第18話:次の街への道のりは
翌日、朝食後はまだ店が空いてないのでレベル上げも兼ねて敵のチェックに出かけた。この街もプライマリ同様、門は東と西に1つずつ。
図書館に行ったらワールドマップみたいなのは手に入るだろうか。頼りのメニュー画面は、行ったことがある街―――プライマリとグリンタウン―――だけしか表示されていない。白い大きな丸が2つあり、その間が線で繋がっている。あと、秋津さんたちと森に入った分と思われる線もある。一度歩いたことがある場所が線で表示されるようだ。
俺は約束通り(?)、メンバーには気を配ることなく無言で西側の門に向かって進み始めた。ごめん、これが素なんだ。今日先導を切ることになってる俺が何も話さないからか、みんなもほとんど口を開いてない。特に話すことないし、耐えられなくなったら帰っていいとも伝えてあるし、別にいいや。
「お前たち、外に出るのか」
門番から話しかけられた。
「はい、ちょっとレベルを上げに」
「魔法使い4人でか・・・? それに見たところ初期装備のようだが」
「この先に出てくる敵を見て装備の参考にしようと思って。それに、魔法使いは弱くないですよ」
「・・・そうか。だがくれぐれもモンスターを街に連れて来ないように」
そうか、モンスターも街に入れるから最悪は逃げるというのが使えないのか。使えないこともないが、逃げる時は完全に巻いてくる必要がある。それか俺が囮になってみんなに逃げてもらえばいいか。1人でも街に戻れれば、俺はHPゼロになってもモンスター連れずに帰って来るぐらいできるだろう。
「もちろんです」
そう返事をして門の外に出た。景色はプライマリを出た時のものと大差ない。充電ケーブルのようなうねりを伴った線の道と、両側に森。ただ、次の街はずっと遠くにあるように見える。ざっとプライマリ・グリンタウン間の倍ぐらいか。問題は敵だ。さすがにもうスライムばかりではないだろう。
「敵が出てきたら手伝って」
「うん」
この人たちなら頼まなくても手伝ってくれるだろうけど、一応頼んでおこう。返事があったのは高松さんだけだが、他の2人も大丈夫だろう。
しばらく歩いていると、突然地面からポーンと何かが出てきた。リスだ。俺の目線と同じぐらいの高さまで飛び上がり、重力に引っ張られて着地。
「あら、かわい…」
高松さんが「かわいい」と言い切る前に、俺は腹に衝撃を受けた。
「ぐおっ!」
リスに体当たりされた。1~2mは離れていたと思うが、一瞬だった。俺は2mほど後ろに飛ばされ、仰向けになって倒れた。
「「大村君!」」
「こんにゃろう! くらえ、ホーリーライン!」
女性陣が駆け寄って来て、中野がリスに魔法を放った。魔法陣が出てたから標準魔法だろう。リスはその場で倒れて動かなくなり、やがてその姿が消えた。今ので死んだのか・・・?
「おい大村大丈夫か?」
「うん、ありがと。でも結構痛いから気を付けた方が良さそうだね」
「かわいいのに」
「見た目に騙されちゃダメってことだね」
3人で話している間に花巻さんが回復してくれた。献身的で助かります。
その後も何度かリスが出てきたが、全て着地前に倒している。やがて2匹同時に出てくるようになった。さすがに着地前に全滅とはいかなくなったが、こちらは3人、体当たりされる前には倒せている。途中で高松さんのレベルも10になったが、MPコスパが悪いとして標準魔法は使っていない。
それよりも、花巻さんのレベルを10にせねば。標準魔法ならMP回復もあるかもしれない。しばらく進むと、また2匹、ポーンと地面から出てきた。近い方に杖を向けると、
「い゛た゛っ!」
女の人の声が聞こえた。振り向くと、花巻さんの足が狼に噛まれていた。グリーンウルフだ。
「おいマジかよ!」
「葵、大丈夫!?」
花巻さんには悪いけど、
「リスが先だよ! 一撃なんだからさっさと倒そう!」
だが遅かった。
「ぐおっ!」
中野が体当たりされた。俺はとにかく近くにいる方を片付けよう。
「ぐっ・・・!」
俺もくらった。だがせめて1匹だけでも。俺は宙に舞いながらも杖の先に雷を付けて、体当たり後で同じく宙にいるリスを攻撃した。リスは消えた。よし。
俺はそのまま地面に倒れたが、すぐに上体だけ起こして花巻さんの方を確認。花巻さんはかなり悲痛な表情で「う・・・っ!」と言いながら杖で何度も狼を叩いている。HPは残り70。高松さんが駆け寄ろうとするも、
「きゃあっ!」
リスの体当たりをくらって横向きに倒れる。
「こんにゃろう! 離れろ!」
