第104話:本社へ
「10月の人事で、本社の開発の方で人手不足が予想されていてな、君に出向してもらうことになった。急で悪いが、明日からよろしく頼む」
人生初、転勤を言い渡された。ゲームの世界の中で。
「ビジナに行けばいいのは分かりましたが、シュッコウ、とは・・・?」
「そうか、旅人だったな。出向とは、所属はこちらに残したまま、他社やグループ会社にも籍を置いて、そっちで仕事をしてもらうことだ。うちも分社化されて本社とは別組織だからな」
要は、応援の人員を差し出すということか。組織がどうとかは、よく分からん。
「一応聞いておきますが、どうして僕を?」
ビジナへの転勤なら、喜んで行く人も現れそうだが。
「既に業務を任せている者を外に出すのは、引継ぎが必要になる。これが非常に面倒なんだ。だが、君は入ってきたばかりで、それが必要ない。それと、プレイヤーの異動は勤労課としても楽だと言っていた」
一番手間が少ないのを選んだということか。それにサンクプは俺がいなかった先週の状態に戻るだけ、影響は少ない。
「社員証があれば君も高速鉄道に乗れる。明日の8時50分までに本社の守衛に行くように。PCは向こうでまた支給されるから置いて行っていい」
都市間高速鉄道に乗れるのは助かる。あの道を歩いて通勤するハメになったかと思った。
「他に聞きたいことは?」
本社はどこですかと聞くのはやめておこう。
「いえ、大丈夫です」
人事異動を無視すれば刑務所行きになるはずだが、すんなり受け入れた相手にわざわざ言わないか。
「このことは明日、私からみなに伝える。くれぐれも他言せぬように」
「はい」
「正社員になれば給料も上がるはずだ。君にもメリットがあるのだから頑張ってくれ」
と言うことはそちらにもメリットがあるんですね。
「はい、ありがとうございました」
会議室を出て自席へ。終業まであと5分、さっさと本社の場所を調べよう。
ちょうどページを開いたところで鐘が鳴る。幸いなことに駅のすぐそばだった。バルトさんが近づいて来るのが見えたのでブラウザを閉じた。
「お疲れー。課長に呼び出されてたの、何だったの?」
まあ、聞いてくるか。課長もすぐそこにいるんだが。
「えっと、いい評価をもらって、この調子で頑張れって」
「そっか。じゃあまた来週もよろしくぅ」
悪く思わないでくれ。隠し事に後ろめたさを感じながらも淡々と挨拶を済ませ、帰路についた。さよなら、バルトさん。
さて明日はビジナに行かねばならない。帰る前に駅に入って時刻表をチェックしよう。始発でも間に合わないなんて、ないよね・・・?
駅入口の兵士に社員証を見せるとすんなり入れた。普通に、地下鉄みたいな感じだ。路線図は単純。コンペティート、ビジナを経由してアカデミアに向かう南北線と、ビジナからメディカに向かう東西線。東西線は、クリフキャニオンの入口2つを素通りする快速と、そこにも停まる各駅停車があり、便数は快速の方が圧倒的に多い。エデュケインに行く路線はない。距離もあるし、砂漠の下に線路ひくのは無理だろう。
始発は6時台で、15分に一本はある。終電が本当に、夜の8時前。俺の帰りも大丈夫か・・・? 正社員となると残業があるはずだ。ビジナに着いたら終電を調べておこう。
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「お帰り。今日はちょっと遅かったわね」
「ああ、それが・・・」
あれ、いざ転勤になったことを伝えようとすると、言いにくいな。残業と終電の時間次第では引っ越す必要もある訳で・・・。
「「?」」
2人とも、不思議そうな顔をしている。やめてくれ、心臓に悪い。
