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異世界メモリアル【2周目 第7話】


「いらっしゃ~いロトさん、我が美術部へ~」


お前のじゃねえだろ。

手を広げてくるくると無駄に回転しながら言う、てんせーちゃんに心の中でツッコんだ。

不安しかないが、俺は芸術を身に付けてガリ勉状態を解除せねばならんのだ。


「さて、今日は何を描きますかねえ。ミケランジェロとラファエロにしますか?」

「いきなり裸の男性像2つは厳しくないかな」


俺は思った。

やっぱりな、と。


「仕方ない、じゃあデッサンの基本ということで。果物を描きましょう」


バナナを2本、そそり立たせたものが用意された。

気にするな、これはただのバナナだ。

黒ずんでいい感じに熟れている、ただのバナナだ。


「ロトさん、やっぱり興奮してます?」

「してないよ」

「ほんとですかぁ~?」


そう言いながら、俺の胸を触る。

このメガネっ子は妙に距離が近いというか、すぐにスキンシップを図ってくる。

座ってる俺に近づいてきて心臓を触っているので、胸がちょうど顔の前にある。でかい。


「ちょっとドキドキしてません?」


おまえのせいだっつの。

眼の前にたわわがあるんだよ、たわわが。


「や・は・り」


やはりじゃねーよ、勘違いだよ。

顔を近づけすぎなんだよ、眼鏡同士がぶつかるだろ。


「私も描こうっと」


上機嫌で絵を描き始めた。

上手い。

そして早い。

確かにバナナなんだが、やたら雄々しく猛々しい。


俺の絵を見る。

下手だ。

我ながら、なぜこうなるのか理解不能。

1周目で覚えたはずでも、手が思い通りに動かない。

これはストレスだなあ。


「こ、これは!」


いつの間にか近づいてきた、てんせーちゃんが俺のすぐ後ろから叫んだ。


「下手にもほどがある!」


うるせーよ。

わかっとるわい。


「う~ん、絵を描くくらいしか能のない陰キャみたいな顔しているのに……」


ひでえ。

言われようがヒドすぎる。

でも、ガリ勉効果で容姿は0ですからね。

そもそもまともに話してくれるだけでも感謝しないといけないくらいなんだよな。

自分で鏡見てても何だコイツって思うからね。


こんな感じで、毎日部活に勤しんだ。

勉強するとガリ勉が治らないので、美容のためのヨガで容姿を向上させる。


「おおお!」


朝、歯を磨きながら自分の顔に感動。

1ヶ月近くかかってようやくガリ勉が解除されたのだ。

まだまだ1周目の頃の顔とは違うが、十分直視可能な顔になった。


「あ~、お兄ちゃん、久しぶりにまともな顔だね~」


身支度を終えて、階段から降りてきた舞衣の台詞だ。

酷い言われようだが、そのとおりだ。


「舞衣はいつもどおり可愛いな」

「うっさい」


そう言うけど、声は嬉しそうなんだよなぁ。


夏のぬるい水で顔を洗う。

ようやく久しぶりに目まで洗えたぜ、なんせぐるぐる眼鏡は呪いのように外せないからな。

眼鏡がないとタオルで顔を拭くのも楽だなあ。

絶対ガリ勉になるのだけはやめよう。


その日、部活に行くと、てんせーちゃんから声をかけられた。


「あれ? ロトさん? イメチェン?」


ガリ勉状態の俺しか見たことのないてんせーちゃんなので、当然のリアクションだった。

むしろ同一人物だとよく認識してくれたものだ。


「そんなとこだ」

「受けから攻めに?」

「そうじゃない」


こいつ、完全に腐ってやがる。

部活としてはいつもどおり静物デッサンだった。


そして、またステータス確認の時間がやってきた。


「ガリ勉治ってよかったね~」

「そういうのがあるの先に教えてくれないのか?」

「♪~」

「最近、そのパターン多くない?」


口笛で誤魔化しすぎだぞ、妹よ。

また口笛が下手くそなのが可愛いから、つい許してしまう。


【ステータス】

―――――――――――――――――――――――――――――

文系学力 86(+7)

理系学力 89(+7)

運動能力 63(+6)

容姿   60(+31) 

芸術   41(+31)

料理   108(+0) 装備+100

―――――――――――――――――――――――――――――


「いい感じだね」

「いい感じだな」

「バランスよく上げていけば大丈夫だよ」

「あぁ、ガリ勉だけは絶対ならねえ」


絶対にだ!


【親密度】

―――――――――――――――――――――――――――――

星乃煌(ほしのきらめき)    [1年生のことは全員愛している]

来斗述(らいとのべる)     [モブキャラ]

ニコ・ラテスラ(にこらてすら)  [モルモットの代わりに実験したい]

画領天星(がりょうてんせい)    [ロト×ゴミ箱]

―――――――――――――――――――――――――――――


「来斗さんは誕生日プレゼント効果で、没キャラからモブキャラになったみたいだね」


そうか、それは大きな前進だ。

VRだったら、もっと上がってたのだろうか。


「てんせーちゃんは……どういう意味かわかる? お兄ちゃん」

「一生わからなくていいんだ、舞衣」


俺は精一杯優しい顔で妹に言った。

全く、親密度表現まで腐ってやがる。しかもゴミ箱って。

それにしても、舞衣までてんせーちゃんって呼ぶのか。

すげーな、てんせーちゃん。


「ガリ勉にはなりたくないだろうけど、もうすぐ期末試験だよ、お兄ちゃん」

「あぁ、そうか……」


赤点を出しまくって、補修を受けるときに真姫ちゃんと出会ったんだ。

懐かしいなあ。

会いたいけど、まだ会うわけにはいかないぜ。




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