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4人の魔法使いの冒険  作者: 藤見倫
第1章:グリンタウンを救え
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第2話:4人の魔法使い、集結・・・

 気が付くと、そこはもうカプセルの中ではなかった。円柱の形をしの石造りの建物のようだ。遠くに天井が見える。体を起こそうとすると、


「ん・・・ここは・・・」


 と、右の方から女の人の声が聞こえてきた。顔を向けると確かに人がいた。髪は少し茶色がかっているポニーテール。声の主だろう。顔はよく見えないが同年代ぐらいな気がする。最近はゲーム好き女子も増えてるみたいだしそんなに変じゃないか。それより気になるのは、黒いローブを羽織っており、そばには先の曲がったとんがり帽子と木の杖が置いてあること。まさかこの人も・・・まあ女性だし妥当か。俺の視線に気づいたのか、こちらを振り返ってきた。


「あの、もしかして、あなたもリアルアドベンチャーに?」


 返事をしようとすると、


「ということは、君も?」


 と、今度は左から声がした。男の声だ。見ると男がいた。両足を地面について立っており両手を腰に当てている。背は高めで、何かスポーツをやってるのか体格もいい。戦力になりそうだ。こいつも同年代ぐらいかな。そして黒いローブを羽織っている・・・。男が続けて言う。


「もしかして俺らって同じチームか? 仲間同士よろしくな!」


 どうやらそのようだが、馴れ馴れしいやつだな。見た目はちょっとさわやかそうにも見えるのだが、思ったよりチャラい。右にいる女の人も顔を引きつらせ、


「あ、うん・・・よろしく」


 と返す。左の男は返事が返ってきてご満悦のようだ。でも多分好感度そんなに高くないよ? 鬱陶しいので話しかけられる前に口を開くことにした。


「あと1人は・・・」


 と言いながら辺りを見ると、最後の1人を見つけた。


「マジか」


 思わず口に出してしまった。いたのは黒い髪が肩ぐらいまでの長さの女の人で、これまたおそらく同年代っぽい。あんまりゲームするようなタイプには見えないけど、外見だけじゃ分からないか。リアルアドベンチャーのプレイヤーの8割は男という噂で、そんな中このパーティーは半分が女性なのだが、”マジか”発言の理由はそこじゃない。確認してみよう。


「もしかして、みんな魔法使い・・・?」


「「え?」」

「は?」


 ほぼ同時に、女性陣2人が「え?」、男が「は?」と答える。俺から見た3人は黒いローブを羽織っていて、そばに帽子と杖が置いてある。この3人から見ても似たような光景だろう。今更の確認だが俺自身にもローブと帽子と杖がある。3人もキョロキョロと自分を確認しだした。


「あたしは魔法使いにしたけど・・・」


 ポニーテールの人が答えた。左の男に合わせたのかつられたのか、タメ口になっている。


「俺もだ」


 左の男が続く。いやお前近接戦士にしようよ。なんで魔法使いにしたの? でも女性陣からすれば俺もそうか。でもごめん、魔法が使いたかったんだ。こいつもそうなのか?

 次は黒髪女子に答えてもらおうと正面を見た。あんまりしゃべらないタイプっぽい。最後になるか催促されるまで何も言わないかも。催促するのは気が引けたので自分のことを言うことにした。帽子をかぶって杖を手に取り、


「僕も見ての通り、魔法使い」


 俺は一人称に ”僕” を使うことがある。むしろ “俺” を使うのは家族や毎日つるむようなやつだけだ。学校のクラスメイトでも基本的に “僕” だ。もちろん今目の前にいる人たちにも。


「わ、私も・・・」


 ようやく黒髪女子が口を開いた。よし、これではっきりした。俺たちは4人全員が魔法使いのパーティーのようだ。いや、”よし”じゃない。全然よくない。これクリアできるのか? 


「おい・・・マジかよ」


 左の男も俺の心境に同調するようなことを言う。


「と、とにかく、まず自己紹介しましょうよ。これから一緒に旅することになるんだし」


 ポニーテールの人が自己紹介を提案する。それがいい。なんか変な空気だし気分転換したい。


「あたしは高松千尋。埼玉で高校生やってる。高2。よろしくね」


 しっかりした感じの人だ。この人は信用していいだろう。現実でも周囲からの信頼は厚そうだ。逆にこの人から信用を得ることが重要になってくるが・・・


「俺は中野勘太郎。千尋ちゃんと同じ高2で東京暮らしだ。よろしくな」


 いやお前千尋ちゃんて・・・。当の”千尋ちゃん”もさすがに苦笑い。さっそく印象悪くなるようなこと言いやがって。これから旅するにあたって良好な人間関係が不可欠なのになんでそんなこと言うかな。チーム全体に影響が出るし、男である俺のポイントも一緒に下がり兼ねない。まあ過ぎたことは仕方ない、自己紹介に戻ろう。次は俺の番かな。黒髪女子も最後になった方が発言しやすいだろう。


「大村佑人。高2で東京暮らし。よろしく」


 ちょっとドライだが、中野が鬱陶しかったからちょうどいいだろう。案の定、中野が東京暮らしの言葉に食いついた。


「あ、お前も東京? いいねえ。これ終わってもたまに遊ぼうぜ?」


 やだよ。でも断ると面倒になりそうだから、


「はあ」


 とだけ口に出す。


「じゃあ最後、よろしくね」


 高松さんが黒髪女子に振って話し出しやすい雰囲気を作った。ナイス。信じてたよ、千尋ちゃん。


「花巻葵です。・・・私も高2。ちょっと遠いけど広島に住んでます」


「広島かあ」


 中野が反応する。今のはそんな変じゃないけどもう黙っててくれないかな。まあいいや、とりあえず外に出よう。


「とりあえず外に出てみよっか」


「そうね」


 俺の提案に高松さんが乗る。俺の印象は中野ほど悪くないのかな? でも中野も何とかしないといけない。ホントにチーム全体に影響が出る。他の3人も帽子をかぶって杖を持った。やっぱみんな魔法使いなんだな。傍からこの4人を見たらどう映るのだろうか。



 俺たちは石造りの建物の出口へと向かう。いよいよ冒険が始まるのだ。4人の魔法使いの。


 先が思いやられる・・・。

次回:最初の目的地、始まりの街プライマリ

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