第17話:到着、緑の街グリンタウン
グリンタウンの門に着いた。近づけば近づくほど、"グリンタウン"の名に恥じない緑の多さが伝わってきた。門の先はメインストリートが1本。両サイドに並木がズラリと並んでおり、正面の遠くには大きな木が見える。
「む、ようやく来たか。」
門番に声を掛けられる。"ようやく"?
「よく来たな。ここはナチュレ王国の最東端、緑の街グリンタウン。お前たちが今年の新人で最初の到達者だ」
俺たちが最初だって? 最終日の7/31にこの世界に来たんだが誰も来てなかったのか。
「え、まだ誰も来てなかったんですか?」
「そうだ。この門から出て戻って来る者はいたが、新しくここに来た者はいない。今年になってからはお前たちが最初だ。そう言えば午前中に出て行った者たちが戻って来てないな。ここ数日は毎日のように出ているが、何をやっているのだか」
あー・・・多分それ初心者狩りの連中だ。退場させちまったな。まあ言わなくていいや、結構な時間差もあるし会ってなくても不自然じゃない。俺たちが最初になったのも、初心者狩りの連中が潰してきたからだろう。岩陰に隠れて弓矢で不意打ち、真っ向勝負でも分が悪い初心者なら普通は潰される。俺たちも、秋津さんたちがいなければどうなっていたことか。
「この街はもうリアルアドベンチャーの直接管理ではない。街の中でもケンカや争いは起こるしモンスターの襲撃にも遭う。噂では初心者をつけ狙うような輩もいるらしい。プライマリのように絶対安全ではないから気を抜かぬように」
もう会いましたよ・・・初心者をつけ狙う奴。
「はい、ありがとうございます」
門番に別れを告げて歩き出した。高松さんが2~3歩駆けて来て俺の横に並ぶ。
「ねえ、私たちが最初ってことは・・・」
「初心者狩りの仕業だろうね。多分、ここを目指したチームはみんなやられてる」
「だよね・・・」
「くっそ、あいつらフザけやがって。初心者ばっか狙うなんて卑怯とか思わねえのかよ」
「成敗できて良かったね」
また少し空気が重くなる。全部今日のできごとだし、この街までは一緒に来る約束もあった。思い出すのも無理はない。
「とりあえず宿屋探そっか」
「そうね」
建物の間に路地があったりはするが、基本は直線一本道なのでそこを歩き続ける。みんな、辺りの木々を見ては感嘆を漏らしたりしている。確かにこれは壮観だ。でもみんな、木だけじゃなくて建物も見てね。宿屋見落としちゃうよ?
しばらく進むと十字路に着いた。中央には噴水がある。
「宿屋、どっちだろうね」
「もう面倒だからその辺の人に聞こうか。早く寝たい」
「また寝んのかよ。てかいきなり刺されたりしねぇだろうな」
「さすがに大丈夫なんじゃない? ケンカや争いが起こると言っても、法律ぐらいあるでしょ。兵士もうろついてるし」
結局、噴水の石段に座っている人に聞いた。すっごい水しぶき飛んできてたけど、あの人涼んでるのかな。この街は宿屋が3つあるらしいが、この噴水近くにあるのが一番安いということでそこを教えてもらった。
初日は中野と相部屋なんてゴメンだとか思ってたけどもう慣れた。逆に全員バラバラになると連絡取りづらいし。メッセージ機能もポップアップをOFFにすれば気付かない。一番やりそうなの俺だけど。それやって高松さんに怒られる未来まで見えた。
「じゃあ7時に下ね。大村君アラーム忘れずに」
「はーい」
相変わらず面倒見がいいですね高松さん。思わず子供っぽい口調で答えてしまった。
「おいしいレストランあるといいわね。探しに行こっか、葵?」
「え? うん」
「俺も連れてってくれよ~。大村寝てると暇なんだよ」
「うーん、そうね、じゃあ3人で行きましょ」
と言いながら高松さんは俺の方を見る。行きませんよ? あと中野を連れてってくれるなんてマジ助かります。
「大村ホントにいいのかよ?」
とか言いながら俺がいない方が都合が良さそうな言い方だね。まあせいぜい女性陣と仲良くなってくださいよ、今後の円滑な旅のために。
「別にいいよ、眠いし」
「ふーん」
階段を上がって男女別々の部屋に向かう。グリンタウンの中で一番安いらしいが、ロビーの時点でプライマリ(無料)よりは綺麗だったので期待できる。
で、実際、部屋は3割増しぐらいで広いし机や椅子も置いてある。これで1泊300円ってすごいな。でも普通のRPGの宿屋もこんなものか。現実世界の宿屋が高すぎるんだ。中学の時の家族旅行で親が諭吉5枚出していたのを覚えている・・・。両親、姉、俺の4人で2泊で4~5万、高いよ。旅行行かずに高級料理食べようよ、旅館の飯もうまかったけど。みんな元気してる? 俺は今、300円で結構いいホテル泊まってるよ。
「じゃ、俺行ってくるから」
