異世界メモリアル【12周目 第27話】
「ロボット軍団とくノ一軍団……」
「どちらも強敵です」
「そうだな。つまり、ここは戦力アップが必要だろう」
「戦力アップ?」
「トレーニングするしかないっしょ。さて、真姫ちゃん! 俺がおんぶするから走ろう!」
「お? そーか?」
「いや、脚力なんて鍛えても勝てませんけど。そんな次元で戦ってませんよね」
「ええ!? じゃ、まあいいや。真姫ちゃん、二人羽織しよう!」
「ん? そうなのか?」
「背中におっぱい当てて欲しいだけじゃないか?!」
「ああもう、じゃあどうすんだよ!?」
まったくどいつもこいつも!
文句だけ言いやがって!
勝つためのアイデアの一つもださんと!
真姫ちゃんは全然やぶさかじゃないというのに!
背中におっぱい当てて欲しいだけの何が悪いっていうんだ、論破するな!
ったく……。
俺はしょうがなく軍師に問いかける。
「ロボットはどうなんだ? 空飛べないなら、沙羅さんの壁でどうにかなんじゃないの」
くノ一は空中戦が得意そうだからな。
「そうだったら、そもそも寅野真姫より先に攻め込んでいますよね」
「……」
え?
俺が怒られてんの?
沙羅さんの力不足って話ですよね?
「えっと、要するに? 真姫ちゃんがいることによって何が変わるかってこと?」
「そうですよ。飛車を取ったのに使わないなんてありえないでしょう?」
この軍師……。
いや、違うな。もっとね、頭のいい人に相談すべきなんだよ。
「ニコはどう思う~?」
「頭を撫でるのをやめてほしいと思う」
「そういうことじゃなくて」
「太ももの撫で方がおじさんぽくてキモい」
「そうじゃなくて、俺は真面目に次の戦いの話をしてるんだよ」
「真面目な話をするときに私を撫で回すな」
何いってんだ。ニコは俺の膝の上で撫で回されてるべき存在だろ。
そんなこともわからないようだと、相談しても無駄かもしれんな。
「ロトさん?」
「ああ、はいはい」
実羽さんだ。
彼女はいいアイデアを思いついた……わけではなく、交代を要求しているだけ。
俺はニコを撫で回した後、実羽さんにも同じ時間撫で回さないといけない。理由を求めてはいけない。実羽さんというのはそういう人なのだ。
「真姫ちゃんはどう思う?」
「ん? ロトはエロいと思う。すげー顔してるぞ、撫でられてる映子」
「だからそれはいいのよ。ロボット軍団とくノ一軍団のどっちと戦うかって話」
「どっちも戦うんだろ?」
「ま、そうだけど」
「どっちが先でもいいよ。どうせ戦うんだから。あたしがぜんぶ倒せばいーだろ」
「おお……」
セリフだけだとアホっぽいが、顔を見ると凛々しくてカッコいい……やだ、惚れそう。
「よし! じゃあ、次孔さんから行くか!」
「おっしゃ、任せとけ!」
ジャーンジャーンジャーン!
攻め込むと、すぐに次孔軍のくノ一軍団が反撃してきた。
いけ! 真姫ちゃん!
「ロト、こいつら早くて攻撃あたんないわ」
「うおーい!」
真姫ちゃんのスピードを持ってしても攻撃当たらないらしい。んもー!
「あたんないなー」
ニコの攻撃も当たらないそうです。
くノ一は回避力が異常に高いということらしい。
「やったー」
鞠さんは当てられるらしいです。ただのラッキーだな。複数の隕石での攻撃というのも相性が良いのだろう。
数人は鞠さんが倒したが、残る数十人がこちらの陣までやってきた。
みんなして断崖絶壁の盾の中に隠れる。
負傷した真姫ちゃんをてんせーちゃんが回復させているが……。
「どうする? 撤退するか?」
ニコのときのような火力は無いからまだなんとかなるが、手裏剣攻撃でみんな切り傷だらけだし、火遁の術で火傷だらけだ。
断崖絶壁の盾は強力だが、頭上から地味に手裏剣やら吹き矢でアタックされている。このままでは、じわじわとなぶり殺しだ。
沙羅さんが何を言ってるんだとばかりに俺を半眼で睨んできた。
「ロトさん、歩のない将棋は負け将棋といいますが、歩を倒す必要はないんですよ?」
「ん? あ……!」
倒す必要があるのは王将のみ。
そういうことか。さっすが軍師。ここで活躍するのが真姫ちゃんってことか!
「真姫ちゃん! 俺をおぶって敵陣に攻め込むぞ!」
「ん? ロトがおぶりたいんじゃなかったっけ」
「今は背中でおっぱいを感じてる場合じゃないんだよ!」
「やっぱり」「認めましたね」「そうだと思ってた」
「ロト殿! 治療終わりましたぞ」
「よっしゃ、ありがとうてんせーちゃん!」
みんなもてんせーちゃんみたいに、口を動かさずに手を動かした方が良いですよ? 嫉妬だけなら誰でもできるんだから。
「ちゃんと捕まってろ、ロト!」
「うわっ、はやっ!?」
俺をおぶった真姫ちゃんは、くノ一たちの脇をシャーっとくぐり抜け、誰もいない荒野を駆ける。
なんというスピードだ。チョコボに乗ってたときを思い出すぜ。ファイナルファンタジーⅪの。
次孔さんの周りには数人だけ側近が守っている。どうする。
「おりゃー」
「うわーっ」
真姫ちゃんは俺を放り投げた。なんてことを。
「とーう」
「ぎゃあっ」
次孔さんにジャンピングニー!
おっしゃ、このままてごめにする!!!
「あ、ああ……」
ふーっ。
これで次孔さんも仲間になった。
後は自立式人工知能の江井愛、そして義朝で終わりか。