立ち上がった中野が花巻さんの方に駆け寄るが、
「がぁ!」
間に合わずリスの体当たりをくらってまた倒れる。仕方ない。的は小さいけど、
「サンダーランス!」
左手を地面について右手に持った杖をリスに向けた。ヒット、リスは消えた。よし、あとは狼だけだ。俺は立ち上がり、杖の先に火をつけて走り出した。その直後、
「ぐあぁっ!」
今度は背中に衝撃を受けた。顔面から地面に倒れ、顔の左半分が地面に当たったまま少し前に進んだ。体をひねって後ろを見ると、リスがいた。地面に穴が空いているところからすると、今出てきたようだ。くっそ。横から光の玉が飛んできてリスは消えた。
「高松さん、ありがとう」
俺は立ち上がり、再び杖に火をつけて走り出した。目の前にまたリスが出てきたが、その場で振り払って片付け、
「花巻さん、少し熱いけど我慢して」
狼めがけて振り下ろした。狼は声を上げて後ろに飛び退き、ガルルルルとこちらを威嚇し始めた。その後ろに、ポンポンとまたリスが2匹現れる。まじかよ。狼を先に倒してリスを消しつつ街に戻るのが得策か、と考えていると、
「ワオォーーーーーーン!」
と狼が叫び出した。すると、狼のずっと後ろ、この道の横の方にある森の中からもう1匹グリーンウルフが現れた。思わず絶句したが、いつまでもそういう訳にはいかない。
「高松さん、中野くん、逃げて」
「え・・・?」
「は・・・?」
「2人は先にグリンタウンに戻って」
「おい何言ってんだお前、これ1人じゃ無理だろ!」
「3人いても勝てるか分からないよ。また狼増えるかもしれないし。1人でも街に帰ればゲームオーバーは無いんだから2人は先に行って」
「・・・分かったわ」
「おい、でも・・・」
「あたしは逃げるわ。今日は大村君に従うって決めてたから」
大した覚悟だ。そんなつもりだったとは。
「中野くん、高松さんを1人にする気? 帰り道でもリスは出るよ」
「くそ・・・俺も行くぜ。いざとなったら途中で俺も囮になれるからな」
「ありがと。じゃあ大村君、また後でね」
特に返事はせず横目で2人を見送り、狼が2人の方に行かないように火で間を塞いだ。狼との睨み合いが続く。リスも、距離があるからか特に動きはない。
「花巻さん、早く回復して」
「でも、回復は大村君に、取っておかないと」
花巻さんは痛みをこらえているような口調で言う。優しくしても多分この人は甘えない。だから気遣いはゼロでいく。元から今日はそうする日だったな。
「歩けないままでいられると困る。助ける余裕はないから自分で歩けるようになってて。そのままだど、気になるから邪魔になる」
「うん・・・」
ようやく回復を自分に使った。花巻さんは立ち上がり、
「もう大丈夫だよ」
と言った。さて、リスは無限湧きに近いから狼からだ。MPは残り73、狼は火にビビるしリスは距離があれば襲ってこない。保険として2人には逃げてもらったが、勝ち目がない訳じゃない。やられる可能性もあるけど、ベストは尽くそう。
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大村君に従い、グリンタウンに引き返すことにした。途中でたまにリスが出てきることがあったけど、何の問題もなくグリンタウンまで戻ることができた。
「ん、お前たちか。あとの2人はどうした」
門番から当然の疑問が投げかけられる。先に逃げてきたなんて言ったら印象悪くなるよね。
「私たちはちょっと休憩。あとの2人はもう少し頑張るそうです」
「そうか」
上手くやり過ごせたみたい。ひとまず宿屋に戻って回復しないと。
「大村のやつ、大丈夫なのか?」
「う~ん、分かんない。大村君のことだからやっつけてるかもしれないけど、3人でも負けるかも思ったからあたしたちを逃がしたんでしょ。待つしかないよ」
「ん? 待つのか? 回復したらまた行っていいんじゃねえのか?」
「え? 行かないわよ? 全滅を避けるためなんだからここにいなきゃ意味ないじゃん。1人いればいいかも知れないから中野君は戻ってもいいけど、怒られても知らないわよ?」
「そっかぁ、そうだよな。ここは街中でも殺されるかも分かんねえんだろ。千尋ちゃんの身に何も起こらないように俺がボディーガードするぜ!」
うわ。ちょっと引いた。でも、気持ちは受け取ろう。
「あ、ありがとね。部屋戻って回復して、宿屋のロビーでお茶でも飲んで待ってましょうか」
「そうだな」
私たちはそのまま宿屋に戻ることにした。大村君、大丈夫かな。
次回:大村 対 リスと狼




