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異世界メモリアル【2周目 第32話】


「うっわ~! 君可愛いねー! ねえお兄さん、妹さんと遊んでもいい?」

「いいわけねえだろ、しっしっ」


俺はガキンチョを手で追いやった。

ちぇっ、と舌打ちして去っていく金髪碧眼の美男子。


「なぁ、ニコ」

「なにー?」

「確かに俺はニコの全部が見たいとは言ったが、6歳から始めなくてよかったんじゃないか。小学生のナンパを追い払うのツライんだけど」

「私は今の子と遊んでもいいけどなー。可愛かったし」

「そ、そりゃねえだろ、お、俺とのデート中だぞ?」

「へー、6歳の女子とデート。そんで小学生に嫉妬。ほほ~。」


こいつわざとだな!?

このままだと16歳になるまで5時間かかり、その頃にはデートはおしまいだ。

18歳の水着姿見たかったのに!!

普段11歳なのになんでその前から始める必要があるんだ。

せめて10歳スタートで良かったのにっ……。普通そうだろうっ……。ギャルゲーの常識的にっ……。


もちろん、ニコは可愛い。

伸縮しまくるらしい水着は、フリルのついた水色のワンピース。

透き通るような白い肌にショートカットの銀髪。

ぱっちりとした目も、薄くて桃色の唇も、このビーチにおいて燦然と輝くほどだ。

さっきから振り返る男子の多いこと多いこと。

ただし小学校低学年以下に限る。

幸いなことに、義朝のようなやつはこのビーチにはいないようだった。


「ロト、水鉄砲のレンタルやってるぞー」


ニコがシュノーケルやゴムボートなどをレンタルしている店の前で手を振る。

水鉄砲、とはいうがタンクが付いていて両手で構える本格的なタイプだ。


「せっかく子供なんだ、こういうので遊ぼうじゃないか」とニコが言う。

「俺は子供じゃないが、男の子はこういうので遊ぶのが大好きなんだ」と応じた。


特に俺はFPSとかガンシューティングとかのゲームが大好きだからな。

子供相手でも負けるわけにはいかないぜ。


【ルールの説明】

相手に水を当てる 1点

お互いの陣地に立てた旗を奪う 5点

第三者に水を当ててしまった場合 -2点

水の補給中も攻撃は可

旗を奪われたら陣地に戻ってリスタート

制限時間は30分


うお!?

ルールが一気に頭に入る。

たまに発生するミニゲームモードだ。30分もあるけど!


ゲームはお互いの陣地の前からスタートだ。

20メートルほど先に相手の陣地がある。

海水浴場なので、俺たち以外の人も多く、それらを盾にしながら近づいて、旗を奪取するのが基本か。


まず自分の銃の発射距離を把握するため後方に射撃。

5メートルといったところで、下に落ちるが無風ということもあり横にはずれない。


「どこに撃っているっ」


子供特有のすばしっこい動きで近づいてくるニコ。

俺は露出の大きな派手なお姉さんの後ろに隠れる。

俺がいたところに水が飛び、砂に吸い込まれた。


「小癪な、逃げ回りおってえっ」


6歳の美少女は完全にロボットもののパイロットのような口調だった。

俺は前転しながらニコに近づき、射撃。

ニコは横っ跳び。

甘い!

跳んだ先に射撃だ!


「しまった!」


跳んだ先に黒光りするスキンヘッドのマッチョメンが!

顔面にびしゅっと当ててしまう。ヒイイ!

怒ることはなく、俺に向かってニタアと笑うだけだった。ヒイイ!


その間に旗に向かうニコ。


「やらせるものかよ!」


背中から射撃、命中させる。

射撃の腕には自信がある。

しかし撃たれたことを気にせずそのまま旗に向かうニコ。

しまった、撃たれたら動けなくなったりしないから止められないのか。

ダッシュで追うが間に合わず。


俺は-1点、ニコが5点だ。


リスタートして、今度はイチャイチャしているカップルを背にじわじわと敵陣へ。

防御に徹するニコだが、陣地には身を護るものがない。

単純な打ち合いならが負けるわけがないぜ!


身体が小さく細かく動くため難しいが、2発に1発は命中した。

ハハハ! もう4発も!


かしゅっ


お、水が切れた……。

いかん、このままでは撃たれる。

撃たれないようにニコを見ながら、急いで海に向かう。


な!?

俺のことなど全く気にせず一直線に旗へ向かった。

水の補給をしないで追いかけたところで意味がない。

そうだ、先に相手の旗を取れば!

しかしその決断は遅すぎた。

あえなく旗を奪われる。


そしてリスタート。

俺は3点、ニコは10点。

しかも水の補給は出来ていない。

さ、最悪だ。

とりあえず水を入れる以外方法はない。

水を入れ始めた途端、目の前にニコが仁王立ち。

至近距離から顔面を撃たれる。


「がはっ、ごほおっ」


鼻から水が入って、激痛が走る。

これでは水が補給できない!


目!

口!

鼻!

目!

口!

鼻!


