱すんのか? あ?」


「やめろソーレン、挑発に乗るな」


 アニキがソーレンの顔の前に手を出して制止する。だが既に数歩前に出ているジレットが続ける。


「こりゃ挑発じゃなくて完全に俺らをバカにしてるっしょ」


「うん、してるよ。道に広がって歩いて、ゴミをポイ捨てして、注意したら逆ギレ。僕からすれば小学生以下だね」


 しまった。この世界、小学校なんてあるのか?


「んだとテメェ!」


 小学校はあるようだ。ジレットが右手に拳を作り前に出ようとしたところで、もう1人の取り巻きがその右手をつかんだ。


「何すんだ! 離せハウギール・・・痛ててて・・・!」


「あれが挑発だと言っているのが分からんのか。落ち着け」


 ハウギールが手を離した。ジレットは握られていた部分を左手で押さえる。ハウギールがナンバー2のようだ。


「おい、お前」


 ハウギールに話し掛けられ、無言で顔だけ向けて応えた。


「何のつもりか知らんが、あまり俺たちに…」


 ハウギールが話している最中にジレットが走って向かってきた。


「ナメられたままでいられるかぁ!」


 丸く収まるかと思って油断していた。でも十分に対処できる。むしろラッキーだ。どうやってコイツらに仕掛けさせるか悩んでた俺がバカだった。そんなんだからナメられるんだよ、ジレットさん。



 思ってたよりずいぶん早くなったけど、さあ開戦だ!


次回:4人の魔法使い 対 4人のチンピラ

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