「えっと、ビジナに、転勤になっちゃった。明日から」
「えっ?」
「え?」
当然のことながら、2人は驚いた。いずれ分かることだ。全部言ってしまおう。
「社員証があれば高速鉄道で行けるけど、正社員にもなるから帰りは残業あったらどうなるか分かんないや。最悪はビジナに引っ越しかもね」
「そ、そう・・・」
まだ驚いてる様子だが、特に気落ちしている様子はない。その方が俺としても気が楽だ。
「ていうか明日から?」
「あ、うん。10月からビジナで人が減るらしくって・・・早く行くのは、なんでだろ」
それ聞くのを忘れたな。失敗した。
「そっかぁ・・・。ビジナ、家賃高いだろうなぁ」
「でも本社に行けるんなら願ったり叶ったりだよ。何かしら、つかめるといいけど」
「そうね。あたしたちはサポートしかできないんだけど、頑張ってね」
既に十分すぎるぐらいサポートしてもらってる。文句はない。
「明日、何時に帰れるか分かったら教えてね。終電なくても、そっちに行くから」
毎日一緒に晩ご飯、は守るつもりらしい。
「ところで、Aランク装備はどうだったの?」
高松さんのレベルは60になっていた。
「あ~。夕方になっちゃってたからビジナには明日行くことにしたわ。高速鉄道、いいな~」
「じゃあ高松さんも就職すれば?」
「絶対イヤ」
「でも現実世界に戻ったら働かなきゃいけなくなるんだよ?」
「それは・・・、ちゃんと、会社を選ぶわ」
大手でもメタリックみたいなのがあるから、しっかり吟味した方がいいかもね。だが、さっき見た採用向けPR動画、あれだけ見たらすっごい華のある会社に見えるな。アカデミアの展示会でも華やかで注目度高かったし。その内側ではアレだから困る。当然学生側も残業とか転勤の実態は聞くと思うが、はぐらかされるに決まってる。
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翌日、念には念を入れて7時に出発。メタリックの人事異動を無視したら刑務所行き、初日の遅刻もどうなるか分からない。電車が止まったら復旧を待つよりも自分の足で向かうのが得策だ。
「「いってらっしゃい」」
駅まで見送りに来た2人と別れ、地下へ。
電車は普通に動き、8時前にはビジナの地上に出た。まずメタリック本社の場所を確認しに行こうと思ったら、
「介護の現場は、今、悲鳴を上げています!」
とマイクを使った大きな声が聞こえてきた。街頭演説か、うるさいな。選挙でもあるのか?
「第一国民党による政権が何年も続いていますが、一向に改善されません!」
ここでどんなに叫んでも第一国民党が勝つのは避けられないのに、それを知ってか知らずかその人は声を上げ続ける。そして、第一国民党の支持率が8割を超えるシステムを知っているであろう人たちは、演説を快く思ってないご様子。うるさいだけだもんね。
「皆さん! このままでいいのでしょうか? エコノミアは、このままで幸せになれるでしょうか?」
偉い人たちだけは、幸せになれるよ。
「そこのお父さん、いかがでしょうか!」
道行く人にマイクを向け出した。スーツ姿だから出勤中であろう。迷惑なことこの上ないな。誰が構うんだよ。とは言え、地図で見たメタリックの方向にあの演説の人は居る。仕方ない、通るか。この明らかに政治に興味なさそうな恰好なら大丈夫だろう。
「旅のお方、いかがでしょうか!」
きちゃったよ。なんでだよ。
「あ、いえ、これでも働いてるんで・・・」
相手にしたくなかったので急いでる風な感じを出してみたが、
「この国の未来よりも日々の仕事の方が大事なんですか?」
は? もしかして、バカにされてる?
