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異世界メモリアル【11周目 第13話】

俺はランジェリーショップで働くようになった。

これがなんと、女性のものだと思いこんでいたが、実は男性下着専門店だった。

というオチだったら本当に良かったのだが、そんなことはなく、バッチリブラジャーとショーツを売る店。

そもそも若い男がバイトをするのがどうかしている。

ショッピングモールの一角にあるこの店は、服や靴と同様に母と娘や、女の子同士が買い物に来るようなそんなお店だ。

このギャルゲー世界では、認識できるすべての女性は見目麗しいので、アルバイト先としてはもちろん嬉しい。

ただし、俺が『女性差別』状態になっていて、自分の頭の中と関係なしにひどい言葉を発することさえなければだが……。

早速、俺と同じくらいの年頃の美少女が来店した。失礼のないように接客しよう。


「すいませーん、下着をですね……」

「売りに来たのかよ、このブルセラビッチが!」

「え? いや、違います、買いに来たんですけど……」

「下着? いるか? 全裸でいいんじゃないの? 服なんて着ていいような分際じゃでしょ?」

「ひ、ひどい……でも、服を着ないとか、そういうわけには……今のサイズがキツくなってきたので、新しい下着がいるんです」

「へー。じゃ、とりあえず見てやるから、ここで脱げよ」

「ここは、ちょっと……丸見えですし、試着室に……」

「いいから脱げよ! この程度の体で出し惜しみしてんじゃねえよ」

「あっ、やめて、やめてください!」


胸を鷲掴みにした俺は、警察に捕まった。

いや、妥当だと思う。俺を逮捕するのは、至極まっとうなことだと自分自身でわかる。

これがアルバイト開始から、約10分程度のことである。やっぱり仕事にならなかったじゃないですか!

交番に連れて行かれるが、運の悪いことに、婦人警官だった。


「どうしてこんなことをしたんですか?」

「うるせーよ、婦人警官なんかに言うことはねえよ! おまえもおっぱい揉まれたいのかよ!」

「警官侮辱罪で逮捕します」

「あっ、えっ、マジですか!?」


こうしてあれよあれよという間に、逮捕された。

そして、日本の法律だったらさすがに俺は少年だし、初犯だから注意くらいで済むんじゃないかと思うのだが……。


「おら、きりきり働けや、このクズが!」

「はい……」


さすが異世界のハードモードですよね。

地下強制労働施設行きになりました。執行猶予すら無し!

ただ、ここには女性がいないからちょうど良かったかもしれないですね!?

正直なところ、何も悪くない女性や婦人警官を罵倒したり乱暴することに比べたら、よっぽどマシですので!


「早く歯車を引け!」

「うおー! キツい!」

「うるせーぞ」


わかりやすくムチを持っている監視役に睨まれる。

どう考えてもギャルゲーに出てくるキャラじゃないって。

だけど女性じゃないから侮辱しなくてもいいので気楽です!

早く『女性差別』を治させてくれよ!

そして舞衣がいないからステータス状況わからないけど、明らかに運動能力だけが異常に発達してるって!

これじゃ『女性差別』の状態異常が回復しないって!


「ちょっといいでしょうかー!」

「なんだ」

「これは一体何をしてるんでしょうかー」

「小麦を引いて粉にしてんだよ」

「小麦粉ですか! それを料理させてもらうわけには?」

「何だお前、料理できるのか」

「いや、超ヘタなんですけど」

「バカなのかお前」


なんだよ!

料理できないから出来るようになりたいのに、なんでバカなんだよ!

俺が料理出来なさすぎて『女性差別』するようになったんですよ?

更生させるために今一番必要なことは、俺が料理をすることなんですよ?

これで『女性差別』が治らなかったらお前のせいだからな!? お前が『女性差別』してるようなもんだからな! ちくしょう!


「じゃあ、せめて歯車を引いてる間は歌っていいですか!」

「あ? ああ、まあいいだろう」

「ぼげええー! ほげー!」

「うるせえ、このド下手くそ! やめろ!」


なんだよ!

芸術ステータス上げるためなんだから、今は下手なんだよ! しょうがないだろ!

こちとらお前に聴かせるために歌ってるわけじゃねーっつーの!

俺はジャイアンじゃないっつーの!

でも歌唱力は同じくらいかもしれないっつーの!


「じゃあ、じゃあ、せめて」

「なんだ」

「顔を保湿しながらにさせてください。ここ、ちょっと乾燥しすぎなんで、お肌に悪いです」

「駄目に決まってるだろ!」


くそ、なんでだよ。

いいだろ別に、俺の容姿が良くなるのは……なんの問題があるんだ。

ここに女性がいないからか?

俺の見た目が良くなると、襲いたくなるとか……こわっ! みなさーん、俺よりこの人の方を逮捕したほうがいいですよーっ!


こうして強制労働が何十日か行われた。

その間、特に誰と仲良くなるとか、誰かに出会うようなことはなく。

料理をさせてもらうこともなく。

失意のドン底でお勤めを終えた。

春休みはとっくに終わっており、二年生としての生活に復帰する。

とりあえず舞衣と会話をしてみてわかったが、どうやら『女性差別』の影響が出なくなった。

その理由は、状態が『ムショ帰り』へと変わったためだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 状態異常のバーゲンセールかな?
[一言] バッドエンドしかできなくね今回は……
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