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異世界メモリアル【2周目 第5話】


朝、起きて洗面台に行った俺は悲鳴をあげた。


「なんで起きたら眼鏡かけてんだぁー!?」


意味がわからなかった。

分厚くてぐるぐるになっている太い黒縁の眼鏡。

天才発明少年の近所に住んでいる浪人生のような見た目になっていた。

これが、なぜか外すことが出来ない。

絶叫を聞きつけた妹が駆けつける。


「あーあ、お兄ちゃん。なっちゃったね、ガリ勉に」

「なんだって?」

「勉強ばっかりしてると、ガリ勉状態になっちゃうんだよ」

「ええ? ステータス異常ってこと!?」


確かに育成ゲームではステータス異常はよくあることだ。

先生になるゲームだと生徒がグレちゃったりとか。

娘を王女に育てるゲームだと、体力だけ高いとワンパク、気品だけ高いとタカビーになる性格システムとかあったな。

頬を赤らめるのが可愛いから、わざと病気にしたりして。

無邪気に昔のゲームの思い出に浸っていると、舞衣がゲームっぽい現実の話をする。


「ガリ勉状態になると、容姿が50下がっちゃうよ」

「マイナスになっちゃうじゃん!」

「ダサいからね……」


全世界の勉強家に謝れ。

にしても、この世界はこの世界のルールがあるからな。

どうすんだよ、どうすんだよ。

この状態を解除するのにはどうすりゃいいんだよ。


「なぁ、舞衣、これを解除するためにはどうすれば」

「♪~」


誤魔化すとき、口笛を吹くのなんなの?

1周目からそうだが、普段の会話ではステータスとかのことは相談できない仕様みたいなんだよね。

容姿が下がるとかの一方的な説明はしてくるんだよな。

システムの問題じゃ、妹には文句は言えない。

俺は例の夜を待つしか無かった。


「お兄ちゃ」

「どうぞ」


食い気味にドアを開けた。

もう来るのわかってるからね。

大体、舞衣の見てる前で、2人前のお茶入れてたけどな。

妹は、ちょっといい? というスタンスを貫くらしい。

まいどお馴染み、ステータス確認だ。

二人で紅茶をすすりながら。


【ステータス】

―――――――――――――――――――――――――――――

文系学力 79(+7)

理系学力 82(+60)

運動能力 57(+6)

容姿   0(+9) ガリ勉-50

芸術   10(+0)

料理   108(+0) 装備+100

―――――――――――――――――――――――――――――


「理系学力の上げ方も凄いねえ」

「ガリ勉だからな」


舞衣はそういう俺の顔を見て、プッと吹き出した。

容姿は0まで来ると、もはや笑えるレベルだ。


「それで、この状態を解除するにはどうしたらいいんだ?」


勉強以外のことをするんだろうけど。


「この場合は、芸術を上げないと難しいかな」


芸術はしばらく捨てておく作戦、見直しを迫られてしまったか……。

さすがに容姿0は生きるのが辛い。

男は見た目じゃない、という言葉にも限界があるからな。

1周目で新聞に載せられない扱いをされた屈辱を思い出す。


しかし、芸術はなぁ……。


「BL漫画のアシスタント以外にどうやって上げればいいんだ?」

「運動部に入らないなら、文化部が一番だけど。美術部とか吹奏楽部とか」


むう……。

正直、運動のステータスは部活以外でも上げやすい。

検討していなかったが、文化部は悪くない選択肢だ。


文化部の知り合いと言えば、新聞部の次孔さんだけだ。

新聞部はおそらく文系学力が上がるタイプの部活。


芸術系の部活か……。

ちょっと見学しにいってみるか。


「さてさて、ガリ勉さんは順調に出会いを重ねているようですねぇ」


【親密度】

―――――――――――――――――――――――――――――

星乃煌(ほしのきらめき)    [1年生のことは全員愛している]

来斗述(らいとのべる)     [没キャラ]

ニコ・ラテスラ  [モルモットの代わりに実験したい]

―――――――――――――――――――――――――――――


ニコ・ラテスラ……あのロリ留学生のことだろうな。

そして俺をモルモット扱いと。

まぁ、あの出会いじゃしょうがないが、俺は悪くないからな?


1周目で攻略対象になった女の子は全員超魅力的だった。

来斗さんとニコについては、現状よくわからないな。

俺が難しい顔をしていると、意外そうに妹が言った。


「あれ? お兄ちゃんってニコちゃんみたいのが好きなんじゃないの?」

「なんでそうなる!?」


俺はロリコンじゃねえ。

もちろん足フェチでもないからな。


「ふ~ん。まぁ、いいけど。ところで来斗さんはもうすぐ誕生日だけどどうする?」

「もう!?」

「誕生日に、もうとかないからねぇ。6月10日なんだよ」


いや、正直何一つわかんないんだけど。

まぁでも変なものあげても、没キャラより下がることもないからな。


「よし、選択肢をお願いします」

「うん、わかった。この中から選べばいいと思うよ」


1.ぽえむ鈴木の詩集

2.夏の最強男決定戦決勝の観戦チケット

3.VR体験・ハイエースで無邪気に攫われる女児SP


……一個ずつ整理しよう。


1.についてはわかるよ。うん。

もちろん、ぽえむ鈴木のことは知らないけど。

文系の少女だから詩集。

わかるけど、罠な気がするよね……。


2.はわかんないよね。うん。

まず何の最強なのかが、わかんない。


3.はわかるけど、わかんない。

どう考えてもこれは……女性に渡す代物じゃない。

そもそも舞衣が提案すること自体、お兄ちゃんは反対。


「舞衣、質問してもいいか」

「答えられることならね」

「ぽえむ鈴木って誰?」

「私も知らない」


そうか……。

じゃあ、なんでここから選べばいいと思うの? なんで?


「最強男決定戦は何の最強なの? 大食い?」

「これはプロレスだね」


プロレス!?

真姫ちゃんならわかるけど……。

来斗さんがプロレス好きか……なくはないのか。

大嫌いという可能性も……全然、あるな。

1周目でプロレス研究会に在籍していた俺だが、生で観戦はしたことない。

わかんねえ。


「あの……このVRのやつは……」

「私に聞かないで!」


舞衣は羞恥に満ちた顔で叫んだ。

セクハラで訴えますよ、というような雰囲気だよ。

じゃあ、言うなよ……。

まるで、この3択は本人の意志とは関係なく言わされてるみたいじゃないか。


確かに、確かにだ。

「レイプしたくなりましたか?」って言ってたよ。

レイプされる疑似体験を味わえるVRなんだろう、きっと。

じゃあ、これが正解なのか?

いや、これを学校の廊下で渡してるところを次孔さんにスキャンダルされてみ?

社会的に死んじゃうよね。

バッドエンドだよね。


じゃあ1か2だろ。

1周目から学ぶならこれは2だ。

沙羅さんの将棋もそうだし。

大体、正解が1だったらつまんないもん。

クソゲーだもん。

いや、この世界は大分クソゲーだけど。


「2でお願いします」

「はいはい、用意しとくね」


しっかし、ここまで急に誕生日を迎えてしまうとは……。

義朝(よしとも)に相談するというステップを疎かにしがちだな。




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