異世界メモリアル【12周目 第21話】
その方法はダンス大会で優勝することでした……なんてことはなかった。
俺は今、ごつい鎧を着て、剣を持っている。
「どうしてこうなった……」
「おい、ここにきてまだ迷ってるのか!?」
魔法剣でこづかれた。
羽の付いた兜と鎧を着て、剣を持っている。一言で言えばワルキューレです。
「いや、そんなことはないよ、星乃さん」
こうなったのは九日前、貴族になる条件を聞いたからだ。
イーナちゃんとの約束、そして星乃さんの衝撃の説明を思い出そう。
まずイーナちゃんだが……
「貴族になる方法は、他国で領地を手に入れるしかありません」
「ん……?」
「つまり、軍事侵攻です」
「ええ!?」
ゲーム性が違いすぎる!
奈良の修学旅行で鹿と戦うとかが限界だろ!
ダンスとか馬術みたいな単純なものとは思ってなかったが、まさかステータスとまるっきり関係ないとは。
「新たな領地が手に入ればもちろんお金の問題も無くなりますし、首長になりますからアンセ家よりも格上になります」
「ああ……」
フィーが言ってたな。
アンセ家よりも価値が高いと思わせろって。
つまりこうなることをあいつはわかってたってことか。
といっても、メイドすら雇えないのに兵隊なんて絶対ムリじゃん。俺ひとりではどうにもならないのでは?
「戦争は魔法が使えなければ話にならない世界ですから、相手の軍勢も人数は決して多くありません」
なんかいまさらっと言ったけど、魔法があるとか超初耳なんですけど?
この世界に魔法なんて無いって、二年生になってすぐくらいに思ったんですけど?
もちろん俺は使えませんけど?
もはや二年生とか三年生とかもわかりませんけど?
「我が家には、誰でも魔法が使用できる魔法剣が三本ありますので、なんとか戦うことは可能です」
「よくできた設定だなあ」
都合がいいんだよなあ。
こういうところはゲームなんだよなあ。
「ですが、いきなりそう言われて命がけの戦いになんて……」
よよよ……と目頭を抑えるイーナちゃん。わざとらしくね?
この流れで俺が「ちょっとムリっすね」って言えるわけなくね?
「行くに決まってるだろ。イーナちゃんのお婿さんになるためなら命だって惜しくないよ」
「か、かっ」
か?
「か、か、かかか」
どしたの?
だいじょぶそ?
「カッコいい……」
でた!
ガチのカッコいい出ました!
テンション高く「かっこいー!」と手を上げるのは、本物じゃないんですよ。
ガチになると、あまりの尊さでうなだれるんですよ。頭を抑えて、膝から崩れ落ちるんですよ。
頭がくらくらして、目が開けられなくなって、ため息が出る。
こんなリアクションされちゃあね。
「ちょっとだけ待っててくれ。ちょっと領地をたいらげてくるわ」
「うは……ロトさま……」
自然に抱きしめてくるイーナ。
頭を軽くなでて、自然に離れるまで待つ俺。やべー。俺かっけー。
「それでは、国境でお待ちください。魔法剣を持たせて、彼女たちを向かわせます」
彼女たち?
と思ったが、このときの俺は「ああ……行ってくるぜ……」とクールな背中を見せることに夢中だった。
そして国境にやってきたのが、実羽さんと星乃さんだった……。
「ロト―!」
「ロトさーん!」
「え!? ふたりとも? え?」
「いいだろ、鎧」
「似合ってますか?」
「いや、似合ってるけど……」
「ははは! まぁ、説明が欲しいよな!?」
「う、うん……」
そもそも魔法のことも聞けてないからな。
「ま、道中においおいと説明してやろう!」
「頼むよ」
また馬に乗ってキャンプの日々が始まるけど、二人がいるからだいぶ違うな。
国境を超えた道は、ただ道だけがある大草原。
攻め込んでいるとは思えない、のどかな光景。
MMORPGを始めたばかりのような、のんびりとしたワクワク感。
星乃さんにはいろいろ聞きたいこともあるし。
三人で馬がポコポコと鳴らす音を聞きながら、おしゃべりでもして行くか。
「しかしロトと異世界メモリアル以外で会えるなんて、嬉しいなあ!」
「……え? なに?」
「ああ、すまんすまん! いきなりこんなこと言われても困るよな!?」
「う、うん……?」
なに?
何の話?
魔法剣の使い方とかの話じゃないの?
「ロトは例えるならリセットもできずセーブもできないファミコンのような世界に生きてるわけだが、この星乃煌は、プレイするゲームを選択できる!」
は?
え?
なに、ひょっとして大事なこと話してる?
魔法とかそういう次元じゃなくて、この世界の根本的なことを?
「ロトと出会った、あの育成タイプの恋愛シミュレーションゲームの世界のタイトルが異世界メモリアルなんだが!」
「い、異世界メモリアル……」
おお……なんか、納得のタイトルだ……そうか、あの世界は異世界メモリアルというのか……。
「突然、異世界メモリアルガールズサイドっていうタイトルあるなーと思って初めてみたらなんかおかしなことになったし」
「なんだなんだ」
ガールズサイドもあんのかよ。
理解が全然追いつかないよ。
「あ、ちなみに聖トゥインクルスターズ学園が舞台なのが、ガールズサイドだぞ!」
「そういうこと!?」
なんか女性向けっぽい世界だと思ってたよ!
え、なに?
俺の生きる世界って、星乃さんがどのゲーム選んでるかで決まってんの?
いやむしろ俺は、星乃さんが実羽さんと結託して、設定を作りあげたもんだと思ってたけど。
「異世界メモリアルでは、ロトに攻略される側だったが、ガールズサイドはロトを攻略しないといけなくなってて大変だったぞ!」
「え?」
「攻略しようにも、ロトのステータスが低いと攻略対象にならないし!」
星乃さんがなんか変だったのはそういうことなの?
「主人公としてプレイしてるのに、なんでこんな変なルールが、このクソゲーがって! もう!」
わかるー。
「ところが映子くんと話してみたら、主人公は彼女の方だったわけだが!」
「あー!?」
納得!
納得だ!
なんかご飯食べてるだけでめちゃくちゃ褒められてたもん!
だから実羽さんを攻略してくれって言ってたのか!
「あはは……」
手綱を持ったまま、困ったように笑う実羽さん。
ちなみにとても露出度の高い鎧です。完全にヴァリスです。ありがとうございます。
「いつもと逆で自分から攻略できると思ったら……はあ……」
ご、ごめんね!?
そうとは知らなかったからね!?
結局この日は、実羽さんのメンタルケアがメインで、肝心なことはわからないままだった。
恋愛フロップス、見てますか?
一話からときメモ好きにはニヤニヤが止まらない作品ですね。




