異世界メモリアル【12周目 第26話】
「や、やめろー!」
「いいじゃんか~。ずっとこうしたかったんだよ~」
俺はニコを抱きしめ、頬ずりし、ちゅっちゅして、頭ぐりぐりして、もうとにかく猫可愛がりした。
彼女を攻略したのはなんせ二周目。俺の感覚では30年前のことです。
異世界メモリアルのシステムを理解していなかったので、もう会えないなんて知らなかったし。どこまで許されているのかも知らなかったし。後悔ばかりなんですよ。
髪はショートカットのシルバーブロンド。
肌は真っ白で、瞳はブルー。
唇は紅く、背は低く、胸は皆無。
見た目は北欧の11歳美少女という、理系のロリだ。もうね、むちゃくちゃカワイイんですよ。
「ニコ~、ニコちゃあ~ん」
「や、やめ、やめろー」
抵抗は無駄です。ひ弱極まりないからね。
これがしたくて戦ったんだ、やらせてもらうぜ!
「頭が小学生レベルだと、女性の好みも小学生になるのか」
こんなことを言うのはもちろん沙羅さん。
「俺のことはなんと言おうと構わないが、ニコを子ども扱いするのはやめてもらおう。彼女は立派なレディだ」
「ロト……」
「そうだよね、ニコちゅわ~ん。んちゅ~」
「おい! レディに対する態度じゃないぞ!」
沙羅さんの断崖絶壁の盾は非常に固い守りらしいが、守れるのは前方のみ。頭上からの攻撃には無力であった。ニコを仲間にするのが必須であったと言えるだろう。
ニコの正確無比な殺人光線は空から降り注ぐ強力な魔法で、しかも長距離攻撃。つよつよです。弱点としてはニコ自体のスピードが遅いことだろうか。いわゆる行動順が最後になると思ってくれ。
ちなみに、魔法の呼び名はそれぞれ自分で考えてネーミングしているそうです。ニコニコ・びーむって、物騒さと可愛さと頭の良さとアホさが同居している、ニコらしいセンスですね。
アナグマは将棋の囲いの名前だ。穴熊囲いというやつ。将棋好きの沙羅さんらしい。
なお、てんせーちゃんは明朗快活なる回復の波動だそうで。ニチアサ~。
「ロトさん、ロリっ子とイチャついてないで次の戦いの準備をしてください」
「痛い、痛い、痛い、痛い!」
実羽さんは非常に嫉妬深い。
沙羅さんは皮肉を言うだけだからいいが、実羽さんはつねってくるぞ。
次の戦略かー。
「沙羅さんは、どう思う?」
将棋が好きってことは、こういう戦略シミュレーションゲームみたいなものも得意なのではないかと考えた。
「選択肢は……江井愛と、次孔律動、それに寅野真姫ですか」
「あれっ、古々路野 義朝ちゃんは?」
「彼はラスボスです」
「えっ!? 彼!?」
「なにか?」
「いや……」
「彼がラスボスというのは意外だったでしょうか」
そんなことはどうでもいいんだが、義朝(女子)を手ごめにしたかった……なんで男なんだよ……。
「おい、真面目な話してるなら、私のそこかしこを触るのはやめろ」
「やめるわけがない。ニコも触ってくるといいぞ。それで沙羅さん、考えを聞かせて」
「江井愛はやめておきましょう」
「なんで~」
あいちゃんは、ニコの次に会っていない女の子だ。むかつくやつだが、悔しいことにめちゃくちゃ可愛い。会いたい。
「彼女の軍は史上最強のロボット軍団です。はっきりいって強い。勝てないでしょう」
「うへー」
あいちゃんがめちゃ強いっていうのは納得なんだよなー。
「次孔律動もやめておきましょう」
「なんでよ」
ニコの太ももをすべすべ触りながら文句を言う。ニコの文句は聞かない。
「彼女は情報収集能力に長けたくノ一軍団です。苦戦は必至です」
「うへー」
次孔さんが率いるくノ一軍団。絶対厄介じゃん。
「でも、真姫ちゃんは強いでしょ」
「いえ、彼女には勝てます」
「そうなの?」
「だって、私がいますから」
おお!
すごいドヤ顔だ!
「私の盾があれば、どうということはありません」
「ほーん」
そこまで言い切るなら。
軍師の言う通り、真姫ちゃん軍に攻め込んだ。
こちらの攻撃を待つなんてことはなく、彼女はものすごいスピードで襲ってくる!
ニコの射程距離に入った。
「あ、当たらない……」
ニコが愕然とする。
真姫ちゃんのスピードは異常だ。あれを避けられるなんて尋常じゃない。
「くっ!?」
星乃さんの攻撃もあっさり避けた。
「あら~」
鞠さんの攻撃も駄目。とにかく動きが速すぎる。
真姫ちゃんは、一気にこちらまでやってくる。雑魚に用はないとばかりに。戦力を削ぎに来たニコとは対象的だ。
「こうなることはわかっていました」
「さすが軍師」
沙羅さんは勝ち誇ったように断崖絶壁の盾を展開。
俺と沙羅さんの周りに、透明に近い緑の魔法壁が現れる。この壁は破壊できないだろう。
「うりゃー!」
真姫ちゃんは高くジャンプ。
あっさり壁を越えた。
「沙羅さん!?」
「飛車だと思ったら、桂馬でしたか……」
沙羅さんはもう投了のようです。なんて頼りがいのある軍師なんだ。
「やばい! 俺はいいけど沙羅さんがやられたらうちの軍はおしまいだ!」
「そうなのか!? いいことを聞いた!」
「えっ!? えっ!?」
真姫ちゃんが、俺ではなく沙羅さんを狙った。無防備に俺に背を向けて。
「今だーっ!」
大きく袈裟斬り!
「すかさず!」
てごめにする!!!
相変わらずけしからんおっぱいしやがって!!!!
「うわ、やめ、やめー。あっ……あー」
真姫ちゃんがアホで助かったぜ。
「ロトさんは大したものですねえ」
「いやいや、軍師の戦略のおかげさ」
俺と沙羅さんは、お互いを笑って称えた。
いやほんと、いいおとりだったよ。