特に振り返らずに「ほい」とだけ返事した。荷物を置いてすぐに出て行ったけど、4~5分ぐらい待たされても知らないよ? 俺としてはさっさと出て行ってもらった方が嬉しいけど。早速ベッドに横になる。プライマリのより柔らかい。ここより高いホテルはもっといいベッドなんだろうな。じゅるり。
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目が覚める。アラームは鳴ってない、まだ6時半か。もういいや起きよう。机の上に何か置いてあるな。ホテルの案内図とグリンタウンの地図だ。時間までこれでも見てるか。
横方向の道は、今まで歩いてきた道一本だけ。さらに、その道を4等分するように縦方向の道が3本ある。ど真ん中の交差点―――つまり街の中心―――にはシンボルである大木、あと2つの交差点には噴水がある。レストランは高松さんたちが探すとして、装備に食料品にトラベルグッズ、それに図書館もあるな。明日行ってみよう。単独行動とれるかなあ。とれるといいなあ。とれないだろうなあ。しばらく地図を眺めていると、
<大村君起きてる?>
高松さんからメッセージだ。
<起きてます>
<ごはん食べるお店決めたんだけど、戻るの面倒だから来てくれない?>
<えー外出るの面倒なんだけど>
しまったーー。独り言のつもりがメッセージになってしまった。念じるだけでできるのは便利だけど、気を付けないと。
<来て>
ちょっとご立腹のようだ。「外出なきゃ食べらんないでしょ」とか思ってるんだろうな。そう言われたら「適当に買ってきて」って頼もう。高松さんなら「しょうがないなあ」とか言いながら買ってきてくれそうだ。でも「来て」と言われたからには従おう。
<はい>
<大きな木のとこにいるから、そこに来てね>
メッセージの直後にホログラムの地図がバンと出てきて、街に入って来た門、十字路の噴水、ホテル、今から行く目的地が記されていた。相変わらず便利だな、このメニュー画面。
<今から行きます>
<待ってるね>
念のため、部屋にあった地図も持って行った。明日のことも決めないとな。外はまだほのかに明るいが街灯は点いていて、道とともに至るところある木々を照らしている。俺は1人、高松さんに指定されたレストランを目指して歩いた。
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「あ、来た」
「この辺にあるの?」
「すぐそこよ。早く食べよ」
「俺もう腹減って死にそうだぜ~」
そういえばこのゲーム、飢え死にしそうになるとHP減るのか? 知っておきたいけど、試す手段が"それ"しかないし今はいいや。てかコイツまた回復せずに出て行ったからMPゼロのままじゃん。まあい・・・いや良くない。街中でもトラブルは起こるんだ。部屋に戻るたびに回復する癖をつけるように伝えておこう。女性陣はしっかり回復している、さすがだ。
食事が終わると、明日どうするかという話になった。
「大村君はどうするの?」
え、単独行動OKなの? 聞いてダメって言われたら嫌だし触れないでおこう。明日勝手にいなくなればいいだけだ。
「う~ん、とりあえず敵の確認も兼ねたレベル上げと、戻ったら街の散策だね。装備とか道具とかどんなのが手に入るか見て回る。で、あとは調べ物かな。図書館もあるみたいだし」
「へえ、図書館もあるんだ。・・・ねえ、あたしもついて行っていい?」
あ、そうくるのね。他の2人もちょっと驚いたような反応を見せる。ついて来るのは別に構わないけど、俺の気分任せについて来れるかは怪しいところ。俺は目を逸らしながら答えた。
「え? あー・・・構わ、ないけど」
「歯切れが悪いわね・・・でも"構わない"って言ったよね? ホントについて行くだけ。口出しとかしないし、大村君の自由に動いてもらっていいから」
「ああ、それなら別に。もし耐えられなくなったら勝手に帰ってもいいから」
「耐えられなくなるほどのことがあるの・・・? あ、そうだ、葵も一緒に行く?」
うん、そこは誘っておかないとね。このままだと花巻さん、中野と2人だよ? 可哀相というレベルではない。
「え、私? えっと・・・じゃあ、行こうかな」
「ちょっと待ってくれよ。俺もいいよな? 1人なんて嫌だぜ?」
うん、この流れはもう中野も来るよね。
「はあ・・・じゃ、みんなで行こっか」
「どこに寄るとかはホントに大村君の自由でいいからね」
「うん、じゃあ遠慮なくその辺空気読まずに行くよ」
単独行動とはいかなかったが、どうやら俺の自由でいいらしい。じゃあもう単独行動並みに気遣いゼロでいこう。耐えられなくなった人は脱落してくれ。俺が1人になれるから。
次回:次の街への道のりは




