異世界メモリアル【11周目 第1話】
いつものやつだ。
「あなたはロトだね。すべての特技と前回プレイのアイテムを引き継ぎます。属性『色男』と『ラッキースケベ』に『TS』と『モブヒロイン』『年齢変更』『巨乳化』も付与されます。また、前回でのエンディング時のステータスからボーナスをポイントを算出します」
【ステータス】
―――――――――――――――――――――――――――――
文系学力 999
理系学力 999
運動能力 999
容姿 999
芸術 999
料理 999
―――――――――――――――――――――――――――――
普通にカンストだ。
もはや努力なんて不要。普通に生活していればこうなる。
アイテムも必要ないし、アルバイトもすることはない。
余裕だ。
すべての特技をすでに手に入れてるということだし。
「ボーナスポイントはありません。前回のエンディングにより、イージーモードとハードモードが開放されます」
な……!?
なんだと!?
いまさら、いまさらイージーモードがありましただと!?
ちくしょう! もっと早くバッドエンドするべきだったんだ!
「イージーモードでは、ステータスがすべて100以上でスタートとなります」
全然楽じゃん!
普通に走れるから入学式に遅刻もしないし、ブサイクすぎて笑われることもないじゃん!
「また、ヤンキーなどの状態異常にもなることはありません」
状態異常もないのかよ!
勉強だけするとガリ勉になったのは結構めんどくさかったよ!
っていうかヤンキーなんてあるんだ。どうするとなるんだそれは。知らないぞ。別にいらないけど。
「そして、サポートキャラクターが経験豊富な老執事になります」
なるほど!
サポートキャラも優秀になるのか!
……ふーん。
「ハードモードでは、すべての特技とアイテムが引き継げません」
ハードモードの説明いる?
そんなの選ぶ理由がないだろう……。
特技とアイテムがないということは初めてこの世界に来た時みたいになるってことだな。無理。
「また、ヤンキーなどの状態異常にもなりやすくなります」
あっそう……。
「そして、属性はひとつしか適用されません」
属性がひとつしか適用されない……?
逆に考えれば、年齢変更を外すことが出来るということだ。
正直あれだけは厄介すぎる。また星乃さんが小さかったら攻略できないもん。
色男とラッキースケベも、攻略するのには邪魔だったりするしな。
TSを外すことで、また男の義朝に会えるということだ。序盤にうっかりTSを手に入れてしまっていたら、女の子情報を教えてくれる親友が必要になることもあるだろう。俺は別に会いたくない。
「イージーモードで始めますか?」
始める……わけがない。
サポートが老執事?
ふざけんなっての。俺のサポートは舞衣しかいない。
イージーモードを選ぶくらいなら、ハードモードを選ぶね。
「ハードモードを選びました」
えっ?
は?
え?
いやいや、普通でいいんですけど。
ノーマルモードで。
イージーモードよりはマシだって思っただけで……思っただけで選んだことになるんだった……この暗黒空間って……。
久しぶりに思います。なんてクソゲーなんだ。
「初期ステータスを確認してください」
【ステータス】
―――――――――――――――――――――――――――――
文系学力 10
理系学力 10
運動能力 10
容姿 10
芸術 5
料理 5
―――――――――――――――――――――――――――――
ボーナスポイントもないのかよ!
運動能力10だと?
まともに歩けないって!
死ぬよ!
アホか!?
戻るボタンねえのかよー!
やだよー、なんでハードモードなんだよー!
2周目のときよりキツイじゃないかよー!
「保有している属性の中から、適用する属性を選んでください」
容赦なし。
うっかり変なことを考えるとまたろくでもないことになりそうなので、選択に集中します。
『色男』『ラッキースケベ』『TS』『モブヒロイン』『年齢変更』『巨乳化』
……TS……。
巨乳化を選びそうになってしまったが、やはりTSだろう……そもそもTSを選ばないと義朝が攻略できない。いや、男の状態でも親密度に表示されたことがあるので攻略できると思うが、絶対にしたくない。
これで選択したことを示したのだろう、風を感じる。
やがて徐々に光が満ちていき、いつものごとく学校を上る階段に……。
運動能力が10だと階段上がるだけでもつらいだろうが……。
「あれ?」
どこじゃこれは。
見覚えがない場所だ。
森の中……?
とりあえず歩く……しんどい。重力が5倍ある星にでも来ているのかと思う。
ちょっと歩くと、開けた場所に出た。
というか……ここは山の上か?
よく知った街が見える。
あれが学校で……あれがうちだな。
……遠いじゃね―かよ!
あそこまで行くのに、どんだけ歩くんだよ!
大体今は何時なんだ。
腕時計を見るが……時計が読めない。
特技が奪われているので『世界の基礎知識』も無いからだ。久しぶりに文字どころか数字すら読めない世界だ……。
「ちくしょー! このクソゲー!」
叫んだ。
この弱くてニューゲーム、マジでつらすぎる。
ただ、舞衣がいないことよりはマシか。
とりあえず、舞衣に会いに行こう。




