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4人の魔法使いの冒険  作者: 藤見倫
第1章:グリンタウンを救え
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第15話:"初心者狩り"狩り

「てめえら、魔法使いが剣士に勝てると思うなよ!」


 剣の男の片方が俺に向かって走ってくる。俺は<援護射撃お願い>とメニュー画面でメッセージを送った。秋津さんが教えてくれたものだ。パーティメンバー内では、念じるだけでメッセージでのやり取りができる。メッセージはチャットアプリのように並び、誰を会話に入れるかも念じるだけで選べる。今は一応、花巻さんも含めて全員が見れるようにした。


<オッケー>

<任せろ!>


 返事が入る。メッセージが届いたら通知が入り、これも念じれば確認できる。後ろから光と闇の魔法が飛び、走ってくる男に向かう。が、あっさり避けられる。


「んなもん当たるかよ! これから打ちます~って見てりゃ分かるんだよ!」


 じゃあ予備動作が少なければいいんだな。


「サンダーランス」


「ぐあっ!」


 剣士の男の動きが止まる。


「おい和人! 大丈夫か!」


「てめえ、やりやがったな!」


 他の2人も動き出すが、それぞれに光と闇の魔法が直撃する。後ろの2人が予備動作を減らしたのか、敵の反応が悪かっただけなのかは分からない。俺は最初の奴に集中だ。まだ5mほどあるが、


「アイスソード」


 杖を前に向けて氷の剣を出したが、避けられた上に折られた。もう少し近づかないと無理か。


「サンダーランス」


「ぐあぁっ!」


 さらに火の玉を飛ばしたが、これは避けられた。


「くっそ、雷ウゼぇな!」


 今度は走ってくる男の前に土の壁を出した。


「うわっ!」


 男は大きな音を立てて壁に激突する。壁は砕けたが、その間に俺は近づき、破片を集めた上で、


「グランドブロウ」


「ぐああぁぁぁ!」


 これは顔面にクリーンヒット、男は仰向けに倒れる。そして今度こそ、と、氷の剣を出すと、


「させるかぁ!」


「それはこっちのセリフよ!」


 高松さんが強めの風を起こして他の2人の足を止める。俺が殴った男はまだ顔を手で押さえながら苦しんでいる。指の隙間から氷の剣が見えたのか、手を離して怯えた表情を見せる。


「もう避けないのか?」


「や、やめろおおぉぉぉ!!」


 鎧を貫けるか分からなかったので喉元に刺した。


「うっ!!・・・くそ・・・・・・があっ!」


 HPがゼロになったようだ。よし、あと2人。高松さんと中野が魔法を飛ばすことで一定の距離を保てている。


「ちょっとあんたたち、何やってんの! 魔法使い、それも初心者なんてさっさとブッ殺しなさいよ!」


「分かってるよ! くそっ、魔法がウザくて近寄れねえ!」


 初心者狩りなんてするような奴らは、こんなものだろう。それと、これがお前たちがバカにしていた魔法だ。いかがだろうか。


<高松さん、もう1回強い風お願い>


<オッケー>


 メッセージを使えば相手に知られることなく指示が出せる。便利だ。


「やっ!」


「「うおっ!」」


 高松さんが出した強風で男2人が体勢を崩す。まずは1人動けなくしよう。さすがに2人同時は辛い。手前にいた斧の男を目がけて火の玉を飛ばした。


「うおっ! 熱っ! ぐっ、ぐわあああぁぁぁぁ!」


 直撃した上に、斧の男は火だるまになって転がり始めた。これは嬉しい誤算だ。正直そこまでは狙っていなかった。これなら放っておいていいだろう。もう1人の剣の男を潰そう。


