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異世界メモリアル【12周目 第30話】


「うわあ……」「ないわ……」「キモ……」

「ドン引きされてるよ。どう思うあいちゃん」

「最悪ですよね」

「お前もディスるのかよ!」

「だって女の子のおしっこ飲んでるんですよ?」

「ビールだろ! ビール!」


自立式人工知能の江井愛、あいちゃんはアンドロイドである。

見た目は女の子。丸顔でくりくりの目をした、あどけない感じ。モデルになるような美人とかキレイとかいうタイプではないが、みんな可愛いと思うタイプの顔だ。

背もやや低め、胸もやや小さめ。地味といえば地味な感じ。幼なじみとか妹とかにピッタリな印象だが、口を開くとクソ生意気。

自意識は過剰だし、自分のこと可愛いと思ってるし、すぐからかってくるし。

なんで人工的にこんな性格にしたのか。

性格はともかく、物理的には人間そっくりだが、食物は基本食べられない。消化器官がないから。味はわかるらしく、飲み物は好きでお酒も飲む。

ビールを飲むと、そのままビールとして排出されるので、もったいないから俺が飲む。1人分で2人楽しめるという一石二鳥。だからあいちゃんに飲ませてから俺が飲むのは非常に理にかなっている。合理的ということなんですよ。


「説明してやってくれよ、あいちゃん」

「先輩はド変態なので、女の子の排泄物が大好きなんです」

「うわあ」「やっぱり」「これはひどい」

「おい!」


これだよ。あいちゃんらしいよ。

説明が下手というか悪意があるよ。

しょうがない、身の潔白は自分でしよう。


「あいちゃんは飲んだものをそのまま体外に出すんだよ」

「そうなんです」


とりあえずおしっこではないことを説明。


「でも、どうしてそこまで飲みたがるんでしょうか」


おっ、実羽さん、いい質問ですねえ。


「同じビールだったら、女の子の体を通過したビールのほうが飲みたいだろ」

「……」「ええ……」「むしろキモい」


おかしいな。見る目がよけいに冷たくなったぞ。冷たいのはビールだけでいいんですけど。

俺からしたら、同じおにぎりでも女の子の手作りの方が嬉しい、みたいなことなんだが。同じようなもんじゃないの?

みんなが睨んでいる中、あいちゃんだけがにっこりと俺に微笑みかける。


「先輩、グラスで飲むより、直接飲みます?」

「お、そうしようかな……って待って、待ってくれ!」


女の子たちが魔法を発動させていた。死ぬ。シャレにならない。まじで死ぬ。

なんで? 嫉妬? だとしたら何を嫉妬?


「え、ひょっとして、みんなも俺におしっこ飲んで欲しいってこと?」

「「んなわけあるかー!?」」


違ったようです。

女心ってマジわかんないですよね。


「ええ? じゃあ、なんで?」

「「聞くなー!?」」


魔法は使われなかったが、拳で語られた。理不尽だ。

女の子はいっつもそうですよ。言わなきゃわからないと言っておきながら、自分たちは言わないんだから。わかってくれないとか言うんだもんよ。ムジュンですよムジュン。異議ありですよ。


「いてて……」


やれやれだ。

みんな俺のハーレムだという自覚が足りないだろ。


「大丈夫ですか、先輩。あいちゃんしんぱ~い」


くねくねと腰を振ってあざとく心配を表明しているが、絶対に心配していない。

ところが、この態度は他の女の子にいい影響を与えたようで。


「こほん。ロトさん、わたしはいいと思いますよ。というか一緒に飲みたいです」

「来斗さんはさすがだなあ」


来斗さんらしいフォローだな。

とりあえず味方が増えるのはありがたい。


「まあ面白いけどな。ひょっとして、ミルクとコーヒーを飲ませたらカフェオレが出てくるのか?」

「あ、ニコ、それは俺も考えたことある」


わかるわかる、その発想。

でも、ちょっと嫌そうな顔をしたのはなんでなの。


「ん~、飲尿の瞬間を撮影しとくと何かと役に立ちそうだけど」

「次孔さん、それは良くないと思うよ」


ゆすりのネタですよね。


「ロトさんはビールより尿の方がお似合いですけどね」

「沙羅さんは本当に容赦ないね」


沙羅さんも嫉妬深いからね。本当は思ってないけど憎まれ口を叩きがちよ。


「ビールがなければおしっこを飲めばいいってことなんですか?」

「鞠さん、わかってないのに怒ってたの?」


というか怒ってないようです。なんか周りにあわせてただけくさい。


「そもそもこいつなんなんだ?」

「真姫ちゃんは何も理解してないのね」


真姫ちゃんはあいちゃんをツンツンしている。

ま、見た目じゃわからないからな。


「ははは、賑やかで楽しいな!」


そうだな。星乃さんの言うとおりだ。

こんな感じでみんなで過ごせるのも、もうすぐ終わり。

明日は……最後の戦いになる。

短い、本当に短い戦いだったな……。もっとみんなと一緒に居たい……。

いや、そんな甘い考えだと死ぬかもな。

次孔さんに見てもらった、最後の敵の布陣。

はっきりいってドン引きだった。

強すぎる、ということもあるが……。

メインの理由は義朝が巨大モンスターだったことである。

なんと敵は義朝だけ。

義朝だけなんだが、義朝の頭、義朝の右手、義朝の左手、義朝の右足、義朝の左足の5つのユニットが敵であるらしい。

江井愛の魔法である、永久機関の(横山)巨大機械人形(ロボ)に乗り込むことでようやく戦うことができるという巨大っぷりだ。

女の子の義朝じゃなくて男の義朝だと思っていたが、まさか化け物の義朝だとは。


とりあえず、今日のところはみんなでビールでも飲もう。

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― 新着の感想 ―
[一言] 恋愛ゲーに今回の話はさすがに入れられんなw
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