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異世界メモリアル【2周目 第31話】


神のシステムと浮かれていたが、とんでもない欠陥が見つかった。


次のデートは夏の始まりに相応しい場所、海水浴場である。

そしてニコとのデートの際には、俺が好きな年齢で会えることになっている。

まさに神のシステム、神仕様。


さて、ここで問題だ。

制限時間はたっぷりある。

いっそ時間切れになって欲しいくらいの難問だ。


水着姿で現れる彼女の年齢が自由に選べる場合、なんと言えば正解なのか。


1.9歳

2.12歳

3.17歳

4.22歳

5.30歳


ここで1を選ぶとガチのペド野郎認定は免れないし、俺にメリットは一つもない。


2を選ぶと、うわ、リアルなロリコンじゃんとか言われる可能性濃厚。


やはり3のような実年齢の選択が無難なのか!? いや、水着のときに限って実年齢選ぶなんてとか思われそうだ。


4だったらロリコンからは脱却するが、エロエロ野郎扱いされる気がするぞ。


5! いっそ30歳とか!?

いや、そんな年齢で来られても困る。こっちは高校生なのだ。


まいったな~。

選べない……。

選べない、なら、選ばない。

そうだ、選ばなければいいのだ。

フフフ、勝った。

俺は勝利を確信した顔で、彼女のいつもの居場所、化学実験室をノックする。

白衣を着て、なにやら怪しい液体を混ぜ合わせ、煙を出していた。


「ニコ、今度のデートなんだが」

「まさか年齢を選ぶことにビビって、ニコの好きなようにしていいよー、とか言い出さないだろうなー?」

「いいっ!?」


なんてこった、天才か?

俺の考えた完璧な作戦がバレバレだと!?

彼女自身に選択させることで何の非難も受けないという最強の選択肢が……。


「そんな作戦ダメダメだぞー。さっさとエロエロ魔神なのかロリコン悪魔なのか宣言するんだなー」


にやにやと、俺の表情を伺うニコ。

完全に手のひらで踊らされているではないかっ!?

まさかここまで見越しての年齢選択許可だったのか?

両手で頭を抱えて苦悩。


「くっくっく。そんなに悩ましいか、どんだけ私の水着姿をシミュレーションしてるんだか」


そ、そのとおりだ。

9歳から30歳まで全部水着姿を妄想している。

そしてどれが一番とは決めがたい。


「ぐぬぬぬ」

「そ、そんなに悩むことか?」

「もう10日くらい悩んでるよ」

「ふ、ふ~ん、暇だね」


ぼうん!


「おいおい、今フラスコの液体爆発しなかったか!?」

「そ、そんなヘマを天才の私がするわけないだろー?」


それもそうか。

変な匂いがするが、そういうものなのだろう。


「あああ! どれも捨てがたい! 全部見たい!」

「ほ、ほ~。へ、変態じゃん?」


どふん!


「おいおい、今液体に混ぜたやつ、変な色の煙出てるぞ」

「よ、予定通りの結果ですが何か?」


ほんとか?

顔が真っ赤だが、実験に失敗して恥ずかしいんじゃないの?

疑惑の目を浴びせる俺に、ニコは目を泳がせながらアドバイスのようなものをしてきた。


「だ、大体、あれこれ考えずに、す、素直に? じ、自分が好きな? 年齢にしたらいいんじゃん?」

「いやー、だってどのニコも全部ニコだしな」

「……全部……」


ぽわんと熱に浮かされたように、やばい色の液体が入ったビーカーを両手に持っている。

本当に大丈夫なのか?


「全部捨てがたいが、そうもいかないよな」

「そ、そうだぞ、ちゃんと選べよな」


そう言って、腰を当ててビーカーの液体の片一方を飲み干す。


「って、おいおいおい! それ飲んじゃって平気なのかよ!」

「ん? あー、つい飲んでしまった」

「大丈夫なのか?」


見守っていたが、特に変化は見られない。

どうやら杞憂だったようだな。

そのまま帰るのも憚られて、しばらく苦悩する。

ニコは構わずに実験を続けているようだった。


ん?

あれ?


「ニコ、お前なんかちょっとだけ大人になってないか?」

「そ、そうか? さっき飲んだやつ成長促成剤の実験中だったんだが、反応なかったけどなー?」


いや、俺の目は誤魔化せない。

あきらかに大きくなってる。

胸が!


「苦しくなってないか? 服が」

「んー、そう言えば少し」


以前飲んだ成長促進剤はあっという間に大きくなって、すぐに元に戻ったが。

これはひょっとしてじわじわと大きくなっているんじゃないか?


「こ、これを使えば、段々と大きくなっていくデートが可能に!?」

「水着は大きくなっていかないんだが……」

「うっ、そうか」

「そんなに残念な顔をするなよなー。伸縮する水着くらい簡単に作れる」

「ま、マジか!」

「喜びすぎだ、馬鹿」


そう言いながら、柱の方に行くニコ。

メモリが柱に書いてあり、身長がわかるようになっている。

こういった実験は日常的に行われている、ということだろう。

わかっていたことではあるが、目頭が熱くなる。

ニコは柱に寄り、慣れた手付きで指を伸ばすだけで身長を測った。


「ん、2センチ伸びているな。飲んでから30分で1歳くらいか……」

「胸は4センチ増加していると見た。1歳で間違いないだろう」

「それ、冗談だよな……?」

「いつもニコのこと見てるからな、わかるよ」

「おおっとセリフの意味はよくわかるけど、とにかく凄いキモさだぁ」


セリフは辛辣だが、顔と声からするとやぶさかではなさそうだ。

やはり実験が成功していることが嬉しいのだろう。


その30分後、再度身長を測るとやはり身長が2センチ伸びていた。

デジカメがあれば年齢ごとの写真が撮れるのになあ。

さっき飲んだビーカーの片方に残った液体を見せながら、ニコは俺に話しかけた。


「どうやらお前が望むとおりの結果の薬が出来たようだぞ。喜べ、次回のデートは段々大きくなる私だ」

「やっほう! やったぜ! やったー!」

「なんだ、それは……。アホか」

「ニコが喜べって言ったんじゃないか」


やれやれ、これだからアホは、みたいなことを言いつつ、こめかみをぽりぽりと掻く。

おそらく13歳のニコは少しだけ、頬が赤くなっていた。




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