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異世界メモリアル【12周目 第22話】

二日目の夕食。

焚き火を囲みながら、具だくさんのスープというか鍋というか、そういうものを食べている。

まったりとした、落ち着いた雰囲気で、なにげなく星乃さんが。


「そういえば、この世界は、戦国ロトって名前だったぞ!」

「戦国ロト?!」


またしても爆弾発言。

え? 俺の名前が入ってるの? 世界に?


「ジャンルは地域制圧型シミュレーションゲームだそうだ!」

「面白そうじゃん!?」


実羽さんも、もぐもぐしながら、こくこくと頷いている。

やっぱり暴力沙汰が好きなんですね?


「そうなんだよ! この手のジャンルは初めてだから楽しみだ!」

「へ~だから、プレイしたんだ」

「いや、他はプレイできなかった!」

「えっ?」

「ロトはこれをやらないといけないし、この星乃煌が居ないと始まらないだろうからな!」

「ほー?」


俺のせいで星乃さんの選択肢がなかった?

星乃さんのプレイによって俺が翻弄されていると思っていたが、逆もあるってこと?

しかしなにかあれだな、戦国ロトって、なんかパソコンゲームっぽいというかなんというか。ひょっとして全年齢向けじゃない可能性も……?


「じゃあ、そろそろ寝ましょうか」

「あ、そうだね……」


また魔法剣の使い方とか教わりそこねたが、まー、いっか。先は長い。


「でさー。あいつらマジで自分がカッコいいと思ってんのがうぜーんだよ」

「ははは! ははは!」

「はあ……」


三日目はワインを開けた。

そうしたら、もう実羽さんの愚痴大会です。

酔った実羽さんは、目が座っていて完全にヤンキー。ただ紅くなった頬に、焚き火の明かりが反映されていて、なんだかセクシーな感じもする。


「でもねえ。彼らもなんかやっぱり名家の出だからとか、なんか可哀想なところもあって。ほんとは悪い男なわけじゃないんだけど~」

「あ、はい」


根がいい人なんで、愚痴なのにフォローを入れてしまうのよね。


「そうかそうか! あははは! もっと飲もう!」


こうして夜は更けた。

まあ、まだ時間はあるだろう……。


「どうしてこうなった……」

「おい、ここにきてまだ迷ってるのか!?」

「いや、そんなことはないよ、星乃さん」


そうじゃないのよ。

時間がたっぷりあると思ってたら、もう始まっちゃったのよ。戦いが。

実羽さんの愚痴と、星乃さんの武勇伝を毎晩聞かされてるだけの日々だったのよ。

魔法剣の使い方もわからないし、魔法のことも聞いてないのよ。


「ロト! いまどき説明書なんて読まないだろ! チュートリアルでいいんだよ!」

「あー、そう?」


正直、星乃さんがいれば大丈夫だろうという気はしている。


「まず、雑魚は映子ちゃんが倒すぞ!」

「おるあああああああ!」


頼りになるなあ……。

露出度の高い鎧が似合うなあ……。

雑魚とはいうが、普通に大人の男性の軍人らしき人であり、魔法を使っている。

魔法はメラとか、サンダラみたいな感じではなく、なんというか……ビッグ・バン・アタックというか、ギャリック砲というか……そういう感じ。

それに立ち向かう実羽さんは……


「あれ、魔法剣の使い方あってるの? 兜ごと叩き割ってるけど」


肉弾戦だった。

剣で魔法をはねのけて、物理的に攻撃。トランクスみたいな戦い方ですね。


「彼女は強化魔法がかかってるからアレでいいぞ!」

「あ、そうなんだ」


あんなに大きい剣、普通に振り回すのは無理だろうし、そういう魔法の効き方なんですね。

で、俺の剣はめちゃ重いです。どういうことですかね。


「後ろから遠距離の魔法を使ってくるやつらは、この星乃煌が倒そうじゃないか!」

「お手並み拝見します」


星乃さんは、剣を勢いよく振り上げ……地面に刺した。え?

で、剣を握ったまま仁王立ち。王者の風格だ。すでに勝ってるのではと思うが、まだ何もしてませんよ?


「薙ぎ払え!」


ドガシャーン!


「うわー」


星乃さんの頭上から、光と熱が発射されて後方の魔法使いが一掃されていく……要するに巨神兵みたいな感じです。

これ、俺必要か?


「俺は何すればいいんだろうね」

「ロトは当然、ボスだよ!」

「おお、そうか」


ボスかー。なるほどなー。

ナムコ三国志で言えば武将ってことだな。チョウヒとかバチョウとかってことだな。

雑魚がおじさんなんだから、ボスもおじさんなんだろう。

実羽さんが戦っている横を通って、星乃さんとともに前へ。

旗が掲げられている。あれがボスだろう。


「やあやあ我こそは、画領天星(がりょうてんせい)と申す! ジャーンジャーンジャーン!」

「てんせーちゃんじゃん!?」


出てきたのはヒゲの武将ではなく、魔法少女の格好をしたてんせーちゃんだった。まどかみたいなのではなく、コットン100パーセントです。でかくて丸いメガネを掛けてるけど。見た目だけじゃなく、自分の口でジャンジャン言ってるところがまさにてんせーちゃん。

味方がワルキューレとヴァリスで、相手がコットン100パーセントです。大昔のコミケかな?


「そう。この戦国ロトに出てくるのは異世界メモリアルで攻略した女性キャラなんだ!」

「ええ!?」


どう考えてももっと早く言って欲しかった!

一番大事なことだろ!?


「てんせーちゃんを剣で殴るなんて俺にできないよ!?」

「そこだよロト!」


どこなんだよー。

チュートリアルしんどいよー。


「映子ちゃんとか私では、倒してしまう。ロトの剣は捕まえることができるんだ!」

「捕まえる?」

「捕まえて、味方にするんだよ! そうして味方を増やしながら領地を増やしていくんだよ!」

「なんでそれを最初に説明してくれないの!?」

「ほら、体力が満タンだと捕まえられないから、ちょっと弱らせて」

「ポケのモンじゃん! ポケットのモンスター的な捕まえ方じゃん!」

「いいから、ほら! 足とか攻撃して!」

「こうかな、つんつん」

「痛! いたーい! わーん!」

「ごめん! ごめんよ、てんせーちゃん!?」

「ひっかかったなー! くらえ、必殺のぉ~」

「えい」

「ぎゃー! いたいー! 痛いのぉ~、もっと優しくしてぇ~」

「そろそろ捕まえられるだろ、この紋章のところを押して!」

「これか。ぽちっとな」

「きゃあー! へんたーい!」

「おお、なんか魔法の縄でがんじがらめみたいになった……眼福眼福」

「そこで、てごめにする(全年齢版)を実行だ!」

「なにその(全年齢版)って!? 全年齢じゃないやつあるの!? ねえ、あるの!?」

「いいから早くしないと逃げるぞロト!」

「全年齢じゃないのがいいよー!」


こうして、てんせーちゃんが仲間になった。

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