「今のこの国に対して思うこととかないんですか? 忙しいからって無関心のままだったら何も変わりませんよ?」
なんだその態度は。ただでさえ演説で騒音まき散らしておいて、誰も関心を示さなければ相手のせいにするとか、そんなんでよく国の未来がどうとか言えるな。この国に来て1週間、既に言いたいことは山ほどあるが、いま叫びたいのは、
「では遠慮なく。いま思ってることを言っていいんですね」
「はい是非! 何でも言ってください!」
立ち止まり、向けられたマイクを受け取った。
「街頭演説が、邪魔です」
「え・・・?」
「聞こえませんでしたか? 演説が邪魔だと言ったんです」
当然、俺の声はマイクで周囲に広がる。何人かが、足を止めた。
「多くの人が関心を寄せてないのは見ての通りです。それにも関わらず、なぜ公けの場で大声を出すという迷惑行為を堂々と続けているのかが分かりませんね。
近々選挙でもあるんですか? 第一国民党の支持率は80%を超えているそうですね。勝ち目は薄いですよ。それでもあなたは、多大なお金と労力に人手も掛けて選挙に臨み、演説をするのですか?」
俺は、固まって何も言えないでいるその人が持っていたチラシを1枚手に取った。
「介護現場の人手不足、確かに問題だと思います。ですがあなた、今ここで、何をしていますか?」
「それ、は・・・」
いきなり街頭演説そのものを否定されて驚いていたようだが、思考が回り始めたようだ。
「ですから、第一国民党に勝って、福祉への援助を強化しようと・・・」
「それは分かりました。ではあなたが次の選挙で当選したとして、何ができますか?」
「議員の立場として、福祉の方に回す補助金を増やすんです」
確かにそれができれば、現場の労働環境は少なからず改善されるだろう。だが、
「でもそれは何年も掛かりますよね? そもそも、できるかどうかだって怪しい。あなたは、ここで演説している以上、自分に投票して欲しいのですよね? 選挙で投票するのは義務だと言われてて、1票で未来が変わるとかで真面目に考えるようにとか言われますけど、投票する側にだって、投票した相手を信じ抜くという責任があるんです」
「え・・・?」
ほら、分かってない。
「介護の現場で働く人たちが苦しんでいるのは、あなたもここに書いている通りです。もちろんあなたは、苦しんでいる人たちに投票して欲しいと思ってますよね。その人たちは、あなたが変えてくれることを信じて投票して、ずっと、何年も、苦しみに耐え続けなければならないんですよ?
夢や志を持って介護の世界に入った人、ただ単に生活費を稼ぐための人、色んな人がいると思います。その人たちは、どんなに苦しくても、自分の信念のため、自分の生活のため、介護の世界で頑張り続けるのです。あなたに、その人たちの期待を背負う覚悟はありますか? もし、議員になれても上手くいかなかった時に、あなたを信じて票をくれた人たちに向けられる顔がありますか? ”できませんでしたごめんなさい”で済むものではありませんよ?
あなた、選挙に出れるぐらいなら生活にもそれなりの余裕があることでしょう。落選しても路頭に迷うことはないでしょう。議員になれば、公約を達成できなくても給料はもらえるでしょう。だけど、あなたが助けようとしている人たちはそうではありません。辞めたら次の仕事が見つかるか分からない、苦しい思いをしてでも介護に携わっていきたい、そういった人たちが、あなたよりも安い給料で、あなた1人を信じて過酷な労働に耐え続けることになるんですよ? あなた、この、介護の現場を救うということに、人生を投げ打つ覚悟はありますか? もし失敗に終わった時に、あなたを信じて頑張った人たちの生活を補償することができますか? 無理でしょう。選挙で勝つということは、かなりの人数があなたを信じたことになるのですから。結局あなたは、失敗しても何ともならないんですよ。人生を懸けて戦っている人たちが、失敗しても生きるのに困らない人を信じれる訳ないじゃないですか。投票なんて無理ですよ。
