第12話:聞きたいことと頼まれたこと
助けた人たちと一緒に街に戻り、昨日とは違うレストランに入った。この人たちは、昼はここで食べているらしい。
「助けてもらって本当にありがとうございます」
1人が言う。さっきからこの人ばかり喋っているがリーダーだろうか。メンバーは全員男、10~20代ぐらいか。このリーダーっぽい人が年長者には見えないけど、他の人たちあんまり冴えなさそうな感じだ。明らかに20代の人たちは元の世界では何やってんだろ、あまり大学生にも見えないけど。まあ何でもいいや、この人たちがニートでも俺は困らない。
「いえ、お気になさらず。レベル上げたいと思ってたところなので」
俺のレベルはあとちょっとで3というところだったが、狼3匹倒したことで4に上がっていた。てかこっちも俺ばっか喋ってるね・・・リーダーやんないよ?
「大村ばっかずりぃぞ~~。俺にも分けてくれよ~~」
「早いもの勝ちだよ」
ボサっとしてた方が悪い。そもそも頭が働いたとしてお前は戦ったのか? 中野はほっといて聞きたいことを聞いていこう。
「あなたたちも、このゲーム始めたばかりなんですか?」
「え、はい。今日で6日目かな・・・になります」
リーダーっぽい人が回りに目配せしながら答える。確か毎年、このゲームの挑戦権を得た人は7月21日~31日の間でリアルアドベンチャーの建物に来る日が指定される。今日は8月1日だから、6日前は26日か。あの案内人、11日間で何人のプレイヤーをここに連れてきたのだろうか。
「でも何で森の中に? 何かいいものでもあるんですか?」
「ああ・・・、僕らもレベル上げしてるんですけど、道なりに進んでもスライムしか出ないんですよ。で、試しに森に入ってみたらいきなり狼が襲ってきて・・・」
「道なりっていうと、次の街まで?」
「いえ、半分ぐらいまでかな。次の街、グリンタウンって言うらしいんですけど、近づくと敵が強くなるってこの街の人に聞いたので引き返しました」
そりゃそうだろう。敵が強くなる前に引き返してるんだから。次の街はグリンタウンっていうのね? ありがとう、もうあなたたちに聞くことはないです。適当に返事しよう。
「そうですか。やっぱり森は強いのがいるんですね」
料理も届いたし、食べる方に専念しよう。空気を読めないやつと思われた方が楽だから、なるだけ空気を読まない振る舞いで。
「あ、きた。いただきまーす」
しばらく沈黙が続いたが、リーダーっぽい人が話しかけてきた。
「ところで、あなたたちは、みなさん魔法使い、ですか・・・?」
見ての通りだよ。「え、まあ・・・」とか「あはは・・・」とか言いながらみんなで顔を見合った。
「でもさっきのは凄かったですよ。実質魔法使い1人だけでブルーウルフを3匹も倒したんですから」
あなたたちが囮になってくれたおかげです。でも魔法って凄いでしょ。
「あはは、あんなのマグレですよ。みなさんのピンチを見たら助けなきゃって思って(そんなこと微塵も思ってなかったけどね)」
「本当にありがとうございました。他のみなさんもお強いんですか?」
「いえいえ、あたしは大したことないですよ。魔法使いばかり4人でどうしようと思ったんですけど、大村君が結構前に出て戦ってくれて」
「でも今度は負けないぜ~。狼なんて俺の魔法でもぶっ潰してやるぜ」
高松さんが両手を顔の前で振って答え、中野が便乗する。やっと他のメンバーに振れた。
「いっちばん最初のスライムでMP使い切っといて何言ってんの」
「あ、あれはしょうがねえだろ。あんな減るなんて知らなかったんだから」
「分かんないからこそ慎重にやるんでしょうが」
高松さんの言う通り。中野、お前がバカだったんだ。てかこの2人、意外と意気の合った会話するんだね。人前だから高松さんが盛り上げようとしてるのかな?
「もう1人の方は回復が使えるんですよね。魔法使いだけでも接近戦ができて、もちろん遠距離もできて、回復もできる。結構いいパーティなんじゃないですか?」
そうだよ。魔法って凄いんだよ。でも接近戦ができるのは偶然じゃないからね、するようにしたんだからね。いいパーティにするために。
「それに、女の子が2人もいるなんて羨ましいです。こっちなんて、見ての通りですよ」
他の3人はムスッとしていたが、女子の視線を浴びたからか少し目が泳ぐ。その手の発言はやめてくれないかな。まあ、女性がいた方が男が喜ぶというのは世間一般の共通認識なんだけど、女性もいる前でそんなこと言わなくていいだろ。女性陣2人も苦笑い。
「まあ、でも、男だけの方が気兼ねなくいけるっていうのはありそうですけどね」
一応反論を入れておく。向こうからすれば女子がいる奴らの余裕に聞こえるだろうけど、そんなものは知らない。あくまで、うちの女性陣のための発言だ。女性がいないメリットを言われて当の女性がどう思うかは知らないけど。
「あら、大村君はあたしたちにそんな気兼ねしるようには見えないけど?」
よし乗ってくれた。さすが高松さん。でもひどくない?
