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4人の魔法使いの冒険  作者: 藤見倫
第1章:グリンタウンを救え
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第11話:いざ街の外へ

 翌日、朝食を食べてからそのまま4人で出掛けた。まだどの店も開いてないだろうから、まずは街の外のモンスターの確認だ。本当は装備を揃えてからがいいけど、何時に店が開くか分からないし、9時だか10時まで部屋で待つのも結構しんどいというのが皆の総意だ。

 入ってきた門と反対側、つまり次の街 ―――名前は知らない――― に繋がる門に向かった。


「どんな敵がいるんだろうね」


 高松さんが好奇心8割、不安2割ぐらいの口調で言う。


「わかんないけど、いきなり全滅するような敵はいないと思うよ。危なくなったら戻ろう。昨日とは違って、倒さなくても街に入れる」


「いつでも戻れるのがいいよな、さっさと行こうぜ」


 門のそばに立つ警備に軽く挨拶して、街の外に出た。緑の芝が広がる中に、芝がなく土が出ている部分が、ヒモをほどいた充電ケーブルぐらいのうねりで正面に向かっている。その先には次の街のようなもの見える。道から外れた左右の遠くには大きな木が生い茂っているのが見える。森だろうか。

 さしあたって、モンスターの姿は見えない。


「とりあえず道なりに進もう。森に入って強い敵がいたらおしまいだ」


 3人とも軽く「うん」と声出して首を縦に振る。意外なことに、中野からも緊張している雰囲気が伝わってくる。2~3分ほどすると右前方から何かが寄って来るのが見えた。昨日も戦ったスライムだ。それも1匹だけ。他の3人からも、ほっとしたように息をつくのが聞こえた。


「俺にやらせてくれ」


 中野が前に出た。昨日のような失敗がないよう、慎重に杖の先に黒い光を集めて数メートル程度まで近づいてスライムに向かって放った。それを2回でスライムは撃沈。中野はメニュー画面を出す。


「よっしゃ! MPちょっとしか減ってないぜ!」


 わざわざ見ないけどそうだろうな。・・・女性陣(というか高松さん)が声を掛けるのを待ったが、何も言わないようなので仕方ない。


「うん、じゃあその調子でいこっか」


「よっしゃ任せろ!」


 その後もスライム1匹が何回かあった。高松さんも参戦したので1発ずつで終わる。何だか物足りないなと思っていたら、次にきたスライムは緑色だった。


「緑になったわね」


「こいつはちょっとは強いのか?」


「かもね。心してかかろう。あとHPがどんなもんか知りたいから青いのと同じようにお願い」


「「おっけー」」


 魔攻が違うから俺は混ざらなかったが、2人の魔法3発ずつで倒せた。青の2~3倍か。まあ元が弱いから大したことはない。だけど離れて戦うのはMPの無駄だ。


「緑相手には接近戦でいくことにするから僕に当たらないようにお願い」


「うん、気を付けるね。大村君も気を付けて」


「おっ? 大村の本領発揮だな?」


 それだけで本領発揮と言われてもな。まあいいや。俺に当たらないようにとは言ったが、しばらくするとスライムが出てくる頻度が上がり、1人1匹相手にするような感じになった。青も出れば緑も出る。HPが2~3倍といっても倒すのにかかる時間に大差はない。緑は俺がやると7発で倒せたからHP 2.3倍ぐらいか。


「もうみんなMP半分切ったし、一旦戻ろっか」


「そうね。あたしもレベル2になったし、ちょうどいいかも」


「俺もレベル2になったぜ? ・・・ちぇっ、大村だけもうすぐ3かよ」


「昨日で2になってたからね。あと経験値は与えたダメージの比率で配分されるっぽいね。3人でスライム倒した時はみんなにちょっとずつ増えてたよ」


「そうなのね。ところで葵はどうやってレベル上げるの? あ、でも経験値ちょっとあるね。回復したら入るのかしら」


「だと思うよ。試してみようか」


 俺は地面を思いっきり殴った。すっごい痛い。俺は左手で右手をさする。


「ちょっと何してんの!?」


「花巻さん、お願い」


「あ、うん」


 痛みが引いてHPが回復。そして花巻さんの経験値が3増えた。


「やっぱりそうみたいだね」


「そんなことして確かめなくても・・・。でも葵ごめん、そういえば回復の出番あんまりなかったね」


「ううん。回復せずに済むならそれがいいから」


 素晴らしい思想だ。聖女って呼んでもいいですか?


「でもレベル上がんねぇのは困るよな? 大事な回復係だぜ?」


「まあ心配しなくてもそのうち嫌でも使うことになるよ」


「ちょっと、そんなこと言わないでよ」


「スライムに緑がいたんだ、今度は緑の狼でも出るんじゃない?」


「「「う・・・」」」


 3人とも言葉に詰まったようだ。昨日のあれより強いのが出るかもしれないんじゃ仕方ない。少なくとも、青い狼 ―――ブルーウルフだっけか――― はきっとまた出る。


 --------------------------------


 たまに出てくるスライムを倒しながら街を目指す。あのスライム、どこから湧いて出てるのだろうか。

 もうすぐ街に着くというところで、左側の森から騒がしい声が聞こえてきた。


「おっ、何だ?」


「さあ。でもあんまりいい予感はしないよね」


「大村君って結構ネガティブ思考だよね」


「うん、否定しないよ」


「否定してよ」


 16年そこらしか生きてないが、過去の経験上この手の嫌な予感は当たる。左の森をしばらく見ていると、何人か走って出てきた。他のプレイヤーだろうか、全力疾走で街の方に向かっている。全部で4人のようだ。