選挙カーを用意して演説をすること自体、多大なお金と労力が掛かるはずです。こんなことに使うお金があるなら、介護施設に寄付したらどうですか。こんなことをする時間と体力があるなら、あなた自らが介護士となって助けに行ったらどうですか。お金と時間は大切な資本です。勝つかどうかも分からない、勝っても上手くいくかどうか分からない活動のために、周囲に騒音をまき散らしてまで浪費するものではありません。もし、あなたのような選挙活動をしている人が多いのなら、それはこの国にとって大きなマイナスですよ」
そこまで言って、俺は言葉を止めた。アドレナリンが、随分と分泌されてしまったな。だが、
「僕にマイクを向けたのは、あなたです。思ってることを言えと言われたので、言ったまでです」
マイクとチラシを突きつけて返し、俺はその場を立ち去った。周囲に人だかりができて静まり返っていたが、少しずつ散らばっていき、どよめきに近い声が漏れ始めた。マイクを使った演説は、聞こえなかった。
とりあえずメタリックカンパニーの場所を確認して、クーリングダウンついでに時間まで喫茶店で過ごすことにした。アイスココアが、頭の中に染み渡る。
しっかし、勢いに任せて色々と言ってしまったな。だが、言ってしまったことは心の中で思っていたこと。発言そのものを撤回しようとも、こんな考え方をしていたというのは覆らない。発言の方も撤回するつもりはないけど。
いや~、1人になって改めて考えてみても、やっぱりイラつくな、さっきの政治家の態度。周囲に共感を求めてただけじゃんか。さっきの俺の言葉に何も言い返せない時点でダメだ。ま、どうせ返ってくるにしても、”こっちは大金はたいて選挙に出てんだよ!”ぐらいだろ。一般庶民には選挙に出ることさえ出来ねーよっ。300万を失うリスクを背負ってまで出馬してる時点で、庶民の感覚とはかけ離れている。
エコノミアはどうか知らないが、日本には供託金なる制度がある。これは出馬するに当たり公的機関に預けるもので、国会議員の小選挙区なら300万。県議や市議などでは額が下がるが、“首相案件”などと言う単語が出てくる国では、自治体の議員や首長になったところで国は変えられない。国を変えるには、数百人の仲間を集めて全員で国会議員になるしかない。だが100人立候補させるのに3億かかる。
しかも預けた供託金は一定以上の得票が得られなければ没収される。なので選挙活動自体に一切のコストを掛けなくとも、300万は失う。実質、金持ちにしか被選挙権がないようなものだ。供託金導入の理由は、お遊びや名売りのための出馬を防ぐ、という名目になっているが、どうだか。庶民に議席を奪われるリスクを下げたいのが本音なんじゃないかと疑ってしまう。
そしてこの供託金制度を廃止することができるのも、現職の議員のみ。廃止すればライバルが増えて次回の彼らの勝率が下がるのだから、廃止する訳がない。廃止されないこと自体が、議員たちが国よりも自身を大切にしている何よりの証だ。
先進国でも供託金制度がない国はいくつもある。導入されていても少額の所が多く、100万を超える国は数えられるほどだ。その中でも日本は破格の高さを誇る。供託金がない国で、お遊びや名売りのための出馬が問題視されているようなことは聞かない。それでも”日本では出るかも知れない”とか言って廃止しないようなら、自国民はモラルが低いと公言しているのと同じだ。まあ実際、廃止した直後は出るかもね。将来的に出なくすることができるかは、我々日本人の肩にかかっている。それ以前に供託金がなくならないけどね。
もういいや。自分さえ裕福な生活ができれば日本の未来に興味ないし。ああ、ココアがおいしい。
休憩を終え、メタリックカンパニー本社ビルへ。どこにでもあるような高層ビルだが、他のビルとは違ってブロック塀での区切らており、都会のド真ん中にどっしり構えている感じだ。フロアガイドの看板にはメタリック何とかというのが多く書かれており、グループ会社も入っているようだ。門の右にはプレハブ小屋、10mほど歩けばビルの玄関だ。
そして通り過ぎていく社員たちの視線よ・・・。
プレハブ小屋の前で15分、通された会議室で30分待たされた後、人が来た。
「おはようございま~す。・・・わっホントに魔法使いだ!」
ポワポワした感じの女性だ。人事担当だろうか。魔法使いだというのは事前に伝えてくれたのだろう。
「おはようございます」
「同じ職場で働くシュリンです~。よろしくお願いしま~す」
開発部の人だったか。思いっきり先入観で判断してしまった。俺も、まだまだだな。
