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異世界メモリアル【第43話】

「お兄ちゃん、お待ちかねー」


おう、待ちかねてたぜ。

今日の俺はこの妹の訪問をただのステータス確認で済ませる気はない。


「現在はこんな感じだよ」


【ステータス】

―――――――――――――――――――――――――――――

文系学力 241(+40)

理系学力 242(+43)

運動能力 263(+52)

容姿   225(+24)

芸術   114(+3)

料理   186(+3)

―――――――――――――――――――――――――――――


「順調だね~お兄ちゃん」


ステータスの数値か。

それも消えてなくなるかもしれないけどな。

舞依は無表情の俺に、若干困惑する。


「……次は親密度だね」


【親密度】

―――――――――――――――――――――――――――――

次孔じあな 律動りずむ [また競馬場に来るのかな!?]

寅野とらの 真姫まき [まじ戦友と書いてとも]

江井えい あい  [先輩を好きになる確率11%]

―――――――――――――――――――――――――――――


次孔さん競馬好きすぎだろ。

真姫ちゃんももはや、俺のことは戦友扱いだ。

そして本命はいまだに11%という体たらく。

実羽さんはやっぱり消えてしまった。


どこが順調だ!

2年の1学期でこんな状況じゃバッドエンドまっしぐらですよ。

だが、それでいいのかもしれない。


「なぁ、舞衣」

「ど、どうしたのお兄ちゃん」


いつになく真面目な顔をした俺に、違和感があるようだ。


「この世界って、死ぬとどうなるんだ」

「えっ」


手を口に当てて、明らかに慌てる舞衣。

俺は答えを待たずに次の質問をする。


「逮捕されたりしたらどうなるんだ」

「……」


黙ったまま、瞳を右往左往している。

あからさまに言いにくそうにしていることで俺は確信する。


「俺は不思議だったんだよ、なんで命の危険があるバイトや犯罪になるバイトなんか薦めてくるのかって」


舞衣は黙って聞いている。


「このゲーム、あえてゲームって呼ぶことにするが、俺が初めたド底辺からのスタートじゃ結構厳しいんじゃないか」


そう、俺の妹は最初から2周目があることを俺に教えようとしていたんだ。

バッドエンドになって2周目が始まれば、そういうゲームなんだってわかる。

これを知ってるかどうかで、プレイは大きく異なる。

命の危険があるけど儲かるバイトに挑んで、金を溜めてアイテムを買う。

2周目のことを考えてアイテムを揃えるのを最優先にして、1周目は捨てるんだ。

おそらく、2周目があるよ、なんてセリフは言えないんだろう。

ギャルゲーだって、そんな事言わない。

2周目ってのは攻略本に記載することはあっても、ゲームの中のキャラはそんな事絶対言わないんだ。


「♪~」


なんと舞衣は口笛を吹いた。

それで誤魔化しているつもりなのか!?

下手くそすぎて、笑ってしまう。


だが、よーくわかった。

こんなの答えてるのと同じだ。

やはり、2周目はある。


「夏休みは全力でバイトをする。勉強なんかもうしない。毎週アイテムを買いに行く。夏休みの最後は危険なバイトばかりやるぞ」


そう宣言すると、妹は微笑んで「そっか、応援するよ」と言ってくれた。


夏休みの最初に始めたバイトは、ドラゴン狩りだった。

真姫ちゃんの水着を買っちゃったときにメイド喫茶と共に提示されたバイトの一つだ。

ドラゴンなんぞ真姫ちゃんに比べたら弱いものだった。

大体ゲームでモンスターを狩るのなんて慣れっこですよ。

ドラゴンの後ろから忍び寄り、チョークスリーパーをかける。

そのまま喉笛をナイフで掻き切る。

狩ったドラゴンの皮を剥いで、肉を焼くところまであっという間に到達。

そんな要領でさくさくと数匹狩った。

1週間で30万円を稼ぐのに成功。

今の俺はこんなバイトでは死なないね。


次のバイトは、治験だ。

また治験かと思うかもしれないが、めちゃくちゃあぶない薬を飲むのだ。

おどろおどろしい色のドリンクなのだが、なぜか凄く美味しい。

しかし、容姿が悪くなったり、筋肉が落ちたり、ろくでもない結果になる。

結構、結構。

どうせステータスはリセットされるんだ。


こちらも1週間で40万円を稼ぐのに成功した。

もう二度とやらないぞ、こんなバイト。


3つ目のバイト。

この辺からもう危なかっしいのを入れている。

遺跡探検者ルインエクスプローラーだ。

ゲーマーとしては腕が鳴る。

ダンジョンに入り、お宝を手に入れてから、帰還する。

これをバイトと呼んでることがおかしいと思うが、超楽しい。

たまに毒針の罠にひっかかったりしなければ、いいバイトだ。

毒のせいでステータスはやはり下がった。

楽しいけど、これも最後のバイトかもなー。


こちらは1週間で25万円。

慣れればもっと稼げそうだ。

もう、かなりアイテムを買い揃えることが出来た。


4つ目のバイトは、結構危険。

要人の護衛である。

ガンシューティングゲームだって俺は結構やっていたので、銃は自信があるぜ。

侵入者がトイレで立ちションしているところを、バレッタで後頭部を撃ち抜く。

タクティカルエスピオナージするゲームの経験が活きたな。

と思っていたが、個室からもう一人の侵入者が現れ、俺は心臓を銃で撃たれた。


――あぁ、死ぬなこれは。


2周目は1年から始まる。

そうなると……あいちゃんにはしばらく会えないな。

次は、なんて名前にしようかな……


そして俺は、意識を失った。



これから異世界メモリアル2周目編が始まります、乞うご期待。

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