異世界メモリアル【11周目 第15話】
「おいブス!」
「……すいやせん」
「オムライス、不味いんだよ」
「……不器用ですから」
女装メイド喫茶で働き始めたが、こんなかんじ。
まったくうまく行っている感じなし。
ところが。
「このブスが! パフェ食わせろよ」
「ブス! 一緒に写真撮って」
「不器用パンケーキくれよ」
ボロクソ言われつつ、なんだかんだ人気があるというか、売上には貢献した。
ブスだのなんだの言われているのは慣れているし、結局この客たちはそれを楽しんでいることはわかるからな。
「ぎゃはっはっ! ロト働いてるよ~! か、かわいー。うひひ」
義朝も部活のない日に店に来てくれた。
メイド服はかわいいが、俺の女装がかわいいわけがない。でも、嘘でも嬉しい。
「パフェ食わせてくれるサービスあんの? 頼んじゃおっかな~」
「チェキ? 撮っちゃおうかな~」
などと、やたらいいお客様だった。
義朝にパフェを食べさせたり、チェキを撮れるのはこっちが金を払うべきだと思う。
やはり女装メイド喫茶のバイトはいい……。
部活動の溺道もそれなりに成果を出し、夏休みは終了した。
人の噂も七十五日というが、二学期が始まると、状態異常の『ムショ帰り』が消滅。
久しぶりに、何の悪い影響もないフラットな状態に。
さて、二年生の二学期といえば、修学旅行。
いつも行き先が異なるイベントであり、いろいろなゲームを舞台にした世界に行けるので、かなり楽しみにしているのだが。
1.ゾンビと戦う世界
2.ゾンビを撃ち殺す世界
3.ゾンビを刀で斬り殺す世界
たいして変わんねーよ!
なんとなく元ネタのゲームの違いはわかるけど、結局ゾンビじゃね―か!
いやだ~。
ゲームだったらいいが、実際にゾンビなんて見たくもねー!
ろくな選択肢がないのは、ハードモードだからなのかどうなのかわからないが。
なんとなくゾンビと距離のありそうな、2を選んだ。
……修学旅行は今までで一番楽しくなかった。
理由はいっぱいある。
まずゾンビを銃で撃っても、爽快感などない。
グロいし、臭いし。音もなんかヤな感じだし。
更に、これはハードモードのせいだと思うが、全然銃が当たらない。操作が難しい。
学旅行のいいところは、一緒に遊ぶ女の子と楽しく過ごせること。そして、ゲーマーの俺がかっこいいところを見せられることにある。
それが……。
「ロト、どいてろ!」
バシューン!
義朝がカッコよくゾンビを倒す。
俺より全然上手だし。
「ロトさんは下がってて」
ギュイイイイーン!
実羽さんがチェーンソーで、気持ちよさそうにゾンビを退治。
俺は完全にお荷物扱い。
「うははは、ロトー!」
ドルルルルル! バババババババ!
星乃さんがガトリングガンで、ゾンビたちに無双。
俺は指を咥えて見ているだけ。
ていうか、星乃さんは今回ラジオでしか接点ないのに突然登場。
やりたい放題やっていなくなるという……なんなんだあの人は。
まぁ、カッコよかったけど。
二泊三日、ゾンビを倒すだけ。いや、ゾンビを倒す様子を見ているだけだった。
風呂はのんびり温泉、ではなくゾンビの匂いや返り血を落とすためにガチで体を洗うだけだし。
食事は豊富な海の幸、なんて出るわけもなく、なぜか血なまぐさいジビエ。当然食欲出ません。
あー、やっぱりハードモードだからだ。
そうに違いない。
もうハードモードなんて嫌だ。
次は絶対にノーマルにするからな。
そんな決意と、いまから攻略なんて絶対出来ないという確信のもと。
修学旅行の夜に、俺は星乃さんを呼び出した。
「星乃さん」
「どうした、ロト!」
「いつもラジオ聞いてます!」
「ありがとう!」
じゃなくて。
「この世界のことで相談があって。実は俺は今回ハードモードでプレイすることになっちゃいまして」
「把握しているぞ!」
ですよね。
「誰かさんのおかげで、ハードモードでも頑張って生きていくことにしたんですが」
「ははは! さぞ素敵な人だろうね!」
よく言う。
ま、素敵な人であることは間違いないが。
「ハードモードなので、頼りになる人に助けて欲しいんです。つまり星乃さんに」
「おー、……ストレートに頼ってくれるね! 嫌いじゃないぞ!」
星乃さんはアニキっぽいというか、男気があるタイプだからな。
正直に行く。その作戦でよさそうだ。ちょっと間があったけど。
「ただし、条件がある!」
「条件ですか」
意外だな。
しかし借りを作ってばかりというのも気が引ける。
俺にできることがあるならやろうじゃないか。
「わかりました、何でもやります」
「そうか、じゃあ、次もハードモードにしてくれ!」
「はい、わかりまし……え!?」
なんで!
それはないっしょ!?
「やっぱり、いまさら余裕のある態度でこられても、攻略される気がしないんだよな!」
「ええー!?」
なんてこった!
星乃さんは早く攻略すべき相手だった!
これはキツい……。
「ははは! 絶望的な顔が似合うな!」
勘弁してくれよ……。
今回だけはというつもりで頑張ってきたのに。
「そう落ち込むなよ~、こっちは告白かもしれないと思ったら、こんな相談だったんだぞ!?」
えっ。
あ、え?
そう思うことある?
星乃さんは星乃さんで、俺とは違うゲームの設定で生きているので、そんなこともあるのだろうか。
「全力で攻略しに来てくれることを楽しみにしているからな!」
そう言って、バシバシと背中を叩く星乃さん。
ちくしょー、これは拒否できないな。
「わかりましたよ! やりますよ!」
「その意気だ、その意気!」
やけになった俺に対して、星乃さんは妙に顔が赤く、テレたような顔だった。
……恥ずかしかったのか。この条件を提示するの。
バシバシ叩いたり、妙にテンションが高いのも、照れ隠しだと思うとかわいらしいな。
「それで!?」
もちろん、がっつりと相談に乗ってもらった。




