表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

341/364

異世界メモリアル【12周目 第11話】


「さて、お兄様。現状を確認いたしますわ」


このセリフは言うまでもなく、舞衣である。決してメジロなんとかではない。

この貴族学園編では、令嬢モードなので俺をお兄様と呼ぶが、役割も可愛さも変わっていない。

しかし今回、親密度をまだ教えてくれない。


「親密度は……」

「あ、お兄様、親密度を知りたいのですね」

「そうなんだよ」

「わかりましたわ」


わかってくれるんですね。言ってみるものです。


「まずはステータスだね」

「そうですわ」


【ステータス】

―――――――――――――――――――――――――――――

教養   24(+19)

礼儀作法 42(+33)

ダンス  75(+73)

ルックス 20(+11)

センス  88(+80)

乗馬   133(+113)

―――――――――――――――――――――――――――――


よしよし。

ほぼほぼ思った通りだ。

ステータスの内容が変わっても、学校に行くだけではうまく行かなくても、俺は順調にステータスを向上させている。


「よく頑張ってるな俺」

「はい、さすがですわお兄様」


舞衣は本気で俺を称賛してくれている。さすが舞衣、よくわかっている。

それに比べて……よくもまあ文句が言えるよな。あいつら。

俺が生きてるだけでも、文句があるに違いない。

思い出すだけで腹が立つ。

それに比べて、のえみさんは……。

出てくれ、のえみさん!

攻略させてくれ、のえみさん!


【親密度】

―――――――――――――――――――――――――――――

実羽映子(じつわ えいこ)   [会えただけで幸せになれるくらい好き]

星乃ほしの きらめき  [毎晩寝る前に想うくらい愛している]

―――――――――――――――――――――――――――――


やっぱり出て来ないのか……?


「のえみさんは?」

「え? 誰?」

「この前説明したじゃん、あのキレイでおしとやかで優しくて可愛くて最高の女の子」

「や。だって、そんな名前じゃないよね。じゃない、名前ではないですわ」


キャラ忘れちゃうくらい動転してるよ。

というかやっぱりこのキャラは演じてるんですね。

落ち着いて。舞衣のことは愛してるよ。


「まあ、俺もね。攻略できないということはわかってるのよ。諦めてるのよ。だからのえみなんだよ」


攻略できないが魅力的なキャラクターというのは、昔からいるものです。


「あだ名ってことですの?」

「そうね。だって名前わかんないだもん。名前つけるしかないでしょ」


そして、それはのえみしかない。

妹じゃないけどのえみです。


「いくらカワイイからって名前わからない人にあだ名つけてまで……」


軽く呆れる舞衣。

それくらいで呆れられては困る。


「いや、俺は馬の世話してるおじさんにも名前つけてるけど」


もちろん、冴島さんのことだ。

あの人も冴島さんとしかいいようがない。


「えーっ!? そんなことしてるんですの、お兄様」

「そうだよ。見直した?」


俺のことはなぜか知ってることの多い舞衣だが、これは知らなかった様子。

まあ今回は一緒に住んでないし、俺も攻略を助けて欲しい態度じゃないしな。

舞衣を見ると、見直したとは程遠い表情だった。


「いえ、この親密度を見てお二人以外の話しかしないので、正直ドン引きですわ……親密度を知りたいって言ってたのに」


はあ。

だってあいつらが俺のこと好きなのは別にわかってるし。

好きと言ったって、歪んだ好意だし。

やつらは俺の幸せを願っていない。

俺の不幸を愛している。

女性とワインを飲む俺に、泥水を啜れと迫る。

楽しく踊る俺に、醜く這いずり回れと言う。

それって恋として正しいんですか?

それって本当の愛なんですか?


「お、お兄様?」


俺はのえみちゃんに、笑顔で居て欲しい。

俺はのえみちゃんに、幸せになって欲しい。

一緒においしいものを食べたい。

一緒にいるだけで嬉しい。

こっちの方がまっとうな恋愛じゃないんですか?

いや、むしろこれこそが純愛だね。

攻略できるからする?

好きでもないのに、攻略する?

攻略できないから、好きにならない?

好きだけど、攻略できないから、諦める?

その方がよっぽどおかしいだろ!

打算的だ!

計算ずくだ!

偽りの愛だ!

いままで攻略してきたヒロインたちのことを思い出す。

俺は当初、彼女たちには好かれてなかった。けれど、俺が好きになっていった。

俺のことを散々ボロクソに言ってた沙羅さんとか、次孔さんとか、あいちゃんとか。

決して好かれてなかった。親密度を見るのがつらかった。それでも俺は、本当に好きになっていったんだ。

あれは嘘じゃない。

でも、今は。

星乃さんにも、実羽さんにもその思いは無い。


「俺はね。舞衣……」


なんとかこの思いを伝えようとする。

なんと言えば、伝わるのだろう。


「ど、どうしましたの、お兄様。なんか革命でも起こしそうな雰囲気ですけど」


革命!?


「それだ!」

「それだ!? どれですの!?」


そうだよ革命だよ。

敷かれたレールを走るだけの俺はもう終わりです。

考えてみればね、星乃さんと実羽さんは攻略する必要ないもん。

今まで俺が攻略してきたのは、愛を知らないことで成仏できなかった女の子たちですよ。

そんな女の子たちに、俺を好きになってもらって。恋愛を経験して。それで成仏してもらうという崇高な目的があったわけ。

ところがどっこい、この二人は違うんですよ。

罪滅ぼしのためにボランティアをやってる、乙女ゲーム好きの元ヤンと。

なんでもかんでも完璧にこなせるけど、ちょっとデートしたらチョロく落ちちゃったスーパーヒロインだよ。

別にいいじゃない?

攻略しなくても。

そうだよ、あいつらなんてどうでもいいんだよ。

そんなことより、のえみだね。


「俺は、トゥルーラブというものをついに理解したよ。ときめきとか、センチメンタルとか、そういうんじゃあないんだよ」


そう。

真実の愛とは、攻略不可にあるというわけ。のえみと、ウィズ・ユー。これこそ本当の愛。

攻略できない。

どうしても攻略できない。

それなのに、一番好きだと。愛していると。

決して報われない恋だと知っててもなお。俺は好きだと。

これが恋愛じゃなくて、なんだというんだ!


「攻略できない人を愛する、それが本当の愛なんだよ!」

「ええ、お兄様、ついに私を!?」


舞衣がなにか言ってるが、俺はもうのえみのことしか頭になかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ロトくんかっこいいよ
[良い点] かつてないほどの好感度 [一言] あれだ……めっちゃかわいい攻略ヒロインいるのに脇にそれる奴  俺かな エロゲなのにヤドカリと結ばれたルートとか選んだことあるわ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