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異世界メモリアル【2周目 第35話】

「お兄ちゃん、なんか修学旅行から帰ってきてから変じゃない? そんなに剣と魔法の世界が良かったの?」

「ん、まあ、ちょっと、ぱふぱふが忘れられなくて」

「ぱふぱふ? なにそれ?」

「してもらうと凄く、幸せになれるんだ」

「ふうん? 私がしてあげようか?」


俺はパジャマ姿の妹の胸を、改めて観察する。


「無理だ」

「な!? なんか失礼な気がするっ!」


舞衣はパジャマの上から胸を抑えつつ、そう言った。

床にぺたんと座って唸るように俺を睨んでいる。

チャンスが無くなるとわかると途端に惜しい気がしてきた。


「出来ないなりに一所懸命にされるというのも嬉しいかもしれない」

「うるさい! 絶対やらない!」


どうやらなんとなくどういうものかを察して怒ったようだ。

さすがにあれだけガン見したらわかるか。

勿体無いことをした。


「もう、いつものやつ始めるからね」



【ステータス】

―――――――――――――――――――――――――――――

文系学力 182(+52)

理系学力 216(+60)

運動能力 139(+34)

容姿   159(+30) 

芸術   182(+43)

料理   108(+0) 装備+100

―――――――――――――――――――――――――――――


【親密度】

―――――――――――――――――――――――――――――

来斗述(らいとのべる)     [突如現れた転校生]

ニコ・ラテスラ(にこらてすら)  [一晩中実験したい]

画領天星(がりょうてんせい)    [ロト×若頭]

次孔律動(じあなりずむ)     [副会長はロリコン!?]

―――――――――――――――――――――――――――――


ニコ狙い、としてはこれで良いはずだ。

多分だが。

そう思っている俺に、妹が何気なく言った。


「それにしてもお兄ちゃん、料理しないね」

「あぁ、一切してないな」

「料理ができない男はモテナイよ?」

「えっ!?」

「ご飯を食べれない、例えば人間じゃない女の子だったら料理はできなくてもいいだろうけど」


そんなやつはアイちゃんだけだ!

しまった! もともとアイちゃん目当てだったから料理なんてしてなかったが、言われてみれば容姿や芸術と同じステータスなんだ。どうでもいいと思っている可能性は低い!

だいたいニコは酒飲みで、肴にもうるさいんだ。


「料理か……やったほうがいいのか」

「そりゃそうだよ。私もお兄ちゃんの少ないレパートリーに飽きたし」

「そうだったのか」

「うん」


生徒会と部活と勉強と料理か。

家庭用通信学習の勧誘で送ってくる漫画でも、そこまでうまくやれないぞ。1人でやりきれないぞ。

しかも前回は料理部だったからほとんど部活で上昇させていたわけで。


「う~ん」

「お兄ちゃん、お困りですか」

「お困りです」

「んも~、まだわかってないなあ。こういうときはアイテムでしょ」


おう! 俺は目を見開いてポンと手を打った。



翌日、俺は舞衣とお買い物デートにでかけた。


「デートじゃないから」


妹はときおりカンが(する)すぎることがある。

しかし本気で言ってるのではなく、本当はお兄ちゃん大好きで照れくさいだけなのだ。


「ばか」


なんで馬鹿呼ばわりされたかはわからないが、アイテムの店は近すぎるので会話することもなく到着する。


「よし、料理関連のアイテムを見ながら、あーだこーだ言って、これカワイーとか、へ~似合うじゃ~んとか、いやいやこれはむしろ舞衣に着せたほうが可愛いって、ええっ裸でエプロンなんて恥ずかしいよ~、絶対似合うから、可愛いから、お願い、お兄ちゃんの一生のお願いって頼み込んだりしちゃったりして、そんなキャッキャウフフの兄妹お買い物デートを楽しもう」

「独り言終わった? この3つから選んでね」


がく――――ーっ。

俺は膝から崩れ落ちた。

ひどくね?

ひどすぎじゃね?


「早く選びなよ」


蔑むように見下ろす舞衣。

うう……


1.お料理特訓ロボ・ヒラノーレミ 20万円

2.週刊・スーパー家庭料理全巻セット 14万円

3.料理能力養成ギプス 5万円


「説明いる?」

「いるよ、めっちゃ説明いるよ」

「そう? 1はですねえ……じゃじゃん!」


説明がいるなんて意外だなという顔をしているが、ニュース番組のようにフリップを出して解説を始めた。

説明する気満々じゃねえか。


「料理をするときに隣に立って、ああだこうだと軽快なトークをしつつ、破天荒なレシピを教えてくれるロボット。人間離れした突飛な行動で笑いが耐えない楽しいお料理体験が待ってます」


舞衣はフリップを3枚も使って興奮気味にお薦めしてくるけど、冷静に考えておかしくないかね。

料理を教えてくれるロボットが、人間離れした突飛な行動をする必要があるかね。

破天荒じゃないごく普通のレシピを教えて欲しいんだけど。


「楽しそうより不安が強いんだが」

「続きまして、こちら!」


俺の発言は完全に無視してフリップをめくる舞衣。

なぜか妙に楽しそうである。


「あの創刊当時から人気絶頂だった週刊・スーパー家庭料理が全巻セットになってリーズナブルに! 毎週送られてくる食材とレシピに沿ってやっていくだけでめきめき料理が上達したという人気企画だよ」

「なんかプラモデル作るやつみたいだな、創刊号だけ安いやつ」

「よくご存知で。創刊号は1980円のところ、2円だよ」

「安っ! ほんで通常料金高っ!」

「普通に全て購入したら15万円のところ、全巻セットは14万円」

「あんまりお買い得感ないなあ」

「続きまして」


イラストがふんだんに使われたこのフリップ、いつ作ったんだろう……。

クオリティ高すぎて、数日前から用意してるとしか思えないんだけど。


「料理能力養成ギプスは、料理の際に身に着けているだけで料理がより上達するというアイテム。ものすごく筋肉に負担がかかるけど、そこを耐え抜いた先に料理人の道が開ける」

「筋肉に負担って言っちゃったよ。絶対おかしいじゃん」

「3つともオススメのアイテムだけど、どれにするか迷うよね」


迷うのは逆の理由だがな。

本気でオススメしているようだ。


「ぶっちゃけ効果はどうなの」

「ぶっちゃけ値段が高い順」


俺はヒラノーレミを購入した。



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