「げーはっ、ぐはっ、ぶへ!」


涙目でなんとか補給をする俺。

ニコも水が切れ、補給を開始。


「よくもやってくれたなあ」


俺は銃口を顔面に向けた。


「や、やだぁ、怖いよぉ」


目をぎゅっと閉じ、黄色い声をあげた。

6歳児の幼くも可愛い少女が、身体を守るように身を捩らせている。

とてもじゃないが撃つことなど出来ない。


「ず、ずりぃ~ぞ!?」


散々俺に非道な攻撃をしておいて、自分はか弱い少女を演じるとは!

しかしコレではっ……!

気が引けて、後頭部しか撃てない!


ズババ!

ズババ!


「容赦ねえなー!?」


いやいや、全然違うだろ、目と口に塩水たんまり打ち込まれてるんだぞ?

後頭部なんて無傷じゃねーかよ。


ニコは2発当てたくらいでもう補充が完了。

そこで俺は攻撃をやめて一気に旗を攻めに行く。

なんせ身長が違うから、同じ距離なら明らかに有利。

ニコは旗の奪取は諦めたのか、俺の後を付いて背中にバンバン連射。

フハハ、そんなことをしても旗さえ取れば!

と思ったが、旗を取るまでに5発撃たれて、チャラに。

この時点で俺は10点、ニコは21点。

まともにやってたら勝てねえ!


こうなったら何が何でも旗を狙う!


「これ反則じゃねえのかよ!?」と思わず俺は抗議した。

なぜかマッチョメン達が旗を完全に取り囲んでいたのだ。


「そんなルールはなーい」


マッチョメンを躱して旗を狙う俺に容赦なく水を撃ってくるニコ。

ひでえ!


結局、俺は惨敗を喫した。


「大したことないわねー」


蔑むような表情で俺を見上げるニコ。

ミニゲームの成果が悪ければ評価が下がる。

システム上、仕方ない。

が、納得いかねえ。


ニコは少し成長したようだが、6歳が7歳になったところでなあ。

お父さんじゃないからな。

早く13歳にならないかなあ。


「あー、君ちょっといいかな」

「えっ?」


突如俺に話しかけてきたのは、警察官だった。


「高校生が幼い女の子と一緒だと通報があってね。君たち兄妹には見えないけど、どういう関係?」


ぎゃああああ!

どこのどいつだ通報なんかしやがったのはー!

どういう関係と聞かれても、なんともいえねえぞ。

そうだ、本人から説明してもらえば……!


「私達、どういう関係なのー?」


こ、こいつ面白がってやがる!

俺がなんと答えるのか、にやにやと見上げる。


考えろ、ここでの選択はかなり大事だ。

ミスったらバッドエンドの可能性すらあるぞ!


1.恋人です

2.似てないけど兄妹です

3.学校の友人です


1.はヤバイだろ。バッドエンドだろ。

2.はどうか……。無難なようだが、証拠がないし嘘だとバレたらやっぱりバッドエンドだ。

3.しかない。


「えー、こう見えて同じ学校の友人でして」

「君、小学生にしてはしっかりしてるねえ。身体も大きいし」

「いやいや、違いますよ、彼女が高校生なんですよ」


くくく、と笑いを漏らしているニコ。

笑ってないで助けろよ……。

警官が馬鹿で助かったが、めんどくせえぞ。


結局、ニコがラテスラ社の身分証明書を見せるとこで警官は帰った。やれやれだ。


その後、海の家特有の微妙なカレーや焼きそばを食べたり、浮き輪で流されたりした。

その間、ニコは段々と背が高くなっていった。

4時間が経過し、いよいよ14歳ともなると、スタイルが子供ではなくなる。

もはやフリフリの水色ワンピース水着は、子供っぽすぎて似合ってない。

しかも伸縮自在とはいえ、水着は伸びまくってぱっつんぱっつん。

それがもうなんというか、エロい。


「お、お前、明らかに見る目がイヤらしいぞ」


30分で1歳分成長する特性もあり、俺はじっくりとニコの身体を見ることに慣れてしまっていた。

30分経つごとに写真も撮っている。

序盤は子供の成長を見守る父親のような心境だったが、もはや育つ胸をガン見する変態の目であることに自分でも気づいた。


「す、すまん」


慌てて目を逸らす。

誤魔化すために、俺は話題を変えようとした。


「そ、そういえばこういうとき、オイルを塗るのって定番だよな」

「4時間も経ってからオイルを塗るバカがいるか、このエロ魔神!」


罵られながら背中をばしばしと叩かれた。


その後1時間ほどずっと俺はエロい目で見ては、罵られながら叩かれることを繰り返した。

それが凄く心地よかった。


ドMに目覚めたというわけではない。ホントに。違いますよ?

なんかイチャイチャしている感じがして、嬉しかったのだ。


しかし、後日確認したところ、このデートでは親密度は向上していなかった。

やっぱり水鉄砲ゲームで勝たないといけないのだろうか。難しすぎるぞ。


――ま、いいか。


2年の1学期が終わったばかり。

まだまだチャンスはある。


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