表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

42/364

異世界メモリアル【第42話】


実羽さんとの情報交換でいろいろなことがわかった。


彼女はやはり日本人で、俺の5年前に亡くなっていた。

前世の記憶を持ってこの世界に生まれたことを転生と呼んでいる。


彼女が現在攻略対象となっているイケメン達は俺以外は転生していない。

つまり男に関しては全部純粋なこの世界の住人と思われるらしい。


なぜ俺が転生者だとわかったのか。

なぜ俺が突然女の子に会えなくなったことがわかったのか。


それは、彼女が、3周目(丶丶丶)だったからだった。


もう2回、この学校に通ってるというのだ。

過去の2回で彼女は今までにこの世界で何人かの転生者に会っている。


実羽さんは1周目は途中でゲームオーバーになったらしい。

善行の積み方に苦労して、カルマパラメータがゼロまで下がり悪魔に取り憑かれて死んだとか。

この世界のゲーム設定はマジで鬼だぜ……。

2週目は卒業時に特定の誰かに告白されなかったので、いわゆるバッドエンドとなったという。

それで現在が3周目ということだった。


2周目でも3週目でも転生者以外の登場人物は基本的に変わらないらしい。

そして転生者以外は超絶イケメンだそうだ。

3週目になって初めて見かけた全く格好良くない男に声をかけたら、攻略対象になったので、すぐにわかったという。

これは俺が転生者だとわかった理由だ。


攻略対象の把握方法だが、俺には妹がいるように、彼女にはマスコットキャラクターがいるそうだ。

魔法少女モノでお約束の、しゃべるぬいぐるみみたいなヤツらしい。

「ぼくは白クマでも黒ネコでもなーい!」が口癖とか。どんな見た目なんだよ。


そいつが彼女の乙女ゲーみたいな世界のアドバイスやプロフィール確認などをしてくれる。

そういう役割をサポートキャラと呼んでいるとのこと。

誰が攻略対象なのかとか、誕生日プレゼントやバレンタインでどうするのかとか。

ただベースのゲームシステムがやはりギャルゲーと乙女ゲーでは違うらしく、好感度的なものは知ることは出来ないそうだ。

であれば、実羽さんが俺をどう思っているか丸わかりだったことに驚くのも無理はない。


ちなみにイケメン達の好感度はわかりやすく顔にでるらしいので、見ればわかるとのことだ。

まぁ、ギャルゲーもたしかに終盤はそうだけどな。

あいちゃんに関しては全然わかんねえけど。

あってよかった親密度システム。


さて、俺が突然女の子に会えなくなった事がわかった理由だが。

実羽さんは以前に俺と同じく転生した男に会っていた。

その彼はもう何度もやり直しているということだった。

「いつも誰かを傷つけて会えなくなるのが辛くてやり直してしまう」と、言っていたそうだ。

それだけ聞くとハーレムエンドを目指していたように思えるけど、気持ちはわかる。

謝ったら許してくれるようにしておいて欲しいよな。

実羽さんは彼と情報交換したことで色々なことを知ったらしい。

彼は現在、この世界では存在していないが、出会っていないだけの可能性もあるとのこと。

要は実羽さんは以前会った転生者に聞いていたので、傷つけると二度と会えなくなる事を知っていた。


情報収集の結果でわかったことを整理する。


・この世界は転生者が複数存在することがある

・転生者同士も攻略対象になりうる

・世界が同じでも転生者がどういうシステムで活動しているかは人それぞれ

・転生者にはサポートキャラがいる

・この世界ではバッドエンドになると最初からやり直すことになる

・2周目では引き継がれないものと引き継がれるものがある


次に確かめておきたいことは、俺も2周目があるのかってことだ。

引き継がれるものを把握しておけば、2週目は相当有利。

1週目は捨てる、という選択肢も生まれる。

全然話が変わってくるぞ。

舞衣は教えてくれるだろうか。


――ところで。


「実羽さんは、なんでこのタイミングで情報交換を持ちかけてきたの?」


素朴な疑問だった。

割と早めに気づいてたんだよね?

もっと早く教えてくれていれば、という気持ちもなくはない。

すると、実羽さんは眉根を寄せてなんとも気恥ずかしいような残念なような顔をする。

なんだ? 

まるでフラれた人みたい。

すると実羽さんはため息をついてからこう言った。


「この話をしちゃったら、もう攻略相手じゃなくなっちゃうからですよ」


ん?

あ、あー。

そうか、システム的に他のキャラクターと一線を画すしな。

ま、待てよ?


「それって……俺とのエンディングを望んでたってこと!?」

「ちょ、そういう言い方されると恥ずかしいんですけど」


そう言って赤面の美少女が俺の制服の袖を引っ張る。

な、なんということだ。

好かれている認識はあったが、そこまでとは!

なんで俺はあんなヘンテコ人工知能なんかにお熱になっていたんだ!

俺は頭を抱えた。


「だって、俺よりいい男だらけなんだよね!?」


とても信じられないので、さらなる疑問をぶつける。

俺に好感を持っているのはわかったけど、もっと好きな男がいるんじゃないの。


「イケメンばかりに囲まれていると、中身に惹かれるようになるんですっ」


――くらっときた。

お、俺の内面が乙女ゲーのキャラクターより魅力的だと!?

こんな殺し文句あるかよ。

超絶美少女にこんなこと言われて惚れないやつがいたら連れてこい!


「な、なんでじゃあ諦めちゃったの……?」


俺がそういうともの凄く睨まれた。

もともとギャルっぽい見た目なので、睨まれると怖い。


「だってどう見ても、私のこと好きじゃないじゃないですか」


えっ。

実羽さんのこと嫌いなやつなんていないだろ。


「そ、そんなこと」

「最初に出会ったの、私ですよね」

「そうですね」

「その後、4人ですか? 出会ったの」

「そ、そうですね」

「そのうちデートしたのは?」

「……4人ですね」

「私とは?」

「……人形劇をした、かと」

「それはデートですか?」

「……違いますね」


実羽さんは両手で目を覆って、天を仰いだ。


「私だけデート誘われてなーい!」


俺は呆然と佇んでいた。

うーん、確かに俺って実羽さんルートは通ってなかったわ……。


さっきの実羽さんの表情はフラれたみたい、じゃないんだな。

俺はいつの間にかフッていたんだ。


「いいんです、いいんです私みたいな偽物のいい人なんてモテるわけないんです。妹とかロボ子の方が萌えますよね、当たり前ですよね」


拗ねちゃったよ……。

両手の人差し指をつんつん合わせてる実羽さんは、もの凄く可愛らしかった。


もう攻略できないの、ホントかな。

今からでもルート入れないかな。


そんな事を思う俺だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