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異世界メモリアル【11周目 第25話】


修了式の日。

見慣れた、本当に見慣れた男の義朝がそこにいた。

普通に挨拶を交わし、普通に会話をして、普通に別れた。

日常。

ただし、他の女の子を攻略しているときの日常になってしまった。

ここで「俺は見た目なんて気にしない」と言い切り、男の義朝のまま攻略することも可能なのだろうか。

いや、無理だろ……。だって、男の義朝だもん。

それができるなら『TS』なんて属性いらねーよ。

いっそ一度バッドエンドを迎えておくか?

次に『TS』を付与しないでおけば、最終的に女の子の義朝を攻略できるんじゃね?

……いや、それまでずっと男の義朝とデートする日々を過ごす羽目になる……ないな。

やっぱり今回のプレイでなんとかしたい。

今は義朝が男でも、そのうち女の子に戻せるって信じれば。それで愛することができれば、ちゃんとクリアできるのでは?

どうせ走馬灯みたいなエンディングでその後を見せられて、すぐに次の周回が始まるんだ。

見た目が男でも、義朝を愛する。

むしろトゥルーエンドかもしれん。

プラトニックラブの語源は、古代ギリシアのプラトンが同性愛に対して使った言葉だと聞いたことがある。

男性同士の恋愛は、性欲と関係ないから真の愛情であるというやつ。

俺と義朝のエンディングこそが、トゥルーラブなストーリーってことですよ。

そうだよ、俺の愛は本物ですから。

義朝の見た目がちょっと男だからって、問題ないよ。

むしろ男の娘みたいで好きまである。

大きめのパーカーでも着てもらって、萌え袖とかしたら全然イケるイケる!


「イケるか―――――!!」


騙されないよ!

自分に騙されるほど、俺はチョロくないんだよ!

ヤダヤダヤダヤダ!

義朝が女の子に戻ってくれないとヤダヤダヤダヤダ! ヤダー!

なら、どうするか。

決まっている――性別変換薬。

一度は作ったわけだから、また作ればいいだけだ。


「無理だ……」


全然無理だった。

ハードモードは伊達じゃない。

当時は読めた本でも、今の俺にはちんぷんかんぷん。何を書いてあるのか理解不能だ。

あのときはニコを攻略しようと理系学力をちゃんと上げていた。

現状ではとてもじゃないが不可能だし、もはや三年生の二学期が終了しており、今から理系学力を上げても間に合わない。


「ああ……」


懊悩するだけの我が身がつらい。

このままだとどうなるのだろう。

バッドエンドになるのだろうか。

むしろ普通に男の義朝と一生仲良く過ごしましたっていうエンディングになっちゃったらどうする……。バッドエンドよりキツくないか……。

男同士で……うう……。

……待てよ?

逆に考えるんだ。

そうだよ、男同士なのが問題なんだよ。


「舞衣!」

「どうしたの、お兄ちゃん」


可愛い妹は、なんだかわからないこの世界のお菓子をもぐもぐしていた。なにそれ。なにかの幼虫?

グロいものを食べていても可愛いのが舞衣です。

舞衣が弟じゃなくてよかった……と神に感謝しつつ本題へ。


「ガールズサイドないの?」

「え? なに?」

「ほら、あるでしょ。ガールズサイド。むしろ本家より人気になっちゃったやつ」

「???」


なんのことかわからないと首を傾げる。やはり可愛いな。

これだけ可愛ければ、俺が女になっても可愛いに違いない。


「つまりね、義朝が男になったのなら、俺が女になればいいと思うんだよ」


そう、今なら俺もガールズサイドの主人公になれると思うわけ。

俺が女の子なら、男の義朝を躊躇なく愛せるに違いない。コレだ!

我ながらナイスすぎるアイデア。

決めたぜ、俺は女の子になる!


「え? ますますわからないよ、お兄ちゃん」

「俺はお姉ちゃんになるんだよ……」


いいじゃないですか、お姉ちゃん。

一緒にお風呂入っちゃったりして。いいですね~。


「えー?」

「お姉ちゃんになるの楽しみだなー」

「んー、お兄ちゃんじゃなくなるのヤダなあ」

「え? よし、やめ!」


やめます。

舞衣がそういうならやめます。

なんだ、そんなに俺という兄が好きだったとは。

結構妹を可愛がる姉になりたい気持ちもあったけど。


「なんでそんなことを言い出したの?」

「あー。義朝が男になっちゃったから、俺が女になろうかなって」

「……バカなの?」


確かにバカな発想だった。

バカなお兄ちゃんでごめん!


「泣いてないでどうにかしようよお兄ちゃん」

「うう……だって、性別変換薬なんて作れないよー」

「薬なんて普通作れないよ? あれは大企業がものすごいお金をかけて作るものだよ?」

「そりゃそうだ」


一度作っちゃったからできる気がしたが、あれは結局ニコという製薬会社の社長令嬢がいたからできた話。

ハードモードだからできないとかそういうレベルじゃなかったわ。技術も材料も手に入らないっすよ。


「買った方が安いって」

「買うって」


またかよ。

あのさ、このゲームおかしいっすよ。

ステータスが必要なのはわかるんすよ。ゲームシステム的に。

金が必要なパターン多くね?

ギャルゲーなのに金で解決するのおかしくね?

アルバイトはアイテムを買うための手段であって、金を稼ぐのが目的になるのは違うだろ。

俺はそういうの絶対許せないタイプ。クロスレビューで3つけちゃうよ?


「お兄ちゃんが一生懸命お金を稼いでるところ、かっこよくて大好きなんだー」

「稼ごう」


なんだよ、そういうことならしょうがないね。

確かに、星乃さんも実羽さんもそんなこと言ってた。

俺が頑張ってるところが、好きだって。

舞衣もそうだったんですね。

結局のところギャルゲーなんだから、女の子が望むことをするのは当然ですよ!


「よし、なんでも来いやー! 死んでもいいから稼いだるわーい!」


妹の提示したアルバイトとは……。


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