異世界メモリアル【2周目 第3話】
ゴールデンウィーク明けの5月中旬。
俺はとりあえず文系学力だけは、どうやら高校レベルに追いついた。
新聞が読めるし、教科書を理解できる。
1周目はそうなるのにどれだけかかったか。
ここまで来るのに最短ルートを選んでよかった。
家で料理当番をしなければならない俺は、この世界の謎すぎる料理を少し調べようと図書室でうろうろしていると、高いところの本を取ろうとしている女の子を見つけた。
背伸びをして取ろうっていうところなら、俺が取るのだが。
なんと業務用の脚立の最上段に登っている。
押さえないと危ないぞ。
俺はすぐに脚立の脚を持って、彼女を見上げる。
あっ!?
違うんだ、これはわざとじゃない。
誰に言い訳しているのか、俺にも不明だが。
高いところにいる女の子を下から見上げたので、なんというかその下着が丸見えだった。
しかも、こういうときにありがちな縞パンとか白のシンプルなデザインとかじゃない。
あれは、その、ガーターベルトっていうやつじゃないのか?
白いレースがいっぱいついたピンクの、なんというか、ええい、一言で言うぞ。
超えろえろのぱんつだ。
すぐに下を向いて、なかったコトにする。
「も、持っててあげますから、ゆっくり降りていいですよ」
紳士らしくしようと、丁寧な言葉づかいを心がけた。
バレてないよな。
脚立から降りてきた彼女は、文庫本を片手に持ちながら俺を見て言った。
「レイプしたくなりましたか?」
……は?
いま、なんと?
いや、多少は邪な気持ちにはなったかもしれないが、いくら俺でもそんな発想はない。
もうちょっと食い入るように見てもバレないかもしれないぞ……くらいしか思ってない。
改めて、彼女のことを観察する。
その女の子は、とてもじゃないが、そんなセリフを言いそうにないルックスだった。
制服はきちんと着こなして、長い黒髪を1本に巻き込んで藍色の紐で結んで肩にかけている。
瞳は闇のように暗く、伏せがち。肌は白く、唇は薄く赤い。
清楚で、一見地味だが、よく見ると花のように美しい。
日本美人とでも言おうか。
立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花、なんて言葉がしっくりくるタイプの美少女だ。
そんな女の子が、あんなえろえろなぱんつを履いていて。
いま、レ、レイプと言ったか。
どうなってるんだ、頭がくらくらする。
「どうやら、ならなかったようですね」
そう言うと顔を伏せたまま、残念そうに去って行った。
なんだってんだ一体……。
変わった人に出会ってしまった。
そして1週間が終わった。
夜、妹がやってくる。
「お兄ちゃん、入るよ」
「あいよ」
まずはステータスを確認だな。
【ステータス】
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文系学力 72(+60)
理系学力 22(+8)
運動能力 51(+6)
容姿 22(+10)
芸術 10(+1)
料理 108(+0) 装備+100
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「文系学力すっごーい、お見事だね」
「ありがとよ」
基本的に文系の勉強しかしてないからな。
”萌える参考書 ~ねえ、妹と暗記しよっ~ ”というアイテムを保有しているし。
これは2周目に持ってきた段階で、こちらの世界向けに内容が変わっていた。
ちゃんとアイテムを引き継ぐメリットがあるようになっている。
運動能力は、1周目から引き継いだアイテム”倒れるだけで全身スーパーコア”だけで上がっている。
容姿についても、日常生活だけで向上できるアイテムを買っておいた。
”遺伝子マッサージャー”である。
毎日少しずつマッサージするだけで、美形になるように遺伝子を少しずつ組み替えるという恐ろしいアイテムだ。
非常に高額だったが、容姿は部活じゃ向上しないし、2周目も女装メイド喫茶で働くのは避けたくて買った。
ちなみに”お風呂に入るだけでどんどん美形になる入浴剤”は消耗品なので、すでに無い。
熱湯風呂に入る地獄はもう二度とゴメンだ。
【親密度】
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星乃煌 [1年生のことは全員愛している]
来斗述 [没キャラ]
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来斗述か……。
図書室で出逢った彼女のことだろう。
文系学力向上が登場の条件なんだろうな、やっぱり。
1周目はアホだったから、出会うことがなかったんだろう。
今の所の評価は没キャラだ。
まー、最悪だよね。
それにしても、凄い出会いだったな……。
思い返しているだけで、射抜くような鋭い視線が突き刺さる。
「舞衣、そんな目で見るのはやめてくれ」
「来斗さんのどこを思い返してるの、お兄ちゃん」
「思い返すだけで非難してくるの、やめてくれませんかねえ?」
1周目のときもそうだったが、考えるだけで怒るのは人権侵害だ。
俺に思想の自由を!
「そんなえっちな回想なんて、思想って言わないから」
だから、それをやめてくれって……。
このキャラ好きだよ~の一言、お待ちしております。凄く嬉しいんです。