「何か出たのか?」


「そうみたいね。めっちゃ全力で逃げてるけど、何だろ?」


「さあ。でもすぐに分かるんじゃない? あの人たちを追いかけてるんでしょ?」


「「え」」


 いや「え」じゃないでしょ。逃げてる人がいるってことは・・・と考えていると森から狼が3匹出てきた。


「おい、マジかよ!」


「ちょっ、どうすんのあれ!?」


 あの4人はまず追いつかれる。その後の標的は俺たちだろう。街はもう目の前だし、1人でも街に入れば全滅はないから逃げ切るのは余裕だ。でも、ここは戦おう。もし色違いとかなら逃げるけど、昨日と同じ狼ならすぐにはやられない。本当に最悪は街に逃げ込めばいいし、色々試してみよう。


「僕は戦うことにする」


 俺はそう言って走り出した。後ろから「おい」とか「ちょっと」とか聞こえるけど知らない。どうせ戦うならあの4人も助けよう。ある程度近づいたら、狼は昨日のと同じっぽいことが分かった。逃げてる4人は、剣、剣、弓、魔法の組み合わせ。バランスいいじゃんか。狼1匹だけの時は倒せてるはずだが、3匹は辛いのか?

 1匹が俺に気付いてこっちに向かってきた。よし、試したいことその1・火属性といこう。


「フレイムブレイド」


 杖の先に1mほどの火の剣を作り、縦に振り下ろした。間髪いれず横にも一撃追加。まともに火を浴びた狼は「キャウン!」と悲鳴を上げて一旦退き、3mほど離れた位置で俺を威嚇する。今度は火の玉を前に飛ばすとまたクリーンヒット。残念ながら、火だるまになったりはしなかった。


 今度は試したいことその2・雷属性だ。昨日は土で作った剣で戦う方針に切り替えたが、雷だけで戦うとどうなるのだろうか。


「サンダーランス」


 杖を前に突き出して細い雷を前に飛ばした。また狼が悲鳴を上げ、2歩後ずさった。杖の先に雷を帯びさせると、後ろに飛び退いた。あれ・・・? さらに、雷を帯びた杖を前に向けるとビクッとした。見るからにビビっている。昨日も雷は何回か使ったのだが、見落としたのか? 少なくとも、土の剣でひたすら殴るのは失敗だったようだ。


 もう一度サンダーランス、狼の動きが止まっている隙に前に出て雷を帯びた杖で10回ほど殴ると、狼はその場で倒れ、やがて消えた。うわ、こいつ弱っ。昨日あれだけ苦戦したのは何だったんだ・・・。

 やっぱ火とか雷でいくのが良かったのか・・・? でも昨日はああ判断せざるを得なかったから仕方ない。


 逃げていた4人は残りの2匹に追いつかれ、応戦していた。1人を逃がそうとすると確実にその人を追いかけており、狼もあまりバカではないようだ。だが、逃げる人たちに気を取られているようなので俺からすればチャンスだ。次、試したいことその3・即死攻撃。


「アイスソード」


 杖の先に、先の尖った氷の剣を作り、狼と応戦中の人との間に入り込んで、氷の剣を狼の胸の辺りに突き刺した。


 ――――あっという間だった。狼はその場で倒れ、消えた。血は、胸を刺した割には少ないといった量だ。まあゲームだしこれくらいでいい。俺たちプレイヤーと同じく、普通に死ぬような傷を負えば即死のようだ。

 さてあと1匹。これまた応戦中の人たちに気を取られている。氷の剣はまだ残っているので、後ろから近寄って背中に刺した。狼は悲鳴を上げて倒れた。さすがに背中では死なないらしい。動けなくなっているところを、今度は胸に刺した。狼は消えた。


 その場でしばらく佇んで杖を眺めていると、俺の仲間の3人が駆け寄ってきた。


「大村君、大丈夫?」


「うん。狼、意外とあっさり倒せたね。戦い方ひとつでだいぶ違うよ」


 見ず知らずの人たちが囮になってくれたというのはあるが。声を掛けてきた高松さんに、俺は手に持った杖を眺めたまま答える。今度は肩に衝撃がきた。


「お前すげえじゃん! またいいトコもってきやがって、この~!」


「は? 知らないよ。いいから離れて」


 中野が肩を組んできたが、体をよじらせて脱出した。花巻さんは心配そうにこちらを見ている。


「ごめんまた回復いらなかったね」


「ううん、気にしないで」


「そっか、分かった」


 そういうことなら気にしないでいいや。花巻さんはホントに人のこと気にするタイプだから、淡々と応対した方がお互いに(少なくとも俺は)楽かな。

 さて、予期せぬ形でまた狼と戦うことになったけど、色々と収穫があって良かった。レベルは低くても、相手に致命傷さえ与えれば倒せる。逆に、自分も胸刺されたりしたら即死だ。気を付けよう。


「あの、すみません」


 声がした方を振り返った。そうだ、この人たちを助けたんだった。


「ありがとうございます」


 1人が声を出して、4人揃って頭を下げた。結構なケガしてる人いるけど大丈夫? とか思ってたら花巻さんが回復させた。多分本人に経験値稼ぎの意図はないだろうが、花巻さんの経験値増えてラッキーと思ってるのは俺だけか?


「あ、回復・・・? ありがとうございます」


 本当にゲガが引いている。凄いな、愛。何はともあれ一旦落ち着いたし街に戻ろう。でも俺が仕切らなきゃいけないのか・・・? 助けた張本人だし仕方ない。


「とりあえず街に戻ろうか」


「そうね」


 高松さんが返事をしてくれた。このままこの先を仕切ってくれたりしないかなー。とりあえず飯でも食いながらこの人たちから情報を集めよう。せっかく助けたんだ、恩は返してもらわないと。


次回:聞きたいことと頼まれたこと

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