「俺も行くぜ! 久々の、モノクロマシンガン! おりゃああああ!」


 剣の男を目がけて、中野が最初のスライムでMPを使い切った技を出した。


「ぐっ、くそっ!」


 男は顔を守るように腕を盾にする。中野の技は、今度は3秒ほどで止まる。


「大村!」


「任せて」


 俺は一度サンダーランスをした上で男に近づき、氷の剣を出して正面に立って構える。


「ま、待て!」


「嫌だ、待たない」


「ぐあっ! ・・・くっ、くそっ・・・!」


 男は膝をついてうな垂れる。あとはさっきから転がり回ってる斧の男だけだ。俺は魔法で水を出して火を消した。


「はぁ、はぁ、はぁ・・・水・・・?」


 斧の男は息を切らしながら自分の状況を確かめている。


「おい雄大! 早く立て! あとはお前だけなんだぞ!」


「は・・・? 嘘、だろ・・・?」


 斧の男はピンピンしている仲間3人と、やはりピンピンしている俺たち4人を見比べる。味方のHPは分かるはずだ。その表情からは絶望の色が見える。


「何でだよ・・・何で俺たちがこんな奴らにやられるんだよ!」


「お前たちが弱いからだ」


「違う! 初心者なんかに負けるか! ・・・そうだ、魔法だ! 魔法使うなんて卑怯だぞ!」


 呆れた。


「魔法使いなら余裕だと言って残したのはお前たちだろう。それに、魔法使いになることもできたのに近接や射撃を選んだのも、お前たちだ」


 今度は既にHPがゼロの男が声を出した。


「なあ待ってくれ、見逃してくれ! もう二度と初心者狩りなんてしないから、な? せめてこのゲームは続けさせてくれよ!」


 俺は黙って氷の剣を出した。


「おい何でだよ、こんなに頼んでるだろ! あんたらが強いのは分かったから、もうバカにしないから、頼むよ!」


「お前たちは、そうやって泣いて頼んでくる人たちを逃がさずゲームオーバーにしてきたんじゃないのか?」


「ち、違・・・! だからこうやって反省してるだろ!?」


「反省してるなら、元の世界では弱い物イジメはしないことだな」


「なあ待ってくれ!」


 俺は前に進み続ける。


「ひっ!」


「逃げろ雄大!」


 斧の男は立ち上がることができないのか、尻もちをついたまま手足を使って後ずさる。その後ろに土の壁を作った。ぶつかって止まったところで、さらに土の輪っかを出して手足を地面に固定した。


「ひいっ!! ま、待ってくれ!」


「じゃあ最後は弓矢にするよ」


 氷の剣を弓矢に変えて、斧の男に矢を向けて弦を引いた。男は「ひっ」と声を上げて恐怖に満ちた目で矢を見ている。



「これまで自分がどんなことをしてきたか、自分の身で経験してみろ!!」



 そして俺は弦を引いていた手を離した。


「ぐぁ・・・! ・・・・・・嘘だろ・・・? これで終わりなんて・・・」


 他の3人も、その場で立ち尽くしたまま泣いている。何組の初心者を潰してきたか知らないが、勝手なものだ。やがて4人は光り出し、さっきの秋津さんたちと同じように消えた。


 俺たちはほぼ無傷で残ったわけだが、重い空気が漂う。元々グリンタウンに着いたら別れるつもりだったが、こんな形で別れることになるとは。戦力にならないとは思っていたが、グリンタウンまでは一緒だと約束していた。それを守れなかったのは、俺たちの力不足だ。


 それに、初心者狩りが先に魔法使いを潰すことにしていれば、確実に俺たちの内の2~3人は弓矢でやられていた。そのままゲームオーバーになっていただろう。結果として俺たちが残っていて直接対決でも圧勝だったが、そんなものは紙一重だ。負けることだってあり得た。敵が油断していたこと、弓矢を不意打ちで潰せたのが大きい。今日のことは深く反省しなければならない。


<レベルが10になりました>

<火属性魔法(下級):ファイアボールが使用可能になりました>

<水属性魔法(下級):マジックウォーターが使用可能になりました>

<風属性魔法(下級):ウィンドショットが使用可能になりました>

<土属性魔法(下級):フォーリンストーンが使用可能になりました>

<雷属性魔法(下級):リトルサンダーが使用可能になりました>


 次から次へとポップアップが出てきた。今の俺の気分とは裏腹に、いいニュースが機械的に伝えられてくる。どうやら、標準魔法が使えるようになったらしい。


「一旦プライマリに戻ろうか。MP消耗しちゃったし、さっきの奴らの話だと、グリーンウルフっていうのが出るらしいよ」


「・・・そうね」


「ああ」


 2人が淡々と返事をする。まだ心が落ち着けていないのだろう。俺も、まだ少しヒートアップしたままだ。街に戻りながら冷まそう。そのまま俺たちは道なりに街に戻った。なぜか、スライムは1匹も出なかった。


次回:今度こそグリンタウンへ

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