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異世界メモリアル【12周目 第10話】


「ロト!」

「ロトさん!」


久しぶりに学園に行ったら、星乃さんと実羽さんに捕まった。

二人とも、いつも取り巻きの男子がいるはずだが。


「どうしたの二人とも」

「どうしたの二人ともじゃないだろ!」

「なにやってるんですかロトさん」


どうやらお怒りのご様子だ。

意味がわからん。


「なにがよ」

「いや、なんでずっとモブキャラと一緒にいるわけ!?」

「どういうつもりですかロトさん……」


腕を組み、睨みつけてくる星乃さん。

そしてメンチを切ってくる実羽さん。

どっちも貴族みたいな服装でやることじゃない。


「なんでもなにも。一生懸命やってるだけですが」

「な、なにを?! デートか! それとも!?」

「一生懸命ヤってるのか? ああん?」


青ざめて神に祈り始めた星乃さん。

目線で殺しに来ている実羽さん。

どっちもこの学園で初めての状況だろう。周囲がざわざわしている。


「二人、目立ち過ぎだよ」

「確かに! なぜかこちらが悪者に見える!」

「放課後、校舎のウラ来いや」


どう見てもあなた達は悪者ですよ。

星乃さんは、実羽さんの態度を改めさせたほうがいいぞ。

しかし、放課後はすぐに馬の散歩に行く必要がある。


「放課後は忙しいんですが」

「モブキャラとデートにかよ! モブデートかよ! いや、あれか!? モブックスか!」


変な造語つくるなよ……。


「ツラ貸せってのに、断んのかよ、ああん?」


胸ぐら掴まれた。星乃さんの方がまだマシだったわ。


「昼休みに話しましょう。中庭で」

「妙に冷静だな!」

「逃げんなよ?」


冷静にもなるよ。

二人が異常すぎんのよ。

平常心で授業を受け、昼休みとなった。


「おせーな。逃げたかと思ったわ」


すっかり実羽さんは、ブチギレ不良のバッドステータスになっちゃったね。まぁ多分こっちが素なんでしょうけども。


「来てくれた~、よかったぁ~!」


すっかり星乃さんは、情緒不安定のバッドステータスになっちゃったようですね。普段しっかりしてる人ほど、意外と脆いらしいですからね。


「さて、じゃあ食事をしながら話をしましょう」

「モブックスのことをか!?」

「いや、してないですよ」


モブックスが何かは推定にすぎないが、この世界でどうしてもできないアレのことだろう。


「デートもしてないんだろうなあ?」

「デートはしてますよ」

「んだと……?」


サンドイッチもぐもぐ。


「な、なんでデートなんかしてるんだ!」


いまさらすぎる質問だな。

そういう世界じゃん。


「あんなモブとデートしたって意味ねえだろ?」


実羽さん、もうそのセリフ、完全に悪ですよ?

ワルじゃなくてアクですよ?

しかし一応理解はしている。

実羽さんはヤンデレなんだろう。ヤンキーかつ病んでるんだろう。つまりヤンヤンデレなんだろう。

だからこういう態度になってるだけで、本当はいい人なんですよ。うん。


「むしろ意味があるんだよ。経験値になっているというか」

「つまり、デートは目的じゃなくて手段だと!?」

「あのモブは利用してるだけってことかよ?」


言い方ひどくね?

確かにそういうことだよ。

俺は彼女が攻略対象ではないことを知ってて、それでも一緒にいるのはステータス向上のためだ。

だとしても、もし彼女に名前があったとしたら。

俺は攻略したことだろう。

それはもちろん目的だから、この世界がゲームだとしたらそれがエンディングの一つだからということは否定しない。

しかしながら好きになれない女の子はきっと攻略できない。

今まで俺が攻略してきたキャラは。いや、彼女たちは。みんな大好きだったと断言できる。

だから彼女も……名前もわからないモブキャラの彼女も。

ひょっとしたら攻略して大好きになってた可能性だってあるんだ。


「彼女はね、とてもバイオリンが上手なんだ」

「は?」

「下手なダンスにもつきあってくれるし」


優しいんだよな。


「オペラを見ているときは、目がキラキラしてて、一緒にいるだけで楽しくなる」


そう。彼女とのデートはとても楽しい。


「ワインはまだ苦手で、すぐに顔が赤くなる」


そこがまたカワイイんだよね。


「長い髪で、色白で、上品で。なんだか耳だけ普通のエルフの王女様みたいな感じがする。そんな素敵な女の子だよ」


そう。

名前さえわかれば。

攻略したいくらい……好きだ。


「でもモブだろ?」

「モブキャラなんかに夢中になってる場合じゃないだろ!? もっとロトにはやるべきことが!」


あっ。

駄目だ。

ずっと冷静に、平常心でやってきたけど、もう駄目だわ。


「いい加減にしろ」


キレた。

自分でわかる。俺は本気で怒っている。


「まず彼女をバカにするな。俺は彼女が好きなんだ」

「なっ!?」

「……す、好きだと……」

「ああ、好きだね。なんの意味もなくても、一緒にいたいくらい好きだね」


好きな女の子をモブ扱いされたらキレても仕方がないだろう。


「そんな!?」

「お前はそんなやつだったのかよ」


がっかりしているのか。いや、絶望しているのか。

知ったことじゃないね。


「二人はどうせ、俺が死ぬ思いで血反吐を吐いてないと許せないんだろ」


俺が楽しくデートしてるから怒ってるというわけだ。


「ルックスを馬鹿にされながら、歯を食いしばってツラい思いをしてないと許せないんだろ?」


そうしないと私たちは攻略できませんよってワケか。


「ふざけんなよ」


ベンチから腰を上げた。このままここに居ることはできない。


「ふざけんなよ……」


俺は二人の前から去った。

彼女たちの顔を見ることもなく。


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― 新着の感想 ―
[一言] こちらもずっと思ってたことをついに言ったな……
[一言] 攻略できないキャラと一緒にいても恋人になれないんじゃね と思ったがストーリーすっ飛ばして子供できて 世界の問題が解決できなかったけど普通の人生向かえましたみたいなエロゲなら見たことあったわ……
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