「こう見えて、結構気を使ってるんだよ」
「どんな風に?」
「昨日、昼寝して女子だけの時間を作ったとか」
「大村君が寝たかっただけでしょ」
「バレちゃったか」
「いや”バレた”も何もないでしょ!」
むしろ中野が1人で尋ねてきて迷惑だっただろうね。ホントにごめんねー。俺もあいつといると疲れるんだ。
「あはは、やっぱり楽しそうでいいですね」
そうだね、楽しそうに女子と会話しちゃったね。まあこの人たちにどう思われても問題ない。大事なのは、しばらく一緒に過ごすこの3人だ。だけど、今恐れているのは・・・
「この流れで頼みにくいところですが・・・もし差し支えなければ、私たちもご一緒させていただいてもよろしいでしょうか・・・?」
まあ、そうくるか。戦力補強もあるだろうし、女子がいるからというのもあるかもしれない。隠そうともしないだけマシだが、はっきり言って差し支えはある。が、俺1人で決めるわけにもいかないので、
「どうする・・・?」
3人と顔を見合わせてみる。女性陣は困惑した表情、中野は「別にいいんじゃね?」といった感じの表情。
「別にいいんじゃね? 俺ら魔法使いしかいないし、剣とか弓もいた方がいいだろ」
実際に言ったよ。向こうのリーダーっぽい人の表情が緩む。他の3人も話を聞いている様子で、無関心ではなさそうだ。
「2人は?」
「う~~ん、大村君に任せるよ」
高松さんが答え、花巻さんは首を縦に振る。まあ、「やだ」とは言いにくいよね。一同の意識が俺に集まる。
「じゃあ・・・次の街まで、ってことでいいですか?」
「え・・・? あ・・・はい。それだけでも、助かります」
さすがに一瞬表情が曇ったが、基本的には感謝で返ってくる。
「何でだよ大村? 別にいいじゃんかよ」
1番の理由は言えたもんじゃないから、2番目の理由を。
「8人で行動するのは大変だよ。僕は、基本的にはメンバー全員そろって行動したいと思ってる。この先は何が起きるか分からない旅で、4人でさえ楽ではないだろうし、8人なんて面倒見きれないよ」
「面倒見るって何だよ? リーダー面かよ」
「違う。全員が、全員の面倒を見るんだ。4人なら、1人1人が他の3人に気を配れる。それが7人なんて、無理だ。まして、パーティメンバー以外のパラメータは分からないし」
「な・・・るほど。そういうことか。確かに、そうかもな」
中野も分かってくれたらしい。まあ、1番の理由―――戦力にならない―――を言ってもいいのだが、それを言ったら微妙な空気でここでお別れになるし、一応、次の街ぐらいまでならこの人たちがいても大丈夫だろう。
だけど、6日も前にここに来といて、剣、剣、弓、魔法のバランスのとれた組み合わせで、あの狼から逃げることしかできないのは、きつい。戦力にならないどころか足手まといになり兼ねない。俺の1億円と花巻さんの弟が懸かっている状態で、こんな人たちを連れてはいけない。俺たちが着実に先に進めるという前提だが、絶対に途中からついて来れなくなる。むしろ今の時点でチーム対抗で戦っても俺たちが勝つ自信がある。
あとついでに3番目の理由。単純に俺が、この人たちと一緒に過ごすのヤダ。
「そうか、そういうことなら仕方ないね。でもありがとう、グリンタウンまではご一緒させてもらうよ。そういえば自己紹介がまだだったね。僕は秋津晶、よろしくね」
「僕は大村佑人、よろしく」
いつの間にかタメ口になった。まあいいけど。他の6人もそれぞれ自己紹介をした。向こうの残り3人は、田中、笠岡、有園寺と言うらしい。下の名前は忘れた。別にいいよね、短い付き合いなんだから。
「今日もこの後、レベル上げにいきますか?」
また敬語に戻った。どっちでも構わないけど。
「すみません、この後はちょっとこの2人の買い物があるので、明日でもいいですか?」
高松さんが断った。そういえば買い物があったな、忘れてた。装備屋とかにも行ってなかったし、秋津さんたちと行動を共にするのは明日からでもいいや。
「あ、そうだったんですね。では今日はここまでということで、また明日、よろしくお願いします」
一緒なのは次の街―――確かグリンタウン―――までにしたからか、買い物や夕飯もご一緒にとかは言ってこなかった。でも買い物そんな時間かかるの? 装備屋入れても3時とかじゃないの? まあぶっちゃけ秋津さんたちと一緒にいるのも億劫だからいいけど。時間余れば自分たちだけでも外に出ればいい。森に行けば狼ね。近くて便利だ。
その前に買い物だが、いまいちモチベーションが上がらない。そんな中、この場は解散となって俺たちは買い物に向かうのだった。
次回:次に目指すはグリンタウン




