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異世界メモリアル【12周目 第13話】


「ぎゃあああ! く、くせえ!」


やはりというか、ただのお使いではなかった。

なぜ麻酔が手に入らないかというと、倉庫に害獣が出たから。

でかいドブネズミみたいなものが、大量に発生している。

倉庫の主は、こいつらを退治すれば麻酔を提供すると約束した。

なんでこんなことになっているかというと、なんせこのあたりは金持ち貴族連中ばかり。

きつい、汚い、臭い。そういうことはやりたくない。

よって、そういうことは俺がやることになるわけか。最悪だ!


「き、気持ち悪ぃ~!」


しかもなぜか斧で退治。

ただでさえ臭いのに、殺すとさらに臭い。

こう、スプレーとかさ。そういう害虫駆除っぽいものでどうにかならんのか。

せめて、麻酔銃とか。

なんで斧なんだよ。

返り血必至じゃねーか。

ああ、ツラい。

ああ、苦しい。

ああ、しんどい。

こんな思いをしたら、星乃さんと実羽さんが喜んでしまう。

あの二人の思い通りになりたくない。


「くそっ!」


デカドブネズミの臭い返り血を浴びながら、斧を振り回す。

彼女たちが「そうそう、それでいい」と笑っている顔が思い浮かぶ。ちくしょう……。


「負けねえ……俺は負けねえぞ!」


もはや敵はネズミじゃない。


「わーい! 楽しー! 合法的にねずみハンティングできて最高~!」


そう、俺の不幸を望むやつらなんだ。

俺は、楽しむ。

このクエストを。いや、この世界を。人生を。


「オラァ! 死ねや、このネズミどもがあ! ひゃっはー!」


マインドでこうも違うものか。

斧でねずみ共をバンバンぶっ殺すのが楽しくなってきた。

もはやワニワニパニックみたいなもんですよ。

ほうら、斧の重さを感じて~、タイミングよく落とす!

シェンムーの薪割りバイトを思い出して~。


ぶっちゃ!

ぐっちゃ!


「このタイミングだ!」


どぐちゃ!

どがしゃ!

ばきぐしゃ!


「スピードアップだ!」


自分でスピードアップしちゃうぜ。


「おりゃ!」


ぐちょぉあ!


「そりゃ!」


どちゃーぁ!


「はい! はい! はい! はい!」


どちゃ、ぐちゃ、ぐしゃ、ぶちゃ!


「たのしー! ころすのたのしー!」


こんな楽しいことをするだけで、麻酔が手に入るなんて最高だぜ……。

どうだ、星乃……実羽……俺は、苦労なんてしねえ……そして攻略するのは、お前らじゃない!


「ねずみを! たのしく! 殺すだけー!」

「ねずみを! たのしく! 殺すだけー!」

「のえみと! たのしく! すごす日々~!」

「のえみと! たのしく! すごす日々~!」


これが労働の喜びってやつですかね。

誰かのために、自分のために。

報酬のために、楽しみながら。


「やってやったぜ」


完全にな。

あとは……捨てに行くだけだが……。


「殺すより捨てに行く方が大変じゃね?」


掃除はしなくてもいいが、死骸は片付ける約束だ。め、めんどくせー。


「馬術があってよかったぜ」


全部荷台に乗せて、馬に引っ張ってもらうことで輸送は簡単だ。

だとしてもこれだけのドブネズミを乗せるだけで大変だが……。


「うおー! 楽しいに決まってるー!」


駄目だ駄目だ。

ツラいとか、苦しいとか、不幸だとか。

そんな風に思ってしまったら、負けだ。


「ミニゲームみたいでおもしれー!」


一番効率的なルートで上手に死体を運ぶゲーム!

こんな楽しいものをやらせてもらえてありがてー!

そんで脚が長くなるんだろ?

こんなにハッピーなことなくない?


「待っててね、のえみ~!」


こうして俺は最後まで楽しみながら、クエストをこなした。

報酬として得た麻酔薬を持って、美容外科へ。


「おお待ってたよ」


顔の濃い白衣の男は、俺をちゃんと覚えていたようだ。


「短足ブサイクさん」

「ロトだよ」

「やっぱりインパクトあるねえ。何度見ても笑えるな」


覚えている理由が最低だった。ほんとに笑っている。


「ちゃんと麻酔持ってきたぞ」

「おお、じゃあ写真撮らないと」

「ああ、ビフォーアフターがわかるようにか」

「いや、単純にこんな面白いビジュアル見れなくなるのもったいないから」

「ぶっとばすぞ!?」

「まあ、そういうなよ、俺は君みたいなブサイクを見るのが好きだからこの仕事してるんだ」

「最低じゃねーか!?」

「でも、大好きなブサイクをイケメンにしちゃうという悲しい運命」

「同情の余地が一つも無いんだが?」

「今まで見てきたブサイクの中でも、君が一番ひどいよ」

「なにその口説き文句」

「だから、ほら。もったいないし、かっこよくなるのやめない?」

「自分の仕事、全否定だな?」

「人間の魅力は、見た目じゃないって」

「言ってることは素敵だが、まったく心に響かねえな」

「どうしても、やるのか?」

「やるよ!」

「どうしても?」

「どうしてもだよ!」

「どうしても?」

「やめろ! 永久ループになるパターンやめろ!」

「しょうがない」


諦めてくれたか。

俺は言われるがままにポーズをして、写真を撮られる。まぁこれは必要なことだろう。


「いいねいいね~、脚短いね~」

「そういうのいらねえ」


黙って撮影しろ。


「撮れた撮れた」

「早く手術してくれ」

「よし、じゃあとりあえず脚をドリルで切断するぞ」

「おい! 麻酔使えよ!」

「え、使うの?」

「無理だろ、脚の切断を麻酔なし! よくその選択肢出したな!?」

「せっかく麻酔が手に入ったのに、もったいないなあ」

「俺が手に入れてきたんだよ! この手術のために!」


こいつマジで疲れる。

こうして、なんとか脚を伸ばす手術と、顔を濃くする手術を行った。

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[一言] 足とかジャックハンマーかな? どんなに惚れた相手のためでも整形は無理だ……できる気がしない
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