「大村です。よろしくお願いします」
「じゃあこっちです。行きましょう~」
エレベーターに向かう。
「すみませ~ん。今日は元々9時半出社予定でぇ、オームラ君の話も聞いてなくってぇ」
あ、そういうのいいです。口では何とでも言える。これは、ちょっとでも理由があれば言い訳にするタイプだな。気を付けよう。
「やっぱそうなんですね、僕も昨日言われたんで」
「そうだよねー! ホント急でビックリしちゃった。でも人足りてなかったから良かった~」
ん・・・? 足りなくなるのは10月からじゃなかったのか・・・? あるいは既に足りてなくて更に減るのか。
居室に到着。やはり、魔法使いは注目を集める。自己紹介を済ませると席を与えられた。この課のエリアの端だが、内側を向いていて課全体を見渡せる。
「PCは午後になるみたいで、ちょっとアタシの片づけ手伝ってもらっていい?」
シュリンさんが指差した先、おそらくシュリンさんの席だと思うが、ダンボールが5個。
「はい、分かりました」
2人でせっせと取り掛かる。中身の取り出しからのようだ。
「ねぇ、ホントに魔法使えるの?」
「まあ、一応」
「使ってみせて~」
「え、いや、さすがに、建物の中では」
「ちょっとだけ・・・!」
両手を合わせて頼み込んできた。いつもの俺なら一蹴するところだが、相手は職場の先輩で、今日は初日だ。俺はダンボールを全部宙に浮かせた。
「おお~~っ」
中身も出し、緩衝材を分けて、空になったダンボールを畳んだ上で全部ゆっくりと床に下ろした。箱の大きさの割に中身は小さく、大半は緩衝材だった。
「すご~~い!」パチパチパチパチ。
周囲の人たちも、感心した様子でこちらを見ていた。
「これっきりにしてくださいね。生命力を使うので限りがあるんですよ」
「はぁ~い」
さて、空になった箱を畳みたい。
「カッターありますか?」
「あ、今カッター使っちゃダメで~」
「え?」
「先週カッターで怪我した人が出たみたいでぇ、対策決まるまでカッター使用禁止だって。はさみ持って来るね」
いやいやいやいやいや。ダンボール開く作業、はさみの方が危ないだろ。カッターで怪我したからカッター使用禁止とか、短絡的すぎるだろ。小学校でもそんなことしねぇよ。むしろ小学校とかカッターで怪我しても何の問題にもならない。”本人の自滅”で終わる。
業務上災害をお役所に報告とか、その数を減らしたいとか、色々あるんだろうけど、制限ばかり増やしても窮屈になって社員のストレスが溜まるだけだ。それと、あまり何でもかんでも問題にしていると、本当に大事なことが分からなくなる。
でも会社側からすれば、”ちゃんと社員には徹底した”って言えるのか。カッター使って怪我した人が出たら、本人のせいにできるもんね。”カッター使うな”って言うだけでお仕事達成できるもんね、簡単だよね、お役所業務。
「はさみは要らないです」
「え?」
「仕方ありません」
俺は杖を掲げ、氷で刃物を作った。
「これならルール違反じゃないですよね」
「おお~~っ」
作った氷を手に取り、ダンボールを全部開き終えた。これで怪我したら”魔法使用禁止”か? ”氷で段ボール開けるの禁止”か? 見てみたいねえ、業務上災害報告の対策欄に、”氷を用いた段ボール開封を禁止する”って表示されるの。”カッター使用禁止”の時点で笑い話だけどね。
「ゴミ捨て場はどこですか?」
「あ、一緒に持ってこうか」
それ以降も特にやることが無いようで、掃除やら棚の整理やらを頼まれた。魔法も氷も使ってません。
11時45分、鐘が鳴る。
「ごめ~ん、お昼の時間教えてなかったよね。ウチは12時15分。シフトが3つあるの。またチャイム鳴るからね」
12時15の鐘でまたシュリンさんがやって来た。
「お昼休みだよ。食堂は一番近いのは10階なんだけどぉ、アタシ弁当なんだよね」
シュリンさんは近くの人にパタパタと寄って、
「すいませ~ん。オームラ君を食堂に連れてってもらっていいですか?」
「あー、えっと、今、手が離せなくて」
30歳前後の男性がそう言いながらコンビニ袋を取り出すと、
「んじゃ俺と行こうか、オームラ君」
40手前ぐらいの人がそう言ってくれた。名前はテゴッパと言うらしい。てな訳でランチタイム突入。
次回:昼休みに花咲く談義




