異世界メモリアル【11周目 第11話】
「いいね~、カワイイね~」
「そ、そうか?」
「義朝は最高にカワイイぜ」
「ふ、ふーん」
シャッターを切りまくる俺。
別に写真部ではないのだが、カメラを持って写真を撮らせてくれと頼んだら、オッケーが出た。
ポジティブになった俺は、芸術のステータス向上のためにカメラを始めた。
撮るなら当然水着の女の子がいいに決まっている。
「ちょっと胸を寄せてみて」
「こ、こうか?」
「いいね~」
義朝は、なんせナイスバディである。
そして溺道の最上位の尻出なので、面積が非常に少ない水着を着ている。はっきりいって、おっぱいと股間以外は丸出しです。お尻もおへそも丸出しです。
これほど最高の被写体もあるまい。
「カワイイね~、キュートだね~、セクシーだね~、プリティだね~」
「うう……」
褒めると恥ずかしがるのがまたいい。
これは飽きないな。
明日もやろう。
「カワイイね~、キュートだね~、セクシーだね~、プリティだね~」
「うう……またか?」
いや、全然飽きないね。
来週もやります。
「カワイイね~、キュートだね~、セクシーだね~、プリティだね~」
「うう……他のものも撮影したらどうだ」
「いや! 義朝以外撮る必要無し!」
「ええ……」
毎日義朝を撮影すりゃいいんだよ!
来週もそうするよ!
「義朝~! サイコー!」
「それはそうと、その格好はどうにかならないのか?」
「今更かよ!」
もう一ヶ月近くも毎日撮影してるのに、今更俺の格好の話かよ!
俺は迷彩服を着ている。顔にもメイクをして、ヘルメットも被って。完全に陸軍の兵士ですね。戦場カメラマンだからですかね? 戦場カメラマンも別に迷彩服は着てないですけどね?
ジャングルなら目立たないのだろうが、学校のプールでは超悪目立ちしている。
「そもそもコレをどうにかするためにカメラやってんだよ」
「なんだよそれ」
俺だってなんだよそれって思ってるんだよ。このなぜかおかしな格好をしてしまうという、状態異常を解消するために毎日カメラをやってるんですよ。そうじゃなきゃ普通に部活をやりたいの。
「このまま毎日やってれば大丈夫だから」
「はあ」
そして、その三日後には『野暮』状態から回復した。
久しぶりに状態異常のないステータスがコレ。
【ステータス】
―――――――――――――――――――――――――――――
文系学力 62(+62)
理系学力 55(+55)
運動能力 120(+90)
容姿 60
芸術 89(+84)
料理 0(-5)
―――――――――――――――――――――――――――――
これで一安心と思いきや。
やはり料理が出来なさ過ぎることでの状態異常もあった。
しかもそれが……。
「おっ、義朝。相変わらず胸はでかいなあ、頭は悪いのに。まぁ、女なんてその方がいいけどな!」
「お、お前……」
「ち、違うんだ、義朝。単にお前は俺の三歩後ろを着いてくればいいと思ってるだけなんだ」
「よし、溺死させてやる」
久しぶりの溺道の部活で本当に殺されそうになってしまった……。
最悪だ。
ステータスにはまったく影響がなく、発言だけに影響があるこの状態異常が『女性差別』だった。料理が出来ないだけで女性差別者になるという設定の方がどうかと思うが? この世界のハードモードにおけるクソゲー設定に文句を言ってもしょうがない。
とりあえず義朝のいる部活はせずに、なんとか料理をするしかないな……。
家でやってもいいのだが、調理室を覗いてみる。
「ああ、ロトさん、なんか最近評判が悪いけどどうしたの」
実羽さんだ。
どうやらボランティアの炊き出しを作ってるみたい。
「うるせえ、男のやることに女がゴチャゴチャ言うんじゃねえ」(大丈夫、心配しないで)
「え……」
「股開かないなら、近寄るな」(変なこと言っちゃうから、今は一緒にいないほうがいいかも)
「……うわ……」
思ったことと違う言葉が口から出てくる。それは『ヤンキー』と同じなのだが、セリフがひどすぎる。なんなら『ヤンキー』は実羽さんが喜んでいたが、今はドン引きしている。そりゃそうだよな。
ステータスに影響ないが、当然こうなる。
【親密度】
―――――――――――――――――――――――――――――
実羽映子 [親の仇くらい好き]
古々路野 義朝 [飲尿ダイエットくらいアリ]
―――――――――――――――――――――――――――――
まあね。そうですよね。
むしろ好かれちゃう方が怖いから、いいですよ。
ギャルゲーの世界で一番なっちゃいけない状態異常でしたね。
いや、そうじゃなくてもなりたくないですが……。『野暮』とか『ガリ勉』とかに比べてひどすぎませんかね。
そもそもずっと、料理って他のステータスに比べて、上げなくても平気だなーと思ってたんですよ。ハードモードになることで料理の重要性も上がってるんですね。
そう考えるとよく出来たゲームだなー……ってなるか! 超クソゲーじゃ!
「お兄ちゃん、大変だね」
「まあな、男の大変さは女子供にはわかんねーよ」
「……ああ、お兄ちゃんが本心じゃないってちゃんとわかってるから大丈夫だよ」
「そう思ってるなら黙っておっぱい揉ませろよ。妹なんて性欲のはけ口以外に存在理由ねえだろ」
「……くっ」
黙って部屋を出ていってしまった……わかってても耐えられないらしい……そりゃそうだよな……。
学校行かずに料理しまくるしかないな。はぁ……。




