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異世界メモリアル【11周目 第12話】


結局のところ、ステータスはバラつかせてはいけないし、学校はサボってはいけない。

そうしないと状態異常から逃れられないわけです。

家で料理をして、学校に行って、部活もする。これしかない。


「お兄ちゃん、お料理頑張ってるね」


舞衣が優しい。

もともと舞衣は昔から料理を薦めることが多く、美味しいものが好きだ。

だが、今の俺の料理の腕前はひどい。

我ながら食えたものではない。

口汚く罵ってくれても仕方がないのに、なんという慈愛に満ちた態度なのだろう。

そんな彼女に、俺は……


「女が男のやることに口出しすんな! 黙って食えよ!!」


と言うのだった。

やはり、俺は死んだほうがいいのでは?


「ああ、ロトさん。大丈夫ですか?」


学校では実羽さんが優しい。

実のところ、全然大丈夫じゃない。

試験はずっとビリだし。というか、授業の内容なんてひとつもわからないし。

本当にこのまま頑張っていてなんとかなるのだろうか。

そういう不安を抱えて生きている俺に、こういう声がけをしてくれるなんてさすがボランティア部ですよ。

親の仇みたいに思われているのに。本当にいい人だよね。

そんな彼女に、俺は……


「てめえの貞操こそ大丈夫なのかよ、このビッチが!」


と言うのだった。

殺されてしかるべきでは?


「お、ロト。今日は撮影か? それとも部活か?」


放課後は義朝が優しい。

というか、なんで優しいのかわからないくらい優しい。

いや、普通の会話だよ? いたって普通の日常会話だよ?

でも普通に会話してくれることが異常ですよ。

親密度からして、問答無用で溺死させられてもおかしくないと思うのだが。

そんな奇跡的に成り立っている日常会話の始まりに俺は……


「どっちでもいいだろ、どっちにしろお前は脱げよ。いやらしい体してることだけが取り柄なんだから」


と言うのだった。

頭いかれてるだろ、俺が。

というか俺は冷静に自分が言ってることがおかしいことを理解してるんですけどね。いたたまれないにもほどがあるだろ。

そうは思いつつも、それなりに撮影や部活をさせてもらったりする。

そうして一年目の二学期、そして三学期が過ぎていった。

こうした日々は、ゲーム攻略上の行動として間違っていないと思うが、精神的につらい。

早く『女性差別』を解消したいが、料理は0だったうえに、やれる時間が限られている。

せめて料理系のバイトができれば、と思うが料理が出来ないのに料理のバイトなど出来るはずがない。キツくね?

11周目にして料理というステータスの上げ方の難しさに気づいたね。料理部に入ったり、アイテムを使ったりしないと難しいぞ。

そうだ、アイテム……!

各種の心得を手に入れてからは、ステータス向上に苦労しなくなってアイテムを買うこともめっきり減ったが。

ハードモードの今、アイテムはとても重要に違いない。

そして、誰からも……舞衣からもチョコを貰えず、何も返さないホワイトデーが過ぎて、春休みに入った。


「舞衣、アイテムを買うため、バイトをしようと思う……お前が体で稼いで来ないから」


一言が余計なんだよな……。

そもそもアイテムを買うための金は、自分で稼がないと駄目というルールなので、本当に余計。


「あ、うん。ごめんね、稼いでこれなくて」


そんなこと言うなよ!

よよよ……って感じで、悲痛に耐える表情をするなよ!

余計に俺がダメ人間だと思っちゃうでしょ!


「よ~し、じゃあ、アルバイト、舞衣べすとすり~!」


それでも明るく、くるっとターンして三本指を立てる妹……なんて健気なんだ……。


1.クレープ屋さん

2.占い師

3.ランジェリーショップ


ん……?

なんかもう絶対におかしい気がするが。


「さっさと説明しろ、ちんちくりん」

「クレープ屋さんは、若い女の子が集まるおしゃれな街でクレープを作る仕事だよ。料理ステータスも向上するよ」


そう聞くと魅力的だが……どう考えてもクレープを顔面に叩きつけて「お前みたいなブスにはいい化粧だぜ!」と言い放つ姿しか見えん。『女性差別』で出来る仕事じゃなくね?


「次は? 早くしろよ」

「占い師は、若い女の子たちに人気の占いをする仕事だよ。運気が良くなるアイテムが売れると結構儲かるよ」


やべーな。犯罪スレスレなのでは?

儲かるのはいいが……そもそも「お前の人生? そのツラで生まれてきた時点で最悪だろ」とか言って占いにならないのでは? どう考えても『女性差別』で出来る仕事じゃなくね?


「で?」

「ランジェリーショップは、若い女の子に人気のブランドの下着を売るショップ店員だよ。容姿のステータスも向上するし、時給もまあまあ」


これもやばいだろ。っていうかそもそも男がしていいバイトなの?

料理ばかりしていると容姿が上がらないので、容姿向上はありがたい……そういう意味では舞衣ちゃんナイスなんだが、『女性差別』のやつが一番存在しちゃいけない場所じゃね?


「どうする、お兄ちゃん」

「3だね」


おや?

なぜか即答したよ?

どうしてかな?

気づいたら言葉に出てたのは、やはり『女性差別』の影響ですかね?


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