異世界メモリアル【12周目 第23話】
チュートリアルにふさわしい弱さだったのが、画領天星。
彼女とエンディングを迎えたのは8周目だった。
BLをこよなく愛する腐女子であり、イラストや漫画がとても得意な芸術系ヒロイン。
顔は丸くて目が大きくてクリクリとしている。いわゆるたぬき顔。大きくて丸いメガネが特徴的だ。
胸はかなり大きく、ぱふぱふをしてくれた思い出が蘇る。
非常にノリのいい性格で、明るく楽しくグラマーなオタクである。
「ロト氏~」
「お、おう」
てんせーちゃんは、基本的に距離が近い。
スキあらば腕を取ってくる。
「また、てごめにしてよ、ロト氏~」
「や、俺は、ほら、イーナちゃんがね」
「それはそれ、これはこれ。いいじゃん、拙者は気にしないよ~」
うん。
てんせーちゃんらしい。とてもいい女です。が。
正直なところ、イーナちゃんよりも問題があるのよ。
俺はてんせーちゃんの耳に口を寄せる。
「あそこで、睨んでるこわーいお姉さんがいるでしょ」
「ああ。貧乳ヤンキーこと実羽映子でござるか」
「だれが貧乳ヤンキーですか!?」
「てんせーちゃん、聞こえちゃってるじゃん」
「拙者は気にしませんぞ」
「気にしてくれ!」
こんな感じでまたしても時は過ぎ……。
「さて、第二戦だなロト!」
「始まっちゃったよ」
全然説明聞けてないんですよ。
チュートリアルと同じで大丈夫なの?
てんせーちゃんだったから勝てたようなものの。
「次が誰かわかるの?」
「二戦目は庵斗和音鞠だ!」
「じゃあ楽勝だ!」
鞠さん。五周目でクリアした非常に美しい女性だ。
美しく長い金髪をなびかせ、きゅっと絞まった細い腰に、雪のように白い肌。
すらりと長い美脚。全女子が憧れるような美女だが、致命的な欠点がある。
ずどどどどどーん!
「あ、まちがえちゃったぁ~」
彼女は超がつくほどの天然、ドジっ子である。
これほどキレイなフレンドリーファイヤーを見たことがない。
鞠さんは前衛の味方に隕石を降らせて全滅させた。いわゆるメテオ。怖すぎる……。
実羽さんは後衛を倒しに行った。星乃さんと鞠さんの元へ。てんせーちゃんはオレが置いてきた。ハッキリ言ってこの戦いにはついてこれそうもない。
「さて、ロト、弱らせる魔法があるから。真似して!」
「あるのかよ」
なんでてんせーちゃんには剣でツンツンさせたのさ。
「こう構えて、こう!」
「ああ、破邪剣征桜花放神だね」
わかりやすい動きなのですぐに習得。
おろおろしているだけの鞠さんに向けて剣を構える。
「はじゃけんせい……おうか! ほーしーん!」
「きゃー!」
「よし! これですっごくだるくなって、スタン状態になる!」
ぺたんと座り込む鞠さん。地味だな。剣からエネルギーがほとばしると思ったが、見た目はなんもなし。相手は隕石を降り注がせているというのに。
「俺は完全に捕獲要員なんだねえ」
「さ、ゲットだぜ!」
「ほいよ」
剣の紋章を押す。
いともたやすく行われる魔法紐によるバインド。
よっしゃ、てごめにする(全年齢版)ぜ。
「ふー」
やってやったぜ。
鞠さん、やっぱいい女だぜ……。
「よしよし、さすがロト!」
「まあ、てんせーちゃんと鞠さんは余裕だな」
序盤にふさわしい相手でしたね。
この調子で領地を支配していけばいいのか。
しかし真姫ちゃんとかだったら勝てる気がしない。沙羅さんにも勝てる気がしない。
「次のボスが誰かわかるの、星乃さん」
「次は、来斗述だな!」
「なるほど! じゃあ、星乃さんと実羽さんはミニスカートを履いて、ぱんつを見せながら戦う作戦で行こう!」
ドカ! バキ! グシャ!
……二人からボコボコにされた……。いたって真面目に考えているのに。
来斗さんは俺よりも女子のぱんちらを愛している女子ですよ?
「だ、だって、ぐふっ……来斗さんを倒すならお色気作戦しかないって」
「そんなの画領天星にやらせればいいだろ! それくらいならできる!」
「ええ……」
なかなか辛辣な意見ですね星乃さん。役に立たないから色気出せって、昭和のセクハラ上司の発想だよ?
「そうだそうだ」
実羽さんもあっさり乗っかるんですね。根はいい人なんですけどね。
「そうですよ」
鞠さんも賛成しちゃうんですね。天然だからしょうがないか。
「確かに!」
「えー!? てんせーちゃんも納得なの!?」
さすがに嫌がってもいいんですよ?
ひどい話ですよ?
「いや、この中でセクシーなのは拙者だけですし」
おっ?
ポジティブ?
「庵斗和音殿はあれ、モデルみたいって言えば褒め言葉かもしれませんが、結構ガリガリだし、ぶっちゃけ男にはウケないタイプ。来斗殿にもウケないでしょうなあ」
「あー」
確かに。
美人ではあるが、なんかエロさはあんまないかも。要するに女の子向けの雑誌に出てくるタイプであり、男子向けのグラビアには出て来ないタイプ。
「実羽殿はねえ? サンダルとジャージで深夜の激安ディスカウントストアを徘徊している感じ。ぱんつが見えても大して嬉しくないでしょうなあ」
「あー」
いるよね、いるいる。
ダルそうに髪をボリボリさせながら、ふぁ~っとあくびしてる姿が目に浮かぶぜ。
「星乃殿は男みたいっていうか、ゴリラみたいなもんですしおすし」
「あー」
言われてみればそうかもな。普段は恥じらいとか皆無だし。
こんな堂々と腕組み仁王立ちでぱんちらしたからって、なんにもなんないかも。
「その点、拙者はグラマーでコケティッシュですからな」
「確かにそうだよな。エロい体してるよね」
「そんなわけで、ひと肌脱ぎますぞ」
「ありがとう、てんせーちゃん。てんせーちゃんがエロ可愛くて助かったよ」
「ふふん、まあね~」
いやーよかったよかった。
これで全部丸くおさまったね。
そう思っていたのだが、なにやら不穏な空気が……。
「「「あーじゃ、ない!!!」」」
ドカ! バキ! グシャ! ズガッ! ドゴッ! ピシャーン! ガン! ガン! ゴン!
なぜかてんせーちゃん以外の三人から、とてもじゃないが行動できないくらいのダメージを受け、俺たちはその場で二泊することとなった。




